カカシ率いる零班がまたしても伝説を作った。下忍班にしてSランク級の他里の抜け忍を連れ帰って来たという。その抜け忍の名や所属していた忍里については一般には明らかにされていない。
火影執務室にナルトの口寄せの術により蝦蟇が出現したかと思えば、その中から現れたのは木ノ葉隠れの里のものではない額当てをした人物であった。
「なんとのォ……」
自来也は屈強な男と可憐な佇まいの少女、いや、少年を目の前にし、どうしたものかと思案する。
通常、他里の抜け忍であれば即刻拘束し尋問にかけるところだ。また、協力関係にある里であれば引き渡すのが通例。
ところが、霧隠れの里のある水の国と火の国との国交はあるものの友好国ではない。故に霧隠れの里と木ノ葉隠れの里とはほとんど交流がなくけして良いといえる関係ではない。霧隠れの里は徹底した秘密主義でもあり、他里との交流もほとんどないという。また、霧隠れの里には抜け忍専門の暗殺部隊が存在するほど抜け忍に対する処遇は重く、再不斬と白を引き渡した場合には彼らがどうなるかは明白だ。
「再不斬と白はヘンなことはしねーってばよ。オレが責任とる」
射抜くような真っ直ぐな空色の瞳。だが、一介の下忍にとれる責任などありはしない。この場でおかしな事を言っているのはこのナルトだ。
自来也はあの日の晩の、九尾の言葉を思い出した。「信じてやれ」と。
「彼らは、霧隠れとの取り引きに使える手札としても有用よ」
大蛇丸はくすりとほくそ笑む。このような大きすぎる例外を認めるには誰しもが認める「利用価値」も必要だ。
「……責任ってもんは上に立つ者がもつもんだろう。全責任はワシがとる」
自来也は二枚の紙と筆を手に取り、さらさらと筆を滑らせる。一枚は火影付きの秘書に手渡し、もう一枚は封をしてイタチに差し出す。
「……またか」
サスケは全てを察し、自来也にじとりとした視線をやる。しかし、元はといえばナルトの無茶振りや己の選択が招いた結果でもあり嘆息する。
「フガクによろしく伝えてくれ。……その辺の牢よりも安全だろう」
なにをどうよろしく伝えろと言うのか。
再不斬と白は里抜け当時の霧の国の情報を渡す代わりに監獄行きから免れ、うちは警務部隊の隊長の自宅に軟禁されることとなった。
「雪一族の白といいます」
「霧隠れの里の抜け忍、桃地再不斬だ」
二人は玄関先でその家の主であるフガクとミコトに深々とお辞儀した。
「……サスケ、イタチ、さてはお前たちもグルだな」
フガクは五代目からの書状に目を通すと、頭を抱えた。
「五代目が、その辺の牢よりもここの方が安全だと」
「勝手を言ってくれる……」
「あなた、そんな堅いこと言わないで。家族が増えたと思えば良いのよ。ええと……モモチさん?」
「……俺のことは再不斬と」
「再不斬さんの苗字は可愛いですからね」
「それを言うな」
「それじゃ、少し残念だけれども、再不斬さんと呼べば良いのね。隣の貴方、可愛いわね。私、娘が欲しいと思っていたのよ。ふふっ」
「期待を裏切るようで申し訳ないのですが、僕は男です」
「ミコト……この人はな、無音殺人術の達人で、隣の子も見かけによらず手配書にも載るような者だ。その上水影の暗殺を企てたとされる」
「……まあ」
「お二人とも安心なさって。霧隠れの情勢が安定したら、少しはこの二人の正当性が証明されるはず。当時の水影は何者かに操られていた可能性が高いという確かな筋からの情報よ」
忍界でも指折りの忍である五影の一人、水影を操るような忍がいるとはあまり考えたくない。フガクは頭痛がした。
「父さん、ナルトも火影も再不斬と白のことを信頼している」
「……まったく数年前を思い出すな」
フガクはチラリと大蛇丸を見た。大蛇丸はその視線に気づき口角を上げる。S級の忍であれば普通の監獄を抜け出す事など容易だ。だがこのうちは家は違う。クーデターが未遂に終わって以来、あの大蛇丸がしばらく軟禁されていた事実も手伝い、界隈では安定のうちはさん家と呼ばれるようになっていた。
「はぁ……二人とも、ここに来たからには家の手伝いはしてもらう。外出する時は必ずうちの家族の誰かを同伴することとする。五代目様からの許可が降りるまではな。よろしく」
これから再不斬と白のうちは家での奇妙な共同生活が始まる。
かつて再不斬は言った。
ーーもし忍としてお前に足りないものがあるとしたら、その顔だろうな。
白は困ったように顔を顰めるフガクを前に、再不斬の言葉を思い出していた。
常に一所に留まることのない生活をしており荷を軽くするためか、白の衣類は霧隠れの追い忍部隊の装束と桃色の着物のみ。霧隠れの装束は目立ちすぎ、かといって人の目を欺くために女性のなりをする必要もないと、フガクはこの家で最も背丈の近いイタチのお古を充てがった。
「ええと……フガクさん、ありがとうございます」
世の中は不思議なことばかりだ。イタチも、サスケも母親似で人の目をひく容姿であるが、この白という少年はそれとはまた違った類のものを持つ。イタチのお古に着替えさせたところでそれは変わらない。
「なに、礼には及ばん」
「今日は、大蛇丸さんの研究室まで付き合ってくださるんですよね」
「その前に職場に顔を出す」
細かい事を言えば昨日より与えられた任ではあるが、一族を挙げての監視となれば他の隊員にも彼らのことを伝えておく必要がある。
屯所の広場に集う三十名程の男たち。彼ら全てが写輪眼を有するのかと、白はそんなことを考えながら眺めていた。
「敬礼!……本日も、気を引き締め任にあたるように。直れ」
彼らの視線はフガクではなくそのやや後ろに立つ白へと注がれていた。
