リリカルヤンデル短編集   作:コミュニ爺

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どうも皆さんこんにちは、コミュニ爺です。今回も難産でした…。
今回は、はやてちゃん編となっています。やはりというかなんというか、関西弁が難しい…。自分は関西の人間ではないので、違和感を感じられる方もいらっしゃるかもしれませんが、その際は遠慮なくご指摘をお願いします。

今回のサブタイトルは、はやてちゃん15歳視点です。今までのヒロイン2人のように力ずくで主人公を手にしようとするのではなく、ほんの少しでも主人公の心が欲しい、といった具合のイメージをしてもらえれば幸いです。

例によってオリ主のイメージをば
年齢:二十代前半くらい。はやてちゃんとはだいたい十歳差です。
名前、外見:皆様のご想像におまかせします。

それではどうぞ。


『ひとしずくのアナタ』Case:八神はやて

吾輩はごくごく一般的なサラリーマンである。名前はまだない———ごめんなさい、嘘です。

 

僕は海鳴市のある企業に勤めている。まぁ、業務内容になんぞ興味はないだろうから、ここは割愛。本当にごくごく普通のサラリーマンだということだけわかってもらえればOKだ。

地元であるこの海鳴市で就職ができて良かったと、僕は思う。自然もそれなりに残っているし、都会だと言うにはまた違うが、ド田舎というほどでもない。そんなこの街が僕は好きだからだ。

だが、最近一つ気になることがありまして…。

 

「あ、おっはよ~ございます~。お兄さん、今からお仕事ですか?」

「あぁ…はい。そうです…八神さん」

「もう、そんな他人行儀な呼び方、やめてください。長い付き合いやないですか」

「そう、だね…。でもね、僕の歳でそんなことしてるとさ…ほら、周囲の目が…」

「えぇ~?いいやないですか~。少なくとも私は気にしませんよ?」

「僕は気にするの…。全く…」

 

そう、彼女———八神はやてのことである。彼女は長い付き合いだなんて言うが、そこまで大した付き合いがあったわけではない。ただ数年前の、彼女の足が病気だった頃(・・・・・・・・・・・)に何度か家にお邪魔して、家事を手伝ったことがあるだけだ。本当に、それだけ。今僕が暮らしている実家と、彼女の家が近隣にあるから手伝っただけなのだ。

それも僕が自主的に行ったものじゃなく、可哀そうだから手伝いに行ってやれ、と僕の両親から言われたからという、極めて消極的な理由からだった。ご両親を亡くし、まだまだ幼い身で一人暮らしとはさぞ大変だろうな、と言われて首を横に振るほど、僕は薄情な奴ではなかったというだけなのだ。まぁ、彼女の親戚たち(ヴォルケンリッター)が引っ越してきたと聞いた時から、あまりお邪魔をすることはなくなったのだけど。

だから、もう長い間彼女と接する機会自体があまりなかった。なかったハズ、なのである。…なので。

 

「あんまりそーいうことを言わない方が良いよ。男ってのは単純でね、そんなこと言われたら勘違いするやつばっかりなんだから」

「———私は別に、勘違いしてくれてもええんですよ?」

「だから、そーいうことを言うなってのに…」

 

たまらず頭を掻く。昔からこの子は警戒心が薄くていけない。彼女の親戚一同(ヴォルケンリッター)が引っ越してくる前からこんな調子だ。確かに彼女を見かければ挨拶はするし、今回のように雑談をすることもある。だが、それだけの間柄だ。

そんな僕が相手でもこれだけフレンドリーなのは、きっと彼女の人柄の良さ故なのだろう。

 

「私は、お兄さんのことも家族みたいに思ってますもん。お兄さんは…イヤ?」

「ちょっと待ってくれ。そこまで縁深いわけじゃないだろ、僕ら」

「———そんなこと…そんなこと、あらへん」

「…そうかな?そこまで言ってくれるのは嬉しいけど、ただのご近所さんな気がするんだけど…」

「だからっ!そんなことあらへんよ!!」

「ご、ごめん…怒らせるつもりはなかったんだ。本当ゴメンな?」

 

それじゃ、遅刻しても悪いし、この辺で。彼女にそう告げて、僕は逃げるように歩を進めた。しかし、なぜあそこまで彼女はムキになっていたのだろうか?会社へと向かいながら、その事ばかりをぼんやりと考えていた。うーむ、わからん。

 

「ま、いいや。誰かに相談してみようっと」

 

思考を強引に打ち切る。もうすぐ会社にたどり着くのだ、意識を切り替えねば。さて、今日もやったりますかぁ!

