フガクが自来也の件について知る由もなく、二週間以内に戻ることを条件に自由研究を目的とした里外への旅行を許可した。出立は三日後と決まり、各々が旅の準備を行っていた。
「今回の旅は自由研究の一環でもある。旅のしおりでも作るのはどうかな?」
イタチは年齢的に考えて、今回のスリーマンセルのリーダーだ。サスケはもちろんのこと、ナルトにとっても兄のよう立場だと自負しているイタチは、表情にこそ出さないが、実は張り切っていた。兄らしいことがしたい、と。
「たしかに、そーゆうのがあれば自由研究っぽいよな」
「……そうだな。ある程度計画も必要だろう」
里の外に出るのは言うまでもなくナルトもサスケも初めてではないが、この身体では初めてだ。イタチも初めてだと思っている。三人は調べものをするために里の図書館へと向かった。まずは普通の地図と地形図の二種類の地図を拡げ、湯ノ花街までのルートを選択した。
「水と寝床の確保を重視しよう」
「このルートはどうだってばよ?」
「なら、ここと、ここ辺りで野営だな」
イタチは二人のやり取りを聞きながら、うんうんと頷いていた。そしてある程度煮詰まったところで、二冊の本をサッと差し出した。
「これが湯ノ花街の歴史と、今のガイドブックだ」
「イタチの兄ちゃんサンキュってばよ!」
この時図書館はほとんど誰もおらず、多少騒いでも問題なさそうだとついつい声が大きくなってしまう。そんな彼らを探るように見ている者がいた。
「やー、誰かと思えばイタチ君じゃないの。何してるの?」
カカシがイタチの肩にポンと手を置くと、誰よりも早くナルトが声をあげた。
「カカシ先生!」
若いカカシに出会えたナルトは興奮してカカシの事をそう呼んだ。しかし今のカカシは彼らの先生ではなく、面識さえない。
「ん?先生?オレが?やーそれほどでもー」
「カカシさん、お疲れさまです。弟たちの夏休みの自由研究を手伝っているんです」
「へー。えー……なになに?エロ仙人捜索の旅in湯ノ花街。……って、なんなの?」
「二人は初めて里外に出かけるんです。野営も初めてですし、里外の植生など調べるのも自由研究としては良い題材だと思いまして」
「最近のアカデミー生は凝ったこと考えてるねー。誰と行くの?」
「オレたち三人だってばよ」
「へー。火影の許可は?」
「じゃーん」
ナルトは自慢気に外出許可証を突き出した。
「……あら、ホントだ。……。じゃ、オレも一緒に行ってもイイ?任務早く終わっちゃってさ、次の任務までけっこう長い休暇なんだよね」
「いいんですか?助かります」
「いくら上忍でもイタチ君はまだ十三…だっけ?ま!大人としては心配だからね」
カカシは二十歳で成人したばかりだ。
「ありがとうございます」
イタチはへらりと笑った。
(へー……こういう顔するんだ。新発見)
仕事中は絶対に見せない表情。カカシは意外な発見に目を丸くした。
出立の前日、サスケは早朝から家の台所に立ちいそいそと何かを作っていた。台所には異臭が漂っている。見かねたミコトは鼻を手で覆ってサスケの手元を覗き込む。
「何をしているの?」
「……兵糧丸を作っている」
台所に立ち込めている異臭は、漢方薬や生薬など臭いが混じったもののようでミコトは少し胸を撫で下ろした。
「一族に伝わる兵糧丸ではなさそうね……」
「優秀な医療忍者から教わったレシピだ」
それは生前(?)サクラから教わったものだ。ナルトほどチャクラが多いわけでないサスケは重宝していた。今は互いに六歳でチャクラは全盛期と比較すると少なく、ナルトにも役に立つだろう。
一方、ナルトは旅のしおりなるものを自宅でいそいそと製本していた。合計で五部。一部はアカデミー提出用で一部は自宅保管だ。
「よし!できた!あとは明日持っていくもんをガマちゃんリュックに入れるだけだってばよ」
ナルトは死んだ蛙のようなリュックを引っ張りだし、必要なものを詰め込んだ。
当日、里の門に予定の時刻に集まったのは三人。
「カカシ先生ってばやっぱりいつものチコクだってばよ!」
「時間の無駄だ。置いていくぞ」
「そーだな」
ナルトとサスケはカカシの勝手知ったるかのような口ぶりで、イタチは違和感をおぼえた。
「サスケ、もう少し待ってみよう」
と言いつつ三十分以上経過した。
「いやー、人生という道に迷ってな。ごめーんね」
「「遅い!!」」
ーーパシャッ
「え?」
「コメントは、今回の旅はカカシ上忍の遅刻から始まった、でどうだ」
「なかなかキャッチーで良いってばよ」
自由研究用の写真を撮影していた。木ノ葉隠れの里の門とカカシの姿が一緒に撮れている。
