今回はティアナ編、オリ主視点です。今までの主人公の誰より脳天気な感じをイメージしております。
そのせいでもう基本ボケボケです。病んでる展開を尽く打ち砕かれて戦慄しております…。ホントにこれでヤンデレものを名乗ってよいのだろうか…。
皆様のご意見、ご感想、評価等大変励みになります。どうぞよろしくお願いします。
それではオリ主の設定をば。
名前、外見:例によって、皆様の想像におまかせします。
年齢:ティアナと同い歳。訓練校や管理局には同期入隊しています。
魔導師として:近代ベルカ式、剣型アームドデバイスを使用。訓練校時代は、同じ近代ベルカ式の魔導師であるスバルと接する機会が多くあった、という設定です。その縁からティアナとも面識あり。その頃に彼女へ何かやらかしたようで…!?
お目汚しを失礼しました。それでは本編をどうぞ。
吾輩は時空管理局、武装隊員である。名前はまだない―――ごめんなさい、嘘です。
書類を作る手を止め、一息つく。仕事にばかり根を詰めても効率が悪いんでね、デバイスから流れるニュースでも聞きながら思考の海に潜ろうと思う。
俺は割とどこにでもいる、しがない管理局の局員だ。まぁしがない局員で通すにはちょっと迷うくらいには、年齢の割に優秀だという自負があるがね。魔力、魔導師ランクともにBランクだし。
管理外世界へ出回る海側では並のランクになるらしいが、陸では十分優秀な部類に入るのだ。ぶい。
「まぁ、
アイツらとは、スバル・ナカジマとティアナ・ランスターのことだ。機動六課―――数年前に解体された、精鋭の集う試験運用部隊のことである―――に属していた2人は、同期の中でも頭一つ抜けていた実力に更なる磨きをかけ、今や立派なエース級の局員である。訓練校にいた頃はともかく、今となっては雲の上…の一歩手前の存在だ。現にこのニュースでもちょろっと紹介されてるし、俺とはえらい違いだよな。一応同期なのに。
まぁそもそも2人とは属する部署が違うから、あまり会うこともないのだが。べ、別に久々に顔が見たくなったとかそんなんじゃねーし!
『しかしマスター…そんなリアクションをしたところで、一体誰が得をするんですか…』
「ひでぇ!?いいじゃねーか、照れ隠しだよ、照れ隠し!言わせんな恥ずかしい…!」
『まぁ、マスターはこのお二人とはそれなりに交流があったそうですからねぇ』
「…まーね、そこそこ仲が良かったとは思ってるよ」
『しかし実力の差は如何とも…』
「それを言うなって…。ま、人を僻んでも変わりゃしないさ。俺は俺ですよー…っと」
我が愛機からのツッコミを華麗に躱して、白一面のディスプレイに向き合う。これから作らねばならない書類がまだまだあるのだ。そろそろ手を動かし始めねば、日付が変わっても家に帰れなくなる。マジで。
―――そうしてキーボードを叩くこと数時間。画面と熱い視線を交わしていることに耐えられなくなった俺は、思わず独り言ちた…というか、愛機たるデバイスに話しかけた。
「…こうして思うとさぁ、仕事なんかじゃなくて可愛い恋人でも欲しくなるよなぁ。こうさ、元気が良くて優しい感じの」
『むっ、私ではご不満ですか?』
「何言ってんだ。デバイスに欲情してたらヤバいだろ、人として…」
『ひ、ひどい…!私とは遊びだったって言うんですね!?』
「ちょっ、待てぇっ!そんなこと一体どこで覚えてきたお前ぇ!?」
デバイス漫才を繰り広げながら、書類と格闘すること更に数時間。一先ず仕事にケリを付け、なんとか退勤できた。日も沈んでしばらく経ったこともあり、もう冷え込んで仕方がない。あぁ帰りたい、帰りたい。あったかいホームが待っている…ってね、誰もいないけど。…虚しいなぁ、オイ。
「…帰ろ、帰ろ。明日も仕事だし」
「―――やっぱりそうだ、こんな時間までどこほっつき歩いてたのよ」
すれ違った女の人から声をかけられる。つーかやけに馴れ馴れしいな、誰だよこいつは。訝しみながら彼女へ向き直ると、意外なことに見知った人物の顔であった。それもさっき話題に上がっていた奴の。
「…あれ?もしかしてあんた…ランスターか!?うわぁ、ひっさしぶりだなぁ!」
「えぇ、久しぶり。…でも昔と変わんないわね、あんたは」
「そうかな?ちったぁ大人になれたとは思いたいがね」
「ふふっ、そういうことにしといてあげる」
どーいう意味だ、どーいう。まぁ、彼女なりのじゃれ合い的なものだということは俺でもわかるので、今回は許してやるか。
しかし、変わったなランスター。スーツでビシっとキメてるし、髪型もツインテをやめて下ろしてるし。俺と同い年だというのに大人の階段を登ってやがるぜ…。遙か先を行かれてる気がするよ。
「それで、どこに行ってたのよ。家にいないから心配したじゃない」
「どこって…仕事だよ、仕事。今やっと
「良かった…。事故とか事件に巻き込まれたんじゃないかと思って、気が気じゃなかったから」
「お、おう…。そりゃちょっと悲観的すぎやしねーか…?」
「そうもなるわよ。だって今日は、定時で帰れる予定だったハズでしょ?」
や、やっぱこいつ変わったな…!?昔っから面倒見がいい奴だとは思ってたけど、ここまで過保護じゃなかったぞ!?
