ようこそモブが逝く、未知なる世界の教室へ 作:雲ひとつない青空
待て、しかして希望せよ
───モンテ・クリスト
あれから一週間が経過した。
俺はその一週間、堀北さんとまたゼロから友達になろうと、とりあえず挨拶から始めてみることにしたのだが、何故か顔すら合わせてくれなくなった。
一応、「おはよう」と言えば、「おはよう」と小さな声で返してくれるし、「また明日ね」と言えば、「えぇ」と小さな声で返してくれるのだが、一向に顔は合わせてくれない。
目が合っても直ぐに逸らされるし、廊下ですれ違う時も、なるべく俺の方を見ないように顔を逸らしながら、俺の横を素早く通り過ぎていく。
同じ女の子のことだからと、森下さんに相談しようとしたこともあったのだが、何かとてつもなくやばいことが起こるような気がして止めておいた。やばいことが何なのかは分からないが。
なので、頼みの綱である綾小路くんにこのことを相談してみたのだが、当の綾小路くんは『いや……』とか、『その……』とか、黙秘権を行使しており、全くと言っていいほど頼りにならない。
あの反応的に、堀北さんの状態について何か心当たりがあるように思えるのだが、まあ、わざわざ問い質してまで聞くようなことでもない。
友達とはいえ、痴情のもつれを持ち込まれて、綾小路くんも迷惑千万だっただろう。綾小路くんにはとても申し訳ないことをしたと思っている。
そんなことを考えながら、森下さんのわけの分からない話に相槌を打っていると、いつの間にかDクラスの教室に到着していた。
「それじゃあ森下さん、またお昼にね」
「はい、またお昼に」
俺は一緒に登校していた森下さんと、またお昼に会う約束をして別れると、静かに教室の扉を開いた。
□■□■□
「おはよう山内!」
「おはよう池!」
教室に入ると、満面の笑みを浮かべた山内くんと池くんが、お互い腕を組みながら元気な挨拶を交わしていた。
あの二人がこの時間に登校しているのは珍しい。
入学してから一週間。山内くんと池くんは、毎日のように遅刻寸前か、遅刻しながら登校していたのに、今日に限ってとても早くに登校している。
明日は槍でも降るのかな?
「おはよう綾小路くん。それに、
「ああ、おはよう、杠」
「……お、おはよう、杠くん」
俺は明日の天気のことを気にしつつ、自分の席に着くと、綾小路くんと、この一週間で仲良くなった王さんへと挨拶をする。
王さん───王
本人からは『みーちゃん』と呼んでほしいと言われたのだが、愛称で呼ぶというのが何だか気恥ずかしくて、未だ呼べていないというのは王さんには内緒だ。
「いやあー、授業が楽しみ過ぎて目が冴えちゃってさー」
「なはは。この学校は最高だよな! まさかこの時期から水泳の授業があるなんてさ!」
「まじそれな! 水泳と言ったら、女の子!」
「女の子と言ったら、スク水だよな!」
山内くんと池くんがはしゃいでいるのは、どうやら今日から水泳の授業が始まるからみたいだ。
二人は興奮を抑えられないのか、人目もはばからず、というか全く気が付かず、女子のスク水について熱く語り合っている。
確か、水泳の授業は男女混合だったはず。
つまり、俺たち男子は、Dクラスの女子たちの水着姿……即ち肌の露出を目にすることになる。
ただ、山内くんと池くんは浮かれ過ぎて周りがよく見えておらず、その会話を聞いていた一部の女子たちからは、何か気持ち悪いものを見るような目で見られている。
花の女子高校生の水着姿、というのが思春期真っ只中の男子高校生には刺激が強く、興奮してしまうのも無理はないが、もう少し周りを気にした方がいい。
モブ的にはああいう会話に参加した方がいいのかもしれないが、流石に女子たちから軽蔑の視線を向けられ続ける高校生活を送るのは勘弁願いたい。
「おーい、
「フフッ、呼んだ?」
あだ名なのか、博士と呼ばれた眼鏡をかけた太目な生徒が、池くんたちへと近づいていった。
確か名前は、
あの三人はもうあだ名で呼び合うような仲になったのか。
俺も綾小路くんのことを『きよぽん』とでも呼んでみようかな……なんて。……何で『きよぽん』なのかは分からないけど。
「博士、女子の水着、ちゃんと記録しといてくれよ?」
「任せてくだされ。体調不良で授業を見学する予定ンゴ」
「記録? 何させるつもりだよ」
ここでタイミングよく登校してきた須藤くんが、外村くんたちに質問を投げかける。
「博士にクラスの女子のおっぱい大きい子ランキングを作ってもらうんだよ! あわよくば携帯で写真とか動画の撮影とかもなっ!」
「……おいおい」
いくら仲がいいとはいえ、須藤くんも池くんたちの企みに少し引いている。
