ただ人でありたくて 作:メめ
あるところにただの少年がいた。
人の終わりの意味がわからなくて。人を弔うその意味もよくわからない。
でも、その行いにどうしようもない優しさを見出した。
冥福を祈る言葉。ただ、終わりの後に安息を。罪の終わりを願うその行いに。
どれだけ悪い人でも。良い人でも終わりは同じく土の下で眠る。
「爺さん」
「なんだ」
「……みんな、死んだらどないなるん?」
爺さんにそう聞いたら爺さんは困った顔をしていた。
「うーむ。わからん」
「わからんの?」
「ああ、わからん」
「わからんのに送るんか?」
「ああ、わからんが送る」
爺さんはそう言って、茶を飲んだ。
「死んだ後なんて何にもわからん。オレも歳だからなぁ。死んだ後どうなるか気になりはするんだが、さっぱりだ」
「爺さんでもわからんことがあるんやな」
「日継よりもわかることは多いがな」
爺さんの家は静かで、よく日の当たる温かい場所だ。
田舎にあるからか夜になると星や月が綺麗に見える。ここにいる間は幼馴染の奇行を直接見ながら頭を痛めたり、胃を痛めたりすることもない。
とても心穏やかにせごすことのできる場所。
当時10歳の時点で幼馴染の奇行は正直ボクの手に余っていた。
「まあ、そうだな。何もしてもらえない。弔ってもらえないなんて悲しいだろ。見送ってもらえねぇんだから」
「見送る?」
「葬儀ってのは、人を天に送る儀式みてぇなもんさ。見送られないまま。送ってもらえずに地上を彷徨わねぇように、天に送るための儀式が葬儀だ。まだ知る必要はねぇ。詳しく知りたきゃ、まだ歳くってからじゃねぇとなぁ」
「ふーん。あと、何年経てばボクに教えられるん?」
「さぁな。あと何年だろうな。……オレみてえな歳になる頃にゃ、オレが教えなくたってぇ覚えてるだろうよ」
爺さんはそう言って笑っていた。
そんな爺さんをボクが見送るのは、半年が経った頃だった。
並ぶ人たちはみんな泣いていた。
ボクは泣けなかった。
爺さんと二度と会えない。二度と話すことができなくなったのは理解していた。
そこに寂しさはあったけど、涙は流れなかった。
「さいならな、爺さん。おやすみ。そしていってらっしゃい」
火で焼かれる爺さんを外で待っていた。
そして、今でも──
菊の花を持って、墓に来る。
爺さんはよく慕われる人だった。口は悪かったけど、義理人情に厚い人だし。よく笑っている人だった。だからだろうか。
爺さんの墓は良く手入れされてあって、ボクがわざわざわ手入れをする必要がないぐらい綺麗だった。
「爺さん。花添えに来たで」
花を添えて少し黙祷してから墓を去る。
「ちゃんと祈ったの?」
「祈っとらんよ。祈りの宛てる神様も、祈る神様は何処にもおらんからなぁ。せやから、ちょっとだけ黙祷して終わりなんよ」
「ドライだね」
「しゃあないやん。ボク、特定の神様信じとらんし」
幼馴染のミノルも今日は一緒だ。コイツは花だけ買って祈るつもりも特にないみたいやけど。
「じゃあ、飯行くか。どーせ、あんさんはまた山で修行みたいなことしたいんやろ?」
「よくわかってるじゃん。だから、ご飯奢ってー」
「ボクは親やないんやけど」
「ママー。今日は蕎麦が食べたいよー」
「蕎麦言うた……関さんとこか。美味いんよなぁって、誰がママや」
ミノルとはバカばっかやってるけど、ボクは元気です。
「まあええわ。ほな、関さん所に行こか」
「やったね」
「……あとでちゃんと返してもらうからな」
ミノルの修行らしいモノに付き合わせれてるけど、安全な範囲でやらせてもらってる分今はいい。
……夢を持つってのはいいことだよな。
────────────────────────────────────
光が目に入る。
……なんやこの感覚。眩しいなぁ。
「────」
「────」
なんか、人の声らしいもんも聞こえるけど。何言っとるかわからん。
体も上手く動かんし、寝返りも打てん。……なんでボクは寝てるんや?
突然の出来事に不安になれば、赤ちゃんの泣き声が聞こるようになった。
ボクは、自分が転生なるモノをしたことを自覚するのはもう少し先。……大体半年後ぐらいの話。
カゲジツ初投稿。おそらく戦闘系の小説は初投稿な作者です。
生温かい目で見守ってください。