以降もいくつかのトラップがあったが零班は難なく対処し、大名行列は予定通り目的地に到着した。
「砂隠れの里とはなんか違うってばよ……」
肌に感じる乾いた風と照りつく太陽が、この土地は確かに異国だと思わせる。アルテは風の国の中でも有数の都市だ。風の国の国土の大半は砂漠で、その中にぽつりぽつりと緑と水の豊かな土地が点在している。人の居住地となり得るそれらの土地は局所的に栄えており、それぞれの民族による文化がその土地に根付いていた。
火の国の大和京は四方が巨大な河や険しい山脈という天然の城壁に囲われている。しかし、風の国の都市の周りにはそのような地形は存在せず、ただの砂地が続いている。そのため、都市は高い城壁で囲われていた。乾燥している土地柄、城壁には煉瓦が使われている。火の国では見ることのできない珍しい光景だった。
城壁の門が大きな音を立てて開く。その扉の先には多くの民家や商店が立ち並び、迷路のようになっている。対面にあるはずの高い城壁もかろうじて遠くに小さく見える。そしてこの都市の中央に位置するであろう場所には大きな塔が建っており、その周囲には厳格な雰囲気を纏った城が建っていた。その周辺一帯は草木が溢れている。農作物も作られているようだ。
門の影から、白い布のような服と被り物を纏った年若い青年が現れた。浅黒い顔だけが布の影から覗く。
「お待ちしておりました。これより私が城まで案内いたします」
ここで火の国の大名に何かあれば風の国の立場が悪くなるため、一先ず妨害を受ける可能性は低い。しかし、事故に見せかけた暗殺を仕掛けてくる可能性がないわけではなく、まだ警戒を解くことは許されない。
市街地には多くの住民がおり、火の国の大名行列を一目見ようと押し寄せていた。風の国の兵士が街道の人払いをし、行列が進行できるよう対応する。進む道は曲がり角が多い。それに加えて市街地の店舗や住宅は種類がいくつかあるとはいえどれもが似ており、案内者がなければ都市の中央部へ到達するのは難しいだろう。
(……ここは要塞都市。何も起こらなければいいが)
サスケは計算し尽くされた市街地の作りを見ながら、あらゆる事態を想定する。外からの侵入者の進軍を遅らせるための迷路のような街道。そして待ち伏せできるほどの広さをもつ城下の田園。逃げるものも捕らえて逃がさない要塞だ。忍であれば問題ないが、一般人ならば戦いながら市街地を抜けるのは難しいだろう。
市街地と農耕地の境界には小さな門があった。閉じてはおらず、普段から開放されているようだ。風の国の青年は立ち止まり、振り返った。
「これより先に向かうのは火の国の大名様と側近の方だけとなります」
これは事前に通告されていたことだ。ヨリミチと零班、それに大名の世話係三名と秘書が同行すると決められている。ナルトは印を結び、影分身を三体を城外に残した。
遠くからは見えなかったが、農耕地はなだらかな丘になっており、美しい棚田が広がっていた。その頂上に巨大な石造りの城が聳えている。
門から城に至るまで徒歩で半刻程。風の国の青年を認めると、門番は斜めにしていた槍を縦にする。城門の中には堀があり、その堀にかかった石橋の先にまた門が見えた。堀の水は青く透き通っており、その水には流れが見える。
「すごい……」
ヒナタは感嘆し、白眼で城内の様子を探った。この水は地下から涌き出ていた。水脈はこの城を中心に都市全体に広がっている。砂地の中の稀なる肥沃な土地に、都市が発展したと考えられる。
城内へと入ると、先導していた青年は被り物を外し頭を垂れた。短髮の涼やかな青年だ。
「改めまして、私は風の国の大名補佐官・アグリと申します。遠方よりの御来訪、歓迎いたします。これより宿泊して頂く場所へご案内します。今宵は歓迎の宴を催しますので、それまでゆるりとお寛ぎください」
案内されたのは城の客室。城自体が四つの建物を繋げたような造りで、火の国の大名のために一棟全て貸し切り状態だ。零班には個室がそれぞれ宛がわれたが、ナルトたちは広間のソファに座っていた。
「……どうした、ナルト」
ナルトが腹部を抑えている。
「腹が疼くんだ。アイツもここにいるってばよ」
「アイツ?」
「我あ……、いや、一尾だ」
ナルトの腹の中のチャクラが、近くに存在する本体と呼応している。
