今回は、前話のなのはさん視点になります。時系列的には、前話よりもさらに前のお話になります。
病んでる女の子の書き方っていうのは、こんな具合で良いのだろうか…。
ぶっちゃけ自信ないので、アドバイスいただけると幸いです。
☆
夢を…見ていました。とっても懐かしくて、もう手の届かない夢を———。
『ほ、本日からこの部隊に配属されました!高町なのはです!よ、よろしくお願いします…!』
『おーおー、元気の良いあいさつで何よりだ。おい、———。お前が面倒見てやれ』
『は、はいっ!———あの、隊長…ホントに俺で大丈夫でしょうか…?』
『お前も入隊してそこそこ経つだろ。後輩の教育も大事なお仕事だぞ~』
『よ、よし…!やってみます!』
これは私が管理局に勤めだした、初めての記憶。センパイと初めて出会った記憶だ。当時の隊長の一存で、配属されたばかりの私の指導役になってくれたのがセンパイだ。
『それじゃ今日からよろしくね、高町さん。俺じゃ頼りないかもしれないけど、教えられることは何でも教えるから。遠慮せずにバンバン聞いて欲しいな』
この時のぎこちないながらも温かい微笑みを、私はきっとずっと覚えている。
☆☆
私とセンパイが一緒に働いていた期間自体は、実はそう長くはない。およそ一年ほどだ。その間にいろんなことを教わったなぁ…。日々の業務の流れや、同じ隊員の諸先輩方のこと。書類作成のやり方なんかも教わったっけ。既に私の方が魔導師ランクが上だったから、魔法について教わることはなかったけど…。
センパイは魔導師としての成長が頭打ちになった、とボヤきながらも、年下でランクも上の私を邪険にすることは決してなかった。
『すごいな、高町さんは。俺なんてもうずっとCランクから伸びてないよ…。魔力量だって俺なんかとは比較にならないし、こりゃこのまま行けば出世確定だな~』
『あ、ありがとうございます…。この力で誰かを助けられたらいいな、って思って練習してきた甲斐があります』
『…そっか、立派だなぁ。———ま、無理だけはしないようにね。エース級って言ったって、まだまだ小さいんだしさ』
『むぅ~…。小さいってなんですか、小さいって』
『ごめんごめん、そんなにむくれるなよ…』
『…じゃあ、明日のお昼ご飯奢ってください。それで許してあげます』
『うっ、今月何回目だよ…。———わかったわかった!わかったからそんな目で見るなって!誠心誠意奢らせていただきまぁす!』
『うむ、よろしい!えへへ…楽しみにしてますね~』
センパイと一緒に働いていたあの頃は、とても充実していた。もちろん、今の環境に不満があるわけじゃない。子供の頃からの親友たちと一緒に働けるのだから。でもやっぱり…
―――やっぱり、センパイがいないと少し寂しい。
☆☆☆
それから一年後、私は任務中に撃墜されてしまった。シャマルさん曰く、日ごろの疲れが出て動きが鈍ったところをやられてしまったらしい。
———とっても痛くて、とっても苦しかった。
あの時のセンパイのアドバイスを守っていれば、こんなことにはならなかったかもしれない———。そんな考えが何度も頭をよぎる。私の魔法を、人のために役立てられることが嬉しくて頑張って来たけど…。それももう、できなくなるかもしれない。私は泣いた。
お見舞いに来てくれたフェイトちゃんや、はやてちゃん達に心配かけさせたくはなかった。だから、誰もいない夜の病室で、何度も、何度も泣いた。
———そんな時だ。センパイがお見舞いに来てくれたのは。
『だ、大丈夫なのか高町さん!?』
『———ありがとうございます、センパイ。リハビリを頑張れば、復帰できるかもしれないそうです』
『そうじゃない!いや、今後も大切だけど、そうじゃなくて!』
『…じゃあ、なんなんですか?』
『
『…大丈夫ですよ。ご心配をおかけして、すみません』
『嘘をつくなっ!本当に大丈夫な奴が、そんな顔するものかよ…!』
『…本当に大丈夫ですよ。優しいですね、センパイは』
『…ッ…!君は…っ!』
『そんなに辛そうな顔、しないでくださいよ。私は大丈夫ですから』
あの頃は、“良い子”でいるために人に頼ることをしたくなかった。センパイにだって例外ではない。他の人たちと同じように、笑顔を作っておけば大丈夫だ。そう考えていた。
———でも、センパイは私の想像を超えてきたのだ。可能な限り、毎日お見舞いに来ると言ってくれたのだ。当然私はそれを固辞した。人に頼ることは“良くないこと”だから、なんて考えていたっけ。
『うるせー!先輩が後輩を助けるなんて、当たり前のことだろうが!』
『で…でも…。それじゃセンパイに迷惑が———』
『こんなの、迷惑の内に入るかい!いいか?お前のそんな姿、一秒だって長く見たかないんだよ俺は!これから先、俺にできることならなんだってしてやる!だから———』
———リハビリ、頑張れよ。
