百万回超生きたねこ 作:百万回死んだねこ
「よろず、何で」
「んー?」
何だかすごく焦っているみたいだ。
やっちゃったかなボク。
「まあとりあえず、こっち来て座りなよ彩葉。すごく綺麗だよ」
「とりあえずって……!」
「まあまあ」
こっちこっち、と手招きしてボクの隣へと誘う。
そこからでも綺麗だろうけど、せっかくならおんなじ景色、ここからの絶景を彩葉と共有したいからね。
「……もう」
「にゃはは、後悔はさせないよ?」
そこまで言うと、困ったような表情でこちらへと来てくれる。
優しいよねぇ彩葉。
「ほら」
「ん……」
「今夜は、月がすごく綺麗だろう?」
並木たちの合間、そのちょうど真ん中にまんまるのお月様が見えるこのベンチ。
これこそベストポジションというべき場所じゃないかな?
「……」
「お気に召したようで何よりだ」
語ってこそくれないけど、表情から察するに綺麗だと思ってくれてるみたいでボクも嬉しい。
「自然ってのは、たまーに試練を与えてくるけれど。こういうことがあるから嫌いになれないよねぇ」
「……」
「にゃ、そう視線で咎めないでおくれよ彩葉。ボク何かしたかい?」
彩葉に嫌われるようなことしてしまったかな、嫌われてしまったのなら側にいても困るだろうし去るんだけど。
「何しようと、してたの」
「?」
「惚けないでよ、私たちがヤチヨカップに勝ってすぐログアウトしたって芦花たちから聞いて、嫌な予感がしたから戻ってみたら、家にも居ないし」
「ああ、それは」
ツクヨミで喜んでる2人の側でお祝いの品を考えるより、ささっと行ってこっそり用意しておく方がいいかと思ったんだけど。
サプライズってこうやるんだろう?
「それでこんなとこに居て……!」
「悩みに悩んでこのざまさ、情けない限りだよ」
「ばかっ」
……?
あれ、なんか彩葉と考えがずれてる気がしないでもない。
うーん。
「とにかく、見つかったのなら仕方ない。かぐやはどうしたのさ」
「家に居る、こんな中かぐやを1人で出歩かせるわけにもいかないから」
「む」
確かにこんな月が見えるくらいには遅いんだけど。
ボクってばだいぶ歩き回ってたみたいだねぇ。
「よろず」
「ん、何だい彩葉」
「逃がさないからね」
「?」
はて。
逃がさないってどういう……?
「勝手に私の
「猫は気まぐれなものだけど」
「化け猫だし、私の飼い猫だし……今は、人の身体してるし」
「そうなんだけどね、うん」
なんだか真綿でじわじわ絞められてる気分だ。
あれ嫌だよねぇ、柔らかいからって油断してると下手な死に方よりむごい苦しみを味わうから。
「ねぇ」
「……今度は何かな」
「人間同士で、月が綺麗だなんて言うことの意味、知ってるの?」
「え?」
いやボクそういうのに疎いって自負はあるんだよね。
というかこれに関しては人間たちが工夫しすぎっていうか、言葉に重きを置きすぎてると思うんだけどな。
「私は、死んでもいいとさえ思えるくらいには綺麗に映ったよ。このままずっと、時が止まればいいって」
「はえ……」
急に何言い出すんだい物騒な。
キミたちの命は一度きりなんだから大切にしないと。
「よろずは私の飼い猫なんだから」
「うん」
「私がいいって言うまで、私の側にいてよ……!」