ただ人でありたくて   作:メめ

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十三話 仕事早いねぇ。………はぁ

 

 

 

 洞窟の様子は一変した。

 

 奥へ奥へと進んでいると、洞窟の中は段々の舗装された場所へとつながり、進めば済むほどに引きずりながら移動する棺桶の量が増えていく。現在の棺桶数十八基。そのうち、ボクが処理したのは十人程。

 残りは剣で斬られてたり、鋭い何かで切られている。

 

 でもまあ、切り口的にはシャドウやろなぁ。スライムソードで歩きながら処理してたんかね。

 傷が大きい。体の損傷が大きいと修復に時間も魔力も必要やからなぁ。……まあ、ボクの方が損傷はひどいんやけどね。内臓破裂とか、全身複雑骨折とかで。

 

 やっぱり、ボクのやりたい事ととことん武器の相性悪いよなぁ。便利ではあるんやけどさぁ。

 

 増えて行く仏さんを納棺しながら先へ進んでいく。

 

 次第に大きくなる剣を振る戦闘音。そして、強い魔力の気配と生体反応。

 

 気配的にこの先にシャドウが居るなぁ。戦闘してんのかね。合流しますか。

 

 

 

 

 

 歩いて行くと赤い目の巨漢がシャドウに切り捨てられたところやった。上半身と下半身がずれて倒れ伏す。

 綺麗に胴体ズンバラリ。おっかないわぁ。

 

「来ていたのか、アンダーテイカー」

 

 そう言って振り返るシャドウ。血の一滴もついとらんし、攻撃を受けた様な形跡もない。相変わらず強いよなぁ。コイツ。

 

「おん。キミらが動く時はボクもついてく。そういう約束やろ」

「そうだったな」

 

 キミら仏さん放置するんやから。ボクがおらんと誰が片付けすんのさ。誰が仏さんらを弔うっ言うんや。居ないやろ? 

 居たらボクのとこ来るか、一緒に火葬するもんなぁ。

 

 まあ、死体にあんま敬意ない子とはやりたかぁないけど。

 

「シャドウはん。あんまり尊厳壊すような殺しせんでくれんか? 後片付けすんのボクなんやで」

 

 シャドウめ。損傷治して葬送すんのボクなんやで……。損傷が多いせいで魔力の消費が多くてかなわんわぁ。まあ、コイツはそんなの気にすることないだろうけどさぁ。

 

「まだまだ余裕そうだな」

「あたぼうよ。ボクあんま戦ってへんもん」

 

 ボクはたいして戦ってはいないからな。ちょっと疲れてるのは棺桶引きずってるからってだけやし。

 

 ……およ、息があるとは思っどったけどまだかろうじて意識もあるんか。

 まぶたは落ちかけやけど、まだ生体反応がある。

 ……とりあえず、シャドウには別んとこに行ってもらおか。変に勘繰られても嫌やし。

 

「ほら、シャドウはんはみんなんとこ行ったってや。まっすぐ行って、突き当たりを左に行ったら合流できると思うで」

「わかった。後の処理は任せる」

「……ったく」

 

 シャドウは装束を翻しながら去っていった。

 

 ……さてと。

 なんかデカくなっとるっぽい男の下半身と上半身をつなげて、傷口に触れて傷口を塞ぐ。内臓に触れてはいないから、内臓は繋がっないけど簡単にではあるが繋げ終わった。まだ息があるな。死んじゃいないけど長くも持たんか。

 

 異形の側で屈んで声をかける。

 

「オタクまだ生きとる? 意識はあるか?」

 

 お、反応あるなぁ。

 

「……ぉ、おまえ。は……」

「よし、まだ意識はあるな」

 

 生体反応はこの人以外は、アルファ達が捕まえてるし。尋問とか拷問の後からでも最後の言葉は聞けるし。ボクがちゃんと声を聞くんはこの人だけやろか。

 なんか幹部っぽいし、なんか有益な情報こぼしてくれんかなぁ。

 

「単刀直入に効くで。遺言とかあるか? 負けた悔しさからの情報吐露でも大歓迎やで」

「……ミ。ミリ……アを」

「オタクの大切な人か?」

「……ミリア、を。……娘、……を。頼む。……悪魔、憑きなん、だ」

 

 悪魔憑きね。……コイツ、教団に利用された感じか。

 ……なら、ボクの手が届くなら。ちゃんと助けてあげたいなぁ。

 

「……なるほどな。その言葉、聞き届けたで。闇の中歩いとるんはオタクだけやないからな」

「ああ、……よか、っ…………た」

 

 生体反応は消えた。……逝ったか。

 スライム棺桶を展開して、中に遺体を……ん? なんか落ちとるな。

 

 ……これは、ペンダントか。拾い上げて中を見てみれば、男と少女の写真が収められている。

 とても、優しい顔をした男と笑う少女。多分、男がなんかしらあってこの姿になったんやろうな。……これが、教団の手にかかればこんなんなるのか。酷い話やで、ホンマに。

 

