百万回超生きたねこ 作:百万回死んだねこ
「それでね! イロハってば 」
「にゃ、そうなのかい」
「うん! ……はやく、会いたいなぁ」
「……」
そう語っていた、まだまだ世の中の荒み模様を知らない彼女は。
当時のボクにはとても、眩しくて、とてもじゃないが直視なんてしていられなくて。
……すごく、すごくもどかしく思っていたことを、覚えているよ。
「んー……大丈夫かい、彩葉」
「え?」
「最近働きっぱなしじゃないか、だから無理してるだろうと思ってね」
学校では受験という奴が控えてたり、KASSENというゲームでキミの友人たちと忙しくしてたり、それこそかぐやのプロデューサー業だったり。
随分と予定が詰まっているように見えるけれど。
「ん……大丈夫、まだやれる」
「そんな言葉が出る時点で相当参ってるよねキミ」
「そんなことないけど」
「いやいや、それくらいわかるからね。誤魔化せるとは思わないように」
いつぞや誰かに言われた気がする言葉を彩葉に送る。
言われてないかも? まあそれはどうでもよくてね。
「……ごめん、ちょっと抱きしめさせて」
「もちろんだとも、というかボクその為にキミの飼い猫やってるからね」
久々に猫の姿へと戻る。
かぐやの前で戻るに戻れなくなったからいつも人間の姿を被ってるだけだからね、うん。
いつかちゃんと説明できたらいいんだけど、どうにもタイミングが合わない。
「ん、ふわふわ……あったかい」
「毛並みには自信があるし、体温はかぐやのお墨付きさ」
「……今はかぐやたちの話、しないで」
「え、あ、うん、わかった」
「今はとにかく、よろずだけを感じてたいから」
うわぁ、相当参ってるじゃんご主人。
言葉に出さないだけでかぐや大好きな彩葉がこういうってやばいね、近いうちに倒れてるんじゃないこの様子だと。
「……」
「ん……あれ、寝ちゃったのかい?」
「ん……」
早いな、抱き締めて2分も経ってないよ。
というかこのまま寝るんだね。
「流石に枕にされた経験は……あったかも」
ヤチヨにとっては常に枕みたいなものだったのかな、あの時は。
うーん、しかしこの体勢だとご主人サマの体を傷める可能性があるんだけどなぁ。
かと言って起こすのも忍びないし。
八方塞がりって奴だねこれは、抜け出そうにもすごい力で捕まってるから全然動けない、というか動いたらちょっぴり痛い。
「よろず……」
「……にゃあ」
苦しそうだ。
ヤチヨにも言えることだが、どうせならいい夢を見て欲しい、だが何せ彼女たちの苦しみをボクは理解できないからねぇ。
どういう風に立ち回ればいいものか。
「生き物ってのは不便だ、苦しくて嫌な思い出ばかり覚えているんだからさ」
ボクくらいになれば、並大抵のことは細事として受け止められるけど、普通はそうもいかない、だからタチが悪い。