だから付き合ってないってばよ   作:冬乃菊

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【注】うちは一族のせいで湿っぽいです。


一族の行く末

 警務部隊の勤務を終え帰宅すると、玄関の取次にイタチが立っていた。

「今夜、神社で話したいことが」

 一族の氏神を祀る神社で、となると話の内容は余程重要なことなのだろう。フガクからイタチに話を持ちかけることはあっても、その逆はこれまでになかった。

「お前が……珍しいな」

 今日サスケが家に戻らなかったということは、一次試験を無事に通過し二次試験に進んだのだろう。あえてこのような時を選ぶとは、イタチの話というのは少なくともサスケに関わるものかとフガクは思い至る。

 

「イタチと少し出てくる」

「ええ」

 自宅には再不斬と白がいるが、彼らに反旗の様子はなく日々穏やかに過ごしている。いくらか気を許しすぎている気もしないが、間違いは起こらないだろう。念のため信頼のおける一族の者に、一時監視を依頼した。

 

 

 月のない夜だが、日が長い季節でありまだ空に明みが残る。

 息子とこうして肩を並べ、歩いたのはいつ振りだろうかと考えるがどうにも思い出す事ができない。

「シスイにも声をかけています」

「そうか」

 やはり、話というのは親子の会話というようなものではなく、シスイの名が出るとなると一族に関わることなのだろうとおおよそ察することができる。

 夜中ということもあり外であまり声をあげるものではないが、全く会話がないのにも気まずさがある。

「……イタチ」

 不意に見たイタチの横顔には、暗い影が落ちていた。

「はい」

「お前との共通の話題はサスケしかないと思ってな」

 イタチとは普段何を話していただろうかと思い返すが、サスケに関する話しかしていなかったことに気づいた。

「そう、ですね」

 サスケはフガクとイタチの鎹ともいえる。

「……アカデミーの方はどうだ」

「子どもたちは可愛いです。……許して下さり、ありがとうございます」

「お前の我儘は初めてだったからな」

「我儘……」

「なに、我儘というほどでもない。可愛いものだ。……お前には多くを求めすぎていたと、今になって思う」

 フガクは失笑した。

 

 集会所には既にシスイが来ており、その紅い瞳に気づくと同時に幻術に落ちる。それは、写輪眼を持つ者同士の特殊な意思伝達手段でもあった。

「フガクさん、すみません。重要な話ですから念には念を」

「構わん。……余程のことなんだろう」

 一族の集会所という場所に加えて、幻術の中での会話。

「少しキツい内容になります」

「ああ」

 

 見せられたものの衝撃は凄まじく、二つ返事で軽く了承して良い内容ではなかった。

 数年前に白紙となったあのクーデターが、もし現実に起こっていたのなら。

 クーデターの前にシスイはダンゾウの手に落ち、イタチは仮面の男の手を借りサスケを除く全ての一族を始末した。それから、独り里に残されたサスケの顛末と、裏で暗躍していた者の影。

「これは……何だ」

 フガクは呆然と立ち尽くす。

「サスケが開眼した日に言っていた、『永い夢』です。……だから、わずか六歳の身に万華鏡写輪眼と輪廻写輪眼を持ち合わせていた、と言えば納得できるかと」

 イタチは淡々と告げた。

 「永い夢」は、確かにあったサスケにとっての現実だ。

 

「……父さん、すみません」

 イタチは真っ直ぐにフガクを見ようとしない。

「お前は何も謝るようなことはない。……とんでもない隠し事をされているとは思いもしなかったがな」

 フガクにとってもそれは、天と地がひっくり返ったかのような衝撃があったはずだろう。しかし、彼には目に見える動揺は見られず、とても静かに受け入れている。まるで、イタチがフガクを手にかけた時のように。

 「器の浅い一族」と何度思っただことだろうか。だが、この落ち着き払ったフガクを前に、やはりこの人は過酷な戦の時代を生き抜き一族を導いてきた一族の当主であることを思い知る。

