超かぐや姫の世界に転生してしまったので...   作:大塩tune八郎

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これはpixivで連載しているものです
オリジナルの設定が含まれるので苦手な方はご遠慮ください
特殊文字機能使って再編集していきたいです


#5 今度は、みんなで行こ

『今日午後10時頃から東京都立川市全域にて、原因不明の通信障害が発生しました。市内の通信機器やテレビモニタ、公共施設のサイネージ広告などの広範囲で同時多発的に発生した模様です。警視庁によりますと、特定団体や企業などのPRである可能性は低く---------------』

 

「ねぇ、かぐや......」

 

ソファの上でお人形の様に膝を抱えているかぐや。金色の髪の毛をドライヤーで乾かしながら彩葉が聞く。....が、いつものような柔らかさはなく、どこか気まずいような空気感がその先を言わせないでいた。

かぐやはツクヨミから現実に戻ってきてから意識を取り戻しはしたが、元気がないような、膜を被ったような感じだ。

 

「コラボライブ終わっちゃったね」

 

彩葉が無理に元気を装ってこの空気を破る

 

「うん。でもー、まだまだやりたいことだらけなんだー。明日も食材届くし♪」

「欲求怪獣かぐや〜」

「がおーっ」

 

一応応えてくれているが、怪獣のポーズにも叫び声にも、どこか取り繕うようなものを感じる。それは本人もわかっているようで、

 

「まだ、具合良くならない?」

 

そう尋ると、

 

「んー、ちょっと疲れたかな。寝ま〜〜す」

 

素直にソファから立ち上がり、

 

「おやすみ」「ゆっくり休んで」

「うん。おやすみ、彩葉、███。大好き」

「うん」「おやすみ」

 

ん゛ん゛っ...!

ぴんと手を挙げて螺旋階段を上っていくかぐや。精一杯元気に振舞っているが、私たちよりも先に寝ると言い出したことも、手すりを使って螺旋階段を上るのも初めてのことだった

 

「「........」」

 

取り残された私たちに沈黙が流れる

そんな沈黙を破ったのも、やはり彩葉だった

 

「かぐやの様子、おかしいよね」

「うん...やっぱりあの白いのに触れられたせいだよね」

 

ことの理由も、なぜかぐやがああなったのかも知っている。でも、言い出すことはできない。そんなもどかしさを抱えながら知ってる自分を必死に見繕う

 

「2030/9/12.....」

 

彩葉が原因の情報を少しでも知るためにスマートフォンをひらく。苦い顔をしているが多分母親の不在着信だろう。娘離れ出来ていない親にも困ったものである

彩葉が操作する画面を見ると、日付に関する予測変換が出てくる

 

『2030年9月のカレンダー』

『2030年9月12日は何の日?』

『2030年9月12日の暦と日付情報』

『2030年9月12日 次の満月は--------』

 

「次の満月?」

 

4番目の予測変換で彩葉の指が止まる。ジャックされたモニターに表示されたのは謎の数字だけじゃない、

 

「月の画像も.....」

 

彩葉の内で点と点が繋がりそうな表情をする。...いや、頭の奥では理解しているのだろう、それでも理解を拒む

 

「...っ」

 

全てさらけ出してしまいたい気持ちをグっとこらえ、彩葉の頭を撫でる。何も言わず、ただ撫でられ続ける彩葉をこんな時でも愛おしく感じてしまった。私は-------

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー

 

 

アラームで目を覚まし、憂鬱な身体を無理やり動かして夏期講習へ向かう準備をする。かぐやは自分よりも早く起きて今頃朝食の何かを作っているだろう、きっと大丈夫だ。そう考えながら今日もリビングルームへと向かう

 

「おっは〜、うわ何それ」

「白甘鯛!通称シラカワ!」

 

リビングに着いて目に入るのは、かぐやの金髪並に主張の激しい立派な白甘鯛。美味そうだな...

 

「なんか朝ごはんになりそうなの無い?」

「ちょっとまってねぇ、そういえば制服着てるけど----」

 

かぐやが即席で軽い朝食を用意してくれる。出刃包丁って握ったことなかったな...

 

「え?」

 

寝坊助な彩葉が私の握った出刃包丁の煌めきで出迎えられる

 

「これは、一体?」

「白甘鯛!通信シラカワ!」

 

かぐやがひょっこり私の横から顔を出し、同じ台詞を言う

 

「いや、そうじゃなくて..」

「料理配信用に買ったの」

 

そういえばそんな事言ってたっけ。あれ、届くの早すぎでは?

