ただ人でありたくて 作:メめ
クレアさんをカゲノー家の玄関前に送り届けてアルファちゃんだけを隠れ家近くの森の中に呼び出した。
「珍しいわね。アンダーテイカーが私を呼び出すなんて」
「すまんなぁ。まだ調べごととかもあるやろうに」
「構わないわ。それで、人に聞かれたくない話?」
「……まあな。あんまり聞かれて気分のええ話ではないのは確かやな」
生体探知には何もかからんし、この辺におるのもボクとアルファちゃんの二人だけ。
「まず先に言わしてもらう。ボクはキミらシャドウガーデンの主人、シャドウの友人や。キミらに不利益が及ぶ様なことをボク自身が企てたりすることも、実行することも基本ない」
「ええ。理解しているわ」
「それを踏まえた上で、話させてもらうな」
あー緊張する。ボクは全く関係を持った覚えはない。
なんなら、ボクは実家関連の知り合いなんて使用人らとクレアさんぐらい。兄さまたちはカソウ家が弱小やったとしても別の貴族さんらと知り合いらしいしなぁ。まあ、ご学友なりなんなりおるんやろし。そっから繋がったりしたんかね。
「アンダーテイカー、何か私達に話しにくいことでも知ってしまったの?」
「……あー、……やっぱわかるか?」
「貴方のことはそれなりに見てきたつもりよ。貴方は私達シャドウガーデンの盟友。変わったところもあるし、わからないところも多くあるけど。貴方が底なしにお人好しなのは知っているもの」
ボク、そんなにお人好しエピソードあったっけ?
「ボク、そないにお人好しに見えることしたっけ?」
「周りにバレない程度に衣服や本を拠点に持ち込んでるのはどこの誰だったかしら。あとは、子供でもわかる料理本なんて物も持ち込んでいたわね」
「……」
ああ、それはボクやわ。
だって、ずっとおんなじ服でいるのも。ずっと鍛錬ってのも気が滅入るやん。モチベも下がるし。息抜きにええかと思って。
それに、料理は種類作れた方が飽きが来んしな。
「アンダーテイカー。貴方が思うよりも、私達は貴方を信用しているの。だから、話してくれないかしら」
……信用されとるんやな、ボク。
「アルファちゃん。よく聞いてな」
……ボク、手が震えてますやん。やっぱ上手く隠せるもんやないなぁ。緊張がモロバレしとるやんけ。
「……ボクの家族。実家が教団関係者かも知れん」
「なんですって」
「……詳細はボクにもわからん。でも、見つけた資料の中にボクの兄さまが書いたやろう論文が二束見つかった」
「たまたまである可能性はないの?」
「ないやろうな、研究内容的に。ひとまず渡しとくで」
クレール兄さまの書いた研究論文。その研究内容は、悪魔憑きの持つ特殊な細胞と英雄の血のに関するもの。多分、提唱してはやり直したものなんやろう。二束ともおんなじ様な内容で、特殊細胞と英雄の血について書かれている。
「ありがとう。……なるほど、そうだったのね」
「ああ。……せやから、ボクはしばらく単独で動くことになる」
家族のやらかしの処理にガーデンの子達は巻き込めん。
「家族の疑念を晴らすために?」
「いや。かなり黒よりのグレーやから。裏取だけやな。足取り調べたり、家を物色したりやな」
やらなあかんことは多いけど。まあ、しゃあない。
「やることが多そうね」
「まあ、しゃあない。自分の家族の事やしな」
これはボクの家の問題。シャドウガーデンは巻き込みたくない。
「大変そうね。一人ではやることが多いでしょう、ゼータを派遣するわ。使ってあげてちょうだい」
「ええのええの。ボク一人でなんとかなるし」
そんな、ゼータちゃん派遣されても困るで。
ボクは弁明のためにアルファちゃんに伝えただけや。応援が欲しかったり、相談したかったわけやない。ただ「こういうことがあって、動き回るで〜」って言うのを共有したかっただけ。
「幹部クラスの人間を倒した事で何か変化があるかもしれない。でも、家族だから見逃す違和感もあるかもしれない」
「……まあ、そうやな」
「身内だからこそ気がつけないこともある。そうよね、アンダーテイカー」
「……ごもっともやな」
……思っとったよりも、かなりボクも動揺してるらしい。
元々、内通者探しはボクの身内はゼータに任せる話だったやろ。忘れとったわ。
「貴方は、貴方が行う弔いを私達に手伝わせてはくれないけれど、これなら手伝わせてくれるでしょう?」
「……そうやな。すまん、ゼータ借りてもええか?」
「ええもちろんよ」
「ごめんなぁ。シャドウはんからは、ボクが言っとくから。調べ物を優先しとってくれ」
とりあえず、あのアホはゼータを連れて意味あり気に、「内通者おるっぽいから探しとく」ぐらいで言っておけば乗ってくれるやろ。
「わかったことがあれば、こちらからも共有するわ。アンダーテイカーも、何か調査に進展があれば報告して」
「はいよ。じゃあ、調査任務はボク主導でさせてもらうで」
少し肩の荷が降りた気分や。気ぃ抜けて、ほっと一息ついてまうぐらいには少し気が楽になった。
「でも、頼ってくれて嬉しいわ」
アルファちゃんがそう言って少し柔らかい表情になる。頼ってもらえて嬉しい。まあ、その気持ちはわかるけど。
「ボクって結構キミら頼りやと思うけど?」
「そうなの?」
「え?」
「え?」
……あれー? ボクは基本的に戦わんし。教団関連の調べ物も七陰の子らに任せっきりやからなぁ。たまに古文書の解読に参加したり、尋問の手伝いしたりぐらいやし。
それに、シャドウガーデンの事なんて殆どキミらがやっとるやん。そもそもボクは部外者やけどさぁ。一応協力者なわけで……。
「ま、まあ。ボクはキミらを頼りにしとる。シャドウはんだってそうやで」
「シャドウがね……そうだといいのだけど」
「おうおう。奴さんは語らなさ過ぎるせいでそう思えんかもしれんけど。何も具体的な指示を出さんのはそう言うことやと思うで」
まあ、あのバカは状況をよく理解してなくて話すことがないだけやろうけど。
ボクが結構頼りっぱなしで助かっとるんは事実や。足向けて寝られへんわ。
「明日の朝からゼータを貴方の所に行くよう言っておくわ。それまでは待っててくれる?」
「貸してもらえるだけ有難いから全然待つで」
昼前にはボクはメバチさんと家に帰る。その前にシャドウに報告がてら合流って感じやな。
「ほな、一度解散するか」
「ええ。報告を待ってるわ」
……さて。まずは身近にいるメバチさんの動きをバレん程度に探りますかね。でも、あの人の事を探んの大変そうやなぁ。
明確な理由はないんやけど、威圧感が半端ないんよなぁ。場慣れしてる感強くて変に動けんのよね。