そんなこと女子たちに知られたら……と思ったが、時すでに遅し。あれだけ大音量で話していたからか、クラス中の女子たちは池くんたちに対して、まるで汚物を見るような視線を向けている。
うん。流石のモブでも、ああはなりたくないな。
一部の男子を除いて、他の男子たちも、なんだかんだ女子のおっぱい大きい子ランキングの話に耳を傾けていた。
一部の男子はというと、平田くんは何とも言えない顔をしているし、高円寺くんは我関せずといった様子で手鏡を見ながら髪を整えていて、綾小路くんは……意外と混ざりたそうにしている。
「おーい、綾小路ー」
ちょうどその時、池くんがこちらに振り向き、綾小路くんの名前を呼びながら、笑顔で手招きをした。
「な、なんだよ」
綾小路くんは口ごもりながら立ち上がり、少し嬉しそうに池くんたちの元へと近づいていく。
少しでも皆と仲良くなりたい綾小路くんには、そのお誘いはまさに渡りに船。例えそれが、沈没まで秒読みといった泥舟だったとしても。
俺は一瞬、綾小路くんを止めるべきかとも思ったが、人の交友関係に口を出すのはウザがられるかなと、軽く忠告するだけに留めておいた。
「綾小路くん。分かってると思うけど、ほどほどにね」
「あ、ああ……。……そうだ、杠もどうだ?」
「あー、俺は多分───」
そう言って、俺は池くんたちの方に視線を向ける。
綾小路くんも俺につられるように池くんたちの方に視線を向けると、そこには、ちょっと、いやかなり、嫌そうな顔をして俺の方を睨んでいる池くんや山内くんの姿があった。
俺は、そんな彼らの姿を見て苦笑を浮かべる。
「多分、森下さん……ああ、いつも一緒に登校してる女の子のことね……と仲がいいから嫌われてるんだと思う。あんなランキング付けようとしてるくらいだし、リア充爆発しろとでも思ってるんじゃないかな」
「……そういうことか」
「うん。そういうことだから───」
「なにしてんだよ綾小路!」
「そんなヤツほっといて早く来いよ!」
痺れを切らしたのか、池くんと山内くんから、綾小路くんに向けた催促の言葉が投げかけられる。
ああも露骨に嫌いですって態度や言動をされると、流石の俺も少し傷つくが、前世で親友に殺された経験を持つ俺の
ただし山内、テメーはダメだ。この間クラスの女子たちに俺の事実無根の噂話を流布させてたこと知ってるからな。
「早く行ってあげな」
「あ、ああ……」
俺がそう言うと、綾小路くんは短く返事をして、池くんたちの所、もとい、おっぱい大きい子ランキングへと参加しに行った。
俺はそんな綾小路くんたちを他所に、鞄から取り出した本───
〝ローマは一日にして成らず〟という言葉があるように、モブも一日では成ることはできない。こういう日々の小さな
何せ、俺の
□■□■□
「よっしゃプールだ!」
森下さんとのお昼ご飯を終えて教室に戻ってくると、開口一番、そんな声が聞こえてきた。
どうやら、待ちきれないといった様子の池くんが、はやる気持ちを抑えきれずに出した声らしい。
その後も、池くんは己の欲望を隠そうともせず、山内くんや須藤くんといった仲のいいグループでまとまって、屋内プールへと向かいだす。
俺もランチバッグを鞄の中にしまうと、水着などが入った袋を取り出し、綾小路くんに一緒に行かないかと声をかけようとしたのだが、一歩遅かったようで───
「一緒に行こうぜ、綾小路」
「え? あ、ああ、そうだな」
綾小路くんは池くんたちから誘われたらしく、彼らと一緒に屋内プールへと向かって行った。
すれ違いざま池くんに睨まれたような気がしたが、まあ、大したことではない。
俺もさっさとプールへと向かおうと、教室を後にしようとしたその時、平田くんから声をかけられる。
「杠くん、よかったら僕と一緒に行かない?」
「平田くん。うん、いいよ。一緒に行こっか」
俺は平田くんからのお誘いを二つ返事で
□■□■□
「やっぱすげえなこの学校! 街のプールよりすごいんじゃね!?」
競泳パンツを穿いた池くんが、学校のプールを見るなり、そんな声を上げた。
他の男子たちも声には出さないものの、皆一様に驚きの表情を浮かべている。
確かに、と俺はプールを覗き込む。
水は澄んでいてとても綺麗で、屋内なので天気の影響を受けることもない。まさに水泳をするのに理想的な環境と言えるだろう。
「女子は? 女子はまだなのかっ!?」
そんな声が聞こえてきたので顔を上げると、池くんが鼻息を荒くしながら、キョロキョロと辺りを見回し、女子の姿を探していた。
ここまで明け透けで煩悩まみれだと、一周まわって尊敬の念を抱きたくなる。
「着替えに時間がかかるからまだだろ」
そんな池くんに、綾小路くんは淡々と言葉を返した。
「な、なあ、もし俺が血迷って女子更衣室に突入したら……どうなるかな?」
