ただ人でありたくて   作:メめ

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十話 葬儀は誰のために。葬儀は死者のために

 

 

 

 拝啓 前世のパパンとママンへ。

 

 気持ちのいい晴れた夜空。満点の星空と綺麗な満月。

 ボクは異世界で、日本ではあまり見れない。田舎に行かんと見れんような綺麗な夜空を毎晩眺めています。

 

「ええ夜やんなぁ。お、流れ星や。綺麗やなぁ、願い事し損ねたわぁ」

 

 時折り見える流星は綺麗で、人里から離れるととても空気が澄んでいて。現代と比べればかなり不便さはあるけど、快適に生活しています。

 

 ──「ぎゃあぁぁぁああ!!」

 ──「ヒャッハァ!」

 

「…………後ろの方でシャドウの奇声と断末魔さえなけりゃ、もっと良かったんやけどなぁ」

 

 そして、今日もシド(ミノル)のアホに振り回されてます。

 

 タスケテ(ボクは今日も元気です)

 

 っとま、こんなようわからんモノローグはさておき。

 ボクは今、シャドウ率いるシャドウガーデンと盗賊狩りをしております。

 

 今回のお相手さんは数が多いらしく、苦戦はしておらんけどボクの持ってる棺桶が足りるか心配やなぁ。……まあ、足りんかったら第二弾。第三弾でわけて焼くだけやけどさ。

 いざとなれば、ボクの新しい武器で焼けばいいし。

 

「殺された奴らの仇ぃ!」

「なしてボクに怒るん。ボク何もしとらんやん」

 

 まあ、だからこそ弱いと思ってボクに向かってきたんやろうけどさぁ。

 

 ボクの新しい武器。こと、シドが作って押し付けてきたスライム棺桶を改造して武器にしたモノ。coffin of undertakerっちゅうモノらしい。日本語に訳すと葬儀者の棺。まんまなんやけどな。そして、無駄に流暢な英語で名前を教えられた。

 多分、陰の実力者は多言語を操るモノ。みたいな感じなんやろうけどさぁ。なら頑張って他国語覚えようか。キミ、英語と日本語しかできんしな。

 

 サーベルを構えてボクに振り下ろす。

 それを棺で受けて逸らし、裏面にある持ち手を持ち替えて反転するように身体を捻って棺の足側の部分で盗賊さんを殴る。ベキベキボキッ! と身体の骨を砕く様な感覚と音が伝って聞こえてくるが、そのまま振り抜いて盗賊さんを吹き飛ばした。

 勢いよく振り抜かれて壁に激突し──あ、シミになってしもうた。

 

 岩壁にぶつかって潰れる様に血を撒き散らして絶命してしまった。……新しい武器やから力加減がわからんなぁ。

 

 この棺、かなり重たい。どのぐらい重たいかと言われると、大体60kgは近くはある。魔力で身体能力強化してれば全然扱える重量であるんやけど、いかんせん慣れんせいで力加減とか勢いの管理がまだまだ甘い。

 

「……痛かったやろなぁ。修復は出来るやろうけど、ごめんなぁ」

 

 ミンチになるよりはええかもしれんけど、精進せなあかんな……。鍛錬の時間増やすか。あんま頼りたくないけど、シャドウに相手頼むか。アイツ、ゴキブリみたいにしぶといし。ボクが全力で殺しにかからん限りは死なんやろしな。

 

 シャドウから渡されたこの武器は、系統。扱い的にはモーニングスターとかの鈍器系に、盾やら収納機としての機能を備えた優れ物って言うとったしな。まあ、ドラクエで棺を引っ張る紐。ロープ的な黒い鎖が付いてて振り回せるようになっとるし、ただの棺やのにゴツゴツしとるのも殺傷能力上げるためやろうしなぁ。……デザイン好きやないから、設計図だけもらって改造したろ。

 

 さてさて。仏さんらの回収始めましょか。シドが色々便利道具を色々くれるから、火葬が捗って助かりますわぁ。

 

 レシピを教えてもらって量産したスライム棺桶を使って盗賊さんらの仏さんを丁寧に納める。いやー、汚れ除去機能とボクの魔力を自動で使って負傷の回復。自動義肢製作機能は便利やなぁ〜。あと、やっぱり自動似顔絵生成も便利やわぁ。プライド投げ捨ててシドに頭下げて共同開発して良かったわぁ。まあ、ごっそり持ってかれてまうけどな。金を。

 あまりにも便利すぎて鼻歌交じりになってまうやんかぁ♪ 

 

 ……やめとこ。アルファちゃん以外からの視線が痛くなってきた。ゼータちゃん。キミはボクの火葬を理解してくれたと思っとったのにぃ。……まあ、理解者がおらんのなんていつものことやけどさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 仏さんらを全員スライム棺桶に収納して。盗賊さんらと被害者の仏さんは分て点火した。

 本当は一緒に焼いてもええんやけど、よくよく考えたら加害者と一緒に焼かれたら嫌かと思って分て焼くようにした。ホンマに嫌やったら悪いし、戦い以外では嫌なことは進んでやりたぁないしな。

 

 生体探知を常に使いつつ、スライムソードを火かき棒みたく棒状に伸ばして使いながら焼け具合を確認していく。変に人に見られてトラウマにするんも気ぃ悪いしな。

 ……ん? 誰か来たな。

 

 振り返ると、薄い金髪と猫耳が見えた。……なんや、ゼータちゃんか。

 