「……この女の子が娘のミリアちゃんね」

 

 ペンダントを懐にしまう。後で戸籍を調べておこう。何かわかるかも知らん。

 

 ……また、顔の原型がわからないほどになった仏さんがいなければええんやけどなぁ。

 

 

 

 

 

 ────────────────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 集めた仏さんらの入った棺を積み上げて点火する。

 

 ゴオゴオと火が立ちのぼり、遺体を焼き始めた。

 

 遺言を聞いた後は、クレアさんの拘束を解いて身体の傷を治し。coffin of undertaker 。別名、葬棺(そうかん)の中に入れて寝かせている。

 助けに行った時には気絶してるし、なかなか起きそうもないので、葬棺の中で寝てもらっとる。シャドウのヤツはどうせ放置してても起きて帰ってくるとか言って放置しようとしとったし、シャドウにとって姉は割とどうでもいい存在らしい。

 可哀想なクレアさんやで。まあ、愛情表現が痛いから残念ながら当然とも言える。

 

「……さいならな。アンタらの冥福を願っとるで」

 

 目を閉じる。

 ボクに祈る手はない。祈る手はないから、せめて。死んだ人たちの冥福を願うことしかできない。

 

「またやってるのかい」

 

 静かな声が聞こえる。聞き馴染みのある声だ。

 

「……ゼータちゃんか。また来たんか?」

「やることも終わったからね。ほら、今回居ただろう教団関係者のリスト」

「ありがとうな。仕事早くて助かるわぁ」

 

 燃える遺体を確認しながらリストに目を通す。……うん。顔も名前も一致してる。全員分ではないが、あの場にいた分は回収できているだろう。

 

「……ここは熱いね」

「そら、結構な火力で燃えてるからなぁ。……臭いやろ。みんなのとこ戻ってもええで」

 

 人の焼ける時の独特の匂いはいつになっても慣れない。臭い。そんな匂いを女の子のゼータに染み付かせるわけにはいかんしな。

 ゼータはせっかくええ匂いしとるんやから、こんな焼ける匂い染み付けてたらええ男も寄って来んくなる。

 

「気にしないでくれ。私はそばに居たいからいるんだ」

「……そか」

 

 パチパチと火が弾ける。

 ゼータと二人で眺める死者の弔い。立ち上る煙に、冥福を願う。

 

「……あと、調べる必要もなくなった」

「なんを?」

「昼間に、シャドウガーデンのすぐ近くに内通者がいるんじゃないかって話をしただろう」

「ああ、話したな」

 

 それがなんかわかったんかね。

 

「……リストを読み進めればわかると思うんだけど」

 

 そう言うので、リストを読み進めて最後のページを捲り。リストを確認──

 

「…………マジかいな」

「……私も、研究区画を見ている時に見つけた資料を流し読みしただけだから。詳細なことはわからない」

 

 リストの最後のページには、『ディアボロス教団の関係容疑者』と書いてあり。

 容疑者リストには良く知る名前が四つ書いてあった。

 

「容疑者、ヨアシュ・カソウ。エレク・カソウ。クレール・カソウ。そして、メバチ・キラービー。この四人が出入りしていたんじゃないか、と考えられる」

「……」

 

 パパンと兄二人。そして、半分ボク専属の従者。メバチさんの四名が容疑者リストに書かれていた。

 

「あくまでも容疑者だ。裏取りが必要な段階ではあるというだけで、黒というわけではないけど、……落ちていた論文の執筆者はクレール・カソウだった」

「……そか」

 

 そんな無慈悲な言葉が、ボクの耳に入ってきた。

 自分の身内にディアボロス教団員がいた。しかも、メバチさんも入り込んでいるとも考えられる。

 

「……アルファちゃんらには」

「まだ話していない。でもこれから話す予定ではあるよ」

「……わかった」

 

 家族が間違っていたとして。

 ボクが進む道を阻む存在やったとして。

 それでも、ボクは──家族を殺せるんやろうか。

 

「ゼータちゃん。このことはボクが直接アルファちゃんに話す」

「それがいいだろうね。身内がディアボロス教団だとアルファたちからバレたらキミごと切り捨てられるだろうからね」

 

 裏取りをしてボクが無害やとしても、怖いもんは怖い。だから排除するのは群れが生き残る術やから、それを否定はしない。

 

 でも、それが起こらん様に自己告発する必要がある。

 

「……アンダーは、自分の家族を焼けるのかい」

「……」

 

 わからん。わからんけど、ボクの進む道はそう言う道だ。

 悲劇の中で生きていたガーデンの子らの盟友にされて、シャドウの尻拭いをすると決めた日から。ボクはあのバカの代わりに責任を負うと決めたから。

 

「……ああ。弔うべきならちゃんと弔うさ」

「そうか。……」

「……」

 

 そっからボクらの間に会話はなかった。

 ただ教団の人らの亡骸が燃えていた。

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