 

☆☆☆

 

「ふぅ…大変だったぜ。いつにも増してひでぇ無茶振りしやがって、あンのタコ野郎…」

 

上司への愚痴を吐きながら、通り慣れた帰り道を歩く。すっかり日も沈み、めっきり暗くなった通りは、今の僕の気持ちを写しているようだ。

…詩的に素敵、ってか?いい歳こいてカッコつけてた自分に鳥肌が立つ。もちろん口には出していないが、やはりどこか気恥ずかしいものがあった。

 

「あ〜あ…何考えてんだろ、僕…」

 

さっさと飯食って風呂入って寝よう、と意識を逸らす。そうすりゃあこの虚しさもなんとかなるはずさ。そうこうしているうちにたどり着いた家の扉に手をかけ、スライド。眼前に憩いの空間が広がるぜ。

 

「ただいま〜…疲れたびぃ」

「あっ、お兄さん。おかえりなさい♡」

「…あれ、八神さん?なんでウチにいんの?」

 

だからはやてで良いですって〜、と彼女が伝えてくるのをよそに、僕の意識は全く違う方向に向かっていく。ご家族はどうした?それに父さんも母さんも、なぜ彼女を微笑ましげな目で見ているんだ…?今まで目にしたことのない光景に、理解が追いつかない。

言葉に詰まる僕へ、両親が事の経緯を説明してくれた。曰く、晩ごはんを作りすぎたので、それをお裾分けに持ってきてくれたとのこと。そして、せっかくだから僕に直接渡したかったとのこと。前者は素直にありがたいが、後者はどうなんだろう?僕の帰宅する時間は、(決して認めたくはないが)残念なことに割と不安定だ。そんな僕の都合に合わせて、彼女にここまでさせてしまった罪悪感から、僕はついつい問いかけてしまった。

 

「気持ちはありがたいけど、もう遅いんだ。帰らなくて大丈夫?良ければ送って行くよ?」

「…ひどいわぁ。私、お兄さんをずっと待っとったんですよぉ?」

「うっ、それを言われると…」

「…本当に気にせんでええんですよ?だから―――」

 

———晩ごはん、一緒に食べましょうや?

 

何故だか、その笑顔はいつものものとは違っているように思えた。まるで、ナニカを僕に刻み込もうとしているかのような———そんな笑顔だった。

 

☆☆☆

 

「う〜ん、美味い!こりゃあもう、はやてちゃんの旦那になる奴はもうす〜っごい幸せ者だなぁ」

「えへへ…もう、お義父さんったら…。褒めても何も出ぇへんですよぉ〜」

「自信持って大丈夫よぉ、はやてちゃん。この歳でこれだけやれるなら、嫁の貰い手には困らないわ。おばちゃんのお墨付きよ」

「お…お義母さんまで…。ほんま、ありがとうございます」

 

なにがどうしてこうなった?彼女の作ってくれた肉じゃがを中心に、僕、父さん、母さん、八神さんの四人で食卓を囲むことになった。うむ、確かに美味しい、すごく美味しい。だが、やはり違和感は拭えない。

どうしてそんなに父さんと母さんが彼女をベタ褒めしてるんだよっ!そりゃあ確かに彼女の年齢でこれだけの料理が作れるのは凄いことだろう。あ、美味しい。でも、彼女とウチの両親は、僕以上に接点が乏しいはずだ。いくらなんでも、短時間で仲良くなりすぎではなかろーか。

それに、彼女の両親への二人称も気になる。『お義父さん』に『お義母さん』…だなんて、面識の薄い人間に対する呼び方としては、あまりに距離感が近すぎるのではないか?そこはまず『おじさん』とか『おばさん』だろうに。

 

「あ、お兄さん、おかわりどうです?」

「あぁ…ありがとう。いただくよ」

「はい、どうぞ〜。…なんやこうしてると、私たち夫婦みたいやなぁ」

「んなっ!?…だ、だからそういうことは…」

「いやぁ、はやてちゃんがウチのをもらってくれるなら、もう心配はないなぁ。頼りないかもしれないけど、良くしてやってくれ」

「とっ、父さん!?何を言って―――」

「初孫、楽しみにしてるわね〜」

「母さんまで!?ほら見ろ!こういうことになるから―――!」

 