 

「こんなに早くくるものなの?」

「炭で焼きたいんだけどぉ、ダメ?」

 

代弁感謝。炭を使うのは辞めた方がいいぞ、かぐやよ。ろくな事にならない(1敗)

 

「だめかー、それで2人とも制服着てるけど、もう学校始まるの?」

「ううん、夏期講習。ずっと行ってたでしょ」

「そだっけ?昨日は?」

「日曜日じゃん」

「ほんとだ、夏休みだから曜日の感覚無くなってた!」

「かぐやはいつでも日曜でしょ〜」

「たはー」

 

おどけて額を叩いてみせるかぐや、思わずつられて彩葉が笑う。このまま、今が続けば良いのに。

そう思いながら昨日のことなどまるで無かったかのようにいつも通り

 

「じゃあ、私たち出るから」

「いってらー」

 

家を出た。

 

 

一瞬、何かを感じたのか彩葉が玄関の前で立ち止まった

 

「どうしたの?あんまし寝れなかった?」

 

そう聞いたら、彩葉が目を見開いて私を見つめる

 

「なんでも、ない。大丈夫」

 

「...そう。じゃあ行こ」

 

 

 

.....かぐや、███。なんで...?

 

 

聞こえないはずの声が聞こえた気がした

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

~side彩葉~

 

「......ですのでここは自分ではどうしようもないという意味になります。また、せ給うという表現があるためここの主語は位の高い人であることがわかり----------」

 

夏期講習は今日が最終日だったけれど、講義の内容は虫食いでしか頭に入ってこなかった

なんで███はあの悪寒に気づいていなかったのだろうか。

かぐやはなぜ昨日のことを話さないのだろうか。頭に巡っているのはそのことだけだ。

もしかして、███は何か聞き出せているのかも。先にかぐやといたし、ならなんで......

 

「では、ここの訳を酒寄さん、わかりますか?」

 

.........え?

 

「酒寄さん?」

 

はたと我に返ると、担任の立花先生が私を見つめていた

 

「あ、えっと......わかりません」

「......大丈夫ですよ。ここの助動詞は-------」

 

わかりません、教室で初めてそう答えた私を立花先生は少しだけ心配そうに座らせた

 

 

 

ーー

 

「かぐやっほー☆今日は白甘鯛の3枚おろし、やってくよー!3枚おろし必要なのは、まず根性!いい?出刃より先に根性だから!内蔵グロクナイゾー、なんつって!」

 

家に帰ると、キッチンからかぐやの賑やかな声が聞こえて来た。宣言通り料理動画を撮影しているようだ

また話せなかった、まだ話さずに済んだ、2つの思いを抱えながら自室に引っ込むと、鞄を下ろすと同時にスマートフォンがメールの着信を知らせて震えた

 

『新着メール:芦花 夏期講習終わった?今からツクヨミ集合ね』

 

 

 

ー〜ー〜ー〜

 

「昨日のライブよかったー!」

「良すぎちゃってた!」

 

呼び出されたのはツクヨミ内の待ち合わせスポットでお馴染みの河原喫茶、通称ツクヨミ川床。到着するなり、待っていた真実と芦花が興奮気味に詰め寄ってきた

 

「彩葉の演奏!」

「███の歌声!」

「感動して泣いたー!」

「あ、ありがと.....でも、ほら、周りに人もいるから静かに、ね」「認知されるのも悪くない」

「無理!騒ぐ!」「いろPさいこー!ヤマトさいきょー!私たちいろヤマの友達でーす」「ヤマト、ここにいまーす」

 

お願いだからやめて。あと乗っかるな。静止の声など聞こえてやしない。芦花も真実もまだライブが続いているかのようなテンションではしゃぎまくり、

 

「花丸つけたげる〜〜」

 

最後に私と███のおでこにしゃしゃっと丸を描いてくれた。これも、ありがとうでいいのだろうか

 

「で、どうなの、一夜明けた感想は?」

 

「推しとのコラボどうだった?私もヤチヨとお近ずきになりたいな〜」

 

芦花はようやく座布団に腰を下ろした。真実もインフルエンサーの顔を覗かせつつテーブルに肘を乗せてくるけれど。感想......感想、か

 

