百万回超生きたねこ 作:百万回死んだねこ
赤子という最大の嵐の一日目を乗り越えた次の日。
あの子はすくすくと育っていた。
「いやはや、寝る子は育つというのは本当だったみたいだね」
「にしても育ちすぎでしょ」
「んー?」
赤子を寝かしつけ彩葉を寝かしつけた後ボク自身も眠りについてしまったのだけど、どうやらその時に急成長を遂げてしまったらしくてね。
目が覚めたらこの子と目がばったりだったんだとも。
「普通のものさしで測りきれないとは思っていたけれど、このままなら平日になるころにはキミと対して変わらないくらいになるんじゃないかい?」
「その時はヨロズともおんなじだから、うん」
「おやおや」
確かに今のボクの身体は彩葉を軸に作っているんだけどね。
というより化けたままだったせいで元に戻るタイミングを逃した気がしなくもない、この子を育てるのであればこっちの方が都合はいいんだけどもね。
「ずっと一緒だよ、ヨロズ……?」
「にゃはは、言われずともお供するよ、ご主人サマ」
「いっしょー!」
むしろボクの方が捨てられてしまわないか不思議に思ってるくらいなんだけどね、化け猫だから。
こんな奇妙な存在をよく許容できたものだと感心しているよ、彩葉。
「そう?」
「……そうだとも、これでも昔はよく妖怪退治に巻き込まれたりしたからね、狙われこそすれそうやって全てを知って尚飼い猫としているのはキミが初めてさ」
友人としてはウミウシの彼女がいたね、彼女も自身を人間だと言っていたっけ。
真偽はわからないけれど、ボクの飼い主としての人間は彩葉が初めてだろう。
「ふふ、ならちょっぴり嬉しい、かも」
「喜んでもらえて何よりだ」
……などと。
大きくなった赤子を撫でつつも、のほほんと暮らせていた昨日までの日々は中々良いものだったよ、ご主人サマ。
「彩葉! よろず! 一緒に配信者やろうよ!」
「え、ボク?」
まさかまさか、あの赤子が飼い猫に配信をさせようとするに至るとは流石のボクも思わないよ。
しかも名前も面白くてね?
「
「えーっ!」
「えーじゃない」
「……」
かぐや、それはボクの友人と一緒の名前で。
この押しの強い感じも、思い出してみれば彼女そっくりな気がしなくもない。
それはつまり、彼女があの赤子だったのかという疑問につながる。
「第一、スマコンがないからっ! というよりヨロズってスマコン使える……?」
「用意すればいいじゃん! やってみないとわかんないし!」
「へー……ってそれをどこから用意するって話だから!」
しかしそれならば納得が行くような、行かないようなボクもいる。
何せ昔から彼女は人間だったころという体の話が好きだった、かけがえのない、とても会いたい友達がいるとも。
それがご主人サマ、彩葉のことだったのではないか? と仮定すれば結構辻褄が合うのだ。
……所詮これは、獣の浅知恵なんだけどね。
記憶に穴があるから、これ以上考えることもままならないし。
「できるとは思うよ、試したことは流石にないけどね」
「ええ」
「じゃあお揃いだねよろずっ!」
「……ああ、そうだねかぐや」
とりあえず。
ご主人サマの貯金に手出しをさせないように立ち回ることが今のボクの役目、かな?