「女子に袋叩きにされた上で退学になって、書類送検されて人生お先真っ暗だろうな」
「……リアルなツッコミやめてくれよ」
池くんはその光景を想像して怖くなったのか、両腕を抱きながらブルブルと身を震わせている。
他の男子たちも池くんが逮捕されるところを想像したのか、心なしか震えているような気がした。
「変に水着とか意識してると女子に嫌われるぞ?」
「バッ、意識しない男がいるかよ! ……やべ、勃ったらどうしよ……」
池くんの最低発言に、流石の綾小路くんも眉を
「平田くん、あれ、どう注意したらいいと思う?」
「あはは……。ごめん、ちょっと僕にも分からないや……」
俺と平田くんが注意の仕方で悩んでいると、綾小路くんがこっそりとこちらに避難してきた。
まあ、女子が来た時にあそこにいたら、軽蔑の視線を向けられることこの上ないだろう。
「綾小路くんはあそこにいなくてもよかったの?」
「ああ、オレは事なかれ主義だからな」
「じゃあ何でおっぱい大きい子ランキングなんて参加したのさ……」
「……そんなことより、凄い身体だな、杠。何か習ってたのか? スポーツとか、格闘技とか」
「それは僕も思ってた。何かしてたのかなって」
「あからさまに話逸らしたね。平田くんも便乗しなくていいからね」
そんな軽口を叩き合いながら、俺たちは女子が来るまでの時間を潰すのだった。
「うわ〜、凄く広い! 中学の時のプールより大きい〜!」
そんなこんなで、男子グループから遅れること数分、ついに女子の声が聞こえてきた。
「き、来たぞッ!」
血走った目で身構える池くん、とその他男子たち。
先ほど綾小路くんから意識するなと言われていたにも関わらず、興奮が抑えきれていない様子。
ところが、池くんをはじめとする男子たちの願いは、予期せぬ形で裏切られることとなった。
「
「さ、
池くんと山内くんの絶叫。
授業を見学していた外村くんも、慌てて見学用の建物の二階席から、プール全体を見渡している。
確かに、高台からならば、件の女子たちを見つけることができるだろう。
だが───その姿はどこにも見当たらない。
女子のうち約半数が見当たらず、目的としていた女子も当然ながらいない。
信じられないといった様子で、外村くんは首を左右に振ってもう一度プール全体を探している。池くんも外村くんと同様に、
だろうね、と思った俺は、見学用の建物の二階席に視線を向ける。
するとそこに、長谷部さんや佐倉さんをはじめとする女子たちが、見学組として続々と姿を現した。
まあ、あれだけ教室で騒いでいたんだ、女子も男子の晒し者にはなりたくないだろう。
だから見学をする選択をしても、何もおかしくはない。
「な、なんでだよ……これ、どういうことだよ……!」
女子たちが軒並み見学するという事実に、池くんと外村くんは信じられないものを見たかのように頭を抱えている。
山内くんなどの女子の水着を楽しみにしていた男子たちも皆、動揺を隠せないでいるようだった。
そんな変た……男子たちの姿を見て、見学組の女子たちは、まるでゴミでも見るかのような視線をこれでもかと送っている。
「巨乳が、巨乳が見れるかと思ったのにぃッ!」
「俺たちの巨乳がぁッ!」
心中はお察しするが、池くんと山内くんの魂の叫びは、残念なことに見学席にいる女子たちにも聞こえている。
そして、その絶叫を聞いていた長谷部さんは一言───
「キモっ」
と、心からの本音をぶちまけていた。
同じく見学している女子たちも、皆口々に似たようなことを呟いている。
「自業自得ではあるけど、凄い勢いで男子の好感度が下がっていくね。願わくば、あの言葉の矛先がこっちに向けられないことを祈るけど」
「そ、そうだね……。僕としては、男子も女子も、皆仲良くしてほしいんだけど……」
「……あれを見る限り厳しいと思うぞ?」
そんな会話をしていると、一足先に立ち直ったらしい山内くんが、未だ傷心中の池くんへと近寄り、手を差し伸べた。
「落ち込んでる場合じゃないぜ、池! 俺たちにはまだ、たくさんの女子がいるッ!」
「や、山内……お前……そうだな。確かにそうだ! こんなところで落ち込んでる場合じゃないよなっ!」
「「友よ!」」
……俺たちはいったい、何を見せられているんだろう。
山内くんと池くんがお互いに手を取り、男の友情(笑)を確かめ合っている。
あれも一つの友情の形……か。
まあ、たくさんと言えるほどの女子はいないけど。
「二人とも、何やってるの? 楽しそうだねっ」
「く、くく、
「いや、えっと、これはっ……!」
手と手を取り合い、更なる友情(意味深)を深め合っていた二人の間に割って入るように、櫛田さんが顔を覗かせた。
