リリカルヤンデル短編集   作:コミュニ爺

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どうも皆さんこんにちは、コミュニ爺です。
今回は前話のティアナ視点のお話になります。ツンデレからヤンデレにシフトさせるのが難しいですね…。

感想や評価、お気に入り等、大変励みになります。お時間のあるときにでも寄越していただければ大変喜びます。
それでは本編をどうぞ。


『LOVE PHANTOM』Side:ティアナ・ランスター

 

あたしは、ずっと一人だった。父さんと母さんは物心付く前に亡くなっているし、育ててくれた兄さんも殉職してしまっている。それからはずっと、一人で暮らしてきた。

そして兄さんが果たせなかった夢―――時空管理局の執務官になることだ―――を果たすため、あたしは陸士訓練校に入学した。本当は士官学校に入学したかったのだが、空戦適正がなかったのでそれは叶わなかった。まぁ、いいわ。お陰で良い出会いに恵まれたわけだしね。

これから先は、その頃のお話。相棒のスバルや、あいつ(・・・)と出会った頃のお話だ。

 

☆☆

 

『それじゃあ俺からな。―――って言います。13歳です。得物は剣型アームドデバイス(こいつ)で、見ての通り近接戦が得意です。それじゃ、よろしくな!』

 

訓練校に入校してすぐの、実地を想定したスリーマンセル訓練でのことだ。あたしと、スバルと、そしてあいつ。この三人でチームを組むことになり、簡単な自己紹介をしていた。

あの時のあいつは常にニコニコしていて、やる気というか、緊張感が感じられなかった。今にして思えば、あいつなりの気遣いだったのかもしれないけど。しかし、当時のあたしはそんなことに気が付きもせず、苛立ちを隠さずに突っ跳ねてしまった。

 

『…ティアナ・ランスター、ガンナーよ。悪いけど遊びでやるつもりはないから。真面目にやってよね』

『ちょっと、いきなり失礼だよランスターさん…!あ、あたしスバル・ナカジマです。リボルバーナックルとローラーシューズを使います。よ、よろしく…』

 

あたしに続いて、スバルも自己紹介を済ませる。この頃はちょっとオドオドしてるところがあったっけ。つっけんどんな態度を取ったことのフォローまでさせてしまうとは、悪いことしたわね…。

 

『おう、よろしく。もしかしてナカジマは俺と同じでベルカ式を使うタイプ?デバイスは支給品…じゃ、ないよな』

『あ、はい。おかーさんのものを譲り受けてて…』

『へー、物持ち良いんだなぁ…』

『…そろそろ良いかしら。自己紹介も終わったことだし、さっさと行くわよ』

 

当時のあたしは、ちょっとしたアイスブレイクでもいい加減な行為に見えていたらしい。脳天気なあいつがそこまで深く考えているかはわからないけど、きっと似たようなことを考えてはいたんじゃないかしら。だとすると、本当に悪いことしたわね…。

 

『…なんだあいつ。機嫌悪いのか?』

『うん…。ランスターさん、いつも全力で頑張ってるから、―――さんの態度が不真面目に見えたのかも…』

『な、なかなかハッキリ言ってくれるじゃないかナカジマくん…。ってことはあれか、俺のせいなのか…』

『ええっ!?ご、ごめんなさい!あたしそんなつもりじゃあ…』

 

…うん、思い返すだけでも嫉妬でおかしくなりそうね。初対面だと言うのにガンガン距離を詰めるもんだから、すぐに仲良くなっちゃうし。

まぁ当時はそんな気持ちは毛ほどもなかったけどね。なんなら自分のせいだと落ち込むあいつを見て"いい気味だ"、なんて思ってたくらいだもの。ホント、やな奴だったわね、あの頃のあたしは。

 

『…いいよ、謝んなくて。俺がヘラヘラしてたのが一番悪いんだからさ。悪かったよ、ランスター。ごめんな』

『…分かればいいのよ、分かれば。それじゃ、作戦会議と行きましょ』

『ランスターさんの作戦ってすごいんですよ!周りをよく見てるというか、意表を突くのが上手いというか!』

『ほーっ、そりゃすごいな。ぜひアテにさせてもらうよ』

『ったく、あんた達も少しはアイディア出しなさいよね…』

 

