だから付き合ってないってばよ   作:冬乃菊

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【警告】
*当人たちは度が過ぎているただのかなりの友達です。
*原作設定うろ覚え
*逆行というありふれた設定ゆえに、サクラではなくヒナタを一緒の班にします
*色々あるけど最終的にナルヒナ、サスサク
*サスケ最推し(作者がキモいです)
*あくまで二次創作でありパロディです


うちは反逆の章
懐かしい家


 いつの間に眠っていたのか、それを思い出せないほど深い眠りについたのはいつぶりだろうか。懐かしい声に呼ばれたような気がした。

 目を覚まして目についたのは、古い家屋を思わせる木目の天井。しかし、そんなはずはない。ここが自宅のマンションならば、見えるのは無機質な白い天井のはず。

 身体の感覚も、物が手に触れる感触も少し妙だ。自分の寝具の手触りはこのようなものであったか。そう思って挙げてみて視界に入り込んできた手のひらは、思っていたよりも小さく柔らかそうで。

--バサッ

 自分の物ではない寝具を取り払って飛び起きた。全身から汗が吹き出す感覚を覚えた。早鐘を打つように鼓動が早くなる。

 寝ぼけていた頭が急速に覚醒し、それと同時にこの身体の記憶が流れ込んでくるようで眩暈がした。

 最近アカデミーに入学した。それから今日は日曜日の朝。窓の方を見ると、朝日でカーテンが透けている。

 何者かの得体の知れない術にでも落ちたかと、解術の印を結び術者のチャクラを乱そうとするが状況は変わらない。そもそも術といえるようなチャクラの気配もなかった。

 ここは幼い頃の自分の部屋だ。今踏みつけている布団も見覚えがある。こういう状況でも妙なところで冷静なのか、身体は自然と寝間着から普段着へと着替えていた。

 もしこれが誰かの術だとするならなんとも悪趣味だろうか。いくら渇望しても戻ってこない日常風景。幸福な記憶でありながら残酷な記憶でもあった。

 今一度状況を整理すると、己の身に起きていることは、若返り。そして取り巻く環境も遡っているようだ。とするならば、万華鏡写輪眼と輪廻眼もまだ開眼する前だと考えるのが妥当だろう。ただの非力な六歳の男児だ。

--カタン

 小さな物音。それは自室の襖が開いた音で、襖の開いた向こう側には懐かしい人の姿があった。

「サスケ?起きているのなら早くいらっしゃい。……どうしたの?」

 人の気配に気づかないはずはないのだが、それが母のミコトとなると話は別だ。引退する前は、優秀なくノ一であったと聞いたことがある。もしかすると眠っている子を起こすまいと思ってのことか、気配を消して部屋までやってきたのかもしれない。それでも常日頃であれば気づけたはず。その気配に気づけない程に気が動転しているようだった。

 何を考えているのかわからないと言われたことはザラにある。任務においては都合のいいポーカーフェイスも板に付いたものだが、今の状況ではそれが足枷となる。子どもの表情とはとてもいえないだろう。

「その目……」

 ミコトは目を見開き両手で口を覆う。その反応からまさか、と、サスケはミコトの傍をすり抜け洗面台へと向かった。

 鏡に映るのは、幼い頃の自分。右眼には万華鏡写輪眼。それから左眼には輪廻写輪眼。六歳の子どもにはあまりにも凶悪な代物だ。写輪眼は心を映す瞳。精神がそのままであることが起因しているのかもしれないが、わからないものはわからない。

 考える材料を集めようと最後の記憶を辿るが、いつもの日常に変わりはなかったはずだ。いくら考えてこの状況を作った原因には辿り着かない。頭に靄がかかったような感覚もあり、この記憶が定かなのかも怪しかった。

 鏡越しにミコトと目が合う。

「母さん……」

 どのように振る舞うべきか、分からなかった。自分でも引きつった表情をしているのは分っている。ミコトは何か言いたげに口を動かそうとするが、声は出ず。くるりと踵を返し足早にその場を立ち去った。

 一部の忍であれば、輪廻眼に纏わる伝説についても知っているかもしれない。眼球は何重もの円。その異様さ。ミコトの目にもそれは不気味に写ったのだろうか。

 再び一人となったサスケは、これが幻術だと仮定し再び解術するためにチャクラを乱してみるが、やはり変化はない。輪廻眼で空間を開くにしても、これまでの経験上、過去のような空間には行くことができない。それに今はどういうわけかチャクラのコントロールが上手くいかず、空間を開くことはできなかった。この身体の変化にも関係するのかもしれない。

 チャクラについては万華鏡写輪眼と輪廻写輪眼の開眼により増加しているのか、今もこの幼い身体に見合わず成人並の量を感じる。しかしながら全盛期と比較すると格段に劣っている。もし同じ戦い方をするのであれば、チャクラコントロールの精度を格段に上げる他ない。

 少なくとも今は生死に関わるような切迫した状況ではない。

 急に緊張が解けたことで、酷く喉が渇いた。

 