あそこに割って入るなんて、まさに勇者だ。
スクール水着を着た櫛田さんは、その妖艶なボディラインが浮き彫りになっていた。
もっちりとした肌、豊満な胸、綺麗にくびれた腰、程よく肉のついた太ももとお尻。
そこに水着が食い込むその姿はとても扇情的で、櫛田さんが意図せずとも、男の情欲を煽ってやまない。
そんな櫛田さんの身体に一瞬、男子たちの視線は釘付けになる……が、すぐに目を逸らすこととなる。
十中八九、櫛田さんの
だが悲しいかな、既に前傾姿勢になっている男子が何人かいる。何を隠そう、至近距離で櫛田さんのスク水姿を直視してしまった、池くんと山内くんだ。
櫛田さんにバレないように必死に前屈みになっているその姿はなんとも滑稽で、思わず顔を
その光景に平田くんは苦笑いを浮かべ、綾小路くんは……何やら黄昏ているところを堀北さんに詰められている。
かくいう俺も、もし人生二週目でなければ、皆と同じような反応をしていたに違いない。
それだけ櫛田さんが魅力的とも言える。
すると櫛田さんはこちらに気付いたのか、軽い足取りで俺たちのところに小走りで向かってくる。
他のクラスの授業の後なのか、プールサイドの床は濡れており、危ないなと思った俺は櫛田さんに注意を促すが───
「櫛田さん、プールサイドは滑りやすいから気をつ───」
「きゃっ!」
「───っと、大丈夫? 怪我はない?」
案の定、櫛田さんは足を滑らせ転びそうになるが、間一髪で俺は櫛田さんと地面の間に体を滑り込ませるようにして、櫛田さんを優しく抱きとめた。
その際、櫛田さんが俺に覆い被さるような体勢になっているので、自然とその豊満な二つの柔肉が俺の胸板にムニュリと押し付けられる。
……一応言っておくけど、これはただの事故だから。人命救助だから。
「櫛田さん大丈夫!?」
「大丈夫か、櫛田」
心の中でそんな言い訳をしていると、平田くんや綾小路くんをはじめ、男子や女子たちが次々と櫛田さんを心配して駆け寄ってくる。
あ、池くんと山内くんが転けた。
「う、うん。私はなんともないよっ。助けてくれてありがとう、杠くん。皆も、心配してくれてありがとうっ」
「どういたしまして。次からは気を付けてね?」
「うん、気を付けるねっ」
櫛田さんは、無事をアピールするように元気な声で、そう返事をする。
しかし、不思議とその視線は、俺を見ているようで見ていない。俺ではない、別の誰かを見ているような気がする。
そして、その視線に宿っているのは……優越感?
じゃあどこを見て、と振り返ろうとすると、一足遅れて到着した池くんと山内くんが、俺と櫛田さんが半ば抱き合っている状態を目にし、物凄い剣幕で言いがかりをつけてきた。
「お、おい、杠! いつまで櫛田ちゃんに抱きついてんだよ!? 早く離れろよッ!」
「そ、そうだそうだ! 櫛田ちゃん嫌がってんだろッ!」
そう言われても、今は櫛田さんが俺の上に跨り馬乗り状態になっているため、櫛田さんがどいてくれないと俺は身動きが取れそうもない。少しでも身動きを取ろうとすると、櫛田さんのメロンが、その、アレだし。
それと抱きついてない。ちゃんと事実を認識してくれ。
「ご、ごめんね杠くん。重かった、よね……?」
櫛田さんは照れたように頬を赤らめ、いそいそと俺の上から降りると、申し訳なさそうに瞳を潤ませ、上目遣いでそう問いかけてくる。
もし俺が人生二週目でなければ、一瞬にして櫛田さんのことを好きになってしまっていたことだろう。その上目遣いには、そう思わせるほどの破壊力があった。
それはそれとして、痛い痛い。男子たちからの嫉妬の視線が凄く痛い。これだけ目立ってしまうと、俺のモブとしての沽券に関わる。
「そんなことないよ。とにかく、櫛田さんに怪我がなくて良かった」
「うんっ。改めてありがとう杠くんっ。それと池くんと山内くん、杠くんは私を助けてくれたんだから、あまり悪く言わないでね?」
「「うっ、櫛田ちゃんがそう言うなら……」」
櫛田さんに叱られた池くんと山内くんは、表面上は反省の色を見せているが、内心は俺に嫉妬やら憎悪やらの炎を燃やしていることだろう。
俺としては、そういうことには慣れているから、あまり気にしてはいないが。
「よくあれに反応できたな、杠」
叱られている二人を他所に、こっそりフェードアウトしていた俺に綾小路くんが話しかけてきた。
「まあ、何となく予想はできてたから、一応すぐ動けるように身構えておいたんだ」
「なるほどな。……それにしても、あの反応速度……俺より上、か……?」
後半声がボソボソしていて聞き取れなかったが、綾小路くんのことだ、きっと詩音くん凄い、詩音くんカッコイイとか言ってくれていたんだろう。
俺はそう脳内で補完しておいた。