「私はさいっこーに楽しかったよ。3人のライブ衣装、真近で見れたし満足満足♪」

「いいな〜、私も見たかったー」

 

███が先に言ってしまう。

...そんな満喫した感想出てこないよ

 

「彩葉は?」

「どうだろう、よくわかんないかな」

「えー、なにそれ?」

 

ごめんね、謙遜でもなんでもなくてわからないんだ。つい昨日のライブが遠い事のようで

 

「そういえば、かぐやはどしたー?」

 

キョロキョロといるはずのないかぐやを捜す

 

「あー、かぐやは......魚」

「魚?」

「白甘鯛、3枚におろすんだって」

 

嘘をつかないように言葉を選ぶと、我ながら滅茶苦茶な返答が口をついた

 

「へー、白甘鯛かぁ」

「そっかー、白甘鯛かぁ」

 

それでもなぜか納得したふうな2人。一瞬の目配せを交わし合うと、

 

「じゃあ、ちょうどいいかもね」

「だね〜」

 

謎の呟きを漏らしながら芦花が空間に四角を描いた。感知したツクヨミが表示したのは1枚の電子チラシ。内容はいうまでもなくデカデカと、

『花火大会』

とか書き付けられていた

 

「夏の終わりに花火などいかがかな〜、お嬢さ〜ん」

 

なんでいやらしいことのように言うの。

 

「よくない?ツクヨミもいいけどぉ〜、やっぱリアルで浴衣着てぇ〜、うちわ持ってぇ〜、屋台全部巡ってぇ〜、ね?」

 

真実の狙いは屋台の方なんだろう。てゆーか、全部言ったな?

 

「どう、2人とも」

「もちろん行くでしょ」

「うん。いいんじゃない、電車で1時間くらいか。みんなで行くよね?」

 

あ、でも浴衣で行くんだったらタクシーの方がいいか。5人で割れば私でもいけるし.......ってこれかぐやに毒されてない?私の選択肢にタクシーが入ってくるなんて!などと頭の中でやり繰りしていると、

 

「ノンノン、我らには大事な使命があるから行けないのです」

「夏休みの宿題を完全に放置していたのです」

「というわけで」

「あとはよしなに〜」

 

私が口を挟む間もなく言い終わると、芦花と真実はさっさとログアウトしてしまった。2人とも宿題は初めの方にさっさと終わらせるタイプだ。.....優しいな、ほんと

 

「彩葉、このお祭り今日からだってって。かぐやには彩葉から伝えて」

「うん......え、」

 

███も準備のためにログアウトしていった。

にわかに湧き上がってきた緊張に押し出されるように、私も自室に帰るためにログアウトした

 

 

 

〜〜〜

 

部屋着に着替えてリビングルームに降りる

動画の撮影は終わったようで、かぐやはまな板に余るほどの鯛を握り寿司に変えていた

 

「かぐやさん、絶好調っすか」

 

なんだか恥ずかしくて変なキャラを入れつつ話しかけると、

 

「お、彩葉。いいとこに来た」

 

金髪の寿司職人は刷毛でササッと醤油を塗って、握りたての甘鯛を口に放り込んできた。食べたことの無い強烈な旨味が口内を刺す

 

「なにこれ、うますぎ」

 

である

 

「でしょ?明日は麺からラーメン作る!」

「すげぇ.....」

「あ、お寿司になってる」

 

私服に着替えた███がリビングルームへ降りてきて握り寿司に食いつく。いや、階段降りるのはや

 

「ん〜、いと美味〜!かぐやお寿司屋さん開けちゃうんじゃない?」

「いやー、それほどでもあるかなー」

 

どことなく空気が軽い。今朝までかぐやの周りを覆っていた透明の膜は、すっかり溶けて消えたようで.....なんか、今なら言えそうだ

頑張れ、私。似合わんことする勇気出せ

 

「.....かぐや」

「ん?」

 

それでもやっぱり、面と向かっては恥ずかしい。だから、私はポケットからスマートフォンを取り出して花火のページを表示させ、

 

「あ、遊ぼー」

 

下手くそなかぐやの真似をして誘うことしか出来なかった

 

 

 

~side███~

 

グァァァァア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!!!.....フゥ、フゥ危うく失神してしまうところだったぜ....