「おまえら可愛くないよ……」
「……カカシさん、大人気ないです」
イタチはにっこり笑ってそう言った。本当に可愛くないとカカシは心の中でそう呟いた。
メンバーが揃ったところで、ナルトたちは里の門にある関所に外出許可証を提示した。
「お願いします」
「ハイハイ、行ってらっしゃー……っ!!」
対応した特別上忍は四人の顔をバッと見上げた。
「やー、ゲンマ。お疲れさん」
「カカシ?!」
横にはうちはイタチと、それよりも小さな子どもが二人。一人は里で知らないものはいないであろう九尾の子だ。ゲンマは外出許可証に不正がないか確認したが、特に怪しい点は見当たらなかった。
「じゃ、行ってくるね~」
「あ、ああ」
カカシはヒラヒラと手を振って門の方へと歩いていった。
彼らが里を出たと火影に知れたのは、その日の夕刻だった。
カカシは上忍並みのスピードに付いてくるナルトとサスケの身体能力に驚いた。休憩時間になると、サスケはお手製の兵糧丸をナルトに与え、一緒に食べていた。そうしている姿は年相応の子供らしくて微笑ましかったが、食べているものは菓子類などではない。
緑の生い茂る森の中に小川を見つけ、四人は休息をとっていた。カカシはナルトからもらった旅のしおりを何気無しに目を通す。表紙には何故か極秘任務、と真面目な字でかかれている。そして一頁目には旅の目的が書かれていた。
一、伝説の三忍、自来也の捕獲
一、里外の植生調査
一、湯ノ花街の観光
「あ、エロ仙人ってのは自来也様のことだったのね……」
「自来也様がいらっしゃらなければ、ただの観光です」
「オレはどっちでもいいかなあ……。ん、あいつらどこにいったの?」
「たぶん珍しい植物や生き物を探しに行ったんだと思います」
「元気だねえ」
カカシはしおりに目を戻した。二頁目と三頁目には地図と、旅程が描かれていた。休憩をとる場所と時間などだ。今休憩している場所も予定通りということらしい。
「今時のアカデミー生はやることが違うねぇ」
「……」
イタチの額から嫌な汗が一滴流れ落ちた。アカデミーではそのような授業はないはずだ。しかし面倒なことになりそうな気がするため、今時のアカデミー生は違う、ということにしておくことにした。
二日後、四人は問題なく湯ノ花街に辿り着いた。
「ここが湯ノ花街かあ。賑わってるな。ところでどうやって自来也様を探すの?」
「それはオレに任せるってばよ」
ナルトは直ぐに仙人モードとなり自来也のチャクラを探った。
「見つけたってばよ!北北東の方角に約一キロメートル」
「近いな」
サスケはナルトとともに北北東の方角へ駆け出した。ナルトの仙人モードを初めて見たイタチとカカシは呆気にとられたが、すぐに駆け出した二人の後を追った。
辿り着いた先は、街のはずれにある小さな温泉宿。古い旅館のようだが、手入れは行き届いており美しい景観が保たれている。庭は夏らしく緑で溢れていた。ナルトはその生垣を辿った。すると、生垣の間から木の塀の小さな隙間に顔を押し付けている大男を見つけた。バッサバサの長い白髪と、高下駄、隈取り。あの戦火で殉死した自来也だ。忘れていた思いが蘇る。
「エロ仙人!!」
ナルトは瞬く速さで自来也に飛びついた。
「どわっ!危ないガキだのぉ!……ん?」
「オレってばオレってば!うずまきナルトだってばよ!」
「ナルト!……おお、あのナルトか!大きくなったのぉ」
自来也はまだ臍の緒のついていた頃のナルトを懐かしく思った。何故ナルトが自分のことを知っているのか不思議にも思ったが、誰かがナルトに話をしたのかもしれないと勝手に納得していた。そして少し離れた所からこちらを見ている三人と目が合う。
「……わしを連れ戻しに来たのか?」
「えーと……。みんな、エロ仙人が戻ってくれたら嬉しいってばよ。けど、そーじゃなくて、オレってば妙木山の蛾蟇と口寄せの契約をしたいんだけどさぁ……。このとーりっ!」
口寄せの契約は、何故か紹介制で一見様お断りだ。蛾蟇との契約者で生存している者は今や自来也のみ。
「……うーむ」
しかし、今契約したところで今のナルトに扱える術でないと自来也は考えていた。焦れたナルトは印を組む。前回もこの術のお陰で自来也と師弟関係となることができた。ボフンという音と共に、自来也の周りに選り取りみどりの美女たちが現れる。
「「「「「「自来也様ぁ、お・ね・が・いっ」」」」」」
甘い声色で美女たちが自来也に迫る。影分身の上に、同時に変化を重ねたナルト考案の高等忍術だ。しかも影分身はそれぞれ違う女性に変化している。実に下らない術であるが、やはり、高等忍術だ。