だが、今回の件で一つ、いや二つ、櫛田さんについて気がかりなことができた。
気のせいだとは思いたいが、俺の経験上こういう直感は意外と馬鹿にならない。
それは───
「よーしお前ら、集合しろー」
ちょうどその時、青い競泳パンツに身を包んだ、如何にも体育会系といった風貌のマッチョ体型の教師から号令がかかり、授業が始まることとなった。
俺はそれまで考えていた櫛田さんについての問題を一度棚に上げておき、水泳の授業に意識を向ける。
「見学は16人か。また随分と多いな。まあいいだろう。早速だが、準備体操をしたら泳いでもらうぞ。お前らの実力が見たいからな」
明らかにサボりの生徒がいるにも関わらず、先生はそれを咎めることはしなかった。
恐らく授業後にでも、Dクラスにマイナスの判定を付けるのだろう。
「あの、先生、俺あんまり泳げないんですけど……」
一人の男子が、申し訳なさそうに手を挙げる。
よく見ると、その男子以外にも、不安そうにしている男子が何人かいた。
「安心しろ。俺が担当するからには、必ず夏までに泳げるようにしてやる」
「別に、無理して泳げるようにならなくてもいいですよ。どうせ海なんて行かないんだし」
「そうはいかん。今は苦手でも構わんが、克服はさせる。泳げるようになっておけば、必ず後で役に立つ。必ずな」
必ず後で役に立つ。必ず……ね。
もちろん泳げるに越したことはないが、必ず、は流石に言い過ぎだではないだろうか。
泳ぐ機会なんて、水泳の授業か、夏休みにプールや海、川に行くことくらいだろう。
この学校の性質上、敷地外へ行くことはできない。よって海に行くことはできないので、必然、水泳の授業かプールでしか泳ぐ機会は訪れない。
そして、授業でもプールでも、必ずしも泳げるという必要性はない。
生徒たちのカナヅチを治してあげたいという可能性もなくはないが、きっと役に立つ、ではなく、必ず後で役に立つ、と断言しているところに違和感を覚えて仕方ない。それに、後で、という部分にも。
まるで水泳が必要な何か、泳げることで有利になる何かがあると確信しているような言い方だ。
……高度育成高等学校水泳大会でもあるんだろうか?
と、そんな考察を一度中断し、全員で準備体操を始める。
その間も、相変わらず池くんと山内くんは、チラチラと女子の様子を窺ってやまなかった。
準備体操を終えると50メートルを泳ぐよう指示される。
泳げない生徒はプールの底に足をつけてもいいらしい。
俺はプールに入ると、普通に50メートルを泳ぐ。
水温は適切に調整されているのか、冷たいと感じることはなく、ちょうどいい温度だった。
軽く50メートルを泳いだ後は、プールから上がって全員が泳ぎ終えるのを待った。
「とりあえず、ほとんどの生徒が泳げるようだな」
「余裕っすよ。俺、中学の時トビ……スカイフィッシュって呼ばれてましたから」
それは未確認生物。
「そうか。では早速だが、これから競争をしてもらう。男女別の50メートルだ。1位になった生徒には俺からボーナス5000ポイントを支給しよう。だが、一番遅かった奴には逆に補修を受けさせるから、覚悟しておけよ」
「マジっすか!?」
「5000ポイント!?」
泳ぎに自信のある生徒からは歓声が、ない生徒からは悲鳴が上がる。
1位になったらボーナスか。しかも5000ポイントも。
大会でもない、ただの授業で支給されるポイントとしては破格の金額だ。
もしかしたら、今回サボった生徒たちに発破をかけるためかもしれない。
まあ、授業でポイント、つまりお金が貰えるっていうのがそもそもおかしいんだけど。
「女子は人数が少ないから、5人を2組で分けて一番タイムが早かった生徒の優勝にする。男子はタイムの早かった上位5人で決勝をやるぞ」
というわけで、まずは女子のレースが始まった。
男子たちはプールサイドに座り込み、ウキウキで女子たちを応援……もとい品定めをする。
「櫛田ちゃん櫛田ちゃん櫛田ちゃん。はぁはぁはぁ」
「怖いぞ池。少し落ち着け」
「お、落ち着いていられるかよ! 櫛田ちゃんクソ可愛いだろっ! おっ……胸もデカいしさっ!」
「お、おぅ」
凄い勢いで捲し立てる池くんに、綾小路くんもドン引きしている。
やはりぶっちぎりで男子の人気を集めたのは櫛田さんだ。
容姿端麗でスタイル抜群、人当たりも良くて優しく、胸も大きい。そして何より、笑顔が良く似合う。
他の女子たちも負けてはいないものの、櫛田さんには一歩及ばないといったところか。
「皆、この光景を目に焼き付けろよ! 今日のオカズを確保するんだッ!」
「「おうッ!」」
何なんだろう、これ。
この水泳の授業を介して、男子たちの絆が深まっていってる気がする。
いいこと……なんだろうか?