―――別に、ええやないですか。

 

そう告げた彼女の瞳は、いつもの朗らかな様相が鳴りを潜め、濁っていたようだった。表情はたしかに笑顔のはずだ、間違いはない。しかし、その瞳との落差に、僕は僅かな恐怖を覚えた。

夕食を終え、今度こそ彼女を自宅まで送り届けようとした時、彼女からあることを不意に告げられた。

 

「私、中学を卒業したら、海外に引っ越すんです」

 

曰く、海外に住んでいる親戚を頼りに、八神家に住まう一同で引っ越すことになっているとのことだ。突然の話題に面食らってしまう。こんな急に伝えることでもないだろうに。それも、身内でもない僕相手に。

 

「だから、お兄さんにはどうしても伝えたいことがあるんですわ」

「な、なんだい?改まって…」

「…私は、八神はやては―――」

 

―――あなたのことを、愛しています。

 

呼吸が止まり、頭が真っ白になった。彼女が?僕を?なんの冗談だ?歳も十近く離れているし、ただのご近所でしかない。そのハズだ。そんな彼女から告げられた一言は、僕を放心させるには十分な威力を誇っていた。

 

「返事はしてくれなくてもええです。私が気持ちの整理をつけるためですから」

「で、でも…そりゃあまりにひどいだろ」

「ううん、本当にええんですよ。でも…」

 

―――私は、お兄さんのことをずっと、ずうっと愛してますから。

 

彼女の瞳は、夜空のよう。美しく広がり、すべてを包み込む闇のようだった。僕は、そんな瞳をただじっと見つめることしかできなかった―――。

 

☆☆☆

 

それから数年後、僕はうだつの上がらない毎日を過ごしている。程々に働き、時折酒を煽り、泥のように眠る。そんな暮らしを続けていた。

 

「また、彼女からか…」

 

ポストには一通のエアメールが入っていた。差出人の名前は『八神はやて』。手紙には、彼女の近況の報告と、現地での写真が封じられていた。もう何年も経つというのに、月に一度は手紙が届く。未だに、である。さすがに毎回というわけには行かないが、僕も手紙を返している。

だが、それでもやはり、腑に落ちないことはあるのだ。それは夜空の下で彼女の告白を受けた、あの時からの疑問。

 

「なぁ、はやてちゃん(・・・・・・)…。君は、僕なんかのどこに惚れてくれたんだ?」

 

手紙を見つめ、ひとつ問いかけてみるが、答えが帰ってくることはない。そんなことに僅かな虚しさを覚えつつ、僕は実家の玄関扉に手をかけた。扉を開けようと力を込めたその時、聞き覚えのある声が、僕の耳に響いた。

 

「―――どこって、全部ですよ。優しいとこも、厳しいとこも、ちょっと意地悪なとこも、全部」

 

ゆっくりと振り返ると、そこには写真の姿と寸分違わぬ彼女が―――八神はやてが立っていた。もう幼い頃の彼女とはまるで違う、大人の女性としての雰囲気が、彼女には漂っていた。

 

「写真で見てたけど、実際に会うとまた違うもんだなぁ。…大きくなったね、はやてちゃん」

「ブ〜ッ!減点ですよぉ、お兄さん。こういう時は―――」

「悪い悪い…。綺麗になったね、はやてちゃん」

 

本心からの言葉だ。元々かわいらしい子ではあったが、今の彼女はそれだけではない。大人の美しさを備えている、立派な淑女であった。

僕の言葉を受け、彼女は小さくはにかんだ。その表情は、どうやら昔とあまり変わっていないらしい。

 

「もう何年も経っちゃったけど、あの時の返事、聞いてくれるかい?」

「…はい。もちろんです」

「僕じゃ、君にもらった分を返せるかわからない。そんな僕だけど」

 

―――君の傍に居させて欲しい。

 

彼女は、笑顔で頷いてくれた。僕の判断が正しかったのかどうかは、正直なところわからない。だが彼女を幸せにできるのであれば、きっとそれは、間違いではないのだろう。彼女の涙を拭いながら、そう思えた。




ひとしずくのアナタでいい ください
それで僕は無限にうるおう
朝でも昼でも夜でもいい
待ってますよなんて言わないから

ひとしずくの想いでいい 今は
与えあえるなら それは最強のpeace
壊れそうで壊れないダイアモンド
胸に秘めて今宵も目を閉じよう
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