ヒルゼンは大蛇丸と自来也だけを残し、人払いをした。サスケとナルトもイタチとカカシに手を引かれて退室する。
「……まさか、刃を交えずとも再び会い見える日が来ようとはな」
「ご託はいいですから、私の処分はどうなるのかしら」
その言いぐさは傲慢極まりないが、処分を確認するあたり、意外ではあるが少なくとも自分の所行が世間一般的にどうなのかということの理解はあるようだった。
「……ふむ、先ずはお前の申し分から聞こう」
生ぬるい。大蛇丸は苦笑する。
「相変わらずですね。……これまでの研究成果を全て渡すわ。それと私の持つ情報も含めて。その代わり、投獄は勘弁して欲しいわね」
「要求はそれだけか」
「ええ。……また火影の座だとか言い出すとでも?そんなものはもうどうでも良いのよ。まあ、欲を言えば、ゆくゆくはアカデミーの教員になりたいという願望はあるのだけれど……」
「は……?」
「ほら……サスケくんはまだアカデミー生でしょう。成長を間近で見届けるにはそこがベストだと思うの」
大蛇丸がうちはサスケに夢中だという自来也からの前情報は本当のようだ。大蛇丸の提出した研究報告書と情報を解析する間、どうしても期間を要する。
里にとっても大蛇丸にとっても都合の良い場所はただ一つ。ヒルゼンはすぐにフガクを呼び出した。
「火影様、失礼します」
ヒルゼンの隣に控えている大蛇丸の姿を見たフガクは絶句した。
「フガク、ちと頼みたいことがあってな」
「……は」
「見ての通り、大蛇丸が里に帰還した」
その隣には自来也もいる。相容れぬ仲だという噂もあったが、顔には出さずともこの状況はどういうことかと戸惑うばかりだ。
「こやつの持つ研究成果と情報を引換に、里の忍としての復帰を認めることにする。解析する間、どうしても身柄を拘束せねばならんのだが……」
ヒルゼンはちらりとフガクの様子を伺うように視線を送る。
嫌な予感がしてきた。
「そこでだ、お前の家でしばらく大蛇丸の監視と衣食住の提供を依頼したい」
何故そうなる。胃痛がする。胃に穴が空きそうだ。うちは一族の目論んでいた反逆の火の手は上がらなかったものの、煙はたった。それを咎めず収めてしまったのはこの人だ。だが、それとこれとは話は別だ。
「おそれながら、何故、私なのですか……」
「聞きたいか。聞かぬ方が良いかもしれんぞ」
ヒルゼンの表情は至って真面目だ。
「……問題、ありません」
「実はな、大蛇丸が帰還した理由の多くはお前の息子、サスケにあるらしい」
「は……?」
フガクは耳を疑った。
「サスケに興味を持ったがために、里に帰還することを考えたそうだ」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
大蛇丸がサスケに興味を持っているのであれば、大蛇丸を軟禁する場所は何故ウチになるのだろうか。サスケの身の安全はどうなる。
「フガクさん、タダで泊めてもらおうだなんて思っていないわ。私も家事手伝いくらいできるわよ」
誰もそんな心配はしていない。だが、この流れで断ることは難しい。断ることで、再び大蛇丸が里を抜けようものならうちはの立場がない。それは苦渋の選択だった。二者択一を迫られるが選択肢は初めから一つしかないという酷な状況だった。
「……わかりました」
フガクは苦虫を噛み潰したような顔をしながらも、合意した。
こうして、大蛇丸の軟禁場所は半ば強引にうちは家に決定した。
大蛇丸が火影室を出ると、暗部服と面を身につけた忍が立っていた。その男が何を言わずとも、どういう意図かはわかる。
向かう先は里の地下。「根」と呼ばれる里の影に位置する領域であり、一部の限られた者のみが知る里の闇。