そうこうしているうちに笛が鳴り、女子5人が一斉に飛び込む。堀北さんは2コースだ。
飛び込みは上々で、序盤で一気にリードを奪うと、そのまま距離を詰めさせずトップを維持。危ない場面もなく、そのまま50mを泳ぎ切った。
「お〜! やるなあ堀北」
先生も思わず唸るほどの結果で、タイムは28秒ほどと、かなりの好タイムだった。
男子たちはというと、結果など二の次で、堀北さんたち女子のお尻に視線を釘付けにされていた。
平田くんだけではないだろうか、女子をそういう目で見ていないのは、と思ってしまうのも仕方がないほど、男子は女子に夢中だ。
続いて第二レース。一番人気は4コースの櫛田さんだ。
櫛田さんはそういう視線を向けながら応援する男子たちに、嫌な顔一つ見せずに笑顔で手を振っている。
「うひょおおおおおっ!」
それに悶える男子たち。中には股間を抑えて蹲っている男子までいる。特に池くん。
笛が鳴り、スタートした第二レース。試合展開は一方的なものだった。
櫛田さんも頑張ってはいたものの、結果は総合4位。堀北さんは2位だった。
そして、男子の第一レースが始まる。
2コースには綾小路くん、1コースには須藤くんがいる。
他のコースの男子は、あまりよく知らない。いつも池くんたちと一緒に、俺に嫌悪の視線を向けてくる男子たちだ。
笛が鳴り、皆一斉にスタート台から飛び出した。
中でも特に目を引いたのは須藤くんだ。バスケ部らしい須藤くんは豪快に飛び込むと、水泳部もかくやといった勢いで50メートルを泳ぎ切り、見事1位の座をもぎ取った。
「やるじゃないか須藤。25秒を切ってるぞ。どうだ、水泳部に入らないか? お前なら練習すれば大会でも十分な結果が残せるぞ」
「俺はバスケ一筋なんで。水泳なんて遊びっすよ、遊び」
この程度の水泳では運動のうちに入らないのか、須藤くんは余裕な様子でプールサイドへと上がってきた。
ちなみに、綾小路くんも健闘はしていたものの、35秒ちょいとそこそこの結果に収まっていた。
そして男子の第二レース。とうとう俺の番だ。
最近どこか目立ち気味だった俺は、このあたりでそろそろモブらしく普通なところを見せないといけない。
そう意気込み、俺はスタート台に立つ。
「きゃー! 平田くーん!」
「杠くん頑張ってー!」
俺がモブらしく頑張ろうとしていると、どうやら平田くんと同じコースだったみたいで、女子たちからの黄色い声援が聞こえてきた。
そして男子たちからは、嫉妬の視線が飛んでくる。
「お互い頑張ろうね、杠くん」
そんな中でも平田くんは、顔の周りにキラキラと輝かしいエフェクトを発しながら、笑顔で頑張ろうねと声をかけてくれた。
まさにイケメン。これは女子たちが惚れてしまうのも無理もない。俺が女の子だったら、きっと惚れてしまっていただろう。
俺は、俺の内なる女の子を押さえ込みながら、平田くんに返事をする。
うん、お互い頑張ろうね。
「平田くん、君がナンバー1だ」
「え?」
「あ………………いや、お互い頑張ろうって」
「あ、あぁ。うん、そうだね」
思わず心の声と台詞が逆になり、とても気まずい空気になってしまったが、なんとか誤魔化せた、と思う。
笛が鳴り、俺たちは一斉にプールに飛び込んだ。
俺が狙うのは3位。可もなく不可もなくといった順位だ。
1位でも2位でもないので目立つことはなく、決して下位ではないので運動神経はそこそこという評価も得られる。そして、このレースに限っては平田くんがいるので、俺に注目が集まることはない……はずだ。
前方を見ると、平田くんが一歩抜きん出ているのが見えたので、俺は両隣のコースを見ながら泳ぐスピードを適宜調節する。抜きそうになったらそれとなく減速、抜かれそうになったら加速を繰り返し、そのまま何の
当然、平田くんは1位だった。
俺がプールから上がった時には既に、彼は女子たちに囲まれ、持て囃されていた。
呆れるほどの人気ぶり。誰も俺には目もくれない。
計画通り───
「3位、惜しかったね、杠くんっ」
「凄く綺麗なフォームだったね。もしかして、水泳やってたりした?」
───に行かないのが人生……。
プールから上がり、端の方でひっそりと平田くんを眺めていたら、櫛田さんと小野寺さんに話しかけられた。
俺は心の中で涙した。
「やめたまえ、私を巡って争うのは。私は皆のものなのだよ。全員見ていたまえ。真の実力者が泳げばどうなるのかを」
俺が心の中で泣いていると、何をどう聞いたのか、高円寺くんは平田くんへの歓声を自分へのものと勘違いしたらしく、女子に向けてそう告げると、爽やかな笑みを浮かべながらスタート台へと足をかける。