―――いや、ちょっと待てよ。なんで家にいなかったからって心配されてるんだ?それ以前に、こいつはどうして俺の家を知ってるんだ…?それに、どうして昨日考えてた仕事の段取りまで知ってるんだよ…!?
真面目に付き合うと恐ろしいことになりそうだ。ここは一つ、共通の話題でお茶を濁すとしよう…。
「あー、その…うん。そーいやナカジマとはどうなんだ?最近はさ」
「―――は?」
「うおっ怖っ!?どうしたんだよランス―――」
「なんでここでスバルが出てくるのよ。今あんたの目の前にいるのはあたしじゃない。あたししかいないじゃない!やっぱり
「―――ステイ!ステイだランスターっ!そんなに一気に捲し立てられても聞き取れんっ!」
「うっさいっ!人の気も知らないで!」
「ひ…人の話を聞かん奴だな…。いやこの場合、聞き取れてない俺も似たよーなモンか…」
ランスターの勢いに圧倒されるが、だからといって怯んでいられる状況ではない。彼女が落ち着くまで話が通じそうにはないから、取り敢えず場所を移そうか。天下の往来でこんなことをいつまでもやるわけにいかないしな。
「なんでお前がそんなに怒ってるのかは皆目見当もつかんが…。まぁなんだ、話ぐらい聞くからさ。俺ん家にでも来るか?ここでこんなことしてたんじゃ、周りの迷惑になるし」
「―――し、しょうがないわね。それでいいわよ」
「うわっ、変わり身すごっ」
「…なんか言った?」
口は災いの元である。時には沈黙が尊ばれることもあるのだ。
「やめろよ
「そりゃどーいう意味よ、どーいう」
「言葉通りだよ…。それじゃ、行こうぜ」
彼女の機嫌も幾分良くなったようだ。仕事の疲れとはまた違う類の疲れに肩を落としながら、ランスターを連れて帰路につく。…
アパートに帰り着くと、当然ながら俺の部屋へと向かう。ランスターはどうにも興味津々なご様子だ。一体何が面白いんだろう。そうこうしているうちに、俺の部屋にたどり着く。施錠されたドアにディンプルキーを差し込み、右回転。
普段なら上着を脱ぎ捨ててベッドへダイブするところだが、客人がいる以上そんな真似はできない。上着をハンガーに掛け、クローゼットにしまった。いつもの自分が見ていたら驚くことだろう。そして空いていたハンガーを渡し、彼女のジャケットをかけるよう伝える。二つ返事のもと、ハンガーにかけられたジャケットを手渡された。
ランスターの性格もあるのだろう、俺よりもずっとピシっとしたかけ方だ。スーツの形がキッチリとわかる。が、それよりもスーツにわずかに残る彼女の体温と、鼻腔をくすぐる甘い匂いに意識が向いていた。それでいーのか俺は…。
「―――で、なんであんなに怒ってたんだ?」
「…あんたねぇ、それをあたしから言わせるつもり?」
「だって俺じゃ分かんねーし」
「はぁ…全くこのバカは…」
「ちょっ、おまっ…ヒドいな!茶ァ出してやんねーぞ!?」
「あら、あんたが
「フッフッフ…ざ〜んねん。実はあるんですよ、これが!」
「へぇ〜、意外ね。紅茶なんて興味ないと思ってたんだけど」
「最近ハマったのさ。後輩の子に美味しい淹れ方を教えてもらってな…」
「ねぇ。―――その後輩の子って、誰?」
空気が、凍った。彼女の視線から感じる圧力に、心臓が早鐘を打つ。
こ…こええーっ!!だからなんでこいつはこんなに怒ってんだよ!?さっきまでそんな素振り一切なかったじゃんかあっ!?
