百万回超生きたねこ 作:百万回死んだねこ
始まった彼女達のライブは、ほんとに綺麗な景色だ。これに比べれば、煌びやかな寝殿造りの建物や財宝なんてものが霞んで見えるほどに。
「……ああ」
全く、すごいよねキミたちは。
こんな人でなしの化け猫にすら「感動」を覚えさせることができるキミたち三人は本当にすごい。讃えられるべき偉業じゃないかな。
「ずっと眺めていたいくらいだなぁ」
彼女たちがこうしていられるのなら、ああやって楽しそうに笑っていられること、それがボクの八千年の猫生の意味になるだろうね。
古い知り合いの方のかぐや、ヤチヨがああやって心の底から楽しそうに、朗らかに笑う姿がこの上なく眩しい。現代のかぐやが苦しいことを知らずに笑っていられるこの世界が尊い。彩葉が普段の苦しみを忘れられている今この瞬間が永遠となって欲しい。
……まぁ、全てはボクがそう思うだけの妄想なのだけれどね。
「それでも」
「それでも今は楽しんでおくれ、ヤチヨ。キミの八千年の耐え難きは無駄じゃなかったんだから」
共感はしてやれないけれど、キミの涙を知っている。苦悩を知っている。
「意外と内面はナイーブなとこがあること、ヤチヨ経由で知っているんだよ、かぐや。だけど、今はそんな躊躇いは捨てていいんだ」
理屈はわからないけれど、キミなりの葛藤があることくらいは知っている。
「……ご主人」
彩葉。不器用で、すごいキミ。
「……直接キミに言わないと伝わらないのだろうけど。それをできるほどボクは恥じらいを知らないワケじゃないからね」
臆病なボクを許して欲しい。その分、かぐやとヤチヨから伝えてもらって欲しい。
「キミは頑張っているよ、ご主人。誰が認めなかろうが、ボクが絶対肯定してやる。何がなんでも証明してやるとも」
この景色は、キミ達三人の頑張りがあってこそだった、と。
「……?」
ふとステージとは別の、観客の方を見る。……なんの変哲もない。
ざわ、とボクの感覚が何かを伝えて来た気がするのだけど。
「……うーん」
現実世界なら気のせいじゃないと言い切れたんだけどな。八千年分の積み重ねがあるし。
この仮想現実というやつはどうにも感覚が鈍って仕方がない。曖昧だなぁ。
「いや、いる」
野生が感じた違和感を気のせいだと放置するほど呑気に生きることほど、愚かなことはない。
猫に化けて、ステージの端の見えない部分に降り立っておく。
「今この時に違和感を感じるということは、そいつらの目的はこのライブか、ヤチヨたちということ」
……ダメだな、今この舞台を台無しにされることを、今のボクは許容できそうにない。
言葉にするなら、そうだね。
「不愉快だ。下郎ども」
ライブが終盤に差し掛かるとともに、ざわりとした感覚はどんどんと大きくなっていく