超かぐや姫の世界に転生してしまったので... 作:大塩tune八郎
ギリギリセーフです。
今回はめぐみがちゃんとメインです。
なんならめぐみの周りしか出ません。
それでもイイヨって方は読んでいってください。
この作品にはオリジナル設定が含まれています。
朝6時、アラームを止めることなく起き上がる。
重たい瞼を覚まそうと冷え切った空気を流し込み、肺を起こす。
「はぁ...」
だが、ため息をするように吐いた息には、白色の憂鬱が混ざっていた。
晴れ晴れとした気持ちいい朝とは相対する、黒い雪雲のような今朝。
「~~..ナャ-」
そんな中でもウチのボスは呑気にあくびをしている。
『羨ましい。』
『いっそ猫にでもなりたい気分だよ。』
呟くことさへ億劫な自分に嫌気がさす。
分かっている。今の自分はネガティブな考えしか出来ないんだと。
そう心で諦めるほどに疲れが溜まっている。
理由なんざ思い出したくもない。
『...そんなんだから、バカ女が』
『はぁ?いっっつもそうやって!私をいじめる!』
『うるせぇ!黙れ!!』
....ッッ
生きている心地がしない。
そう表すのが正しいと思う。
罵声と怒号が空間を支配し、意味の無い、プライドだけの優劣バトル。
それを半強制的に聞かされて、嫌な気持ちを持ち上げながら仲裁に入る。
ただそれだけのこと。
そんなことが、最悪に気持ち悪い。
子供そっちのけで仕事して、家にいれば喧嘩して、そんな程度のゴミの分際でいっちょ前に、
『家族は助け合っていくものなんだぞ、恵』
な〜んてゲロみたいな言葉を吐きやがる。
腹が立つ。
もし出て行っていいなら全然そうする。
その方がきっと幸せに生きれる。
「ナァ-?」
「もしそうなったら一緒に逃げような」
「grrrr♪」
だがそんな妄想もここでお終い、そろそろお弁当を作らないと。
服を着替え、スマホを充電コードに差込み、キッチンへ向かう。
昨日の余りといつめんのおかずで、親父のは........?
階段を降りる途中、何か変な感じがする。
いつもならテレビの音が聞こえるのに、今日は聞こえない。
「(寝坊か...?)」
昨日のことがあったからだろうか。
違和感を覚えた私は父親の部屋に向かった。
近ずくことさへ嫌だが、起こさないと後々面倒くさいのでグッと堪えて扉を開ける。
だが、部屋に父親も姿は無かった。
寝坊じゃないならもう行った..?
それともテレビをつけてないだけでリビングにいる?
初めてのパターンだなと思いながら急いでキッチンのあるリビングに向かう。
「はぁ...」
そんな中、自然と零れたため息は、私の芝を汚く枯らすだけだった。
────
扉の前に立ちながら二の腕を擦る。
なんだか今日はやけに寒気がする。
疲れが出ているのだろうか。
それとも悪い予感だろうか。
そんなことを思いながら扉を開けた。
「......あぁ、クソが..」
後悔した。これじゃあまるで即落ち二コマじゃないか。
妙な冷や汗と、興奮が背筋を伝う。
目の焦点に合っているのは両親だったもの。
嫌な匂いが不快感を増させる。
「はぁ....」
今日3度目のため息が漏れる。
どうせなら、私も連れてってよ。
心の中でそう呟いて思う。
自分は両親のこと、微塵も愛せていなかったんだな、と。
普通、人が死んでいる所を見たら動揺するものだと思うんだけど...
冷静すぎるし、悲しみも怒りも湧いてこない。
脳みその中で考えているのはコレの後始末ばかり。
「はぁ....」
嫌な人だ。こんな風に生きたくなかったのに...
あの、主人公みたいに.......
数分、後悔を注入しながらその場で立ち尽くす。
「通報....しないとか.....」
死体を見つけた時は通報しないと捕まってしまうらしい。
重い頭を支えながらスマホを取りだして通報する。
『はい、110です。事故ですか?事件ですか?』
「事ぃ...件です。朝起きたらリビングに・・・・・・」
────────
────
──
警察の人との事情聴取が終わって、現在お昼過ぎの13時。
人生で初めて尋問された...。
私は両親との関係性や昨晩あった出来事などを包み隠さず話した。
まぁ、見た感じあの女が刺して自分も切った。みたいな感じだろう。
警察の人もどこか同情するような、慰めてくれるような感じで聴いてきたし変に疑われんでしょ。
さて、学校へはもうもう連絡がいってあるから大丈夫。
あと、叔母が迎えに来るという話だったんだけど....