「ムッハー!もちオッケーだってーの!!ナルトはものの頼みかたを知っとるのぉ!」
ーーパシャッ
サスケは子どもは見るなと視界を遮るイタチの手を払いのけ、無言で写真のシャッターを切った。
「伝説の三忍のマヌケ顔」
子どもとして思いっきり楽しんでいた。
「即目的終了しちゃったねぇ……」
「カカシさん……、ゆっくり温泉にでも入りましょう」
「うんうん、そうしよ~」
ナルトは蛾蟇の契約書に血印を押し終えた。それを見届けたカカシとイタチは今日の宿を探すため、この場を離れた。
確かに表向きの目的は終えた。だがナルトとサスケの本来の目的はこんなことに留まらない。
自来也は周囲を見渡す。
「ここではちぃと具合が悪い。場所を変えるか」
「……ん?サースケェ!イタチの兄ちゃんとカカシ先生は?」
「今夜の宿を探しに行った」
「ナルト、この小僧は?」
「オレのかなりの友達だってばよ」
「うちはサスケだ」
サスケは改めて自来也に名乗った。
「ほう。なるほどのぉ」
うちは一族は忍の才と美貌で有名だ。自来也は得心いったように声をあげる。
「……この意味がわかるか?」
「ん?」
サスケは左目の眼帯を外し、自来也を見上げた。長い睫毛で縁取られた瞳は、右目は写輪眼、左目はいくつかの円が重なっている特殊なものだ。
「なんと……」
自来也がこの目を見るのは二度目だった。サスケは目を閉じると再び眼帯で目を覆う。
「隠すのは正解だ。……三代目は知ってるのか?」
「知らないはずだ。報告する義務もない」
「……ガキらしくないな」
輪廻眼は伝説の瞳術だ。実在するとなると新たな戦の火種になりかねない。無闇に晒さないのは賢明な判断だった。
自来也は、サスケが輪廻眼のことを自分に明かした理由を考えた。彼らがどこで自分のことを知ったか知れないが、他人には明かしていない秘密を明かしたということはそれなりに信頼されていると考えてもいいだろう。また、自来也はヒルゼンに会うたびに言われ続けていることがあったことを思い出し嘆息する。
「お前たちはまだアカデミー生か。……なら、わしが木ノ葉に戻るほかないのぉ」
ヒルゼンも自来也が里へ戻ることを望んでいた。
「エロ仙人!!良いのかってばよ!?」
かつて自来也は里に近づかず、小説の取材という名のあてもない旅をしていた。情報収集や索敵のような役割もたまには担っていたが、次代の火影候補という重責から逃れるためでもあった。
「うーむ……。わしも腹を括らねばな。さて、むこうの川原にいくぞー」
その後ナルトは自来也から口寄せの術を教わった。知っていたナルトは難なく一発で大きな蛾蟇を出すことができた。
「それなら……ワシのとっておきを教えてやろうかの」
「え、とっておき?なんだってばよぉー!早く教えてくれってばよ!」
などとナルトは言ってみる。大体予想はできることだが。
「これだ!四代目火影が編み出した難易度Aランクの術。螺旋丸という」
自来也が螺旋丸を岩に向けて放つと粉々に崩れた。これももちろんナルトは知っている。
「やってやるってばよ!」
難なく岩は粉々になった。
「修行のつもりが修行にならんのぉ。……これはセンスとかの問題ではないな」
自来也はナルトのチャクラコントロールと忍術のセンスに舌を巻いた。規格外すぎて若干引き気味だが。もちろんこの飲み込みの早さは二度目だからとういうよりも習得済みだからこそだとは知る由もない。
「宿がとれたそうだ。いい加減腹も空いた。行くぞ」
サスケの腕には烏が止まっていた。その足には小さな筒が付いている。
「送っていこう。カカシとも話がしたい。サスケ、……共ににいたのはあの天才と言われたうちはイタチか?」
「そうだ」
「……えらいメンバーでの旅だのぉ。そうでないとナルトの外出は許されん、か」
そういうわけではないのだが、訂正も面倒でそういうことにしておく。
宿は街の繁華街から少し外れた所にある閑静な場所にあった。
「カカシの小僧、久しいな」
「自来也様、まさか本当にお会いできるなんて思いませんでした」
「いつ帰る?わしもおまえたちと共に里に帰ろうと思ってのぉ」
「本当ですか!?」
「三代目ももう年だしのぉ。心配ではあるからな」
「……大蛇丸のことはどうする?追っていたんじゃないのか」
鋭い質問だ。その声の主はサスケ。サスケにとっての今回の旅の目的は、大蛇丸の情報を得ることだった。大蛇丸のアジトは各地に散らばっており、サスケも全てを把握しているわけではない。また、この時期の大蛇丸が何をしていたも知らなかった。
