だから付き合ってないってばよ   作:冬乃菊

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【注】大蛇丸が光落ち(?)したことで木ノ葉崩しが起きない世界線になるので、その補完です。任務内容も依頼主もオリジナルが続きます。三話程度。


火の国・大和京

「Dランク任務、飽きたってばよー」

 ナルトは今日の集合場所で駄々こねはじめた。

「わたしたちまだ下忍になったばかりだから、仕方がないよ……」

 零班の経験任務は、まだDランク任務三件だけだ。草取りと迷子の猫探しと熊パンダ退治。

「そろそろそんな気がしたから、今日はなんとCランク任務~」

 カカシはサッと任務要項を取り出した。そこには大きく“C“と書かれている。

「えっ」

「さっすがカカシ先生!」

「それほどでも〜」

「それで、任務の内容は?」

 サスケも口にはしないものの、ナルトと同じくDランク任務には飽々していた。

「……それがなんと、火の国の大名様の警護だ」

「大名の警護……?それってフツー、上忍がするヤツだろ」

 ナルトは思わず真顔になる。火影だった頃にも何度かあったが、そのような任務を任せるのは大抵名の通ったベテランの忍だったはずだ。

「よく知っているな。だが、今回はどうしてだか未成年の忍をご所望でね。しかも任務のランクも低い……」

「大名の警護なら、ランクA、Bあたりが相場じゃないか?下手をすれば里の軍事費に関わるかもしれない」

 里の軍事費は大名の匙加減でどうにでもなる。ランクに見合った忍が任務に当てがわれて、その結果何か不始末が起これば里に責任が問われる。

「正直オレもこのランクはナイと思ってるよ。キナ臭い。けれど、大名様がCランクって言うならCランクなんだよなぁ……。その上未成年の忍を要求している。それで、想定外の事にも対応できそうなおまえらが、この任務に抜擢されたワケ」

「よーっし!気合入れてやってやるってばよ!」

「……や、ナルト、お前は少し手を抜いてくれたほうがいいかなー」

 調子に乗って命令を聞かず何かしでかしやしないだろうかと気が気でないカカシであった。

 

 火影室の更に奥にある応接室には、里では見馴れない身なりの男と自来也が対談していた。その男は白髪混じりの髪を結い上げその上に帽子を被っている。もっとも目を引くのは豊かに蓄えられた白い眉毛だ。目も隠れておりあまり見えない。

(あのおっちゃん、激マユ先生と張るってばよ……!)

 自来也はカカシたちに横に来るよう手招きした。

「カカシ、待っておったぞ。……藤原殿、彼らが今回の護衛の任に推薦する忍です」

「たしかにめのことおのこ……。随分と年若いが護衛の任は差し支えないか?」

「この者らは今年のアカデミー卒業者の中でも群を抜く逸材。また、彼らを率いる上忍は写輪眼カカシと名の知れた実力者です」

 カカシの異名は忍の世界に留まることなく、大名界隈にも広く知られている。

「おお。あの写輪眼のカカシとな。わしは藤原ナガミチと申す。はるばる隠れ里まで自ら足を運んだ甲斐があったというものよ。よろしく頼むぞ」

 実はこの官吏、観光も兼ねて木ノ葉隠れの里を訪れていた。呑気なものである。

「ええ、尽力いたします」

 ナルトたちはその日の午後、里を出ることとなった。目指すは火の国の首都・大和京。大名側近の男は一人でやってきたわけでなく護衛が二名付き添っていたが、帰りの際には忍が付くため、護衛二名は先に里を発っていた。

「大和京って歩いて三日もかかるのか……。センセー、口寄せの術で蛾蟇ちゃん出したらんなのみんなでひとっ飛びだってばよ」

「藤原殿、もし忍ばなくても良いのであれば、蛙で跳んじゃってもいいですか?」

「蝦蟇……よ、よかろう」

「ナルト、お願いー」

 ナルトは印を結び地面に手を当てた。すると足下に巨大な蛾蟇がいた。大きすぎて全体像が見えないため、蝦蟇というより少し湿り気のある皮膚といったほうが正しいかもしれない。

「何じゃいナルトォ!敵はどこじゃぁ!」

「ガマオヤビン!敵はいないってばよ」

「はぁ?!」

「大和京の近くまで乗せてってほしいんだってばよ!」

「初めてこのワシを呼び出しおってからに、たかが移動に使うたぁ……」

「このとーり、お願いしまっす!」

「おめぇに頭をさげられると面目丸つぶれってもんよぉ。よーく掴まっとれよぉ!」

 ガマブン太が飛び上がると、体に重力がかかるのがわかる。そして放物線の頂点に達すると今度は普段であれば感じることのない浮遊感に襲われる。ガマブン太の背中の乗り心地は最悪だった。

