百万回超生きたねこ   作:百万回死んだねこ

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静かなる夜に、月を眺める泥猫ありて

「じゃあ行くよ、2人とも」

 

「うん!」

 

「ああ」

 

 

 

 ボクとかぐやがコンタクト初心者ということもあり、かなり時間を取ってしまったけれど。

 無事こうやってログインをする段階にまで突入することができた。

 

 

 

「えへへ、2人ともあったかーい!」

 

「かぐやもあったかいよ?」

 

「にへへ〜」

 

 

 

 ログインするにあたり、ボクと彩葉がかぐやを挟み込む形で手を繋いでいる。

 ニッコニコだしかぐや、彩葉のことほんとに好きだねぇ。

 

 

 

「せーのっ!」

 

 

 


 

 

 

「……おや」

 

 

 

 掛け声を聞いたと思ったら、ボクの手からかぐやの手の感触が消えていた。

 ふむふむ、これがチュートリアルの空間というやつかな、すごい綺麗だけども。

 

 

 

「    太陽が沈んで、夜がやって来ます」

 

「ん」

 

 

 

 そう彼女が呟くと、黄昏れていた世界が一気に暗闇へと変化していく。

 いつの間にか目の前に現れていた彼女の名前は……月見(るなみ)、ヤチヨ。

 ご主人の推しの子、だったかな?

 

 

 

「どこかで会ったことあったりする? キミ」

 

「……」

 

 

 

 こうやって仮想の世界とは言え対面すると、形容し難い既視感に襲われる。

 ……何故、だろうか。

 

 

 

「仮想空間ツクヨミへようこそ! 管理人の月見ヤチヨでーす!」

 

「あ、うんよろしく」

 

 

 

 ……ああそっか、本物はここにいないよね流石に。

 彼女は分身できると彩葉が言っていた気がするし、ここにいるのは動作が決められた分身端末なのかな。

 

 

 

「さあ、出かける前に……と言いたいけれど、先にお名前を聞いても良いかな?」

 

「ああ」

 

 

 

 名前か、そう言えば名前はもうあるけど苗字とか必要なのかな。

 ……んー、面倒だしそのままでいいや。

 

 

 

「よ(・)ろ(・)づ(・)だよ」

 

「えぇっと、じゃあよ・ろ・ず……と」

 

「あ、違う違うそっちじゃなくて」

 

「?」

 

 

 

 もしや、と思いながらヤチヨが入力して表示された名前を見ていればやっぱり。

 ご主人やかぐやも間違えているし仕方ないんだけど。

 

 

 

「ボクの名前はよろづ、最後の部分はすに濁点じゃなくてつに濁点を付けるんだ」

 

「    えっ」

 

「よく間違われるし、現代の日本だとそっちが正しいみたいなんだけどね」

 

 

 

 毎回訂正するのもだったし、口言葉なら別にどっちでも伝わるからと今までは特に指摘はして来なかったんだけど。

 こういう記録として残すのならしっかりしておかないとね、ご主人に怒られるから。

 

 

 

「よ、ろづ……?」

 

「うん?」

 

「よろづ……す、じゃなくて、よろづなの?」

 

「え、うん。ボクの古い友人が名付けてくれた大切な名前さ」

 

「ぁ……」

 

 

 

 ……?

 あれ、めんどくさいとか思われちゃったかな。

 おそらく分身のヤチヨが動かなくなってしまった。

 

 

 

「そっか、そっかぁ……よろづは、ずっと側にいてくれたんだ……」

 

「?」

 

「えへへっ、ちょっと待っててね!」

 

「えっ」

 

 

 

 既視感のある笑みと共にどこかへと駆け出して行ってしまう。

 ……あの、ボク2人を待たせてるんだけど。

 

 

 

「って行っちゃった」

 

 

 

 ……。

 え、ボク置いてけぼり?

 出られないんだけど。

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