「……実はここにヤツがいるという情報があって来てみたんだが、収穫はない。ガセかのぉ」
「そうか……」
サスケからは大蛇丸の話など聞いたことがない。大蛇丸はビンゴブックに載るような人物。今回のこともそうだが、大蛇丸に関することでサスケが突拍子もない行動を起こされたなら兄として気が気でない。
「何か、気になることでもあるのか?サスケ」
「オレも口寄せの術の契約がしたくて。蛇の」
マンダは性格が荒っぽくあまり関わりたくないが、アオダとは長いこと戦場を共にした。できることならまた共に戦いたいと思う。しかし今また大蛇丸の弟子になる気はない。というより、今でなくとも今後も弟子になるのは御免被る。ただ、蝦蟇と同じく蛇も紹介制で大蛇丸に頼む他ない。
「別に蛇に拘らなくてもいいんじゃないの?犬も賢いし鼻が利くし便利だよ」
カカシはどこからか契約の巻物を出した。お手軽だ。
「いや、ナルトが蛾蟇ならオレは蛇が良い」
蛇と口寄せの契約を結んだ理由は今も昔も変わらない。
自来也とカカシは酒盛りを始め、未成年の三人は大浴場へと向かった。
「サスケと温泉!初めてだってばよ!」
「静かにしろ」
「背中洗ってやる!」
「……はぁ」
さすがは己の忍道を貫いた男。聞く耳を持っていない。
「二人とも、遊んでないで早く行こう」
イタチはタオルを持って浴場へ向かった。彼もまた、今回の旅行を嬉しく思っている。今まで家族とも遠出する機会はなく、今日が今までで一番楽しい日だと思えた。
(こんな日がやって来るなんて思わなかった)
自然と笑みが零れる。二重スパイという重責から逃れた心は、思っていた以上に軽やかだった。
あれから湯ノ花街には三日間滞在し、ナルトたちは帰路についていた。この三日間でナルトは性質変化と仙術を体得したことになった。以前からできたことではあるが。お陰で天才児扱いだ。チートにも程がある。自来也も何故ナルトがこうも飲み込みが早いのか考えるのは放棄していた。
「ナルト、本当に良いのか?わしが三代目に進言すれば……」
「ああ、オレってばアカデミー楽しいし、ちゃんと下忍になって任務したいってばよ。あんまり目立つと他国とか、危険な奴に知られるから、今はあまり目立たないようにしたい」
自来也と共に里の門を潜った時点で里内では有名人になるだろう。それ以前に里でナルトのことを知らない者はいないのだが。
「……エロ仙人」
「わかっとる」
五人はアイコンタクトを取った。皆、敵の存在に気づいている。自来也が止まると、皆が足を止めた。自来也の手が触れるのは真新しい刃の跡。二つ同じような傷がついている。それは自来也自身がつけた傷だ。
「……術中に嵌まったようだのぉ」
サスケとイタチの瞳に写輪眼が浮かぶ。五人は周囲を警戒した。
「ふふ。やっと気づいたようね」
「大蛇丸、か」
「自来也、元気そうでなにより」
大蛇丸からは殺気を感じない。サスケは気軽に爆弾を投下した。
「オイ、大蛇丸。オレも蛇と契約したい」
「「「「サスケ?!」」」」
大蛇丸も予想外の展開に一時困惑したが、その声の主を見ると途端に目を輝かせた。
「あらやだ可愛い。その写輪眼、うちは一族のぼうやね。良い個体だわ。それに良い度胸。ワタシと一緒に来てみない?面白い研究をしているのよ」
「そんなことに興味はない」
サスケは大蛇丸の誘いを一蹴する。
「あらますます可愛い!……隣の子はお兄さんかしら?兄弟セットで頂きたいわ」
「断る!!」
「そう……残念ね。サスケ君、力に興味はない?」
「力なら今のままでも十分だ」
「……一体どれだけの力を持っているというの、かしら!」
大蛇丸の首が伸びた。こちらへ物凄い速さで向かってくるが、写輪眼の前では遅い。サスケは刀で頭を切り落とした。しかしその頭は動いている。サスケでなければ見落としていたかもしれない。
ーー天照
その頭は黒い炎に包まれた。
「口だけではないようね。ますます欲しい……」
大蛇丸の首は再生している。
「やいやいやい!聞いてっとオマエ、おかしいってばよ!サスケのことを物みたいに言ってんじゃねえぞ!!」
「おまえは……。九尾の力には興味があるけれど、お前には興味がないの。ワタシは美しく強いものが好きなのよ」
やはり自分は大蛇丸のツボらしい。それを確認したサスケは勝負に出た。
「……里に手を出さないと約束するなら、アンタと仲良くしてやってもいい」
台詞の後半が棒読みだ。
その時、ナルトのイタズラ心に火が付いた。イタズラとは、ひらめきである。
ーー秘技・サスケ図鑑の術!
