GOD EATER ~転生してもコミュ障は治りません~ 作:石井
―the third person's view―
E26荒神侵入から30分後、極東支部内は慌ただしく対処に追われていた。その中でも、竹田ヒバリは最も忙しく現状の改善に努めていた。
「ヒバリ、ゴッドイーター各員の状況は!?」
エレベーターでエントランスへ来た雨宮ツバキは、そのまま二階からエレベーターを降りることなく大声でヒバリに尋ねる。帰投したゴッドイーター達に問題の現場への出撃命令を出していたヒバリはすぐさま指先をキーボードに走らせ、画面に現在のゴッドイーターの出撃記録を呼び起こす。
「第一部隊、雨宮リンドウ、橘サクヤ、ソーマ・シックザールは任務を完了、直接E26へ移動中!第二部隊防衛班、大森タツミ、ブレンダン・バーデル、台場カノンはE26へ到着、取り残された住民の安全確保及び避難誘導!第三部隊、小川シュン、カレル・シュナイダー、ジーナ・ディキンソンはエイジス島防衛任務を一時中断、直接E26へ移動中!以上を除く全ゴッドイーターはE26の荒神掃討へ出撃中、及び活動中です!」
「第一部隊を荒神防壁崩壊現場へ送れ!これより整備班の人間を八名ほど修繕に向かわせる!整備班の人間を死守するように伝えろ!」
「了解いたしました!」
ヒバリの返事を最後まで聞き終わらぬ内にツバキはエレベーターへ戻り、扉の向こうへと消えていった。
ヒバリは第一部隊隊長、雨宮リンドウへと通信を繋ぐ。
「リンドウさん、今どちらにいらっしゃいますか?」
少しのタイムラグもなく、若々しい男の声がイヤホンから洩れる。
「俺たちなら丁度E26の上空に来たところだ。後60秒で地上に下りるぞ。」
「待ってください!ツバキさんより任務が更新されました!」
「なにぃ?」
「第一部隊にはこれより、荒神防壁破損現場にて整備班の方々の護衛をしていただきます!」
「はぁ……、まったく姉上は人使いが荒いなぁ……。」
リンドウの言う姉上とはツバキのことである。この二人は実の姉弟であり、数年前までは前線で互いの背中を預け合うシンクロ率を誇っていた。
「そんじゃ、パイロットに行き先変更伝えとくわ。」
「よろしくお願いいたします、お気をつけて!」
「あいよー。」
通信を切るなり、ヒバリは所在なさげに待っているゴッドイーターへの出撃命令に戻る。
「お待たせ致しました。これよりE26へ緊急出撃、荒神の掃討に参加していただきます。現在確認済みの荒神はオウガテイルが約120体、コンゴウが11体、ヴァジュラが6体です。荒神は荒神防壁破損部より侵入を続けているため、なおも増加する可能性がありますが、今は他の区画への被害の拡大を防ぐことを優先してください。以上です、御武運を!」
半ば急き立てるように残りのゴッドイーターを出撃ゲートへと追いやる。
「後は……。」
休むことなく、ヒバリは画面から出撃記録を消し、その下に表示されていた地図に注目する。真ん中には神原雪と藤木コウタを表す二つの点が、白く光りながら静止していた。
この地図に表示される点は腕輪より発信されるゴッドイーターのバイタルと位置情報を標しており、白なら生存、グレーなら瀕死、黒なら死亡を意味する。
二人の生存を把握できたヒバリはホッと胸を撫で下ろす。と同時に、すぐそばに一際大きな赤い点があることに気づく。
赤い点は荒神の存在を表し、強力なものほど、大きな点で表示される。現場で確認済みの荒神はオウガテイル、コンゴウ、ヴァジュラの三種。その中でも最も大きな点で表示されるものとなれば一種のみ。
「ヴァジュラ!?」
思わず漏れたヒバリの驚愕の声に、エントランスにいた人々の視線が集まる。
ヴァジュラは大型トラック程度の大きさに、赤いマント状の鬣をもつ獅子である。この荒神は新人の登竜門的存在であり、ベテランのゴッドイーターが倒すまで同じ戦場で生き延びるだけでも一人前として認められる。それほどに脅威的な存在なのだ。
新人の生存を標す二つの白点、ヴァジュラを標す大きな赤点、それらが一ヶ所に固まって表示される地図、これらから導き出される結末は一つだけだ。
不意にヒバリの脳裏に過ったのは、無惨に切り刻まれ、食いちぎられ、残るかどうかも怪しい遺体のために用意された二つの棺桶の光景。
「お願い……助かって……!」
ヒバリは二つの白点が黒く染まらないよう、ただひたすらに祈る。
「…………………………!?」
二つの点はいつまでも色褪せることなく白く灯り続けた。それだけではない。白点と赤点は微動だにしていないにも関わらず、突如としてヴァジュラを標す大きな点は赤から黒に染め上げられた。黒への変色、すなわち、ヴァジュラの死。
「え、なんで!?」
地図を見る限り、周辺に他のゴッドイーターはいない。いればヒバリが即座に二人を守るように向かわせる。つまり、この二人が何かしらの方法でヴァジュラを倒したということだ。
「……どうやったの?」
仕事中であることも忘れ、ヒバリは素で呟いていた。
ベテランゴッドイーターであっても、ヴァジュラの縦横無尽に繰り出される攻撃を一歩も動かずに防ぎ、尚且つ倒すなど不可能だ。
ヒバリは一人疑問符を浮かべ、唸るばかりだった。
―out of the third person's view―