「ひぃいいいい……!!」

 ナガミチはカカシとサスケに落ちないよう固定されているが、怖いものは怖い。絶叫をあげていた。

「……あ、先生、藤原様が……気絶しているみたいです」

「ホントだ。静かになったと思ったら……。まっ!このままサクッと行っちゃおうか~」

「早く起きようが遅く起きようが、気絶したことに変わりないからな」

「そういう問題なのかなあ……」

 そうこうしているうちに、夕方には大和京が見えてきた。

「ありがとな!」

「おうよ!だが、今度こんな用件で呼び出したら次からはもう戦仕度せんけんのぉ!覚えておけ!」

「へへ、わかったってばよ」

 ガマブン太は妙木山へと帰った。そしてナガミチも程なくして気がつき、一行は大和京へと再び向かい始めた。

「……三途の川が見えた。だが、忍の蛾蟇に乗ったのは良い土産話になりそうだの」

 

 

 大和京、そこは隠れ里と違った風情のある街並みが続いていた。南に真っ直ぐ伸びる幅広い道の先には、大名の住まう御所がある。

「あっという間に攻め込まれるってばよ」

「いやいやいやこういうのはね、威厳の象徴なんだよ」

 この時期は立ち並ぶ屋敷の庭から溢れ出る緑が美しかった。この大和京には一部の限られた裕福な人々が暮らしている。そして大和京周辺には農耕を行う人々の暮らす村が多数存在する。ここはそんな人々の血と、権力者の欲望で作られた場所だ。

 もうすぐ日も暮れる時間で、大通りを行き交う人は少ない。

「今日はわしの屋敷で休むがよい。こちらだ」

 ナガミチの屋敷は、御所に程なく近い閑静な場所にあった。門の左右には先が見えない程に塀が続いており、門の前には私兵らしき門番が立っている。

「ナガミチ様?!」

「驚かせてすまんの。予定よりも二日も早く着いた」

「ご無事で何よりです。ヨリミチ様に知らせて参ります」

「そう慌てなくともよいぞ。……さて、案内しようかの」

「おじゃましまーす……」

 ナルトは屋敷の雰囲気に圧されたのか、声も小さい。長い廊下を歩くと、広間に出た。外との壁はなく簾で仕切ってある。そこからは広い池と庭が見えた。

「わしは孫を呼んでくるからの」

 ナガミチはさらに屋敷の奥へと消えた。緊張の溶けたナルトたちは声を落として話し始めた。

「……すごい屋敷だねぇ」

「メシに期待するってばよ」

「ナルトくん……」

「オレたちの扱いも意外と良いな」

 大口の依頼でも母屋には通してもらえないことが多い。忍は殺生をする生業ゆえに、恐れられることもある。それなりに慈善活動も行っているのだが。忍という職業は一般人には理解されがたい。

 しばらくすると、ナガミチとともに青年が現れた。

「私はナガミチの孫、藤原ヨリミチと申します。今回の依頼は大名様の護衛です。依頼の内容はさぞかし不可思議だったはず」

「護衛、ということは大名様がどちらかに外出なさるか、何者かに命を狙われているか……と考えました」

「ええ、大名様は招かれ、風の国の砂隠れの里に程近いアルテという街へ行かれる予定なのです。大名様は、国内で移動する際の通常の身辺警備で良いとお考えでしたが、私の案が通りあなた方忍に依頼することとなりました」

「……大名様って」

 何を考えているのかわからないと、カカシは絶句した。火の国と風の国との間に国交はあるが友好国ではない。風の国へ行くのであれば忍の同行は必須だ。

「大きな声では言えないが、大名様は世の情勢をご存知でない。……だが、あえて手薄な警護で向かうのは考えようによっては相手を信頼しているからこそとも言えるかもしれない。上忍ばかりを連れていくのは相手を警戒させる可能性もある。そこで……下忍の小隊であれば護衛に就いたとしても風の国に対する非礼はないと考えました」

「……お見逸れいたしました。そのような胸の内がおありでしたか。申し遅れました、私ははたけカカシ。第零班の隊長および教官です。で、コイツらが」

「うずまきナルトだってばよ!」

「うちはサスケだ」

「日向ヒナタと申します」

 カカシの目配せで各々挨拶をした。

「……うちはと日向といえば忍の名家。うずまき……それも聞き覚えがある」

「お話が早い。コイツらは忍となった日こそ最近の事ですが、実力は中忍レベル……いえ、それ以上のことと自負しています」

「……お祖父様、今回の任務の件、すでにお話されていたのですか?」

「いや、それはないの。話はおまえからときめていたからの」

「運が良いようですね……。大名様の出立なさるのは四日後となります。それまで私どもの屋敷では自由にお過ごしください。部屋も邸内に準備しています」

「え!!……落ち着かないってばよ。もっとさ、ここの門番してた人たちいるじゃん。その人たちと同じような部屋でいいってばよ」

「ナルト……。すみません、好き勝手言ってしまって」

「いえ、そのように手配しましょう。ですが、武士の屯所に女性は置けません。ヒナタさんは母屋の方でお過ごしください。それに彼女一人では心細いこともあるかと……先生も別の部屋を設えましょう」