というか……
「なあ……高円寺のやつ、なんでブーメランなんだよ……」
「さ、さあ……」
そう、高円寺くんは何故か、ブーメランパンツを穿いていたのだ。
一応ブリーフ型の水着も学校の指定で認可されているが、このクラスでそれを穿いているのは、高円寺くんくらいしかいない。
女子たちはそんな高円寺くんの股間の強調ぶりに、顔を背けたり顰めたりしている。
だが第三レース、勝つのは恐らく高円寺くんだろう。
見ただけでも十分に伝わってくる。あの鍛え抜かれた肉体、スタート前の前傾姿勢、それはまるで、アスリートのように研ぎ澄まされていた。
「私は勝負になど興味はないが、負けるのは好きじゃないんでねぇ」
その台詞の直後、開始の笛が鳴った。
笛の音と共に、高円寺くんはお手本のような綺麗なフォームでロケットスタートを切ると、その勢いのまま他を圧倒するスピードで突き進む。
「凄い……」
圧倒的な泳ぎを見せる高円寺くんに、小野寺さんは思わずといった風に感嘆の声を漏らす。
櫛田さんも唖然とした様子で高円寺くんの泳ぎ見ていた。
無駄のない泳法。まるで水を味方につけたかのような勢いで泳ぐ高円寺くんは、間違いなく先ほどの須藤くんよりも速く、早い。
俺がそんな感想を抱いている間に、高円寺くんは瞬く間にゴールした。
タイムを切った先生が、思わずストップウォッチを二度見している。
「23秒22……だと!?」
「いつも通り、私の腹筋、背筋、大胸筋は好調のようだ」
驚愕している先生を他所に、高円寺くんは余裕の笑みを浮かべ、髪をかきあげながらプールから上がる。
息を切らしている様子もなく、本気で泳いだとは思えない。まだまだ余力を残しているようだ。
チラリと綾小路くんたちがいる方に目を向けると、高円寺くんの泳ぎを見た須藤くんが、これ以上ないくらいに闘志を燃やしていた。
水泳は遊びって言ってなかったっけ?
「高円寺くんも須藤くんも、泳ぐの速いから楽しみだねっ」
「そうだね。須藤くんもやる気満々みたいだし、どっちが勝つか分からないね」
「私は高円寺くんが勝つと思うな」
二言三言、櫛田さんと小野寺さんと話していると、決勝戦が始まった。
結果から言うと、高円寺くんの圧勝だった。
スタート直後、プロ級の飛び込みを見せた高円寺くんに対し、須藤くんも負けじと追い縋ったものの、残酷にもその差は徐々に開いていき、最終的に5メートルほどの差をつけて高円寺くんが優勝した。
「す、凄かったね、高円寺くん」
「うん……。プロの水泳選手かと思っちゃった……」
まさに圧巻。
櫛田さんと小野寺さん、そして俺も、高円寺くんの泳ぎに驚愕していた。あんな泳ぎを見せられたのだ、無理もない。
小野寺さんが言ったように、高円寺くんは、まるでオリンピック選手のような、プロ顔負けの泳ぎだった。
美しいフォーム、力強いストロークとバタ足、圧倒的なスピード、どれをとっても高校生のレベルを超えていた。
どうして高円寺くんのような怪物がこの学校に? という俺の疑問は、授業の終了を告げるチャイムとともに、俺の中から霧散していくのだった。
ちなみに、この後俺が櫛田さんと小野寺さんと一緒にいるところを目撃した男子たちに、嫉妬の視線を向けられることになるとは、この時の俺は知る由もなかった。
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SS:森下藍と猫
入学式から数日が経った、ある日の放課後。
私は杠詩音と共に、いつものようになんてことない話題で盛り上がりながら、帰路についていました。
「やはり宇宙人との対話を試みるならば、まずは挨拶が肝心だと思うのです」
「それは宇宙人相手じゃなくても大事だね」
……それはそうですね。
挨拶とは、他者とのコミュニケーションを円滑に進めるための第一声。挨拶なくして会話は成り立たない、そう言っても過言ではありません。
相手が人であれ、動物であれ、一言目とは、自分の印象を決定付けることになる重要なもの。その相手が宇宙人ともなれば、その選択を間違えた瞬間、私など一瞬で地球の肥料になってしまうことでしょう。最悪、
それだけは避けなければいけません。
「では杠詩音、挨拶の練習をしておきたいので、宇宙人の役をしてください」
「何が『では』なの。何が」
往生際が悪いですね。
「もし私が宇宙人と遭遇して、第一声を誤った場合、連れていかれるかもしれないのですよ? いいのですか?」
「それはどういう状況なの……」
呆れたように肩を竦める杠詩音。
〝備えあれば憂いなし〟という言葉があるように、あらゆる状況に対処できる
