だから付き合ってないってばよ   作:冬乃菊

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【注】捏造、独自解釈注意。


宗家と分家

 出立する前日のこと。どういう風の吹き回しかヒアシが日向邸の演習場で修行をしないかとヒナタに提案したようで、ナルトとサスケはヒナタに誘われ二人揃って日向邸に向かっていた。

 日向邸を訪れるのはヒナタを修行に誘うため少し立ち寄ることを除くと、アカデミー卒業の日に行ったきりだ。

 

「ごめんくださーい!ってばよー」

 荘厳に聳え立つ門の前でナルトが思いっきり大声をあげ、サスケは両手で耳を塞いだ。

「……本家の邸の前で大声を出すな。迷惑だ」

 日向邸の門の前に立つ二人を、同じ年頃の少年が怪訝な目をして見ていた。

「あ、ネジ」

 ナルトは思わずそう言葉を漏らすが、こちらは知っていたとしても、面識がないためネジはナルトやサスケのことを知らない。表情に不機嫌さが増し、サスケはため息をついてナルトを小突く。思った事をそのまま口に出すのはいい加減やめて欲しい。何十年と直らないため期待するだけ無駄だが。

「ナルトくん、サスケくんっ、遅くなってごめんね!……ネジ兄さん。おはようございます」

 日向邸の門から出てきたヒナタは、ネジの姿を認めるとわずかに後ずさった。

「おはようございます、ヒナタ様」

 ヒナタは気まずそうに目を伏した。この二人の関係性は、聞かずともわかる。

 ナルトはコホンと小さく咳払いをする。

「これから修行するんだけどさ、お前もどうだってばよ」

 ネジは思ってもみないナルトの提案に少し考える素振りをみせると、口角を上げた。

「面白い」

 ヒナタは勝手に進んでいく状況にただ身を任せる他ない。今日は元よりヒナタの特訓に付き合うという約束だった。

 

「お願いします」

「ああ」

 ヒナタの場合、ナルトが相手では緊張してしまうため、まずはサスケがヒナタの相手となった。ヒナタはサスケの実力を知らないが、自分よりも遥かに強いことだけは理解している。

 日向邸の庭にある修練場に移動し、ヒナタとサスケはその中央に立つ。

(サスケくんは私の恋敵、サスケくんは私の恋敵、サスケくんは私の恋敵、サスケくんは私の恋敵……!)

 心根の優しいヒナタはこうして修行のために仲間と組手をすることにも苦痛が伴うため、こうして自己暗示をかける必要があった。本人は至って真剣にそう思っていることだが、サスケはヒナタの恋敵にはなり得ない。

 やがて、ヒナタの瞳に力が宿る。

「いきます!……はあっ!」

 ヒナタはサスケのことをナルトの恋敵のつもりで打ち込んだ。サスケはまさかヒナタがそのような自己暗示をしているとはつゆとも知らず、涼しい顔で拳を受け流す。

 

 ヒナタの身体能力はアカデミー卒業以来、この数ヵ月で格段に上がっていた。カカシとの修行の内容は主に身体能力やチャクラコントロールを高めるための基礎訓練であったが、どういうわけかチャクラの性質変化までも会得している。

 サスケは怒涛の攻撃の中にあってもそのスンとした表情は崩れない。流れるような動きで器用にヒナタの攻撃をかわす。ヒナタの攻撃が止むと、今度はサスケが拳を繰り出す。ヒナタはその拳や蹴りを柔拳を用いて捌く。テンポよく繰り出される技に、時折一撃が入るがヒナタはそれにも対応した。

「っよし!いいぞー!ヒナタァ!」

 目に見えてヒナタの動きが良くなっており、ナルトは嬉しくなってエールを送った。隣に座っているネジはそんなナルトをちらりと横目で見る。

「修行と言っていたが、オレは見ているだけか……」

「今日のメインはヒナタだってばよ」

 

 気配に気づき廊下を見やると、奥からヒアシとナルトよりも少し年上のように見える数人の少年が現れた。

「ヒアシのおっちゃん、お邪魔してるってばよ」

 ヒアシの後ろに控えている日向一族の少年たちの口角や目元が僅かに震えた。ナルトの「ヒアシのおっちゃん」という言葉がどうにも可笑しかったらしく笑いを堪えるのに必死のようだ。

「今日はよく来てくれた。ネジ、もうここにいたか。お前を探していたところだ」

「おはようございます。門の前でヒナタ様とお会いしたので。……トクマ兄さん、コウ兄さんもおはようございます」

 ネジはヒアシの姿が見えると、すぐさま正座し姿勢を正した。分家の中では年の近い年長者に対して兄さんや姉さんと敬称を付けることが多い。

 

 ヒアシに気づいたヒナタとサスケは組手を中断し、縁側へと移動した。

「父様」

「お邪魔しています」

 ヒナタは肩で息をしている。後ろのコウやトクマにもヒナタは会釈をした。

「うむ。お前は少し休憩しなさい」

「はい」

 

「……前ん時みたいにさ、ヒナタとヒアシのおっちゃんの仲ってそう悪くないよな」

「ああ。今のヒナタは日向宗家の嫡子として申し分ない」

 