サスケとナルトの会話の中に「一尾」と確かに聞こえたが、カカシは聞かなかったことにした。協力を求められたならば手を貸すが、その会話は明らかに二人だけのものだ。
歓迎の宴は、城中央にある塔の下にある庭で催された。火の国、風の国の大名は円形のテーブルに直角に座り酒を交わしていた。周囲には其々の取り巻きが控えている。忍はいくらか離れた所に待機した。ナルトはちょうど対角線上に、我愛羅の姿を捕らえていた。不躾に視線をぶつける。
そして彼の隣にいるのは、砂隠れの里の上忍、バキだ。彼はかつて木ノ葉崩しの計略で重要な役を担った砂隠れの里きっての忍だ。彼がこの場に居るということは、今回の会談は砂隠れの里にとっても大きな意味を持つのだろう。
宴の後、食事を済ませるとナルトとサスケは急遽火の国の迎賓館となった城の棟の外に出た。その庭には砂の土地とは思えないほどに緑が生い茂っていた。
「下手に動くとまずい」
「この棟からは出ねーよ」
砂漠の夜は日中とは真逆で冷たい風が吹く。自分を、いや、自分の中のモノを呼ぶ声は近い。
ナルトは棟を繋ぐ石橋の前に立った。その先に、我愛羅の姿を捕らえた。
「おーい、話そうってばよ!」
ナルトは声を張り上げた。
我愛羅は静かにナルトを一瞥すると、ナルトのいる橋の方へと足を向けた。
「……煩い」
警戒されているのか、我愛羅の周囲には砂が浮かんでいる。
「だって、遠くに居たからさ。オレってばうずまきナルト。将来火影になる男だってばよ。よろしくな!そしてこいつはサスケ」
サスケは小さく会釈した。
「……何故、火影になりたい」
「それがオレの夢だからだってばよ。オレの父ちゃんや母ちゃん、他にも多くの忍が次代に託した宝、それが里だ。オレはそれを守りてぇんだ。そんでもって次代に継承する」
我愛羅の目がわずかに見開かれた。ナルトの言うこと全てを理解できたわけではないが、自分よりも遥か先を見ているということだけはわかる。
「……お前たち、何者だ。初めて見た時から、頭が疼いて仕方がない」
「お前と同じだ。オレの中にもいるんだってばよ」
ナルトはそう言ってニカッと笑った。
我愛羅は、初めて見たときからなんとなく気づいていた事が事実であることを確信した。彼は、自分と同じ人柱力。だが、明らかに違う類の人間だ。
「それで……よく笑っていられるな」
あまりに強大な力は人々にとっての恐怖の対象に変わる。人柱力の認識はおそらくどこも変わらない。
「オレだって、ちっせー時は泣いたりしてたし、化け狐とか言われてなにクソってムカついたこともあるし、恨んだこともある。みんな尾獣の事しか見てねーの。正直キツかった。でも、サスケがいたから。……コイツってばムカつくほど何でもできてカッケーから、オレの目標になった。……要するに、友達とか人との繋がりがあるから笑っていれんのかもな」
かつて、我愛羅にも信頼していた者がいたが、その者は我愛羅を暗殺しようとした。ナルトの言葉をそのまま受け入れるのは難しい。
「……」
「じゃ、またな!お前のお目付け役が探してるってばよ」
同じ年代の者と話すのは久方ぶりで、我愛羅はナルトの去っていった方を見つめていた。
「我愛羅、こんな所で何をしている」
「……何も」
バキの言わんとすることは分かっている。我愛羅は踵を返した。
ナルトは全くそういった素振りを見せなかったが、石橋の前で対峙してわかった圧倒的な力の差。あまりに奇怪で、いつになく人の言葉に耳を傾けてしまった。
翌日、母屋の会議室にて大名会談が始まった。その人員構成は、風の国の大名と各部署の重役五名と火の国の大名と秘書とヨリミチだった。
「……ふむ。この件に関しては、忍が適任だろう。君、そこに座りたまえ」
火の国の大名は、不意に振り返ってカカシを手招きした。
「は……?!」
カカシは左右を見ると、ナルトもサスケもヒナタもこちらを見ている。
「君しかおらんだろう。早く来たまえ」
風の国の大名も、バキを呼んでいた。
カカシはすごすごと椅子に腰掛けた。
「火と風は同盟を組むことにしたぞ」
「……はい?」
「ヨリミチも風の国の参謀も強く推すからのう……。隠れ里の方も、そのつもりでな」
「同盟を組む、ということはどうなるんでしょうか……?」
