百万回超生きたねこ   作:百万回死んだねこ

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黒き鬼

「ねぇよろづ! ヤッチョの猫になって?」

 

「いきなりとんでもないこと言い始めたね、ヤチヨ」

 

 

 

 ボクがログインするなり目の前に現れて、自分の猫になって欲しいと言われるこの状況。

 ……うん、訳がわからないよ。

 

 

 

「というかここはどこなのかな、ボクが最後にログアウトした場所と違う気がするんだけど」

 

「私の部屋だよ、ここならどんな時でもよろづと2人きりだからねっ!」

 

「わお、すごいサプライズだ」

 

 

 

 大丈夫? ボク普通なら入れない場所に来てない?

 彩葉に見つかったらまた修羅に入りそうだね、もしかしたら怨念飛ばせるようになったり?

 むかーし怨霊になって大暴れした人間がいたのは知ってるから、可能性を否定しきれないんだよね。

 

 

 

「それで猫になってってのは?」

 

「お久しぶりの猫よろづを、ヤッチョは堪能したいのです……!」

 

「なるほど」

 

 

 

 事情はわかったけどね。

 ボクってばツクヨミだとこの姿にしかなれないと思うんだけど。

 

 

 

「そこは大丈夫! よろづの力があればそれくらいできるよっ!」

 

「ボクの力というと、化けるおまじないのことかい?」

 

「そう、あの力っていわゆるデータの改竄に近い事象だから、この世界でも使えると思う」

 

「ほへぇ」

 

 

 

 ボクの力ながら初めて知ったよそんなこと。

 ……ん?

 

 

 

「それボクがツクヨミを不当にいじってることになるけどいいのかい」

 

「よろづになら何されてもいいよ?」

 

「ボクがよくないねそれは」

 

 

 

 製作者公認の不正ってなんだろうか……裏の繋がり?

 彩葉が聞いたら荒御魂まっしぐらだね間違いない。

 

 

 

「さあさあ、思い切ってやっちゃってよろづ!」

 

「キミがいいなら、ボクも躊躇うつもりはないよ、うん」

 

 

 

 いつもの感覚でいいなら、こうやって……おお。

 

 

 

「ほんとにできちゃった」

 

「っ〜! よろづ〜!」

 

「わ」

 

 

 

 猫の姿になった瞬間すっと持ち上げられ、ヤチヨの腕の中に収まる形に。

 判断が早いよヤチヨ。

 

 

 

「……懐かしいね、その姿」

 

「まあね、初めて化けるのならこれがいいと思ってさ」

 

 

 

 ボクが化けたのはいつもの姿ではなく、記憶に残る中で最も古い、ヤチヨと……かぐやと出会った時の、猫のボク。

 どうせ化けるならこれが良いと、何となく感じたのさ。

 

 

 

「人の姿から猫の姿に化けるってのは初めての体験だったよ」

 

「そっか、よろづっていつも猫から何かに化けるもんね」

 

「うん……というか、化け猫だからそれが普通なんだよね、うん」

 

 

 

 化け猫が猫に化けるのも中々ないけれど、元の姿が人間な化け猫ってもう種族が矛盾してるからね。

 化け人間だよそれはもう。

 

 

 

「まあ、そのまま暮らそうと思えば人間として暮らすこともできなくはないと思うよ」

 

「……ほんと?」

 

「今更種族にこだわる理由もないし、一度化けてしまえば死んでもそのままだからねボク」

 

 

 

 そう、作り話に出てくる化け狸や化け狐は、葉っぱを媒介にしてるのも面白いけれど、それ以上に死んだり何かの拍子で元の姿に戻ってしまうというのもまた面白いんだよね。

 

 

 何故葉っぱなのだろうか、驚いたり死んでしまったりしたら解けるのはどういう理屈なのだろうか。

 想像上の彼らとボクを一緒にする方が悪いんだろうけどね、そういう想像は尽きないものさ。

 

 

 

「……好き」

 

「んにゃ?」

 

「ふふ、よろづがよろずだってわかる前も、後も。ずぅっと好きだよ、よろづ」

 

「ボクはずっとボクなんだけど……まあありがとね、()()()

 

 

 


 

 

 

「ふふ、この前は帝様についてましてよ〜?」

 

「……にゃー」

 

「……」

 

「……」

 

 

 

 ねえヤチヨ、ボクってキミに恨まれるようなことしたかな。

 なんで見せつけるかのように猫のボクを抱えたままこんな大衆の前に出てきてるんだい?

 

 

 ……ふしゃーっ!

 

 

 

「ふふ、かわいいなぁ」

 

「にゃー……」

 

 

 

 だめだ、ボクじゃヤチヨを止められる気がしない。

 ついでと言わんばかりにFUSHIもくっ付いてるし。

 機を見てどこかに飛び出すこともできないんだよね、何これ。

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