心底震え上がっている俺に、彼女の追撃が飛び込む。
「なんとか言いなさいよ。で?どこの馬の骨なのよ、そいつは」
「…う、馬の骨ってお前…そりゃひどいだろ、流石に」
「ひどい?どこが?あたしからあんたを掠め取ろうとした奴に、遠慮なんてしてやる必要ないじゃない」
「人をモノみたいに言うなよ…。―――後輩はあれだ、俺より2年後に入ってきた子だよ」
「ふーん…」
やめろ、そんな目で俺を見るなよ。昔からそうだ、ランスターの"いかにも疑ってますよ"って目はどうにも苦手だ。後ろめたいことがなくても、思わず後ずさってしまう力がある。
―――でも、後輩の子とは本当にそれくらいの関係しかないから、これ以上のことは言えないんだよなぁ。
「と、とにかく!このことはこれで終わりだ!ホントにそれだけだからな!」
「…どうだか」
「信用のなさが痛いっ!」
「ま、いいわ。久しぶりにあんたをからかうのが楽しくてね、ちょっとやりすぎちゃったかしら。ごめんね?」
「さ、さいですか…。心臓に悪いんだよ、もう…」
安堵のため息が漏れる。こいつの場合、からかい半分で終わるように思えないから始末に負えないんだよなぁ。その上目が全く笑ってないし。
―――で、俺はなんで彼女を家に招いたんだっけ?些細なことで彼女がキレだすから、もうすっかり忘れちまったよ。なるべく彼女を刺激したくはないが、明日も仕事なんだ。早めにこの話にケリを付けて、さっさと寝ちまいたい。
大きく息を吸い込み、心を落ち着ける。勇気を振り絞り、俺は問いかけた。
「そーいや、なんでランスターを家に上げることになったんだっけ?」
「…なによ。―――理由がなきゃ、来ちゃいけないわけ?」
「…えっ」
「あんたに会いたいから来たのよ、悪い?」
「いや、全然…。むしろ俺も今日のニュースでお前らのことが話題に上がってたから、少し気になってさ…」
彼女の返答には面食らったが、俺も感じたことをそのまま伝えることにした。ランスターたちが元気にしてるか気になってたのは本当だしな。ちょっと照れくさいけど、嫌味なことを言うわけじゃないから多分いいだろ。
自分に言い訳をした後、彼女の顔色をうかがうと、この上なく喜色に染まっていた。これまでで初めて見るくらいには、だ。ランスターとはそこそこ長い付き合いではあるが、こんな顔もするんだなぁ、こいつ。
「へぇ〜、そうなんだ。ふぅ〜ん…」
「おいランスター…顔、顔。すっげぇしまりのない顔してるぞ、お前」
「えっ!?…わ、忘れなさい…!」
「あ、あぁ。善処するよ」
「いい!?絶対、ぜぇ〜ったいだからね!?」
多分無理だろ、という言葉が喉の奥につかえたが、かろうじて飲み込む。ランスターの照れ隠しの恐ろしさは半端なものではないからだ。
―――哀れなり、ナカジマ。お前い〜っつも折檻されてたもんなぁ。大半は自業自得だったけど。
「―――あんた、またスバルのこと考えてたでしょ」
「え゛っ」
「なんで…なんであたしのことを見てくれないのよ…!」
「おわっ」
押し倒される。ぼんやりと考えていたことが読まれていたことに動揺していたのもあるが、さすがは執務官だ。俺が起き上がれないよう、的確に身体を押さえつけてきた。
―――って、落ち着いてる場合かーっ!?なんでこんな目に遭ってんだよ俺はっ!?
「お、おいランスター…!お前―――」
「どうして…どうして昔から、あんたはスバルのことばっか気にするのよ…」
「ランスター…」
「なんで…あたしを見てくれないのよ…。こんなに…こんなに好きなのに…」
「ラ…ランスター…!?」
急に泣き出したと思ったら、そのままとんでもないことを告白してきたでござる。ランスターに好かれていたのか、俺…。
―――待て待て待て、どうしてこうなった!?俺そんなに好かれるようなことしたの!?こいつを泣かせるくらいにぃ!?
…もうわけがわからん。ただ、彼女をこのままにしておくわけにはいかんな…。あと、せめて誤解だけは解いておこう。
「あー、その…ランスターさん?ナカジマのことなんだけどさ…」
「―――やっぱり、あんたはスバルのことしか頭にないのね」
冷たく響くような、彼女の声が鼓膜を揺らす。そのプレッシャーに体が強張り、冷たい汗が背筋に滲む。
―――だからその声やめろ!めっちゃ怖いんだよぉ!