これまで、戦時中外の同盟は組まれたことがなかった。カカシはまさか自分が歴史を塗り替える瞬間に立ち会うとは思ってもみなかった。
「どうするかは隠れ里同士に一任する。間違ってもまた戦を起こすためにこのようなことをしているわけでない。その点、履き違えぬようにな」
「ここに影たちは居らぬが、同盟の印にひとつ」
風の国の大名はテーブル越しに手を差し出した。隣のバキに目配せをする。手を出すバキに習って、カカシも手を出し、各々が握手を交わした。
カカシはちらりとバキの顔を伺うと、彼も寝耳に水であったのかどこか動揺しているようであった。
会談が終わり、棟に戻ると、零班は各々が堪えていた感情を解き放った。
「ええええええええー。なんなのこれ?!オレ、こんなこと聞いてないんだけど……!」
「カカシ先生、連絡蛙出したってばよ!」
「……まずは報告だな。ナイスフォローだ」
カカシは疲れた顔でグッと親指を立てた。
「カカシ先生……」
ヒナタが心配気に報告用の小さな巻物を差し出した。
「どう報告するんだ?」
「風の国との同盟が決まり、隠れ里の同盟の内容は一任された、と。はー……これからもたくさん話し合いがあるんだろーね。キナ臭い任務だとは思ってたけど、ここまでとはね……。お前ら、帰るまでは気を抜くな」
ナルトはその日の夜も棟の外に出た。
「サスケくん、今日は一緒に行かないんだね」
「ヒナタ……前から思っていたことだが、何か勘違いしていないか」
「だって、いつもサスケくんとナルトくん、一緒だから」
ヒナタは自分で言っておきながら、二人の関係を考えれば一緒にいることは当然なのに何を言っているんだろうと我に返り自己嫌悪する。
「……そうか?」
サスケはまだヒナタが大きな勘違いをしていることを知らずにいた。
「そうだよ」
ヒナタは小さくため息をこぼす。
ナルトは昨日と同じ場所を訪れていた。
「おーい!」
ナルトは我愛羅を見つけると手をブンブンと振って叫んだ。我愛羅はしばらくどうするか思い悩んだが、ナルトのいる石橋の前まで歩いてきた。
「……だから、夜更けに大きな声を上げるな」
「同盟!良かったってばよ。お前ともどっかでまた会えるかもな。……なあ、オレの名前、覚えてっか?」
「うずまきナルトだろう」
「よし。また会う日まで覚えててくれよな」
「……我愛羅だ」
「覚えとく」
我愛羅の名は知っているのだが、まさか我愛羅が自ら名乗るとは思いもしなかったナルトは破顔した。
「ああ」
「ん!」
ナルトは石橋の中央にまで足を進め、手を出した。
「なんだ」
「人柱力同士の友達の証!オレたちも同盟だ。んーと……人柱力同盟ってやつ。これから他の人柱力ともぜってーダチになる」
「おかしな奴だな」
我愛羅も石橋に立った。
真っ直ぐな目で想いをぶつけてくるナルトに、我愛羅はいつの間にか懐柔されていた。
ナルトの手のひらが触れた瞬間、一尾の、我愛羅の中の一尾とは違うチャクラが流れ込んでくる。
我愛羅しかいない白い空間に、ぬいぐるみサイズの狸の化け物がいた。
「キエーイ!オレは、守鶴。お前の中のもんの一部」
守鶴がピョンと飛びついてきたかと思えば、身体の中に消えた。それと同時に記憶の波が押し寄せてくる。ナルトと拳を交えたこと。この身を助けられたこと。それから、共に戦ったこと。
ナルトは人の気配に気がつき、さっと石橋から離れた。
「……ナルト君。このような夜更けにどうしましたか?……おや、そちらは風の国の忍」
「ちょっと話してたんだ。年近いしさ」
「そうですか。仲が良いとは喜ばしい。私もここで待ち合わせているんですよ。……ああ、彼です」
「先客がいたか」
現れたのはアグリ。ナルトはピンときた。
「ヨリミチさん、この人が前に話してた風の国の友達?」
「そうです」
「俺たちのことを知っているのか。なら、今回のことも?」
「はい。全て話しています。彼らは今回の同盟の影の立役者ですよ。正に忍と言うに相応しい働きをしてくれました」
「そうか。やっぱ道中色々あったんだな」
「ええ、まあ……そうですね」
ヨリミチは苦笑を浮かべて言葉を濁した。
「……我愛羅、またな!」
ナルトは二人の邪魔をしたら悪いと、その場を後にした。
火の国の棟の広間のソファには、まだサスケとヒナタの姿があった。
「お帰りなさい、ナルトくん」
「ただいまってばよ」
