GOD EATER ~転生してもコミュ障は治りません~ 作:石井
ラボとは名ばかりの、四台のスクリーンと一台のキーボード、後は来客用の席があるだけの部屋には二人の年配の男性がいた。一人は両手を縦横無尽にキーボードの上で走らせ、一人はそれを見てため息をついている。
「ふむ……、予想より726秒も早い。よく来たね、新型ゴッドイーター、神原雪君。」
周囲のスクリーンとキーボードを駆使して行っていた作業を一旦中断して、白髪の眼鏡をかけた男性が口を開いた。
「私はペイラー・サカキ、アラガミ技術開発の統括責任者だ。以後、君とはよく顔を合わせることになると思うけど、よろしく頼むよ。」
サカキ博士は開いてるのかどうか怪しいレベルの目で俺を一瞥した後、すぐに作業へと戻った。
(あれでちゃんと周りが見えてんのかな?)
ゲームをやっていた頃からの疑問が頭を過るが、正直どうでもいいので気にしないことにする。
「さて、と。見ての通りまだ準備中なんだ。ヨハン、先に君の用事を済ませたらどうだい?」
「……サカキ博士、そろそろ公私のけじめを覚えていただきたい。」
サカキ博士の提案に、隣に立っていた金髪の男性が呆れ気味に言葉を吐いた。
「ユキくん、適合テストではご苦労だった。私はヨハネス・フォン・シックザール。この地域のフェンリル支部を統括している。」
シックザール支部長からは年配の貫禄と共に若々しさが伝わってきた。こういう魅力的な人が周囲の人々をまとめ上げていくのだろう。
(ま、俺はお前がどんなことを計画しているかゲームで知っているから、お前を信じるつもりは更々無いがな。)
「改めて適合おめでとう。君には期待しているよ。」
俺が早くも支部長の期待を裏切っていると、ペイラー博士が口を挟む。
「彼も元技術屋なんだ。ヨハンも新型のメディカルチェックに興味津々なんだよね?」
「あなたがいるから技術屋を廃業することにしたんだ、自覚したまえ。」
「ホントに廃業しちゃったのかい?」
「……ふっ、さて、ここからが本題だ。我々フェンリルの目標を、改めて確認しよう。」
前置きの長さと支部長の不敵な笑みに苛立ちを覚えたが、波風立てぬためにもここは自重する。
「君の直接の任務は、ここ極東地域一帯のアラガミの撃退と素材の回収だが、それらは全てここ全線基地の維持と、来るべき『エイジス計画』を成就するための資源となる。」
「この数値は!?」
「……エイジス計画とは簡単に言うと、この極東支部沖合い、旧日本海溝付近にアラガミの脅威から完全に守られた楽園をつくるという計画なのだが、」
「ほっほ~!?」
「……この計画が完遂されれば、少なくとも人類は当面の間絶滅の危機を遠ざけることができるはず、」
「スゴい!!これが新型か!!」
「ペイラー、説明の邪魔だ。」
サカキ博士の驚嘆の叫びに痺れを切らし、支部長が冷静に注意する。実のところ俺もうるさいとは感じていた。
「ああ、ゴメンゴメン、ちょっと予想以上の数値で舞い上がっちゃったんだ。」
微塵の誠意も籠っていない謝罪を上司に躊躇い無く言うところをみると、普段から二人の関係はこんな具合なのだろう。
「……ともあれ、人類の未来のためだ。尽力してくれ。じゃあ、私は失礼するよ。ペイラー、後はよろしく。終わったらデータを送っておいてくれ。」
支部長が退出するのをペイラー博士は片手を挙げて見送った。
「……よし、準備は完了だ。それじゃあ、奥の部屋にあるベッドで横になってくれ。」
サカキ博士がキーボードを二回叩くと、部屋の右奥にある赤い扉が自動で開いた。中を覗いてみると、真っ白な空間にポツンとベッドが一つ置かれているだけである。
「少しの間眠くなると思うが心配しないでいいよ。次目が覚めるときは自分の部屋だ。戦士の束の間の休息というやつだね。予定では10800秒だ、ゆっくりおやすみ。」
(ふつうに三時間って言えよ……。)
心の中でのツッコミは、何処からともなく現れた睡魔によって掻き消された。
流石に一日のうちに何話も投稿するのは体力的にきついですね。何事もほどほどに。