「サスケは、まだいけるだろう。ここにうちの若い衆を連れてきた。君らの手合いを……組手でかまわない。是非とも見せてくれないか」

 ネジは目を丸くしてヒアシを見上げた。ナルトとサスケは顔を見合わせ頷く。

 

 ナルトとサスケは忍術を使用しない体術のみの手合いを始めた。そのスピードは下忍とは思えない程のもので動きも柔軟でありながらパワーも申し分ない。コウやトクマにも、わざわざ自邸に招いてまで彼らの手合いを見せたヒアシの意図が読めた。

「……あの二人は何ですか?」

 呆気に取られていたコウは、ようやく口を開いた。

「ああ、彼らはアカデミーの頃からのヒナタの友人で、今は同じ班のメンバーだ。ヒナタの任務入りを認めたのも、共に任務を遂行することで良い刺激となると考えたからだ。……それにナルトは、旧友の忘れ形見でもある」

 ヒナタはナルトの両親のことを知らない。まさかヒアシの口からそのような話が出るとは思いもしなかった。

 

 コウやトクマの顔を見て、ヒナタはくすりと笑った。

「ナルトくんもサスケくんも凄いでしょう。だから、みんなで修行するときは、カカシ先生はわたしに付きっきりになるの。ナルトくんやサスケくんには、お前らには教えることは何もないって」

 それはただ口実であって、ただイチャパラを読みたいだけだとはヒナタ少しも思っていない。

「あのカカシ上忍にそこまで言わせるとは……」

「中忍試験に出たら、合格しても中忍どころではないだろう。暗部にでも選抜されるんじゃないか?」

 ネジはナルトとサスケの手合いを食い入るように見ていた。日向一族の中では天才といわれているネジも、この圧倒的な力の差は受け入れる他ない。

 ナルトがフェイントを入れてテンポをずらしても、サスケはそれに付いてくる。その逆も然り。激しい手合いに見えるが、二人は笑っていた。まるで、演舞のようにも見える。

「美しいな……。同じ力量の、それも熟練した者同士が組手をすると、あのように、舞のようにも見えることがある。……稀なることだ。かつて私にもそのような者がいたが、今はもう、この世にはいない」

「ヒアシ様……?」

 ヒアシは二人の手合いに目を向けたまま、言葉を続ける。

「一人では技を競い高めることはできぬ。……相手がいて初めて、その道を極めることができる。私にとってそれは、……弟であった」

 ナルトとサスケに重ね見るは、自身と弟との姿。幼い頃はあのように笑い合い、互いに競い合っていた。それがいつの日か宗家と分家という括りが互いを引き裂き、笑い合うこともなくなったが、それでも手合いの最中だけは、心を通わせたような気になれたのが救いであった。

「ネジ……お前が父の死を悼み、私を恨む気持ちが日増しに大きくなっていることは知っている。……本当に、お前には申し訳ないことをした」

 ヒアシがヒザシの死に対しそのような感情を抱いていたとは思いもよらず、ネジは悲痛の色を浮かべるヒアシから目を逸らすことができなかった。

「一族の当主が……そう易々と頭を下げないでください」

 

 修行をするつもりが、なぜかヒアシが分家のネジに対し謝罪することとなってしまった。それを目の当たりにしたヒナタとコウ、トクマはこのなんとも言えない雰囲気の中どうしたものかと目を泳がせていたが、それはナルトのよく通る大きな声で吹っ飛んでいった。

「もーいいだろ?!」

 いつまでやれば良いんだと、ナルトは両手を上げてヒアシの方を向いて叫んでいる。

「ああ、やはり思った通りだった。娘からの話でもしやと思っていたが、これ程とは思わなかった」

「見せもんじゃないけどさ、ヒアシのおっちゃんに頼まれたら断れねえってばよ」

 ヒアシが知るはずもないが、ナルトにとっては義理の父となった男だ。血は繋がっておらずとも、家族という繋がりを渇望していたナルトには逆らえるはずもない。

「ヒナタもけっこう強くなっただろ。ヒナタ、あれは親父さんに見てもらったのかよ」

「ううん。ちょっと恥ずかしいから、まだ……」

 ヒナタはちらりとヒアシの顔色を伺った。

「じゃあ今良い機会だろ」

「ええ……」

「ヒナタ。私は何も聞いていないが」

「あの岩とか良いんじゃねーか?」

「父様、良いですか?」

「あ、ああ……構わん」

「わかりました」

 ヒナタは修練場の隅にある岩の前へ移動した。

「えいっ!」

ーードゴッ

 可愛い声とは反対に、濁音が響いた。

 一瞬の出来事だった。まさかそういう意味で庭石を使って良いかと聞かれるとは考えもしない。ヒナタの掌底は最早岩をも砕く威力だ。柔拳を応用した手のチャクラ穴からのチャクラ噴射と、雷の性質変化を応用したただの掌底。チャクラコントロールができれば岩の分子にチャクラを流し込み破壊することができる。この殺傷能力は極めて高い。

「姉様すごーい!!どうやったのですか?」

 いつの間にかいたのか、ヒナタの妹のハナビがヒアシの横で興奮気味にピョンピョンと飛び跳ねていた。

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