目覚めたらフラウ・ボゥだった件~知識ゼロだけど破壊されるはずだったガンダムに乗せられて一部の皆さんにしごかれる~   作:T9816

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地球降下後のお話です。


番外編:重力の檻と、ザクの斧より熱い視線

「……重い。地球、重すぎんだろ……」

宇宙空間に出てから数日、あるいは数十日が経っただろうか。この身体になる前は馴染んでいたはずの地球の重力が、今のこの華奢な身体にはきつすぎる。

ふらつく俺を見て、アムロが慌てて駆け寄ってきた。

「フラウ! 大丈夫かい? やっぱり女の子の体には、地球の重力は負担が大きすぎるんだ……」

(アムロ、違うんだ。女の子だからじゃない。俺の中身が最近運動不足気味だった野郎だからだ! つーか、肩を貸してくれるのは嬉しいが、距離が近すぎるだろ!!)

「僕でよかったら肩を貸そうか? どう?」

「アムロ、ありがとう……優しいのね、あなたは」

「ははは、いつものことだろ? フラウ、僕たちの仲じゃないか!」

(……じゃあ、遠慮なく)

俺は心の中で毒づきながらも、その厚意に甘えて肩を借りることにした。

「……それにしてもフラウ。やっぱり君は、戦うような体じゃないよ。肩に回した腕も、こんなに細いんだから」

「……そ、そうかな?」

アムロの無自覚な言葉が突き刺さる。

「ねえアムロ。あなたは……あの白いモビルスーツに乗るの、怖くないの?」

「怖いよ。でも、僕が乗らないと皆が……。フラウ、君だって頑張ってるじゃないか」

まあ、俺より頑張ってるのは実質アムロなんだけどな。

「……実感わかないわ……」

思わず本音が漏れた。だってそうだろ。前世じゃアニメの中の兵器だった存在に、今はその中に放り込まれて死に物狂いでレバーを叩いてるんだぜ?

「そんなことないよ、フラウ。……君がガンダムに乗って戦ってくれるから、僕は……少しだけ、救われてるんだ」

アムロの声のトーンが変わる。

「君が隣にいてくれると思うと、宇宙(そら)にいた時より、ずっと……心強いんだ。だから、あまり無理はしないで。……君に何かあったら、僕は……」

(……おいアムロ。それ以上は言わなくていい。言わなくていいんだよぉ!! なんだその『君がいないと俺はダメなんだ』みたいなヒロインへの告白は!! 俺の中身は野郎なんだぞ!)

だが、ほんの少しだけ……本当に少しだけ、照れちまったのは内緒だ。

「……あは、はは……。アムロったら、大げさなんだから……」

頬が熱い。地球の重力のせいじゃない。

重い。アムロの信頼が、この細い肩には重すぎるんだ。

俺はわざとらしく笑って、アムロの肩から離れた。

このままじゃマズい。この華奢な心臓が、アムロの心音に同調して「本物のフラウ・ボゥ」になっちまいそうだ。

「フラウ……。僕は本気で――」

「あっ、ブライトさん! 補給の確認、私がお手伝いします!」

適当な名前を叫んで、俺はアムロの腕からすり抜けた。

地球の重力で体が重い? 知るか! 今はアムロの「本気」の方が100倍重いんだよ!!

(……逃げろ、俺! アムロの瞳は、ザクのヒート・ホークより危険だ!! これ以上あんな目で見られたら、俺……寒気がするな。よし、逃げよう!!)

逃げる背中に、アムロの「フラウ……?」という困惑した声が刺さる。

すまねえ、アムロ。お前のその「本気」を受け止められるほど、俺の精神(スイカバー)は頑丈にできてねえんだ。

俺はコソコソと、それでいて音速に近い早足でその場を立ち去っていった。

(……危なかった。危うく『フラウ・ボゥ(15歳)』として、アムロの胸に飛び込んじまうところだったぜ……。……あははっ! 逃げろ逃げろ! 恋の火花を散らすより、戦場(地獄)で火花を散らす方が、よっぽど俺にはお似合いなんだよぉ!!)

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