ナルトはサスケの横にどかりと腰を下ろした。
「どうだった?」
「ムリヤリ友達になってきたってばよ」
「お前……どうやったんだ。殴り合いもなしに」
「ちょ、サスケ 、オレの認識って……」
「誰かと会っていたの?」
「ん?会談の時さ、でっけー瓢箪持ってたやついただろ。あいつ、我愛羅ってんだ。風影の子だ」
「そうなんだ。強そうな子だとは思っていたけど」
「あ、そうそう。ヨリミチさんとアグリが会ってたってばよ。友達なんだって」
「そうか。それにしてもこの時期に火と風の同盟……。大蛇丸が大人しくしていることが大きい。現風影も健在か」
「おーい。おまえら、返事きたぞー」
カカシは部屋からひょっこり顔を出すと、ドアの隙間から連絡蝦蟇が飛び出した。ナルトのもとへピョンピョンと近づいてくる。
「何て書いてあるんだってばよ?」
ナルトが持っていたあめ玉をご褒美として連絡蛙の口に入れると、蛙はポンと音を立てて姿を消した。
「えー……任務続行。近々火影と風影の会談の場を設ける。と」
「急にどうこうなるわけじゃねーんだな。意外にあっさりしてて面白くねーってばよ」
「当然でしょ……。オレは明日、砂隠れのバキって人と話すことあるから、お前らは念のため大名さんのことを頼むよ。明日も今日の会談の続きがあるからさ」
ナルトたちはその後、三日間に及ぶ会談の護衛を終え帰路につくこととなった。
砂隠れの忍とは城門で別れ、そこからは来たときのようにアグリが先導した。
サスケは異様な気配を感じた。後ろを振り返ると、農耕地と居住区を隔てる門が閉まっている。全身が総毛立った。瞬間、サスケの右目が紅く染まる。
「……っ」
敵の気配はないが、どこからか見ている可能性は高い。サスケは自身のチャクラを開放し、その身に纏った。
その重厚なチャクラはナルトやカカシ、ヒナタにも伝わり、緊張が走る。
「クソッ……!」
サスケは地面を蹴って飛び上がった。地面は泥と化し、兵や従者たち、そして路を行き交う人々の脚を捉える。
ナルトも異変を感じ取ったようで、大名行列を守るように九尾チャクラを薄く纏った影分身が五体程出現していた。
カカシやヒナタは泥沼に足を捕られぬよう、少しばかり高さのある所に移動する。
ヒナタは戦闘体制を取りながら周囲の様子を探った。
「……十人?それ以上…!?」
ヒナタの白眼の透視範囲外からその範囲内へ続々と忍が入ってくる。その数、十人余り。
忍とはわかるが、額当てはしていない。恐らくどこかの里の抜け忍と推測する。
「敵の狙いは……」
カカシは腰を落とし戦闘体勢をとりながら思考を巡らす。ここは風の国。それも主要都市の住居区だ。ただの妨害ならば住居区は避けるはず。
「砂の忍、じゃあないようだ。そして目的はこの同盟の妨害……。ヒナタ、奴らはここに来るぞ!」
「はい!」
ヒナタとカカシがいるのは大名が乗った籠の側。敵の強さは未知数。ヒナタの額に汗が伝う。
「カカシ先生!ヒナタ!無事か?!」
「ナルト……そのチャクラは、いや……まあ良い。ナルトの影分身だな。お前は守りを頼むよ。こっちが護衛する数も多ければ、敵の数も多い」
「いや、オレも援護するってばよ!守りなら他の分身がやる!」
八人の忍が一気に押し寄せてきた。ナルトは目にも止まらぬ速さで、敵の急所に拳を入れていく。
「ぐぁっ……!」
その手には九尾のチャクラが凝縮されており、それは皮膚を焼き細胞レベルで敵の体を破壊する。局所的ではあるが急所となると再起は難しい。
数が多ければ力のある者とない者との差が浮き彫りとなる。前者はナルトの攻撃を回避し大名の籠へ近づく。その先にはヒナタとカカシがいる。
突如として発生した霧の中から、クナイや手裏剣などの暗器の雨が降り注ぐ。
――八卦掌、回天
ヒナタはそれらを全ていなしてみせた。そこにナルトの風遁が相乗し暗器は地に落ちた。日向一族の白眼の視野は広く、逸早く物体の存在を感知できる。さらに瞳術の影響で身体能力は格段に上昇していた。
「この白眼に死角はありません!」
この頃のヒナタにその様な力があるとは思ってもおらず、ナルトは目を見開いたな。
「ヒナタ、やるじゃねーか!」
「ナルトくん…」
ヒナタの表情がパッと華やぐ。その一瞬の隙を敵は見逃さず、泥の刃がヒナタに向けられる。
――千鳥!
