現代にダンジョンが現れたので海賊始めました ~街中のパンデミックとか面倒くさいし、海に出てダンジョン攻略する~ 作:カゴメ
『只今、非常事態宣言が発令中です。
避難勧告に従って、各地の避難所へ直ちに避難して下さい。
凶暴な生物と遭遇した場合は、必ず逃げて下さい』
『眼下には魔物としか呼べない生物が群れを成しているのが分かります!
政府の対応は間に合っているとは言い難いのが現状です。
それと、俳優の
「あぁ、今日も平和だなぁ……」
ニュースを見ながら、僕は青空から射す陽の光を浴びていた。
快晴快晴。今日も海は平和だね。
「カイ、下の魔物は片付けて置いたわよ」
そう言って、クルーザーと並走しながら海面の上に顔を出すシーラ。
その横に赤い液体が昇って来る。
まぁ、クルーザーの速度で直ぐに見えなくなるけど。
そりゃ、海も魔物ばっかりか。
シーラが居なかったら、出航出来てても詰んでたな。
シーラは水から活動に必要な全てのエネルギーを生成できるらしい。
つまり、不眠不休で警護してくれる万能精霊という訳だ。
「ありがとうシーラ。
ちょっと休憩する?」
「そうね、そうしようかしら」
そう言って、シーラは浮遊して船に乗る。
「アクアバリア」
そう彼女が一言唱えると、船全体に青い幕の様な物が展開される。
「海の魔物は基本的に浅い所の方が弱いみたいだから、この結界を破られる事は無いと思うわ」
「この結界ってどれくらい持つの?」
「そうね、5万年くらい?」
「え……?」
「ふふ、嘘よ。ただ、私が死ぬまで解けないってだけ」
……それって、君の寿命が5万年くらいあることにならない?
「けれど、こんな所で寝ていて舵はいいの?」
「あぁ、自動操縦って奴だよ。
本当は見てないといけないけど、人手不足だからしょうがないね」
最近の豪華クルーザーはすごいね。
僕を置いて行ったのは許せないけど、クルーザーをくれたんだから許してあげないこともないよ。
実はこのクルーザー、僕の大学で同じサークルの先輩のだったりする。
起業家自慢ウザかったなぁ。
「どう見ても暇そうだけど?」
たしかに、陽を浴びながらスマホを眺めているのは暇そうに見えるかもしれない。
「情報収集って奴だよ」
「そうなんだ。私も見たいわ」
「いいよ、おいで?」
クルーザーの後方にある甲板で、ベットチェアに仰向けで寝ている僕は、自分の胸を二度ほど叩く。
「不埒じゃないかしら?」
「そのお子様ボディで言われもなぁ。
それに、昨日は僕の肩が定位置だったじゃない。
まぁ、気になるなら退くけど」
僕がそう言うと、シーラは少し考えるような仕草をして頷く。
「それもそうね。
お邪魔しようかしら」
「うん、どうぞ」
彼女が僕の胸の上に座ってから、僕はまた動画の再生を始める。
衛星通信って正義だよね。
地球が混乱してても宇宙は関係ないし。
あ、でも基地局とかデータセンターは無事ってことなのかな。
しかし、クルーザーの免許を取る時の講習で習ったが、あんまり陸から離れすぎると電波は届かなくなるらしい。
っていうか先輩、自分のクルーザーを自分で運転できないってなんなんだよ。
それに、運転免許取るのがめんどくさいからって後輩に取らせるってどういうことなわけ?
まぁ、そのお陰でこうして航海できてるわけだから別にいいんだけどさ。
そんな横柄なことやってて後ろから刺されてもしらないよ?
「凄いのね、この世界の技術は」
筋トレとキャバクラが趣味の先輩のことを考えていると、スマホをまじまじと見ていたシーラがそう言った。
「気になってたんだけど、君たちってどこから来たの?」
どう考えても、シーラはこの世界に元からいた生物ではない。
それは、他の魔物も同様だ。
そして、シーラは海を見た時に泣いていた。
それは、彼女に記憶という物がある証拠。
ならば、魔物という存在は急に生まれたわけじゃ無いんだろう。
結局、どこかからやって来た……というのが僕の出せる最大限の解答だ。
「私がいたのは精霊界と呼ばれる場所よ。
けど、来たというよりは交ざったって感じなのかしら?」
疑問形でそう言うってことは、彼女自身も確実な知識は無いのだろう。
「実際、あの犬や海にいた魔物は私も知らない種族だったから」
「へぇ……」
スマ〇ラみたいなもんか。
色んな世界からファイター参戦的な?