「少しいいかい」

「ええで、仏さんらが灰になるまでは暇やしな」

 

 別に完全に暇というわけではないけどね。焼け具合確認せないかんし。

 

「……アンダーテイカーは、何故彼らを弔うんだい」

「何で弔うんって、そら仏さんだからや」

「真面目に答えてほしい。今、アンダーテイカーがやってるのは火葬って言いう弔いなんだっていうのはシャドウから聞いた。だから聞きたいんだ。何で、悪人で敵対者であるディアボロス教団の彼らを弔うのか」

「……」

「彼らは明確な悪人だろう。誰にも弔われないことは別に悪いことじゃない。当然の報いであるはずだ。でも君はそうじゃない。囚われて死んでいた者たちも、アイツらもみんな同じように弔う。……私には理解できないんだ」

 

 ……ああ、なるほど。要は説明求ムって事ね。でも、シャドウなら聞けば教えてくれると思うんやけど。

 

「でも、シャドウはんに聞いたんやろ?」

「詳しいことは全く。主は詳しく知りたいなら、アンダーテイカー本人に聞けってさ」

「……まあ、アイツらしいな」

 

 本人に聞け、ね。まあ、アイツ人の心ないからなぁ。倫理観も道徳観念もどっかに落っことしてるからなぁ。

 アイツからボクの火葬のこと聞いたってわけわからんことになりそうやし、懸命な判断やな。

 

「教えてくれないか。何故、アンダーテイカーは彼らを善人たちと同じように弔うのか」

 

 その問い。その声には困惑と怒りが含まれているように聞こえて、ボクは少し寂しく感じた。

 ……まあ、うん。理解者が出来た思ったらそんなことなかったってだけやし。別にええんやけどさ。

 

 説明。説明ね……コレばっかりは、ボクの価値観。倫理観の話やからなぁ。説明ムズイなぁ。

 

「んー、簡単にはムズイから。ちょっと小難しい話やけどええ?」

「構わないよ」

 

 ならそうやなぁ。……ボクの価値観とか倫理観、思想の話になるけど、聞いとくれや。

 

「なぁ、ゼータちゃん。この世界は間違いだらけなんや」

 

 この世界。いや、人の生きる世界なんて間違えばかりだ。

 

「善悪は時代や人の主観で変わるし。正しさなんて最初からなくて、ボクらが悪だと思っとる方が本当は正しいなんてこともある」

 

 医療や化学は数多の犠牲の上に立つ。それと同じように、文化、発展の歴史は差別と屍の上に立っていることの方が多い。

 だから、ボクやシャドウを省いたシャドウガーデンの子達はディアボロス教団の行いが許せなくて、陰から反旗を翻している。

 

 でも、本当はそれが長期的に見れば。人類の文明の発展に必要なモノなのかもしれない。そうなれば、それを阻むボクらは間違いなくどうしようもない悪人で、テロリストでしかない。

 

 物事は全て多面性を持つのに、人は主観でしか判断できん生き物。だから──

 

「せやからな。ボクは善く在りたいんや」

 

 ただ、ボクは善く在りたい。誰に対しても優しくて。どれだけ嫌いな人にでも手を伸ばしてやれる。そんな人になりたい。

 

「悪人も善人も視点の違いでしかない。生きている場所の違いでしかない。義賊なんて言葉があるように、正義のために悪を行う奴もおる。でも、悪を行えば他人から見れば悪人でしかないんよ」

 

 自分から仏さんを弔うのも、ボクが優しく在りたいからやし。死んだらおしまい、そのまま屍晒してさようなら。なんて、寂しくてかなしいやんか。

 

 誰も彼も間違いで、正しさはどこにもない。世界は悪人だらけだし、本当の意味で善人なんてどこにもいないのかもしれん。

 

「せやからな。ボクは、……ボクだけでも、善く在りたいんよ。少しでいい。ほんの少しでも、誰にでも慈悲をかけて、情けをかけられる人間になりたい。せやから、ボクは仏さんを弔っとる」

 

 口が悪くて、ガラも悪いのにとても優しくて。いろんな人に慕われていたボクの爺さんみたいに。

 生きてる人にも、死んだ人にも正面から向き合って優しく在れるあの爺さんのようになりたい。

 

「それだけなんよ。せやから、死んでった。ボクらの殺した奴らはちゃんと送るし、放置されてる屍があれば弔ってやりたい。それだけやから、深い意味はあまりないんよ」

 

 ボクの話を黙って聞いていたゼータちゃん

 

「……やっぱりわからないな」

「ええの、ええの。理解なんてしなくてもええ。ただまあ、……ボクはこういう奴って、覚えててくれたらええんよ」

 

 それに、ボクも君も方針の違う人間やし。理解出来んのはしゃあないって。

 

「……アンダーは甘いな。甘すぎる」

「せやなぁ。自分で言うのも何やけど、シャドウはんに呆れられるぐらいにはお人好しやからな。ボク」

 

 シャドウ。もとい、ミノルに呆れられるぐらいにはお人好しやからね。……ずっと。

 

 気がつけばボクの隣には、一つの影が。ゼータちゃんが座っていた。

 

「前から思ってたけど臭いね」

「せやろ。だから、見るにしても離れて見とき。臭い付くで」

「いや、……私もここから見ることにするよ」

「……そか」

 

 ……もうそろそろしたら焼けるし。終わったらシャドウたちの撤退の準備でも手伝いに行きますかね。

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