純粋に褒められて、頼られたことが嬉しかった。でも、それを素直に吐き出すのが照れくさくて、代わりに出てくるのは悪態だけ。それでも、スバルもあいつも愛想を尽かすことなく付いて来てくれた。

今にして思えば、2人の優しさに甘えているだけだったと思う。それでも、この件があいつとの関係の始まりだったことを幸運に思うわ。

 

『よし、大体わかった。俺とナカジマが前衛、ランスターが後衛ってことだな』

『はぁ、ホントにザックリしかわかってないじゃない…』

『いやいや、俺よりナカジマの方が機動力があるだろうから、接敵次第俺より前に出てもらうだろ?その討ち漏らしを俺が叩くだろ?更にそのフォローをランスターが担当してくれるんだろ?大丈夫、大丈夫!わかってるって!』

『そうだよ!この三人ならきっと上手く行くって!』

『…そうね、ネガティブになってても仕方がない、か。―――やるからには、1位狙うわよ。いいわね?』

『『おう!』』

 

この訓練の内容は、森林内部に設置されたターゲット(仮想的)を破壊しつつ、要救助者のダミー人形を回収してゴールに辿り着くことだった。当然ながら班ごとにターゲットやダミーの配置はランダムに行われるため、最初の班の手順を真似すれば良いというものではない。

あたしは、俄然燃えていた。一刻も早く執務官になるために、優秀な成績を収め続ける必要があると思っていたからだ。その考え自体は間違っていなかったと思うが、視野狭窄に陥っているとも言えた。

―――なぜなら、この訓練の本質を見誤っていたのだから。

 

『―――ターゲットNo.5、6を破壊!このペースでガンガン行くわよ!』

『よっしゃあ!』『うん!』

 

ターゲットを破壊し、要救助者ダミーを回収。それを効率良くこなすことしか頭になかったあたしは、この直後、大きなショックを受けることになる。

しばらく走った後、ダミーを発見。あたしより体格で勝るあいつに回収を指示した時のことだった。

 

『ダミー発見!回収を!』

『任せろ!―――大丈夫ですか?ケガはありませんか?』

『―――は?』

『それじゃ、しっかり捕まってくださいね…。よし、行こうぜ、二人とも』

『あんた…なにやってんのよ…!』

『あん?』

『そんなことやってる暇ないでしょ!?早くゴールしないと…!』

『やれやれ…。わかってねぇな、ランスターは…』

『何を…!』

『俺達は今後、戦闘や捜査だけじゃなく、こんな具合に救助活動をすることだってあるんだぜ?その時に要救助者を無理矢理ひったくる気かよ?』

 

目から鱗だった。あいつは実践を想定しながら、この訓練を行っていたのだから。そのことに言い様もない敗北感を覚える。好成績を収めることしか考えていなかった自分が、ひどく惨めに思えたからだ。

 

『ま、確かに手早く済ませることも大事だよな。ターゲットもあと僅かだ、ガンガン行こうぜ!』

『―――さん、すっごいなぁ…あたしそこまで考えてなかったよ』

『へへっ、よせやい…。照れるぜ』

 

…うん、やっぱり腹が立ってくるわね。思い返せばあいつも満更でもないような顔してたし。

その後はダミーを確保しつつ、ターゲットを破壊しきってからゴール。タイムではトップを取れなかったけど、救助への姿勢については教官から褒めてもらえたわね。

でもこれは、あたしの功績じゃない。あいつのものだ。…なんてことを思っていたかしら。ホント、素直じゃないわね、この頃のあたしは。

 

『お疲れさん、やったな!』

『お疲れ様〜。次の訓練でも、また二人と一緒なら嬉しいなぁ』

『へへっ、嬉しいこと言ってくれるじゃねーか。俺もナカジマとランスターと組めれば心強いよ』

『いや〜、それほどでも〜』

『…あたしは、あんたには負けないから。首洗って待ってなさいよ、―――』

『負けない、って…。俺たち勝負事なんかしてないだろ?何言ってんだよランスター』

『うっさい!…とにかく、あんたにだけは絶対負けないから。覚えときなさい』

 

