今日もブラックマーケットは平和です。 作:ドカキモス
本日からモモフレンズとのコラボ開催!
コラボ商品一つにつきコラボステッカー(全8種)をプレゼント!
「ということでお呼びしました。」
「そういうことでお呼ばれされましたか。」
昨晩、ヒフミからトリニティ付近にあるカフェがモモフレンズとコラボするとのことで、一緒に行きませんか!!!と連絡が来た。
どうやら貰えるグッズがランダムで渡されるらしく、食事代は出すのでステッカーだけ私に……!ということで声をかけたらしい。
気持ち的には全然奢らなくても……って感じではあるんだけどね。私はヒフミと遊べるだけ嬉しいし。ただまぁ、貰えるものは貰っとくかーのスタンスで人生過ごしてるし、今日は有難くご馳走になろう。モモフレンズとコラボしてる場所とか、もしかしたらブラックマーケットよりも危険な場所かもしれないしね。そういう意味でもね。
「そういえば前手に入れたあの頬の赤いペロロのお人形。あの日から当分は持ち歩きます!って抱えながら登校する写真まで送ってきてたけど、今日は留守番してるんだね。」
ヒフミとの連絡は定期的に続いてはいるが、今日みたくどこか二人で出かけるのはあの日以来だったので少し気になった。こいつならやりかねないというか普通にやってたので、てっきり今日くらいまでは続いているものだとばかり思っていたから。
「あ、あー……それはですね……。」
「ルウさんに画像を送った所までは覚えているんですけど、何故かそこからの記憶がなく……。というか、どうやら私休み時間中にいつの間にか倒れてたみたいで……」
「え!? 大丈夫だったの!?」
「は、はい。あの後確認しましたが、身体の方は何も異常がなかったので……。なので原因に関しては私の中であのペロロ様に興奮しすぎて血圧が暴走を起こしたと結論づけていまして、それで今は自室の方に……。」
「えぇ……」
普通に心配だが結論がイカれているので大丈夫ではありそうだ。ヒフミならやりかねないというダメな信頼が成り立ってしまっている。
「と、とりあえず入ろっか。また倒れそうになったら言ってね。」
「すいません……ありがとうございます……」
ヒフミのペロロキャパシティなんて概念は理解出来る気しないけど、意識を失ってしまう可能性があるのなら気をつけるに越したことはないよね。理由はあれだけど心配にはなるし、友達は大事にしたいし。
◇
「いらっしゃいませー!」
「二名様で宜しかったですか?」
正面にOPENの看板が掛けられている如何にもな木製の扉を開け店内に入ると、金属製のベルがなる音と共に黒髪ロングのメイド服を着た清楚そうな店員さんがこちらを出迎えてくれた。
雰囲気はレトロチックな喫茶店という感じで、あまり大々的にコラボを推している訳ではなさそうだった。モモフレンズと関係があるからと須らく警戒するのは少し視野が狭かったかもしれない。反省だ。
「それではメニューの方ですね。こちら、既にお客様の背後を取っております。」
「はい?」
「あぁいえ、隙だらけだったもので……笑」
警戒を怠るべきではなかった。反省である。
何だこの店員は、第一印象が良ければ何してもいい訳じゃないぞ。だったらもう最初からふざけ倒してくれよ。一人BOOKOFFとかしろよ。
「ではこのペロロ様のふわふわパンケーキを1つ」
「ふわパンキがおひとつですね!」
そんでヒフミは一ミリも動じたりしないのね!凄いねほんと!よくこの店員ガン無視で注文できたね!
「じゃ、じゃあ私はこのウェーブキャットのクソ長スパゲッティ……?何この商品名……」
「長ゲッティがおひとつですね!」
さっきから略し方の癖がすごいんだよなぁ!
別に伝わるけど稀に齟齬が生じそうなまとめ方しててずっと気になるんだけど!
「その他に遺言等ございますか?」
ご注文を聞けよ!RPGのボスかよ!あんま中盤でこのセリフ吐くやついないって!てかそもそも喫茶店でこのセリフ吐くやつがいないって!!!
「ご注文はないですね」
「そうですよね……私って四天王最弱らしいですから、負ける気なんて起きませんよね……」
本人に聞こえるところでその陰口言ってやるなよ!気にしちゃってんじゃん!死んでから言うんだよそういうのは!……いやそもそも四天王ってなんだよ!!!