まぁ、地球にとってはあんまりいい話ではないことは確かだ。
「すごいわねこれ、色々調べられる」
「そうだね」
もうスマホの使い方をマスターしたらしい。
シーラは手で器用にスマホをタイプしている。
「ふぁあ……」
「何、眠たいの?」
「これでも昨日から動きっぱなしでね」
流石に、海に出て直ぐに眠れるほど神経は図太くない。
今は緊急事態なわけだし。
昨日から寝ていない。
「ちょっと寝てくるよ」
「えぇ、私はもう少しこれを使わせて貰うわ」
でも、なんで別世界から来て日本語が読めるんだろう。
そんな疑問を抱いたけど、眠気に抗うほどの理由では無かった。
船内に入って、僕はソファに横になる。
時刻は午前7時。
なのに目覚めたのは午前8時だった。
それも無理矢理、僕に跨って金髪の女の人に平手打ちされて。
なんか理不尽じゃないかな?
「私を誘拐したの?」
「してない。おやすみ」
「ふざけないで! 起きて」
そう言って、彼女は僕の首を軽く絞める。
「苦しいって……密航者さん」
確か、僕と同じ年で同じサークルの女子大生。
このクルーザーの持ち主だった先輩の彼女だっけ?
まさか、置いて行かれたのは僕だけじゃ無かったとは。
自分の彼女までも置いて行くなんて流石先輩。
その鬼畜っぷりが成功の秘訣なのだろうか。
けど、説明するのめんどくさいな。
「自分の携帯で調べてくれる?
僕はもう寝るから」
そう言って、僕は彼女の手を抓って外す。
「痛つ……」
「おやすみ」
そのまま寝た。
今度はしっかり寝れた気がする。
時計の針は17時。
うん、スッキリ。
部屋の片隅で、膝を抱えているギャルっぽい見た目の……
「確か、
そう声をかけてみるけど、彼女はツーンと無視している。
サークルの代表でありこのクルーザーの持ち主の、彼女。
「ニュースは見た?」
そう聞くと、彼女は小さく「見た」と言う。
「じゃあ状況は分かってるよね? どうする?」
「……?」
何が? と言ってそうな目で僕を見て来る彼女。
ピアスやネックレスやリングとか、装飾品が多くて。
金髪と化粧が相まって目立つ。
僕と彼女は、今まで特別目立った絡みもなかった。
でも、今はこんな状況だ。
コミュニケーションエラーはマズいでしょ。
「別に港まで送って上げてもいいけど」
流石に、泳いで帰れなんて非道なことは言わない。
正直、僕自身はそれほど焦った状況でもないからね。
世間は大騒ぎみたいだけど。
「いいの……?」
「あ、でもそれからは一人で行ってね? 避難所までどれくらい距離があるか知らないけど」
さすがに僕が避難所に行ったら海に出た意味ないし。
「そもそもこのクルーザー拓也先輩のじゃない」
「そうだね」
「彼女だし私に所有権ありそうだけど?」
「まぁ、この船は捨てられてたわけだけど、それって君も一緒だよね?
昨日どれだけ飲まされたのか知らないけど、先輩にとって君はおぶって連れて行くほどの価値も無いってことでしょ?」
「うっさい」
「怒らないでよ。
今この船の上は結構安全だからさ。
それでどうする? 帰りたい?」
「嫌……どうせ、帰ってもクソみたいな家族が待ってるだけだし」
少し、切ない表情で涼宮さんはそう言った。
「家族が生きてるだけマシだろ」
意地悪く、僕はそんなことを言ってしまった。
「アンタ……」
「ごめんごめん。今のは忘れて。
それじゃあ、協力して頑張って行こうか」
そうして、僕は二人目の船員を手に入れた。
船長として鼻が高いね。
「もし、手だして来たら殺すから」
「安心しなよ、僕清楚な子がタイプだから」
そう言うと、涼宮さんは僕を睨みつけてくる。
どうやら、安心してくれたようだ。
それから少し涼宮さんと話していると、甲板の扉が開く。
「カイ、目の前にダンジョンがあるみたいだけどどうするの?」
シーラがそう言って、部屋へ入って来たのだった。