普段しないことをする時の彩葉はやはり可愛い過ぎる、世界救えるでしょ、これ

そんな感想を表に出さないよう気を使う

 

「やった!やたやた!やったーー!やったーー!やったぁぁぁーーーー!!」

 

喜びすぎなかぐやは狂喜乱舞とい言葉の模範解答のように、はしゃぎまくり、乱れまくり、踊りまくり、

 

「すぐ行こっ!」

 

そのまま私たちの手を引いて玄関に突進した。テンション高すぎる

 

「待って、かぐや。落ち着いて」

「無理!やりたいことがいっぱいなんだもん!すぐ行かないと」

「だからって、その格好じゃ外出れないから」

「包丁持ったまま外出ないで!かぐや通報されちゃうよ」

「服は着替えられるから、大丈夫! お店も.......はいっ、今予約入れた!包丁は....ここでいっか。さぁ、行っくぞー!」

「こんなとこ置いてけないから!!」

 

包丁を玄関の靴棚の上に置いてそのまま行こうとするかぐやを何とか部屋に引き戻し、ちゃんとキッチンにしまった。玄関に包丁とか衛生的にヤバすぎる。ついでに出しっぱなしの白甘鯛も冷蔵庫にしまい、食器類を食洗機に--------、

 

「そんな、いいから早く早く!」

 

-----入れる前に焦がれたかぐやに拉致られるように引きずられマンションをでた

 

 

ーー

 

 

そんなこんなでまず飛び込んだのは、手ぶらで入店OKを売りにしている駅前の和服レンタル屋さん。せっかくなら浴衣でと、かぐやが提案したものに乗っかった形だ

 

さらにかぐやが、

 

「ねーねー彩葉███、互いに浴衣選びあおー?かぐや彩葉の選ぶから、███がかぐやの、彩葉が███の選んでー?」

「え、いいけど」

「面白そうじゃん、似合うの見つけちゃう」

「きゃっほーーー!い・ろ・は・に・あ・い・そ・う・な・の・はー♪」

 

るんるんと鼻歌を歌いながら選び始めるかぐや。やっぱ、かぐやの浴衣っていったらこれっしょ。私は迷わずあの浴衣を手に取った

2人は10分ほど店内を吟味して選び終えた

 

「あ、███ひまわり選んでるー!」

「███も?」

 

私が選んだのは紺色に淡い黄色一色でひまわりが描かれ落ち着いた印象のあの浴衣、かぐやが選んだのはやはり白地に大輪のひまわりが描かれた元気な浴衣、彩葉が選んでくれたのは深い緑の生地に橙色のひまわりと蔓草が描かれた幽玄な浴衣だ。

 

「....私、あんまりひまわりっぽくなくない?」

「んええー?1人でまっすぎ立ってて、綺麗で、彩葉っぽいよ!」

「彩葉にぴったりな浴衣だと思うけどな。....私って緑似合う?」

「「そりゃもう」」

 

そうなのか、意外な発見だ

着付けとヘアメイクをしてもらって完成。店員さんに「めっちゃ仲良さそうですね〜!」と声をかけられ、かぐやが「やっぱわかっちゃうか〜〜」と返していた。可愛い

お揃いの髪飾りをつけてもらった私たちは、最後にお店前の大鏡で並んで、はいポーズ

 

「和服良き〜☆」

「なんか変じゃない?」

「何着ても似合うよ」

 

あ、彩葉照れてる。可愛スンギィ...!

 

「もう行くよ」

 

照れ隠しかー?速足で鏡の前から離れていく彩葉。...w楽しいなぁ

 

電車で移動し、駅から会場に向かうと近ずくに連れて屋台のいい香りが漂ってくる

 

「さてと、始まるまでまだ時間あるし。どうする?」

「屋台!全部回る!」「飯!喰い尽くす!」

 

呆れた目で彩葉が見てくる

それでも、時間の許す限り屋台を見て回ることになった

 

「彩葉、銃あるよ、銃撃とう!」

 

まずは射的、自信ありげに挑んだ彩葉だが1発も当たらず終了。銃が悪いみたいな顔すな

 

「かぐやは当たったもんね〜」

「はいはい。███はやんないの?」

「ん?そんなに見たいのか、そうかそうか」「言ってない」

 

親父、一発頼む

結果は......ポッキー1箱か、まあ悪くないでしょ

 

「凄っ...なんでそんな当てれるのよ..」

「フフン、腕がいいのさ。かぐや、はいあげる」「え、いいの!」

 

嬉しそうに食べるかぐや。可愛い

次は蟹釣り。屋台の蟹ってお店で買ってるやつなのだろうか、それともそこら辺の河原から?