大蛇丸の周囲に各世代のサスケが現れた。
「大蛇丸、仲良くしようぜ」
「……ま、まさか成長したサスケくんだというの?!ああ……成長という老いの中にも美しさがあるだなんて……」
大蛇丸は瞼を閉じた。辺りに緊張がはしる。
「不老不死なんて考えていたのが馬鹿馬鹿しい。……木ノ葉崩しより面白そうだわ。……サスケくん、これから仲良くしましょうね」
((((アホだ……))))
「……お、大蛇丸、正気か?」
「自来也、アンタたちと馴れ合う気はないわ。ただ、サスケくんという新しい風に興味があるだけ。サスケくんの成長にも興味があるわ……!できることなら近くで見守りたいと思うのよ。今なら蛇でも何でも契約させてあげる」
大蛇丸は蛇の口から巨大な巻物を出すと、サスケに投げ渡した。身の丈程もある巻物を受け止めると、サスケは黙々と契約を済ませた。
「大蛇丸」
サスケは再び巨大な巻物を投げ返す。大蛇丸の袖から出てきた蛇がそれを飲み込んだ。
その後、大蛇丸は当たり前のようにナルトたちと木ノ葉の里に帰還した。その道中、サスケの隣を駆ける大蛇丸のせいで、イタチは生きた心地がしなかった。里に帰っても両親に合わせる顔がないと、今から色々言い訳を考えていたが良い案はない。そもそもどうしてこうなったか経緯を説明するのも自信がない。
(((どうしてこうなった……)))
今日もゲンマが里の関所の番をしていた。
「ハイハイお帰りーって。……え。カカシ。アンタら何をしに行ってきたんだよ……」
自来也と大蛇丸を見るなり、ゲンマは他の忍に急いで火影に報せるよう伝えた。
「えーと……何だろうね。オレもこんなことになるとは思ってなくてさ……」
「……とりあえず、皆さん火影室に行ってくださいよ。ナルトと一緒に里を出たのもあの後問題になったんだぜ。……火影様のミスもあって表沙汰にはならなかったけどな」
ナルトたちが里を出た後、本当にナルトが里を出るとは思っていなかったヒルゼンは、ゲンマの報告を聞いて動揺した。しかしその同伴者にカカシとイタチの名があり、追っ手をかけずに帰還を待つことにしたのだった。
自来也と大蛇丸が里に還ったことはすぐに里中に広まり、木ノ葉の門から火影塔までの道中、ナルトたちは好奇と畏怖の目に晒された。
火影室にて弟子たちのツーショットを目の当たりにしたヒルゼンは、思わず頬をつねった。確かな痛みがありこれは夢などではないことを実感する。
「……大蛇丸、よく戻ってきてくれた」
「里に戻ったつもりはないわ」
「そうか……」
「けれどもう、里をどうこうしようだなんて思いませんよ。サスケくんに誓って」
「……は?」
「私はサスケくんを助けるために戻ってきたの。ねぇ?そうでしょう?サスケくん」
「別に助けてもらおうとは考えていない」
「素直じゃないのね」
鬱陶しく思っていることは表情からも一目瞭然。だがそれでは大蛇丸には伝わらない。一種のフィルターがかかっているらしい。
その日から大蛇丸はサスケの家に(無理矢理)住み込むこととなった。これがうちは家の気苦労の日々の始まりだった。
「ううっ……あなた、サスケがあまりにも不憫よ。あいつ、サスケがもっと大きくなってから美味しく頂く算段に違いないわ……」
「ミコト、それ以上何も言うな……」
「父さん、母さん……なんとしても俺がサスケを守ります」