その言葉を聞いた時、思わず涙が溢れた。撃墜されてから初めて、私は声を上げて泣いた。センパイは、縋りついた私を振り払うことなく、優しく頭を撫で、背中を叩いてくれた。
これがどれほどの救いになったのか、あの人は知っているのだろうか。
☆☆☆☆
それから更に半年ほど後、センパイから人事異動があったことを知らされた。勤務地自体が変わるので、今までのようにお見舞いには来られなくなると、申し訳なさそうに告げられたのだ。
『ごめんな…。正式な内示が出るまでは伝えるな、って言われててさ…』
『…そういうことなら仕方ないですよ。新しい部署でも、お仕事頑張ってくださいね?』
『あぁ…もちろん…。本当に、ごめんな…』
嘘だ。本当は諦めたくなんかない。センパイがお見舞いに来てくれる時間が、毎日の楽しみだったのだ。センパイがいてくれたから、辛いリハビリも耐えられた。センパイがお休みの日には、リハビリの付き添いだってしてくれた。それがもうなくなるなんて…やっぱり、嫌だ。
でも、これ以上センパイに迷惑をかけるわけにはいかないから。私は笑顔でセンパイの退室を見送った。扉が閉まり、足音が遠のいた後———。
———私は、声を押し殺して泣いた。
☆☆☆☆☆
それから更に約半年後、私は無事に現場に復帰することができた。後遺症こそ残ったものの、再び空を飛べたときは感極まって泣いてしまったほどだ。
現場に復帰できたことと、支えてくれたことへの感謝を伝えるべく、センパイが属する隊舎へと足を運ぶ。喜びに胸を膨らませながら扉を開いたその時———。
———そこで私は、信じられない光景を目の当たりにした。
『よしよし、書類の書き方はもう問題ないな。優秀だね~、———さんは』
『あ、ありがとうございます。これも———先輩のお陰ですよ』
『おいおい、謙遜するなよ~。君が頑張ったからここまで出来るようになったんだろ?』
『あ、はは…、なんか照れますねぇ…』
センパイが、他の
———どうして、そこに居るのが私じゃないの…?
———どうして、その笑顔を向けてくれないの…?
思わず身を翻し、そのまま駆け出す。頬が濡れていることを自覚するのに、それほど時間はかからなかった。
☆☆☆☆☆☆
それから数年が経ち、いつしか私は“管理局のエースオブエース”と呼ばれるようになった。担当した事件の解決にも力を注いだし、後進の育成にも全力で取り組んだ。頼れる親友たちだっているし、十分充実した毎日を送れていると言えるだろう。でも、やっぱり———。
———センパイが居てくれないと、寂しいよ…。
陸と海で管轄が違うとはいえ、長い間センパイと会うことができていない。まだ、あの時のお礼だって言えていないのだ。だが、昇進したことで忙しさが増したこともあって、なかなか時間が作れずにいた。もどかしい思いが胸を締め付ける。
でも、それも今日でおしまい。久しぶりの休暇を使い、私はセンパイの隊舎へと向かった。事前にセンパイの出勤状況については調べてある。間違いなく今日こそ顔を合わせることができるはずだ。
はず、だったのに。
『おぉ、お久しぶりです。
『———え?』
『お噂はかねがね伺っていますよ。いやぁ、元同僚として鼻が高いです』
『あ…あの、センパイ…。その、高町一尉っていうの、やめてもらっても…』
『いえいえ、そうもいきませんよ。もう自分の上官にあたるわけですから、他の隊士に示しがつきません』
『そ、そうですか…。それで、今日センパイを尋ねてきた要件なんですけど…』
『はい、何の件でしょうか?』
『私がリハビリをしている間お世話になったので、そのお礼ができたらと思いまして…』
『そ、そんな…そこまでしていただかなくて結構ですよ。
それは、私の心にヒビをいれるには十分な言葉だった。あんなに優しくしてくれたのに、もうセンパイからしたら昔のことなの…?もうどうでもいいの…?
———それからのことは、あまり覚えていない。当たり障りのない会話の後、退出したのだろうが、顔には出なかっただろうか。センパイに余計な気を使わせていないだろうか。もう、私はセンパイに関わってはいけないのだろうか。そんな考えが頭を支配していたように思う。
イヤだなぁ。そんなの、イヤだよ…。
一晩泣いた後、私はある決意を固めた。近々結成される予定の機動六課———はやてちゃんが隊長になる部隊だ。———にセンパイをスカウトするのだ。人手はいくらあっても良い。はやてちゃんだって、きっとそう言ってくれるはずだ!そうだ、センパイだって、今の部隊の魔導師の層の薄さに苦しんでいるようだし、きっと喜んでくれる!
だから、だから———。
「待っていてくださいね———セ ン パ イ ?」
どうすれば時が過ぎる はげしい雨の街角で
どんなにずるさを責めても 胸が痛むだけ
逃げ出したくなるような夜に 抱きしめていてくれるのは誰
つまらないことで いっしょに笑いあえるのは誰