長い階段の先に、重厚な扉がある。
「久しいわね」
の扉の向こうには、顔の大半を包帯で覆った老いた男が椅子に座っていた。
「どういうことだ?俺に相談もなく里に戻るとは……何か、企んでいるのか」
「そう見えますか?」
「……違うのか」
「さて、どうでしょうね。ところで、わざわざ私をここに呼んだということは、何か理由があるんでしょう」
「ああ。……例の件は流れた」
ダンゾウは三角巾に包まれた己の腕に目を落とした。
「うちはの、ね。ところで、うちはサスケくんを知っているかしら」
「……フガクの次男坊か。六歳にして写輪眼を開眼したと聞く」
「そう。彼は、貴方のずっと探し求めていたものを、持っていましたよ。私は、彼を見守ることに決めたわ」
驚きに目を見開くダンゾウの様子を見て、大蛇丸の口角が上がった。
「あれには、柱間細胞とうちはの血が必要なはずだろう」
「けれど、うちはサスケはすでにそれを得ている。まだ……後世に残された伝説が全て正しいとお思いですか」
少なくとも、大蛇丸はそうは思っていない。彼の根元は、知識欲にある。人の道を失うほどに真理を欲しており、永遠の命を欲した。
ダンゾウは黙ったまま思案している様子で言葉を発する気配はない。大蛇丸は彼を横目に踵を返した。
「もう一つ、貴方に忠告しておくわ。その古臭いやり方は、いずれ淘汰されるでしょう。精々機を逸しないことね」
「お前も、似たようなものだろう」
「だから手放して、許しを乞うたのよ。建前だけれど。……新しい風が回す世を、特等席で見たいと思うのは当然でしょう」
扉の閉まる音が響いた。
大蛇丸が里に帰属した際に提出した情報は膨大で、すぐにプロジェクトチームが結成された。そのメンバー構成は内容が内容なだけに、里の中でも屈指の頭脳を有する奈良一族の更にその一部に絞って一任された。
数週間後には解析され、視覚化されたデータが火影室に回され、ヒルゼンはそのデータを机上に広げる。
そのアジトの数と場所に関する情報を目の当たりにし、ヒルゼンは思わず目を疑う。アジトの場所は火の国に留まらず、近隣の国々はもちろん遠方の国々にまで幅を利かせていた。そして小さな隠れ里程の規模のアジトさえ存在する。
自来也もまた、極秘情報のそれをヒルゼンと共に目を通していた。
「これは……アジトを全て閉鎖すると口で言うのは簡単だが、これ程の規模……路頭に迷う者が出るくらいならば逸そ、木ノ葉の傘下に治めるというのは、どうかのォ」
「うむ。……大蛇丸よ」
「構いませんよ。もし反対する者があれば、それなりの対処をしましょう」
「ならば、すぐにわしの部下を数人、アジトの内部調査に向かわせるが、良いな」
「ええ。私の方からもあちらへ一報入れておくわ」
これまでの大蛇丸の所業は、人体実験を初めとし非人道的なものばかりだ。それに彼は曲がりなりにも伝説の三忍という二つ名を持つ一流の忍。裏をかくことなど造作もない。
彼を本当に信頼するにはそれなりの調査をし確かな裏づけが必要だ。
ヒルゼンは、シスイを筆頭にうちは一族から信頼できる者を選抜し、大蛇丸のアジトへ急行させた。
調査にかかった期間は約半年。その調査の間に、ヒルゼンは自来也に火影の座を譲った。
(2026、4、12追記)
みなさんのサスケのイメージを教えてください。いくらか文章に反映できればと思いまして。。ちなみに私は選択肢の全てがサスケの構成要素だと思っています。。後半の選択肢は遊んでいます。
-
かっこいい
-
強い
-
可愛い
-
優しい
-
愛が重い
-
頭がいい
-
厳しい
-
ツンデレ
-
ヤンデレ
-
メンヘラ
-
存在がエロい