「めぐみちゃん!!」
あ、きた。
「大丈夫だった?痛いところ無い?無事でよかった〜...」
声デカ、近いし、恥ずかしいんだが。
「芽依さん、私は全然大丈夫なんで声抑えてください。恥ずかしいです」
「あぁ、ごめんごめん」
両手を合わせ謝ってくる。
叔母は母親の妹、結婚早々夫さんが他界して子供も産めず哀しい時間を過ごしてきた人だ。
そんな芽依さんは私のことを小さい時から可愛がってくれていた。
このテンションなのは仮にも親になることがほぼ確で決まっているからだろう。
「とりあえず疲れたので帰りたいです」
「え!?お腹とか空いてないの?美味しいとこ行こう!」
....はぁ、私の周りの大人って、なんでこんな.....。
はなちゃんを受け取り、うちの車とは違ってふかふかのシートに身体を沈める。
「シートベルトした?」「あ..はい、しました」
わざわざ確認しなくてもいいのに...こちとらもう中三ぞ。
運転しながらチラチラと私を窺っている叔母。
正直鬱陶しい。
数十分、
不貞腐れるように窓の縁に肘をつっかけ下顎を支え、雑に流れていく風景を眺める。
「なにか食べたいものとかないの?」
「今は..あんまり食欲ないです」「ソッカァ..」
ぶっきらぼうな返答は車内の空気を重くする。
私の心を思って気分を変えようとしてくれているのだろう。
それを理解しているのにも関わらず、無愛想な態度を取る私自身に腹が立つ。
エンジンの音と走行音、ミラーに付けられたキーホルダーが揺れる音だけが頭に響き、
無秩序に時間は過ぎていった。
────────
────
──
─
あの日から約1年後。
私は高校に進学し、中身の無い、空っぽな日々を送っている。
「めぐ〜、先出るからねー」
「ぅぃ-....」
寝不足気味な頭を無理矢理動かして返事をする。
「....ねむ、ッぁ~..」
湿っぽい空気とあくびが混ざる。
この1年間で気づいたことがある。
両親が消えたあの日から心の荷が降りた。
.....はずだった。
結局のところ私もあんな奴等でも、親として意識していたんだろう。
ぽっかりと心に穴が空いたような、そんな感覚がずっと続いている。
だが、そんな私でも気を紛らわせれるものが一つあった。
『読書』
これだけ一時的だが風通しのいい心を埋めてくれた。
理想や空想の世界を、非現実的な関係を、提供してくれる素晴らしいもの。
心の拠り所といったところだろうか。
────
バスに乗る間も、
────
学校の休憩時間も、
────
部活後のちょっとしたスキマ時間でさえも、
────
あらゆる暇を本と過ごした。
そんな生活を続けていたある日....
ー
「恵さん。お願いがあるんだけど、いい?」
「....?なんですか」
クラスの人がわざわざ読書中の私に話しかけてくる。
なんだよ。いいとこなのに....
「恵さんってずっと本読んでるじゃん。だからさ〜」
彼女の話始めから嫌な予感がよぎる。
「私にオススメの教えて!お願い!!」
....。
「いい...ですけど...」
思ってたのと違った時って何故少し恥ずかしくなるんだろうか。
予想とは違う内容に驚きながら自分に恥じる。
「いいの!やっったァー♪」
しかしそんなこと知ったこっちゃない彼女は大型犬の様に喜んでいた。
彼女の姿が叔母と重なって見える。
自然と、少し、頬がふやける。
「えっと、どんな感じのがいいんですか...?」
「えーっとね、・・・」
────
──
─
また、2年が経った。
現在、硬式テニス北信越大会 試合中真っ只中。
シングルス1回戦目。
苦戦を強いられるのは私。
周りが静かに試合を見守っている。
その中にはもちろん
「(やられっぱなしで..!)」バッッ
負けじと攻勢に出るが、
スパァァン!!!
一筋縄ではいかない。
テニスのシングルスは基本、強者相手に優位を取れる場面はほとんどない。
実力差が小さいのなら可能性はあるが、
今回の相手は.....
「ッッ!!」
『40ー30 !!』
「(クソッ...!)」
到底敵う相手ではない。
ラストゲーム、ここを落とせば負けが決まる。
最後の大会が終わってしまう。
努力が、時間が、無駄になってしまう。
汗が止まらない。ハァ..
頭が朦朧と霧を纏う。ハァ...ハァ...
あぁ、来る! ッッ....!!
────
─
もう、6年が経った。
東大へ進学し、就職を終わらせ、課題や研究、バイトに終われながら単位を取得し、なんとか卒業して....
現在、社会人1年目。大人の仲間入りを果たした。
日々、雪崩のように流れてくる仕事をこなしながら私は...
.....あぁ..。
────
─
これで、3年後。
職を失い、身体を壊し、心を静め、ただ、文字を読んでいた頃。
読めど読めど、消えることは無かった。
虚空の元気で喋ってみても。
親友と話し合っても。
実家の猫を撫でても。
消えない。
もう、それが当たり前のようで、
非現実な事実は、もう存在しなくて、
白は黒に戻ってしまって、
諦めていたその時、
ゴンッ
────
─
駅のホーム。
アナウンスが鳴り響く。
満足気に足を動かし、礼儀正しく黄色い線の内側でこれから来る電車を待っている。
今思えば、駅から見える夕日は、なんだか良い予感を感じさせるような、これからも大丈夫と言ってくれているような。
そんな気がしたりしなかったり?
そんなことを思っていると視界が反転s
・
「ッッハァ..ハァ...」
荒井息遣いと冷や汗ダラダラな状態で目覚めた私。
湿ったシーツが気持ち悪くまとわりついてくる。
急いで自分の顔に触れ、現実かどうかを確かめる。
「(ほっぺを引っ張ったら...イタ、じゃぁ..)」
「..ハァ..ーッス、よ゛か゛っ ゛た゛〜゛....」
痛みで確定した事実に安心して全身に張っていた緊張が解ける。
無駄に生々しい、リアリティのある夢だった。
ていうかなんであんな夢を見なきゃいけないんだよ。
この夢....久々に嫌のもん見たわ...
摩訶不思議なあの夢はなんだったんだろうか。
疑問はきっと晴れることはないだろう。
人間の脳みそはそういうものだからだ。
そう結論ずけて背伸びをする。
なんだか寝れた感じがしないし二度寝しようかな...
でも汗で体はベタついてるし、一旦シャワー浴びてから考えよ。
そう思い、いつもより早く起きることにし、部屋を出ていった。
枕元にある、この世界にはない小説本に気付かずに。
感想・評価お待ちしております。
トモコレやってたら思いつきました。