「父さんは『うちは一族のイタチであれ』と。……だが俺は、里を選んだ」

「そうか……。その言葉が、お前を縛っていたか。……あの『永い夢』の俺も、もっと早く、こうしてお前たちと話ができていたなら……他にも道はあったのかもな」

 排斥されていたからとはいえ「権力」に執着していたあの頃。その道しか有り得ないと考えていた事が、今となってはどれほど短絡的で結果を急いだ考えであったか理解できる。

「フガクさんがそう言ってくださってよかった。……俺たちも、思いは同じです」

「サスケは、この今の里の体制について……ナルトと共に変えてみせる、と」

「サスケが、そんなことを……。早く打ち明けてくれたらよかったものを。……いや、今だからこそ冷静でいられるのかもしれないな。お前たちが今になって俺を呼び出したのは、そういうことだろう」

 もし、あのクーデターが持ち上がっていた頃に「永い夢」を見ていたなら、イタチに対して思わしくない感情を抱いた可能性もある。もちろん、所詮はたらればであり、違うかもしれない。

「はい。……サスケは、優しい子です。一族全員を幻術にかけることなど造作もないだろうに、そうしなかった。それに……俺が、サスケから全てを見せられたのもつい最近のことです。……時期を考えていたのでしょう」

 フガクはサスケが波の国での任務に行く数日前の夜のことを思い出し、合点がいく。

「それで……万華鏡が開眼したのか」

「フガクさんに見せなかったのもきっと、お二人の関係が崩れることを危惧してのことでしょう」

 

「しかし、ようやくここまで漕ぎ着けたと思っていたが……これではまた、一族は危うい立場となるな」

 今後起こるであろう第四次忍界大戦。その裏で糸を引いていたのは既に亡き者とされていたうちはの姓を持つ二人の男であった。その背後に更なる黒幕が存在するとはいえ、このままではうちは一族が「敵」と見做されることだろう。いくら里の上層部が宥めたとしても、集団心理というものは恐ろしいもので、数年前そうであったようにうちは一族を恐れ排斥するだろう。一族には自尊心の高い者が多く、耐え忍ぶには限界がある。その先には、一族自ら孤立していく道筋が立っていた。

 今後の一族の行く末を憂い、黙り込むフガクを見兼ねたシスイが口を開く。

「フガクさん、助力を求めてはどうでしょう」

「助力?一体、……誰にだ」

「得体の知れない面もあるが、サスケくんに対する支援は惜しみ無い上に、現状、一族の後ろ盾でもある。……大蛇丸様です」

 あの大蛇丸が、うちは一族の後ろ盾。シスイの言葉にフガクもイタチも押し黙る。

 かつて里の上役の中でも特にうちは一族を危険視していたのはダンゾウであったが、彼を嗜めたのが大蛇丸だという。半分建前ではあるが、うちは一族当主の自宅に軟禁されていた大蛇丸がうちは一族について語ることにより、憶測、推測に過ぎないダンゾウの言い分は一蹴された。

「だが、大蛇丸様にも利点がなければこのような一方的な嘆願を聞き入れてはくれんだろう。……幾つかの手札が必要だ。逆に、要求を突きつけられる可能性もある」

 手札。シスイは思わずそのまま口に出してしまいそうになる言葉を飲み込んだ。

(サスケくん、という手札があるだろう。中身は三十路でもあってただの子どもではない。力もあり、差し出したところで制御できないはず。……と言うわけにはいかない、か)

 そのまま口に出そうものなら、イタチとフガクの万華鏡写輪眼が向けられるに違いない。

 

「この件、俺が貰い受ける。近いうちに大蛇丸様に相談を持ち掛けよう。……その都度、報告はする。このことは、サスケには伏せておけ。お前たちもそのつもりで今、なんだろう」

 サスケは一人で無理をすることを厭わない。それから、もし家族や一族に危険が伴うものであれば、それがいくら合理的であろうとも良しとはしないだろう。

「ん……?だとすると、……サスケは幾つだ」

 そのフガクの独り言に、イタチとシスイはぎくりとする。ナルトの口が滑っただけとはいえ、あのサスケが異次元に引きこもるほど不本意であったのだから、本人がいない手前勝手に話すわけにはいかない。

「いくつ……でしょうね」

 サスケの中身は三十路。

(サスケは三十路でも、可愛い弟だ……)

 イタチは気も漫ろに自分に言い聞かせていた。




アンケートありがとうございます!思いきって改稿しました。(2026.4.25)

さらっとシスイに中身三十路を暴露されたサスケさん。ノリで書いてしまっただけに後で可哀想だなと思えてきてしまい…。どう思いますか?

  • サスケがかわいそう
  • ここでバラすな
  • このままでよい
  • どうでもよい
  • せめて本人から言わせたげて!
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