「ヒナタ、今は敵に集中」
カカシの右手は眩い光を放っており、チチチと鳥の鳴くような音がしている。ヒナタを目掛けていた泥の刃は雷を受け、粉々に砕けていた。
「はいっ」
一方、サスケは泥沼を作った術者を特定する。チャクラの性質を看破すればそう難しい事ではない。男は、まるで迷路のような市街地の路地裏に身を潜ませていた。
「隙だらけだな」
サスケは忍の背後に回り、耳元で囁く。その言葉が終わるや否や、サスケの写輪眼を見た男は断末魔の叫びをあげた。
「……フン、他愛ない」
サスケは巻物を取り出し封印する。この男にはまだ聞かなければならないことがある。
我愛羅は、城の塔の上から門の向こうへ去っていくナルトたちを見ていた。我愛羅もナルトと同じく行動を制限されている身。火の国から遥々来た彼らに対し、羨望の気持ちもあった。
城壁の向こう側はあまり見えないが、チャクラを感じた。我愛羅は印を組み、目を閉じる。すると、城壁の向こう側に砂で作られた第三の目が現場を捉えた。直ちに助けに行きたいと思ったが、我愛羅は一呼吸おいてバキの部屋へと向かった。すれ違う誰もが、城内を駆ける我愛羅の姿を振り返った。
「バキ!ナルトたち……いや、火の国の大名行列が襲撃を受けている。国内で問題が起こるのはまずいだろう」
「ああ、行くぞ」
バキは横を駆ける我愛羅の顔色を伺った。その様子はいつもと何ら変わりはない。バキは我愛羅が下忍となった時からその様子を知っているが、他人のために動くような人物ではなかったはずだ。
我愛羅とバキが到着する頃には戦闘はもう終わっており、大名行列で歩いていた者たちは沼からどうにかこうにか這い上がっているところだった。膝から下は泥にまみれている。大きな蛾蟇が数匹、水遁と風遁を用いて泥を落としている。奇妙な光景だったが、我愛羅とバキは大名の籠の方へと急いだ。
「我愛羅?どうしたんだってばよ」
「襲撃に気づいて追ってきたところだ。この分では然程被害はないようだな」
「ああ、重傷者も死人もない」
「そうか」
「ありがとな」
サスケはそんな二人のやり取りを尻目に、我愛羅の隣に立つバキに声をかけた。
「捉えた忍はどうする?」
サスケは首謀者格の男をロープで入念に縛り、地面に転がしていた。その口には猿轡がされているが、意識はないようだ。
「砂隠れで尋問しよう」
「それなら、結果は木ノ葉隠れにも伝えてくれ」
「ああ、そうするのが筋だろう」
その後、バキの報告を受けた風の国の大名の計らいもあり、風の国の国境まで砂隠れの忍が警護についた。同盟を交わした以上、火の国の大名は国賓にあたる。国内で襲撃にあったのであれば、相応の対応をするのが道理。
大名行列の先頭が国の関所に辿り着くと、その歩みが止まる。
「これより先は国外となる。砂隠れの護衛はここまでだ」
バキは忍が聞き取れる程の声でカカシにそう言った。
「実は……来るときも襲撃というか、罠がいくつかあったんだけど、それも彼らの仕業と考えてもいいかな?」
「……そうか。何故今になってその事を?」
「や、何となくね。初めは砂隠れを疑っていたけど、今は違うと思うから。だったら情報は伝えておこうと考えたまでだ」
「承知した。私も里同士の信頼関係を築けるよう尽力しよう。……では、これにて」
バキは小さく会釈すると姿を消した。他の砂隠れの忍の姿もない。大名行列は再び進み始めた。目指すは大和京。