米花町には犯罪者が多すぎるって話。   作:ひつまぶし太郎

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早速評価と感想をくださった方々、数ある小説の中からこの小説を見つけて目を通してくださった読者の皆様、本当にありがとうございます。


2/緑の悪魔が嗤う摩天楼・上

 

 

 

今日は最近増えてきた放火犯を取り締まってやろうと気合を入れていたのだけど、どうやらその予定は変更しなくてはいけないらしい。

 

「HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!!」

「近所迷惑って知ってる?知らないかな、そりゃそうか!こんな時期にハロウィン気分のあんたにはいつでもパーリナイトってことだよね!最悪!」

 

少年は今、吐き捨てるように悪罵を投げかけ、首都高速を暴走する大型トラックへと追い縋っていた。

 

にわかに騒がしくなった警察無線に呼び寄せられるようにして駆けつけてみれば、東洋火薬の巨大倉庫から警察の用意したバリケードをぶち破って高速へと走り去るトラックを見つけたのが数十分前。

今のところ怪我人は出ていないだけで、深夜の首都高を爆弾積んだトラックが逆走してる時点でもはや手遅れなくらいの大事件ではあった。

 

「うるさいガキだ!キーキーと頭に響く!神経に直接触れられてるかのようなおぞましさがするぞ!」

「昼夜逆転してるおじいちゃんには言われたくないね!今は夜だよ、朝まで眠ってな!それに僕の美声で頭が痛くなるなんて補聴器あってないんじゃない?いいお店紹介しようか!ついでに老眼鏡も用意してくれるとこ!」

 

ただの暴走トラックならさっさと運転手を気絶させ、どこか安全な場所にトラックを突っ込ませて無理矢理止めているところだが、今回はそうもいかない。

 

なにせこのトラックが積んでいるのは大量の火薬。

一歩間違えれば大惨事間違いなしなその激ヤバトラックを前に、少年はどうするべきか困り果てていた。

 

「死ね虫野郎!!」

「蜘蛛は虫じゃないんだけどなぁ!君からすれば、雲の上みたいな存在かもしれないけど!」

 

挙げ句これだ。

突如トラックの運転席から荷台の上に飛び乗ってきて、足を突き刺して身体を固定すしている緑の怪人。

 

仮面を被り『グリーンゴブリン』を名乗るその怪人が、より事態を混迷へと導いていた。

 

「どうしたスパイダーキッズ!そんなものか!?口先だけのバカな奴め!」

「…そのお面趣味悪いね!お祭りの屋台で買ったの?あ、だからそんなに安っぽいのか!」

「…殺すゥ゙!」

「だからそれやめてってば!」

 

自分に向かって投げられたカボチャの形へと加工された手榴弾を躱して、上空へと蹴り上げる。

夜の首都高にオレンジ色の花火が咲いて、それに急き立てられるように多くの車が避難をしていく。

 

怪我人が出ていないことに安堵したのも束の間。

その隙を狙うように逃げ遅れた車へとカボチャが飛び、それを糸が捕まえて再び空に火花が散った。

 

「服のセンスをけなされてキレるのは痛いところ突かれたからだろ?お母さんに買ってもらう時期は卒業したらどうだろうって思うよ!」

「黙れ!」

「というか盗み出したトラックになんであんた好みに加工された爆弾があるわけ?盗む前に夜なべでもした!?」

「知能犯の準備は狡猾で静かなものだ!!」

「誰も手伝ってくれるお友達がいないなんて悲しいね」

 

それだけではない。

全ての爆弾をなんとか無力化して被害が出ないようにしながらも一度だけトラックにたどり着いた少年をあっさりと吹き飛ばす怪力は人間のそれではなかった。

 

「あーもう!いい加減に…!」

「ほら見ろヒーロー!街が燃えているぞ!お前はどうする!?」

 

ゴブリンの指差す方へと顔を向ければ、首都高から見えるほど赤々とした光と煙が立ち上ってるのが見える。

 

「……覚えてろよ!」

「ヒャハハハ!ほーらおチビちゃんが尻尾を巻いて逃げるぞみんな!ザマァないぐぁ!?」

 