「あ、ありがとうございます……」

「ご配慮、痛み入ります」

 四日間、ヒナタとカカシは京の外れにある野山で修行をし、ナルトとサスケは屋敷に住み込みで働いてる武士という者達と仲良くなっていた。

 

 翌朝、ヒナタは視線を感じて目を覚ます。

 廊下の方を見ると、小さな足音と布を引きずる音がした。几帳の端に何枚もの布があり、それがだんだん几帳の影に隠れていくのが見えた。

「誰……?」

 ヒナタは几帳の裏を見ると、そこには床に付くほどの長い髪の少女がいた。ヒナタに気づくと慌てて扇を取りだし顔の半分を覆う。

「わ、わらわの名は、スミレ」

 その少女が着ている物は、この京の暮らしをよく知らないヒナタの目にも豪華にうつる。そして少女の頭には冠のような髪飾りがある。すぐにこの屋敷に住まう子どもだと推測できた。年齢はおそらく六歳ほどだろうか。

「わたしはヒナタと申します」

「ヒナタ、……とな。暖かい良い名じゃの」

「ありがとうございます」

「……きめたぞ!朝餉はヒナタと一緒が良いのじゃ!」

「えっ……」

 布越しにきゅっと腕を手を掴まれると、その小さな手を振り払うことなどできない。ヒナタはか弱い力で引かれるがままだ。

「コブシ、わらわとヒナタの朝餉を持ってきてくれ」

「え、ええ……かしこまりました」

 渡殿すれ違った女房に対し、スミレはそう指示した。向かうは母屋の北の対。そこにはスミレの部屋があった。ヒナタもスミレに腕を引かれて腰を下ろす。

「ヒナタも忍か?」

「……はい」

「めのこの忍もいるのじゃな……。おもしろい。そちの話を聞かせてたも」

 スミレはその大きな瞳を輝かせ、身を乗り出してくる。

「わたしの話で良ければ」

「まことかの?うれしく思う。……わらわはこの屋敷から出ることは許されぬゆえ」

 ヒナタは里の機密事項には触れないよう、主にアカデミーの頃の思出話を語った。そして朝餉を終えると、スミレはお気に入りの絵物語を床に広げて見せた。

 その頃、カカシはヒナタを探していた。修行をする約束をしており、ヒナタの部屋を訪ねるも裳抜けの空。しかしカカシは忍だ。ヒナタの居所などすぐにわかる。

「ヒナタ、修行に行こうか~」

 カカシは几帳の影からひょっこり姿を現した。

「先生……」

「ヒナタ、わらわは一緒に遊びたいのじゃ。遊んでたも……」

 スミレはヒナタにぎゅっとしがみついた。

「ごめんね……これも仕事なの。わたしはナルトくんやサスケくんなんかと違って強くないから」

 ヒナタはスミレの腕をそっと解いて立ち上がった。

 

 ヒナタはカカシが見つけたという修行場所へと向かった。

「ヒナタ、あの子にえらく気に入られたみたいだな」

「すみません、先生。断れなくって……」

「や、それはいいんだよ。あの子、もしかすると次の大名夫人かもなぁ」

「え?」

「この藤原家は有力な政治家だ。代々、家に産まれた娘は大名家に嫁ぐことが多いんだよ」

「そうなんですか……」

「……ここだ」

 京の外れにある山の裾野。人気もなく集中できそうな場所だ。

「先生、どんな修行をするんですか?」

「木登りだよ」

 ヒナタは首を傾げた。木の上に登ることは可能だが、カカシのいう修行は何回も木登りをして体を鍛える修行かもしれない。しかし、カカシの言う木登りはヒナタの考えていた一般的な木登りとは全く質の異なるものであった。

「まず、チャクラを足に集めて、木に足を付ける。そしてそのまま歩く。……簡単だろ?」

 カカシは木の枝に逆さにぶら下がった。その足はしっかり枝に吸い付いている。

ーー白眼!

