百万回超生きたねこ   作:百万回死んだねこ

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西へ東へどんぶらこ〜

「あ、お金」

 

「ん、プレゼントだってボク言ったよね?」

 

「そっちじゃなくてオムツとかの方」

 

「あー……じゃあそれはボクからご主人サマへの家賃だとでも思ってね、面倒だから」

 

 

 

 思い出しましたと言わんばかりにじっとこちらを見つめる彩葉。

 いやはやご主人サマは几帳面だ、そんなもの忘れていたで通せばいいのに。

 

 

 

「でも」

 

「でもへちまもないよ、彩葉。実際ボクは居候みたいなものだから」

 

 

 

 学業にバイト、推し活と家賃やらで時間やお金に苦心している彩葉にこれ以上苦しい思いをさせるのを、今のボクは許容できそうにない。

 

 

 

「それとも、キミの飼い猫(かぞく)の誠意は受け取ってもらえないのかい?」

 

「ぅ……ばかっ」

 

「にゃー、ボクはバカだからにゃー?」

 

 

 

 ()()()()()()()猫を演じてみたが……うん、効果はそこそこと言ったところかな。

 

 

 

「ぷっ……もうっ、いつもはそんなことしないくせに。ヨロズのばか」

 

「化け猫だって偶にはにゃははと笑いたいものだよ? にゃははーってね」

 

「っ〜! もうっ!」

 

 

 

 おや、にゃははというのは中々効果があるみたいだ。

 じゃあこれからも偶に使うことにしよう、そうしよう。

 

 

 

「よろず」

 

「?」

 

 

 

 いつもより真面目なイントネーションで彩葉から呼びかけられた。

 なんだろうか。

 

 

 

「ありがとう」

 

「……どういたしまして、ご主人様」

 

 

 

 そうやってお礼を言うご主人サマの表情が、ボクにはとても眩しく見えるのだ。

 それを見られるだけでもお釣りが来るというものだし。

 ……うん、やっぱり彩葉に出会えて良かった。

 

 

 

「飼い猫として誇り高い主に出会えて光栄だよ」

 

「私の飼い猫だもん、後悔はさせないよ」

 

「にゃは……彩葉たちは、面白いねぇ」

 

 

 

 ……そう言えば何か忘れていないかいボクたち。

 

 

 

「あ、やかん」

 

「……!? やばっ」

 

 

 

 凄まじい蒸発音を鳴らしているやかんを、彩葉が急いで止めに行った。

 忘れてたよね、完全に。

 

 

 

「あちっ」

 

「火傷しないでおくれよ、ご主人サマ」

 

「……しないよ、これ以上飼い猫に心配かけてたまるもんですか」

 

 

 


 

 

 

「あぅあ……!」

 

「いないなーい……ばぁ!」

 

「きゃははっ!」

 

 

 

 おお、笑ったね。

 ふむふむ、小さい子がどうしてこんなもので笑うのか、というのは気になるものの。

 この子が笑顔だとボクもちょっぴり嬉しい、かもしれない。

 

 

 

「赤子というのは、直面すると不思議な感覚にされる生き物なんだね、初めてだよ」

 

「まあ、否定はしないけど。……なんか複雑」

 

「?」

 

 

 

 ああ、そうか。

 彩葉が抱き上げていた時に泣き出してしまって、その後ボクがあやしたらすぐに泣き止んだからね、この子。

 鳥類は初めて見た生き物を親と認識するらしいけれど、この子はそうではないのかな?

 

 

 

「まあボク、これでも猫だから。体温が人より高めなのもあるかもね」

 

「……確かにヨロズはあったかくて気持ちいいかも……」

 

「お褒めに預かり光栄だ」

 

 

 

 無論、彼女にもお墨付きをいただく抱き心地だとも。

 まあウミウシの感想だけども、彼女からしたら地上動物皆暖房な気がしなくもないんだよね。

 

 

 

「うぅ……」

 

「おや、寝てしまったみたいだね」

 

「あったかくて包容力ある猫に抱かれてるんだもんね、そりゃあ眠たくもなるよ」

 

「彩葉にもしてあげようか?」

 

「んなっ」

 

 

 

 ボクとしてはする相手が一人だろうが二人だろうが変わらないからね。

 むしろご主人サマを休ませる為にもこっちからしたいくらいだ。

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