そんな危険人物を取り逃してしまったことは痛恨ではあるものの、火事を放置するという選択肢もない。

少なくとも、辺り一帯に爆弾を撒き散らすような無差別テロを行うような愚者ではなく、目的のために爆弾を温存し全てを火に焚べようとする冷徹で残酷な殺人者を追いかけるよりも、優先度はきっと高かった。

 

「…イケてる悲鳴だねグリーンゴブリン!地獄で会おう!」

「クソガキイイイイイイイイイイ!!!」

 

…最後の悪足掻きで、土手っ腹に高速道路の照明の柱をぶち込んどいたから、痛み分けと思いたい。

 

結局、火災は火の手の上がった黒川邸だけに留めることはできたものの屋敷は全焼。

屋敷に取り残された人のために何度も火に飛び込んだ少年の鼻は、すっかり馬鹿になってしまっていた。

 

 

 

 

 

…うーんまだ焦げた臭いがする気がする。

少年は鼻の頭をかきながら、ぼんやりと目の前の光景を眺めていた。

青空を切り裂くように、少年がトイレで用を足しているうちに貰ったという飛行機のラジコンが空を舞っている。

 

「おい光彦そろそろ代われよ!!」

「私もやってみたぁい!」

「もうちょっと待ってください!結構難しいんですよ、RCの操縦って…」

 

…昼下がりの堤向津川緑地公園。

穏やかな日差しが少年のささくれだった心を癒やしてくれている。

どこかふわふわとした雰囲気でぼけっとする時間が、少年は嫌いではなかった。

 

それに、去年の屋敷探検*1からの付き合いの三人と過ごせるというだけで、友達の少ない少年からすれば価値のある時間だ。

 

「おーい光彦、そのRCどうしたんだ?」

「うわ…」

 

だが、そこに駆け寄ってくる一人の知り合いを見て少年の中で嫌な予感が広がっていく。

 

江戸川コナン。

最近少年と同じクラスに引っ越してきて、転校初日に殺人的なゴールで気絶させてきた憎き相手。

…まぁ謝罪をされた以上混ぜっ返すことこそしないだけで、心証は些か悪い。

 

その転校してきた前日が、ヘリコプターが落ちかけ、それ以降も犯罪が起き続ける近年まれに見る稼働率だったせいで結局徹夜する羽目になっており、キャパオーバーにならなきゃ気絶しなかったし…という負け惜しみも十分にあるのだけど。

 

「コナンくん!」

「くれたんですよ!ヒゲを生やした人が…」

「これは爆撃機だって言ってな!」

「爆撃機!?」

 

元太の言葉に顔色を変えたのはコナンもベルも同時だった。

 

目を細めて、飛行機をよく見れば、その胴体の下に安っぽいプラスチックで作られた爆弾の模型が取り付けられている。

 

「─────!!」

 

…寝ぼけていた第六感が、急速に警告を鳴り響かせるが遅すぎる。

さっきから感じていた火薬の匂いは昨日の残り香じゃなくて現実のものだということに気付き、冷や汗をだらだら流す少年の行動は早かった。

 

コナンが必死に光彦からリモコンを奪おうとしているが、そんな悠長なことはしていられない。

少年は、足下の小石を慌てて拾い上げて振りかぶる。

 

「ベルくん?……きゃっ」

 

それに唯一気がついた歩美ちゃんの疑問を置き去りにして、少年の投げた小石は飛行機へと吸い込まれ。

 

 

───爆発。

 

 

その直前に子どもたちをまとめて突き飛ばし、歩美ちゃんに覆いかぶさるように強く抱きしめて地面に伏せた少年は、昨晩散々目に焼き付けたオレンジ色の閃光に歯を食いしばった。

 

 

 

*1
名探偵コナン第2巻File.8恐怖の館




最後まで読んでくださってありがとうございます。

■グリーンゴブリンについて
スパイダーマンとは因縁の相手。
ピーター・パーカーの親友のハリー・オズボーンの父親であり、定期的にスパイダーマンの正体にたどり着いて人生をめちゃくちゃにしていく。
サム・ライミ版の実写映画の演技は必見。
超怖い。
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