 

「3匹釣れた!」

 

すご

 

「見て見て、指食べようとしてる」

 

ガッツリ指挟まれてるけど痛くないの

 

「やっぱ、現実さいこー!」

 

ツクヨミがあるからこその感想、私でなきゃ見逃しちゃうね

 

「次!次!次は何する?」

「もう花火始まっちゃうよ」

「ヤバッ、ご飯買わないと!「かぐや、ここは別れて調達するのはどう」それだ!私あっちのほう行ってくる!」

「ちょっと!時間までに戻ってきてよー!」

 

 

 

 

「ふぅ、間に合った」

 

両手にずっしりと重い戦利品をレジャーシートの上に下ろした。なかなか大変だったぜ

 

「ひょえ〜〜、楽しすぎー!」

 

かぐやはそんなバタバタすらも楽しんでいる

 

「楽しキングダム!」

 

あ、なぞの国?が出来た。彩葉も真似してはしゃいでんね〜、私もやろ

 

「うぇ〜〜い、真似っ子〜」

 

彩葉恥ずかしいがってるしw 無意識に気負ってたんだろうな。これから話さなきゃいけない事に

 

「ねぇ、かぐや....」

「ん?」

「.....いつも着けてるよね、それ」

 

彩葉は言葉に詰まってしまい、また言えない。誤魔化すようにかぐやの銀のブレスレットを指で示した

 

「あー、なんか落ち着くんだー。故郷って感じ?」

「そっか、故郷か」

「うん」

「...」

「...」

 

やっぱりまだ言わない。不意に発生した沈黙を埋めるように、花火大会決行の号砲が上がる。いよいよだ、見物客が期待にざわつく

 

「月ってさあ、味も温度もなくてまじでつまんないの。決められた役割をずーっと、繰り返すだけなんだよね」

「.....そうなんだ」

「こっちでいえばゲームのNPCみたいな感じで、真似っこすら誰もしてくなかったんだよね〜。終わればまた始まり、始まればまた終わる。そのループを繰り返して、新しいお話なんて、いつになっても始まらない」

 

胸がキュッと苦しくなる

 

「そもそもそんなこと考えることが異常っていうかさ......かぐやだけ、浮いてたんだー」

 

そんな悲しい言葉を、そんな綺麗な顔で言わないでよ

突然、周囲から歓声が湧く。空気を切り裂く高音と共に光弾が筋を引いて登って行く。そして、

 

「.....わぁ」

 

花火が弾けた。

夜空に色様々な花を咲かせ、どんっと空気を震わせる

 

「綺麗.....」

 

素直な感想がかぐやの口から漏れた。そこからは寂しい夜を忘れさせるように連続でスターマインの花が咲く。白い肌を花火色に染めながらかぐやが言葉を続けた

 

「寂しいし、退屈。毎日繰り返し、退屈、死にそう。どっか行きたーい、って思ってたら、違う世界が見れる窓を見つけたの」

 

......窓

 

「窓から彩葉たちの世界を見たら、みんな好き勝手に動いてて、複雑で、1回きりで、自由に見えた」

「私たちが?」

「うん。でも、こっちに来てわかった。みんな抑えてもいるんだよね、自分の気持ち。多分、もっと大事な物のために」

 

嗚呼、そうだね。かぐやってすぐに追いついちゃうんだから。つい1ヶ月前までは赤子だったかぐやが、こんなことを言うのが少し嬉しいような、悲しいような

 

「なに、大人じゃーん」

 

誤魔化すように彩葉が茶化す

 

「えへへ、彩葉の真似かなー」

 

かぐやは気を悪くした様子もなく微笑むと、

 

「ねぇ、1個聞いていい」

「なに?」

「彩葉、お母さんのこと好き?」

 

笑顔を崩さずそう尋ねた

 

「好き....好き、か?」

「.......どうだろう、わかんないな」

 

彩葉は家族が好きだ、お兄さんとも仲良くゲームをしていたし、お父さんが亡くなる前は母親とも上手くやっていたようだし。きっと認めて貰いたくて、そのためにいつもぶつかって、死んでも納得させてやる気持ちでお母さんのことを追いかけていたんだろう。そんな気持ちを嘘とは言わない、

 

「そうだね.....嫌いになれたらって、何度も思ったよ」

 

「そんなん、彩葉、余計に可哀想じゃん〜」

「...っ」

 

かぐやの明るい声色と相反して目に涙の膜が張る。事情を知って、その本人と暮らして来たのに言えなかったこと。その言葉を言ってあげれば、どれだけ彩葉が救われただろう

 

「ごめんね、あの時」

 

あの時?