 白眼でカカシのチャクラの流れを見ると、足に流れるチャクラを一定に保ち、そのチャクラで体と木を繋げている。おそらく、見かけよりも難易度は高い。

「……やってみます」

「よし。じゃ、登れた所までこのクナイで木の幹に印を付けてねー」

 ヒナタはカカシがやってみせた通り、木の幹に足を付けた。慎重にチャクラをコントロールし足を進める。

「……っきゃ!!」

 地上から二メートルの地点でヒナタはバランスを崩した。すかさずクナイで印を付け、受け身をとって地面に落ちた。

「この修行は理屈よりも感覚。回数をこなしたらきっとできるようになるさ。……じゃ、オレは離れるから、ほどほどに修行してくれ」

 カカシはそれだけ言うと姿を消した。ヒナタは木登りを再開した。確かにこの木登りができれば、戦闘時の動きにも幅がでる。

「ナルトくんとサスケくんに追い付かないと……」

 その目標が最強であることにヒナタはまだ気づいていない。

 

 一方ナルトとサスケは住み込みで働く武士の屯所で過ごすこととなった。

「……背中が痛ぇ」

 何故だか、京の庶民は布団を敷いて寝るという習慣がないらしい。どんな環境だよ。朝目を覚ましたサスケの第一声がそれだった。

「サスケェ!飯だってよ」

「……ナルト、お前はもうオレを巻き込むな」

「あんとき断れば良かったじゃん」

「そういう空気じゃなかった」

「サスケからそんな言葉が聞けるとは思ってもみなかったってばよ……いつも空気よまねぇじゃん」

「言いたいことがあるならはっきり言え。それにお前も人のこと言えねぇだろうが。……メシ行くぞ」

 ナルトが向かった先は、武士たちが使っている食堂のような場所だ。食事はセルフサービスのようで、机の上にお盆があり、その上に釡とおかずが装ってある。その場はナルトたちが現れると急に静かになった。

「邪魔するってばよー」

 すると、隣に座っていた青年が声をかけてきた。

「……ほらよ。椀だ。メシよそってやろうか?」

「ああ、ありがとうってばよ」

「すまない」

 サスケとナルトはお礼を言ってお椀を受けとると黙々と食べ始めた。視線が痛い。

「忍も普通にメシ食うんだな」

「兄ちゃんたちオレらを何だと思ってんだよ」

「忍って珍しいからさ。この京にいるかもしれないが、普段俺らの前に姿を現すことはないはずだ」

「ふーん。オレもここに来るのは初めてだから、全部珍しいってばよ」

「そうかぁ?」

「ナルト……これから三日間、何をするつもりだ?」

「うーん……。カカシ先生は好きに過ごして良いって言ってたし、ここの兄ちゃんたちの手伝いとか?」

「ん?お前ら、仕事でここに来たんだろ?」

「仕事は三日後からだってばよ」

 ヒナタが修行をしている間、ナルトとサスケは彼らの手伝いをすることとなり、Dランク任務で培った雑用スキルをフル活用した。

 一方、カカシは任務の下準備をしていた。大名行列ともなるとそのお供の人数は計り知れない。少人数で赴くのが効率的であるが、大名という立場ではそうもいかない。従える者の数が多ければ多いほど、その威厳を保つことができる。

 カカシは邸で書き物をしているヨリミチに声をかけた。

「ヨリミチ殿。大名様について行く人員と配置を教えていただけますか?」

「これはカカシ殿。こちらへどうぞ」

 大名行列は総勢五十名。これでも抑えた方だという。そして二列で移動するため、その列は縦に二十五名並ぶ。そして一人につき約八十センチと計算すると、大名行列の全長はおよそ二十メートルとなる。最前列には見目の良い槍兵や弓兵や騎馬隊が並び、守るべき大名の篭はその後ろであり列の中心よりもやや前方に位置する。後方は主に食料や衣類を運ぶ者という構成だ。

「ヨリミチ殿はどの辺りに?」

「私は大名様の輿の隣に」

「……よし、零班の配置を決めました。前方はナルト。騎馬隊の横に。それからサスケが行列の最後尾。俺とヒナタは大名様の篭の左右に付きましょう。ナルトに関しては、列から外れ、横に付いて平行に移動することとします」

「わかりました。問題ありません。そのように手配します」

「ありがとうございます」

 カカシはそれでは、と部屋を出ていこうとした。

「……そういえば、スミレ姫があなたに大層腹を立てていました」

「あはは……」

「姫が無理なことを申しておりませんでしたか?」

「ヒナタを修行に連れ出したのがまずかったでしょうか」

「……ああ、成る程。この屋敷には年若いめのこがおりませんので、スミレ姫も嬉しかったのでしょう」

 非礼を責められるのではないかとカカシは内心ビクビクしていたが、そういうわけではないらしい。カカシはホッと胸を撫で下ろした。

 その頃、ヒナタは黙々と一人で修行をしていた。木登りの高さは八メートルにまで達していたが、ヒナタは背の高い木を求めて山の奥へと向かった。

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