百万回超生きたねこ   作:百万回死んだねこ

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いとおかし

「よろづ、よろづ〜!」

 

「うん、何が何だかまだよくわかってないんだけど」

 

 

 

 分身だと思ってるヤチヨがどこかに行ってしまったと思っていたら、彼女が現れて。

 瞬く間にボクを捕まえてしまった。

 えっと。

 

 

 

「まず、その肩に乗せてるのは」

 

「ボクの名前はFUSHI(ふし)! ヤチヨがボクを作ったんだ!」

 

「……そう、かい」

 

 

 

 似ている。

 ボクの古い友人の、あの日光っていたウミウシに。

 そしてそれを作ったという彼女は、もしかして。

 

 

 

「かぐや?」

 

 

 

 それを聞いた彼女の表情を見るに、この考えは間違ってはいないらしくて。

 

 

 

「今は月見ヤチヨだよ、よろづ」

 

「……驚いたな、キミがこの空間を作っただなんて。それにその姿も」

 

「ふふ、やっちょはすっごく頑張ったのです!」

 

 

 

 やっちょって。

 こんなすごい空間もその身体も、そんな一言じゃ済まされないくらいには労力が必要だっただろう。

 

 

 

「ほんとに、すごく頑張ったんだね。ボク驚いたよ」

 

「それは私もだよ? まさかよろずがあのよろづだったなんて……! 昔の私は、知らなかったなぁ」

 

「? ボクはずっとボクなんだけどね」

 

 

 

 よろづはよろづだと思うんだけど。

 だって。

 

 

 

「ボクに名前を付けたのはキミだろ、かぐ……ヤチヨ」

 

「そ、それはそうなんだけどねっ! その……当時は寂しくて……」

 

「……?」

 

 

 

 だめだ、本当に何も見えて来ない。

 この目の前の愉快な彼女は間違いなくボクの古い方の友人なかぐやで、今はヤチヨと名乗っているとか。

 

 

 

「まあ、そこは良いかな。それより聞きたいことがあるんだけど」

 

「……かぐやのこと?」

 

「そうだ」

 

 

 

 キミがよく話していた、人間だったころという体の話は今ボクが現実世界で見ている現状によく似ている。

 そして、同じ名前をしたかぐやという不可思議な生い立ちを持つ彼女。

 

 

 

「キミ、月見ヤチヨとあのかぐやは、同一人物なのかい?」

 

「……」

 

「どういうカラクリなのかはボクには全然わからないけれど、そうなんじゃないかと思っているよ」

 

「うん」

 

「!」

 

「そう、やっちょは彩葉とよろずに育ててもらったかぐや……の、成れの果て」

 

「成れの果て?」

 

「ふふ、だってそうでしょう? 私は、8000年の時をよろづと一緒に過ごして来たんだから」

 

「……」

 

 

 

 そこがわからないんだけど。

 

 

 

「……まあ、今言わないってことは言う気がないんだろうね、キミは」

 

「ごめんね、よろづ」

 

「何で謝るのさ、人間には言えない事情があって然るべきだからね、気にする必要はないよ」

 

 

 

 ボクの疑問なんかよりキミたちの方がずっと大事だからね、解消しないことの方がいいというのならばそれでいい。

 

 

 

「よろづ……!」

 

「ん」

 

 

 

 一通り話し終えたと見たのか、ヤチヨはボクを更に強く抱き締める。

 随分と今日は人肌が恋しいみたいだけれど。

 

 

 

「8年ぶりなんだよ? それにこうやって触れられるのは……っ」

 

「……そうか、なら、今はヤチヨのボーナスタイムだね」

 

「えへへ、よろづは相変わらずあったかいなぁ」

 

「この空間、温度なんかも再現できてるんだね」

 

「うん、ずっと側で感じて来たから。……味とかはまだ無理だったんだけど」

 

 

 

 味、味覚かぁ。

 うーん、確かにその辺りは難しい話なのかもしれない、だってキミもボクも人間の料理を楽しめるような状況じゃなかったからね、当時。

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