杠詩音ともあろうものが、そのことを理解していないわけがない。ということは、つまり───
「杠詩音は、宇宙人だった───」
「今、何か聞こえなかった?」
私の言葉を無視するように、杠詩音は立ち止まり、そう呟いた。
私は無視されたことに少しだけ頬を膨らませつつも、問い返す。
「何か、とは? まさか、宇宙人───」
「猫の鳴き声みたいな。気のせいだったかな……?」
そう言うと、杠詩音は小さく頬をかく。
宇宙人ではなかったことに落胆しつつ、私も耳をすませてみましたが、聞こえてくるのは、春のそよ風が木々や草葉を撫でる音ばかり。猫の鳴き声など微塵も聞こえてこない。
ですが、杠詩音の聴覚は宇宙人並み。世界を音で認識していると言っても過言ではないので、私が聞き取れなかった音が聞こえていても何も不思議ではありません。
「───」
「あ、ほら、また聞こえてきた」
「……確かに、微かですが今のは私でも聞き取れましたね」
ほんの小さな声ですが、そよ風に乗って間違いなく私の耳に届いた声。猫の鳴き声かどうかは分かりませんでしたが、それが何かの鳴き声であることは確か。
杠詩音は音が聞こえてきたと思しき方へとゆっくりと歩き出す。私もそれに追従し、数メートル先にある植え込みへと向かっていきます。
杠詩音の言う通り、鳴き声の主が猫だというなら、慎重を期す必要があります。猫はとても繊細で、警戒心の強い生き物。不用意に物音を立てたり驚かせてしまえば、一瞬にして逃げられてしまう。
杠詩音は植え込みの前で立ち止まると、そっとした手付きで植え込みの草葉を掻き分ける。すると───
「みゃー」
「……居ましたね」
「……だね」
そこには、まだ生まれたばかりの赤子のように小さい、灰色の毛を持つ子猫が、キュルキュルとした青い瞳でこちらを見つめていました。
「どうしますか?」
「……」
杠詩音は私の問いに対し何も答えず、数秒その子猫と見つめ合った後、優しい手付きで、植え込みの影からそっと子猫を抱き上げた。
……とても可愛い。
もちろん子猫もそうですが、何より、
私はおもむろに鞄から携帯を取り出すと、シャッター音を消し、子猫を抱きかかえている杠詩音に気付かれないようにレンズを向けて、連写。僅か数秒のうちに、私の携帯のフォルダは
ふむ……。これだけあれば、申し分ない戦果と言えるでしょう。
「……それで、その子猫はどうしますか? 確か、この学校はペットの飼育が禁止されていたはずですが」
私は、みゃーみゃーと鳴く子猫と戯れている杠詩音を脳裏に焼き付けながら、そう問いかける。
すると杠詩音は、錆びたブリキの
「……え、
「入学案内で貰ったパンフレットにも書いてありましたよ」
そう事実を告げると、杠詩音の表情は瞬く間に落ち込んでいき、数秒その状態が続くと、一周まわったのか、まるで死を覚悟した兵士のような、どこか決意に満ち満ちた表情へと変貌しました。
「いい? 森下さん。バレなきゃ校則違反にはならないんだよ。……バレなきゃ、校則違反には、ならないんだよ」
「何で二回言ったんですか?」
何故でしょう。大したことは言っていないのに、不思議と溢れ出るこの説得力と納得感は。くっ、これが惚れた弱み、というやつですか……。
ですが、個人的にも何か生き物を飼ってみたいとは思っていました。生き物というのは不思議なもの。その生態を観察することで、新たな発見や気付きに出会うことができるかもしれません。
しかも、猫は宇宙人のスパイ説という噂が巷では囁かれているらしいので、今回の件はある意味渡りに船と言えなくもないですね。
「まったく、仕方がないですね、杠詩音は。いいでしょう。この藍ちゃんが手伝ってあげます。タイタニック号に乗ったつもりでいるといいですよ」
「流石は森下さん。こういう時は頼りになるね」
私は杠詩音にそう
数日後……いえ、数分後、帰寮して直ぐ、私の大ポカで寮の管理人に子猫が見つかり、取り上げられてしまうことになるなど露知らずに……。
おまけ解説:
池くんや山内くんをはじめとしたDクラスの男子たちが詩音くんを嫌っているのは、言わずもがな詩音くんが森下さんといつも一緒にいるからというのが理由ですが、その大部分を占めているのが、森下さんがお昼や放課後になるとDクラスの教室まで詩音くんを迎えに来るからです。森下さんのことを知らないDクラスの男子たちからすると、森下さんは普通の美少女に見えるので。所謂ただの嫉妬です。
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