百万回超生きたねこ 作:百万回死んだねこ
「それじゃヨロズ、私学校に行ってくるからさ。かぐやのこと任せてもいい?」
「任されたとも」
連休というものが終わり、ご主人サマが学校へと旅立って行くいつもの光景が舞い戻ってきた。
あれだけ忙しいというのに、休むことを視野に入れないというのは彩葉の良いところで、悪いところだと思う。
「ねーねーよろず!」
「ん、どうしたんだいかぐや」
「ぎゅー!」
「おや」
人懐っこく触れ合いに飢えている、とでも言うべきなのか。
かぐやは彩葉やボクによくくっ付いてくる。
「んふふ、いい匂ーい……」
「自分の匂いはあまり気にしたことはないんだけど、そういうものかい?」
「うん! よろずはいい匂いだよ?」
「喜んでくれているのなら何よりさ」
このくっ付き具合も彼女を想起して……なんてことはなく。
彼女はウミウシだから、移動をするのならば必然的にボクの背中に乗った方が良かっただけに、必要以上に接触回数は多いんだよね。
つまり、今のボクにはここからじゃ判断はつかないってこと。
彼女を見つけ出せたのならそれが手っ取り早くていいんだけど、見つからないものを求めたってしょうがない。
「彩葉のとこ、行きたいなぁ……」
「にゃはは、ボクだけじゃあご不満かい?」
「そうじゃないけどぉ、彩葉も一緒がいいよー!」
「んー、気持ちはわからないでもないかな?」
親と一緒にいたいというのは子として当然の感情だろうから。
はたしてかぐやにとって彩葉が親だという認識になっているのかは知らないんだけどね、その場合ボクはペット枠か。
「でしょ! じゃあ一緒に……」
「だめ。彩葉のとこには行かないよ」
「ええぇー! なんで!? よろずも彩葉に会いたいでしょ!?」
「それとこれとは話が別だ、ボクは彩葉の意思を優先するよ」
猫は寂しがりだとも聞くけれど、ボクはそこまでじゃないし。
まあウミウシな彼女といた時期は非常に長かったし、慣れない感覚に襲われることは否定しないけどね。
「それに、今はかぐやがいるから。ボクは寂しくないよ?」
「よろず……えへへ」
うん、ちょろい。
基本的にかぐやは彼女を相手にする感覚で相手しても良さそうだ。
……長生きな分彼女の方がちょっと厄介な部分はあるし、もっと楽かも?
「でも、彩葉はどうなの?」
「え?」
「彩葉はよろずのこと大好きだよね」
「うーん?」
予想外の切り口で反撃されてしまった。
とはいえあれは好き嫌いというより、ストレスの解消が主な理由だと思うんだけど。
ご主人、傍目から見ても辛い生活送ってるからね。
「彩葉は大丈夫だよ。彼女はすごく強い人間だからね」
「でもよろずが寝てる時に彩葉、よろずのことすっごく大事そうに抱きしめてたよ?」
「え、そうなのかい?」
「うん、その後かぐやもくっ付いたんだけどね!」
「ああ、それであんな団子状態に」
朝起きた時びっくりしたよ、ボク潰されてたからね。
んーまあアニマルセラピーがよく効いてるってことなのかな、ボクが狙ってるのはその辺りの効き目だし。
「……ふふ、かぐや」
「?」
「それでも大丈夫だと、ボクは言えるよ。何せボクは……」
飼い猫だから、と言おうとして。
そう言えばボク、かぐやにボクが猫だって伝えてない気がする。
うーん。
「ボクは、彩葉の家族だからね。かぐやもそうだろう?」
「うん!」
「なら待ってあげよう。帰ってきた時彼女をめいいっぱいもてなしてあげるのもボクたちの役目だよ」
伝えるか、伝えないか。
まあ今度で良いかなとはぐらかして、その場を丸く収まった
なんてことは、全然なくて。
「どこ行っちゃったのかなかぐや」
ボクが簡単なおやつを作り始めたその一瞬の隙をついて、かぐやが外に出て行ってしまった。
化け猫最大の不覚だ、彩葉にちゃんと謝らないと。
「行き先はご主人のとこだろうけど」
今の時間帯ならご主人帰宅途中だよね、学校に向かったって多分見つからない。
先に出たかぐやがギリギリ、学校の前で彩葉を見つけたくらいの、微妙な時間。
さて、どうしたものだろうね。