「いや、違うって!誤解してるみたいだから弁明させてくれっ!!」
「いいわよ。―――遺言くらい、聞いてあげるから」
「何言ってんだお前!?」
「あんたを殺して、あたしも死ぬ。―――天国ではずっと一緒よ?」
怯えを取り繕いもせず、彼女を見据える。彼女の目からは光が絶えており、明らかに本気の目であった。暗く淀んでいる執念を感じさせる目つきは、大の大人でも震え上がるだろう程の凄みを感じさせる。
冷静になるべく、咳払いを1つ。ほんの少しだけ落ち着く余裕ができたので、感じている言葉をそのまま吐き出した。
「確かに、
「…そんなこと、とっくに知ってるわよ」
「でもな、もう吹っ切れちまったんだよ。あの頃みたいに、あいつのことばっか考えてるわけじゃない」
「―――嘘だッ!!」
「本当だッ!!」
「じゃあ、なんで…!」
彼女の悲痛な表情に、こちらの顔まで歪んで行くのがわかった。そんな顔をして欲しいわけじゃないのだが、俺の言葉選びが悪かったのだろうか。しかし言ってしまったものは仕方がない。
―――こうなりゃヤケだ、思ってること全部ぶちまけてやるっ!
「悲しいけどな、こちとら忙しくてそれどころじゃないの!ナカジマのことは、
「な…なによ、それ…!」
「むしろ日々の癒しがないからな、只今絶賛彼女募集中だァ!あーあ、彼女欲しいーッ!」
「だったら、あたしがなってやるわよ!それで文句ないでしょ!?」
「いいのかよ!ご存知の通り、俺って奴ぁメチャクチャいい加減だぜ!?デリカシーもないしな!」
「構うもんですか!むしろあんたがいいの!あんたじゃなきゃダメなの!!」
「よしわかった!それじゃ、これからよろしくなぁ!とりあえず一旦退いてくれ!このまんまじゃ動けん!」
「イヤよ。―――あんたがもう逃げられないように、ここで犯すわ」
「何言ってんだお前!?」
「大丈夫よ。―――痛くしないから」
「ま…待て!こういうのはキチンと段階を踏んでから…うおおおっ!?」
―――只今電波が乱れております。復旧するまで、今しばらくお待ちください。―――
栗の花のような匂いと、酸っぱい密のような香りが、部屋に漂う。前者はともかく、後者の匂いを嗅ぐ機会は縁遠いと思っていたのだが、まさかこんな形で体験することになるとは…。
多少は冷えた頭をフル動員して、彼女へと問いかける。こんなことをする仲になった以上、どうしても確かめたいことがあったから。
「…なぁ、ランスター。ホントに俺なんかで良かったのかよ。お前なら、もっと良い男を捕まえられたんじゃないのか?」
「ううん、あんたじゃなきゃダメ…ダメなのよ。…何度も言わせるんじゃないわよ、このバカ…」
「…そっか、悪かったな。
「―――ッ!あんたは…!本当に…!もう…!!」
「お、おい…悪かったって。機嫌直せよ」
「―――それなら今日一日、キッチリあたしに付き合うこと。それで許したげる」
「わかったよ。有休使う連絡入れとかねーとな」
昨日はとんでもない一日だった。でも、気心知れた別嬪さんとお付き合いすることになったんだ。プラスになったと信じたい。怒らせたら怖いけど、俺も気を付けられる所は、しっかり気を付けていけばいいわけだし。
局への連絡を終え、彼女の待つリビングの扉を開ける。今日一日はお前のモンだぜ、
「で、どうする?どっかに出かけるのか?」
「そうね…まずはあんたの実家にご挨拶に行って、婚姻届を出して…そうだ、式場の予約もしておきたいわね」
「お…おう。なんかメチャクチャ計画的だな…」
「当然じゃない。あんたが責任を放りだすような男じゃないのはわかってるけど、逃げ道は塞いでおかないと。ね?」
と、とんでもなく周到な女だ…。まぁその分、俺のことも考えてくれてるみたいだし、別にいいか。これからの日々が少しでも楽しく、穏やかになることを祈りながら、俺は瞳を閉じた。
―――決して彼女が怖いから現実逃避をしたわけじゃないぞ、多分。
その晩、用事を済ませた俺達は、再び一つになっていた。
こ…これは明日も休ませてもらうコースだ…。ガクッ。
欲しい気持ちが成長しすぎて
愛することを忘れて
万能の君の幻を
僕の中に作ってた
いらない何も 捨ててしまおう
君を探し彷徨う MY SOUL
STOP THE TIME, SHOUT IT OUT
がまんできない 僕を全部あげよう