ふと我に返り、一度冷静になる。
あ、危ない、この店員のペースに呑まれるところだった。もうこれに構ってる時間が勿体ない、さっさと話を進めてお目当てのものを手に入れよう。
「あの、注文はもう大丈夫なので……出来れば早めに戻って欲しいというか……」
「!分かりました……」
ああ、ようやくご飯にありつけそ「ではお客様、奥の部屋へどうぞ……」
なんか隠された合言葉たまたま引いちゃったっぽいなぁ!!!ここのカフェそういうとこだったの!?!?
いやでもちょっと急かしただけだよね!?何が合言葉になってんのさ!!!
「その急かすという行為自体が条件でありまして……」
割とするだろ誰でも!!!特にお前相手なら!!!てかナチュラルに心読んでくんな気持ち悪い!!!予測できるくらい色んなやつにやってんのかこいつ!!!
「その、私たちコラボ商品目当てで来てるのでそういう意図は特に……」
「あ別に奥の部屋でもお食事は可能ですよ?」
「ぁそうなんだ。ならいっか。」
なぁんだお食事は可能なのか!じゃあ断る理由もないか!そういうことならさっさと向かっちゃおう!
流れるままに私たちは店員さんの案内に従い、隠された空間へと足を運んでいった。
「わぁ……!!」
「お、おぉ……凄……。辺り一面グッズだらけじゃん……」
そうして連れてこられた場所は先程の古風なカフェの雰囲気とはうってかわり、見渡す限りにモモフレンズに関連した何かが敷き詰められていて、さながらテーマパークのようだった。
「注文の段階で急かすようなお客様はそれほどまでにモモフレンズが好きなのだと、こうしてこの部屋にお呼びしてるんです!」
「そこそこ嫌な条件だけどまぁいいや」
まさかここに呼ぶためにああいうことしたのかな。どういうマニュアルが配布されてるのか意味分かんないけど。
「す、凄いですよルウさん!!壁紙も全部モモフレンズで……あっこんな所にペロロ様が!!」
「おお!お客さま目敏いですねぇ。そちら当店のどこかに潜んでいる隠れペロロというもので、中々気づける方が少ないんですよ。」
「あはは、ペロロ様のことならこれくらい簡単です!あ、右の壁端と照明の裏、あと扉の装飾とメニュー表の3ページにある商品説明のところにも居ますね。これで全部ですか?」
「えっ、あっはい……これで全てです……凄いですね……怖……」
気持ちは分かるけど声に出てるって。探す素振りもなかったもんね、私もビビってるもん。だってここに来てからメニュー表なんて開いてないんだから。急に3ページ目見だしたかと思ったら"居る"んだもん。ここまで来ると超能力レベルだって。
「お料理楽しみですね!ルウさん!」
……まぁ、それくらい楽しんでる?ってことなのかな。
ここに来てからずっときゃぴきゃぴしているヒフミを見れて私もとっても楽しいし、こういうのもたまにはいいものだね。
それからテンション高めのヒフミと数十分ほどお話していると、私たちが注文したであろう商品たちを先程の店員さんが運んできてくれた。
「こちらパンケーキとスパゲッティになります!」
「わー!!!ありがとうございます!!!」
普通に言えるんじゃんというツッコミはさておき、早速目の前のテーブルに置かれた商品を眺めてみる。
ヒフミが頼んだパンケーキには白いクリームソースのようなものが本体が見えなくなるほどかけられており、てっぺんにはペロロの写真と共に黄色いバターとミントが添えられた、とても写真映えしそうで美味しそうな料理だった。
変わって私が頼んだスパゲッティは切れ目が一切なく全てが繋がった1本だけの麺とウェーブキャットの写真。コンセプトは理解できるが、なんかこう、なんか違くない?ひもQの意志を継いだみたいのをコラボカフェで出されてもすぎるって。いや再現してるのは分かるんだけどさ。クソ長がすぎるって。
とりあえず目の前の長ゲッティとパンケーキを激写しまくっているヒフミを一枚ずつ写真に収め、早速口に運ぶことにした。
「んっ、味は美味し……いや長いな。酸欠なるわこれ。」