あの頃のあたしは、あいつに覚えた敗北感を拭いたくてあんな態度を取ってしまったのだろう。戸惑う二人に背を向けて、一人歩き出す。その表情は険しかっった。

 

☆☆☆

 

それからというもの、事ある毎にあいつへの勝負を持ちかけた。座学の試験しかり、実践訓練しかりだ。座学では基本負けなかったが、訓練においてはあいつに6割ほど負け越している。いい加減に見えるけど、戦闘センスは優れているんでしょうね。

あいつは最初こそ面倒臭がっていたけれど、いつからか何も言わずに受け入れてくれるようになっていった。その態度が気に入らなくて、心地よくて、大嫌いで、大好きで…。あたしは、自分の心がよくわからなくなっていった。

モヤモヤしている心に苛立ちを覚える中、あたしは見たくもないものを見てしまった。

 

『よっ、ナカジマ。良ければ今度の休みにでも―――』

『良いの!?行くーっ!』

 

なんでスバルとあいつが、あんなに親しげなのよ。しかも次の休日にデートに行くですって?信じらんない!ほんっとに!信じらんない!!

…取り乱したわね。たまたま自販機の影からその光景を見てしまって、呆然と立ち尽くしたことを覚えてるわ。…今思い返しても腹が立ってくるわね。

あいつらが良い感じになることが面白くなかったあたしは、これ以降こんなことがないよう目を光らせていた。その甲斐あってか訓練校時代にあいつらがデートに行くことはなかった。あいつやスバルに不信感を持たせない程度に、あたしが先約として用事を入れておくだけで上手くいくとは…。二人とも単純というかなんというか…。

 

『なぁランスター…最近ナカジマの奴どうしたんだ?休日までやたら忙しかったりするわけ?』

『…そんなこと、あたしに聞かれても知らないわよ。どうせ体よく断られてるんじゃないの?』

『え〜っ!?あいつがそんなことするかなぁ…』

 

その結果、あいつがあたしに相談に来る頻度が増えたのは嬉しい誤算だったけどね。本気で落ち込んでるのは気の毒だったが、あたしを置いてスバルにばかり現を抜かしていた罰だ。甘んじて受けてもらおう。

 

☆☆☆☆

 

そんな具合に張り合いながら陸士校を卒業して、あいつとはそれっきりになってしまった。あたしとスバルは六課に所属、それ以降はあたしは執務官に、スバルが港湾警備防災部の特別救助隊に所属していたからだ。

あいつは陸士部隊に所属していたから、業務の上で顔を合わせる機会も少なくなってしまっていた。それに寂しさを感じたことはよく覚えている。

 

『なによ、寂しいなんて…。これじゃまるで、あいつのことが…』

 

―――気付いてしまえば、あとはただ堕ちるだけだった。

あいつと一緒にいたい、触れ合いたい、繋がりたい、抱きしめて欲しい。そんな欲望が留まるところを知らず、胸の内に溢れていく。あいつに会えないという事実が、激しい濁流のように、あたしの心を傷つけていた。

それからはありとあらゆる手を使って、あいつのことを調べ上げた。所属している部署も、自宅の場所も、業務状況も、なにもかもを、だ。こういう時に執務官の肩書ほど頼れるものもない。全てがあっさりと調べられた。こういうことのために執務官を目指していたわけではないけれど、思わぬ副産物というやつだ。ラッキーだったわね。

…え?プライバシーの侵害なんじゃないかって?…そんなことはわかってるわよ。でもね、あいつのことを考えるだけで頭がおかしくなりそうなの。一緒にいないと嫌なのよ。あいつをこの手に入れるためなら、なんだってする。他に何もいらないわ。だから―――。

 

「もう我慢できないの―――。あたしを全部あげるから、あんたの全部をちょうだい?」




君がいないと生きられない
熱い抱擁なしじゃ 意味がない
ねえ、 2人でひとつでしょ
yin&yan
君が僕を支えてくれる
君が僕を自由にしてくれる
月の光がそうするように
君の背中にすべり落ちよう
[そして私はつぶされる]
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