「おはよう……」

 朝のあいさつは必ずしていた。

 ミコトとフガクは、サスケの様子を黙って窺っている。あの頃の自分ならどう行動するかと考えた。六歳の子どもなら不安がって両親に相談するだろう。

「起きたら……目が」

 その頃の定位置に腰を下ろし、食卓の向かい側に並んで座る両親の顔色をそっと伺った。

「……サスケ」

 懐かしい父の声。その声色から困惑していることがわかる。フガクの両眼には自分のものとは異なる模様の赤い眼、万華鏡写輪眼があった。ああ、父の写輪眼はこんな模様だったのかとこの場にそぐわず感銘を受けた。

「はい……」

 フガクはサスケの反応を見て溜め息をついた。警戒が解かれたのか、写輪眼がフッと消える。

「その眼はどうした?それは……何もなく発現するものではないはずだが」

 そう問われて言い淀む。どう応えるべきか

 無言になるサスケを見て、フガクは口を引き結ぶ。

 明らかに昨日とは違う。眼を除いた外見は変わらずとも、言葉や所作はもちろんチャクラの質までもが違っている。何がサスケをこのようにしたか知れない。

「……わかりません」

 この身体の記憶でも、昨日は特に何も特別なことは起こっていない。フガクを納得させるような説明はできそうにない。

 

 沈黙の中、先に口を開いたのはサスケの方だった。

「イタチは?」

 その言葉にフガクとミコトが眉をひそめたたため気づく。この頃の自分を演じるのであれば、「兄さん」と言うべきだった。

「任務で里を出ている。そろそろ帰還する予定だが」

 二人の不信感に気づかないふりをしてサスケは平然を装い箸をとり、少しでもこの空間に馴染まなくてはと次の台詞を考えた。

「そっか。手裏剣の修行、みてもらいたかったのになぁ。……いただきます」

 サスケはこの頃の記憶をたどった。恐らくこの時期、すでにうちはのクーデターの話は持ち上がっている。しかしまだそのクーデターまでには時間があるはずだ。サスケは再びチラリとミコトとフガクの顔をうかがった。両親は今この瞬間にも、クーデターを企てるほどに思い詰めていたのだろうか。

 もう、同じ思いはしたくない。繰り返したくない。夢とも知れないこの場でなら、自分の気持ちを率直に口にするのは造作もなかった。イタチは、己が一族を手にかけずとも他に違う方法があったかもしれないとも言っていた。

「父さん、クーデターは起こさないで」

 サスケの右目に赤い写輪眼が浮かび上がる。

 もしあの頃に戻れたのなら、両親にはそう伝えたかった。事ある毎に記憶が蘇り、その度にそう思っていた。そして、そんなことができるはずもないと時間の無駄だと再びその記憶を深く仕舞い込んでこれまで生きてきた。

 サスケの思いがけない発言に目を見開く両親を尻目に、手早く食器を片付けると自室へと向かった。

 フガクは、サスケの意味深長な言葉を頭で何度も反芻した。

「サスケは何を知っているんだ……」

 しばらくしてフガクはサスケの部屋へと向かったが、そこにはもうサスケの姿はなかった。

 

 サスケは蔵から刀を選び、右手に術を施し封じた。アカデミーの新入生である自分の部屋には忍具が全くというほどになかった。かろうじて練習用のクナイと手裏剣はあったが、当然ながら実戦には使えない。

 両親に言いたいことは言った。それからもう一つ、これまでの人生において後悔していることがあるとするなら、あの手を取らなかったこと。あの声から耳を背けたこと。あの自分に向けられた激情から目をそらしたこと。そしてあの日、あの小さな背に声をかけなかったこと。

 もしもう一度自分の人生を歩めるのなら、初めから彼の手を取りたい。だが、過ぎたことを悔いても仕方がないと、あの日々の上に今があるのだと言い聞かせてこれまで生きてきた。贖罪の念と共に。

「ナルト……」

 それは幾度も拒んだ者の名。そして、己の半身でもある。あの頃、自分に向けられていた純粋な羨望や、友愛の気持ち。それはむず痒くもあり苛つかせるものでもあり、弱さに繋がるものだと、これから行く自分の道には必要のないものだと排除した。その手を拒んだ。

 サスケは建物の屋根、木々を伝い駆け抜ける。この夢とも現とも知れない世界にも、あのオレンジ色のチャクラを感じる。それは自分と同じくらいの速さで距離を縮め、もしかすると、という希望を抱く。

 あと五〇〇メートル、一〇〇メートル、一〇メートル……。

 オレンジ色のチャクラが、懐かしい姿をしたあの黄色い髪の少年が遠くに見えた。

「サスケェ!」

 いつものように煩い声で名を呼ばれると、自然と頬が緩むのがわかる。

「ナルト!」

 二人は、木ノ葉隠れの里にある神社の木の上に立ち、向き合っていた。言葉を交えずとも分かる。互いに唯一無二の存在だと。

「今度は、一人にさせねえってばよ」

「ああ」

 二人は互いの拳をぶつけた。

 もう一人であの暗い道を行こうとは思わない。

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