普通のミートスパゲティという感じで味は良かった。ついで感覚で筋トレさせられること以外は。いやまぁ噛み切ればいいだけなんだけどさ。なんか負けた気にないやこれ無理だわ。よくよく考えたら丸呑み以外食い切る方法ないわ。仕方なし身体引きちぎるか……。
私がウェーブキャットを噛み切るか葛藤している間にヒフミがパンケーキに手をつけ始めていた。ナイフで切り分けた所にまたふんだんにかけられたソースが隙間を埋めるように垂れていって……すっごい美味しそうだな……。
「……ルウさんも食べてみますか?」
「えっあっ!?なにゆえ!?」
「すっごく視線感じたので……あはは……」
無意識に凝視していたのか、気を使われてしまった。はちゃめちゃに恥ずかしい……。けど明らかに美味しそうなパンケーキも悪いよね……私悪くない……だから……。
「じゃ、じゃあ一口だけ……」
「分かりました!」
気になっていたのは事実だし、こうなったからには頂いてしまおう。このスパゲッティ、やけに量が多いし飽きを感じさせないためにもね。
「ん、そういや取り皿とか……」
「はい!ルウさんどうぞ!すっごく美味しいですよ!」
私の発言をかき消すように、ヒフミはそういって一切れのパンケーキが刺さったフォークを面前に……。
「ルウさん?どうしましたか?」
「い、いやっ……その……なんでも…………はむっ。」
「ね、美味しいですよね!」
美味しい……美味しいはずだ。あ、あ〜ん程度で味が分からなくなるとかないし……なんかこう生地がパンケーキって感じで多分美味しいと思うし……。
…………あーもう、なんでこの子はいきなりこう……!今どきのお嬢様はこういうのに恥じらいはないんですかね!全く……。
そう思いながらヒフミの方に目をやると、いつもと変わらない表情でパンケーキを食べ進めており、なんだか私だけ恥ずかしがっていて悔しいなぁ……とじっと見つめてみた。
「……///」
……なんだか目が合わない気がするけど、気にせず食べ進めよう。
◇
「今日はありがとうございました!」
「いやいや、こっちこそ奢ってもらったし大丈夫だよ。」
あの後、私は気合いであのクソ長スパゲッティを啜りきり、なんとか退店できた。昔海で溺れた時のことを思い出したね、あれは……。
「お目当てのペロロ様ステッカーも自引き出来ましたし、本当良かったです!」
見たことないくらいの集中した表情で袋を開ける時のヒフミにはびっくりしたなぁ。オペしてるのかってくらい慎重に割いてたもん。なんならペロロが出た時の感情、喜びより安堵だったし。……中身分かってたのかな。ヒフミなら有り得る……のかな……。
「!ごめんなさいルウさん!私この後に用事がありまして、すぐ行かないと……!」
「ん、りょーかい。私は大丈夫だから気をつけてね。」
「ありがとうございます!また連絡しますねー!」
そうして律儀に手を振りながら走っていくヒフミに、私は微笑みながら手を振り返していた。
「……さてと」
「また戻ってパトロールにでも行くかぁ〜」
結局なにかしていないと落ち着かない性分は相変わらずで、ただ振り切れず惰性で続けている習慣だけを支えに、私はまた生活にのめり込む準備をしていた。
……その時だった。
「もしかして……ルウ……ですか?」
「んえ?一体誰…………え?」
そこには腰下よりも長い綺麗な黒髪を携え、誰もが見上げてしまうくらいに高い身長を持った…………赤いラインの入った、黒のセーラー服と手袋を着用している生徒がそこには居た。
……多分、2年くらいは会ってなかったと思う。こんなに身長は高くなかったはずだし、もっと幼い顔立ちだった気もする。昔の印象とは全くの別人で、それでも私が分からないわけはなくて。
それほどまでに彼女……羽川ハスミという人物は私の人生に深く関わっていて。
……だからこそ私は。
「!待ってください!私、まだあの時のこと…………」
風を切る音が彼女の声をかき消していく。本当はもっともっと聞きたかったけど。それでも、仕方ないとは思う。
私がまたあの子の人生に関わる権利なんてないから。
「……制服、変わってなかったな。」
「……まだ続けてたんだ。」
ああ、それでも。
「元気そうで良かった……」
これくらい思うのは、元同期として許してほしいな……。