 

「お母さんさんのことおかしいって言っちゃって」

 

ああ

 

「てか、怒ったって良かったのに。かぐやにはわかんないって、言いたかったしょ?」

 

 

 

「....違うよ、言いたかったんじゃない」

「.......彩葉」

「言いたくなかったの」

「そっか.....」

 

彩葉が口をひらく

 

「ね、かぐや」

「うん?」

「かぐや.....」

「........うん」

「帰っちゃうの?」

「うん」

 

かぐやはあっさりと頷いた。彩葉がずっと聞きたかったことを

 

「いやー、月の仕事放り出して来ちゃってさ。強制送還的な?あはは」

 

花火が次々と上がる、笑顔の絵文字、次にハート、その次は土星、ユニークで自由、そんな花火を見あげながらかぐやは言う

 

「........かぐやは、かぐや姫だったみたい」

 

捩るように打ち上がった光弾が破裂し、キラキラと色を変えて広がった。夜空に万華鏡を覗くように

 

「次の満月の夜にお迎えがくる」

 

「お迎えって、うちに来るの?」

「ううん、多分ツクヨミに来る。仮想の世界って月ととても近いから。あそこなら船を飛ばさなくても簡単に干渉できるはず」

 

ふと、自分の作ったあれを思い出す。嗚呼、怖いな.....

かぐやの右手を無意識に強く握ってしまう。それでも....

 

「また、逃げればいいじゃん」

「え?」

「かぐやは、かぐや姫じゃないよ。もっとハチャメチャで!めちゃくちゃで!だから、おとぎ話とは違うじゃん!」

 

現実を変えられないと理解していても、わがままを言う子供のように、彩葉がかき氷に何度もプラスチックのスプーンを突き刺す

まるで中身が入れ替わってしまったような、かぐやはいつの間にか--------

 

「そんな、ハチャメチャなかぐや姫にもお迎えが来ましたが、最後の日まで楽しく過ごしましたとさ。って、そーゆーのがいいじゃん☆」

 

いつの間にか、大人になってしまった

涙を堪えられない、いつもの明るい自分を今だから出さなければいけないのに。涙が止まらない

 

「これが私のエンディング!チョー楽しく運命に走ってく」

 

ヒーローよろしくポーズを決めてかぐやが言う

 

『受け入れて覚悟するしか、ない』

 

それはいつしか彩葉が言った言葉と同じ。ああ、クソっ....

また、花火が弾ける。しだれて落ちる光の粒が私と彩葉の影を伸ばす

 

「そりゃあ、本当はさ。もっともっと、2人と歌いたかったよ。新しい曲だってたくさん。あ、そうだ、ライブしたいなー。お迎えが来る日に!派手に!」

 

その言葉に応えるようにスターマインが弾ける

 

「うおおお、腹に響く!煙の匂い! いいな-----------」

 

とびきり笑顔のかぐやの目には花火が焼き付いていた。まるで、もう二度と見れない景色と知っているかのように、

 

可愛いな、かぐやは。最初は自分なんてどうでもいいって思ってたのに.....。ここに、居たいって、思っちゃったじゃん...

 

 

 

 

 

それから、私たちは黙って空を見上げ続けた。花火が終わるまで。周りから誰もいなくなるまで。3人きりになるまで。川のせせらぎが聞こえるまで。

 

「もう、おうちに帰らなきゃ」

 

かぐやが静かに、そう言うまで。

 

「帰れなくなっちゃう」

 

「(私は...)」

 

自分の気持ちを踏みにじって、かぐやの気持ちを尊重しないで、そう考えれば考えるほど、

 

黒い覚悟が濃く、深くなっていった。

 

 

 

 

 




かぐやは他作品で言うとこの虎杖やシュタルクみたいに、どんな人でも魅了しちゃう明るさがありますよね
......かぐや、推しの子の世界でもやってけるのでは?
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