「昨日、五代目火影より警務部に達しがあったように、本日より特例の任を承った。……一人は霧の忍刀七人衆、桃地再不斬。顔はビンゴブックを見れば判るだろう。もう一人はこの白。彼ら二人を俺の自宅で軟禁、かつ監視することとなった。期限は未定。五代目様は彼らに危害を加えない方針だ。監視については俺だけでなく一族全員で行うゆえにここで話したまでだ。よろしく頼む。……散」
常ならばフガクの話が終わると同時に隊員たちは散る。しかし今日は常ならず、隣り前後同士で話が始まり散る様子はない。
フガクは予想していた事に深くため息をつく。
「白は見かけによらず氷遁の血継限界をもつ才児だ。……このような任を預かるということは、それだけうちはは里からの信を得ているということだろう」
里からの信を得る。その言葉に警務部隊の者たちの目の色が変わる。数年前までは一族の誰しもが諦めていたことであったがために、この厄介な任を預かったことは一族にとってはある意味では良いことなのかもしれないとフガクはフッと笑みを零した。
白にはこの里とうちは一族との因縁について知る由もない。それでも彼らの一族や里への並々ならぬ思いは感じることができた。
「……皆さん、これからよろしくお願いします。監視対象の僕が言うのもなんですが」
微笑を浮かべそう曰う白の物腰の柔らかさからはとても強者とは判らないが、フガクの後について歩く姿を見ると一切の隙がないことから只者ではないことが判る。皆、白に話しかけたくてウズウズしていたがフガクの手前ということもありその後ろ姿を見送る他なかった。
大蛇丸の研究所は木ノ葉病院の地下にある。フガクにとっては嫌な思い出が残る場所だ。サスケが毒耐性をなどと言い出したがために、イタチを筆頭に家族総出で毒味を試みたのだ。毒状態からの回復するまでの期間はどうも年齢と反比例するらしく、フガクは半年程体調不良で悩む羽目となったことがある。
長い階段を降り、白い無機質な扉を三度叩くと中から返事がありその扉を開く。
「いらっしゃい。待っていたわ」
白衣を身に纏った大蛇丸の手には、注射器と採血管の入ったトレイが見えた。
フガクの監視の元、白は大蛇丸に促されるがまま椅子に腰を下ろし左腕を台の上に差し出す。
「あら、思い切りがいいのね。もっと怖がってもらってもいいのだけれど……」
「僕がどうなろうと構いません。それに、血を抜くだけと聞いていますし」
霧隠れの里の抜け忍である再不斬と共に、木ノ葉隠れの里には匿ってもらっているようなものでもある。血液から得られる情報が大蛇丸にとってどれほど価値のあるものか知らないが、少なくとも自分に害があるとは思えない。
「再不斬が聞いたら泣くわよ」
例えば針に毒が塗られているとか、そういう心配もしないのかしらと、大蛇丸は手慣れた手つきで採血を終えた。
採血を終えると、大蛇丸は改めて白を見る。
「本当に綺麗な子ね。……サスケくんとはまた違って」
恙無く採血も終え、少し気が緩んだところで大蛇丸から聞き捨てならない言葉が聞こえフガクは非難を交えた視線を送る。
「大蛇丸様……」
大蛇丸は自来也の五代目就任と共に、その補佐の座に就いた。少し前までは大蛇丸と呼び捨てていたため未だ敬称を付けるのには慣れない。
「そう警戒しないでちょうだい。本当に少し血をもらうだけだから。……あなたの着る物を心配していたのだけれど、不要だったかしら。よければ持っていきなさい」
「大蛇丸さん、お心遣い感謝します」
「美しいものは愛でて当然よ」
「……」
フガクはもう諦めた。
「それで、今日はあなたの尋問も兼ねているの。このまま進めても良いかしら」
「はい。ご随意に」
「まずは、あなた自身のことを自由に話してちょうだい」
「僕は……水の国の小さな村に生まれ、母は雪一族であることを隠し生きていました。あれは……四、五歳の頃、何も知らず父の前で能力を見せてしまい、母が雪一族と知った父は母を殺し、僕は……僕を殺そうとする父を殺し、独りになりました。当然村にもいることはできず、その間は何があったかあまりよく憶えていません。そんな中、再不斬さんに拾われ、忍として生きる術を教えて頂きました。……語れる事はこれくらいです」
あまりにも凄惨な話に、大蛇丸とフガクも言葉を失っていた。
「そう……。再不斬に拾われたのが幸いしたわね」
白の出会った者が再不斬でなければ、彼は更なる悪夢を見ていたかも知れない。世の中に悪い大人は余る程いる。大蛇丸も含めて。
「はい。……とても幸運でした」
白は花のように顔を綻ばせる。
齢は十五。ちょうどイタチとサスケの間にあたる年齢だ。今は少年から青年へと成長を遂げる過渡期。あと数年も経てばこの奇しい魅力も少しは落ち着くだろう。
白の服装についてのアンケートありがとうございました。イタチのお古に結構票が入ってて驚きました。大蛇丸趣味の服も意外と票が…。まあ、普通に似合いそうですよね。
白の新しい服ってほんとイメージできないなあ。誰か教えろください。
ちょっと興味でアンケート。白にはどっちを着て欲しい?白は服装に頓着しなさそうなので、お古でも気にしないと思うんですよね。
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キミマロみたいな大蛇丸趣味の服
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イタチのお古
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新しい服(思いつきません)