ただ人でありたくて   作:メめ

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十八話 カチコミじゃあぁ!!

 

 

 

 カソウ男爵家の屋敷。

 魔力探知で屋敷全体を探る。……地下の方に生体反応はない。そして、隠し地下通路への入り口も封鎖されとるみたいやなぁ。簡単には逃げられへんやろし、遠慮なくカチコミできる。

 一人として逃さへん。ディアボロス教団と関係のない使用人達は、みんないない。なにせ、ヨアシュが暇を与えているんだから。ここ最近、屋敷で見ることはない。

 

 遠慮なく、暴れられる。

 

「カチコミじゃぁあああ!!」

 

 重心を後ろに足を上げて押し出すように両開きの扉を蹴り飛ばす。極道の親父さんら御用達、カチコミヤクザキックで扉を蹴り破る。ベキャッ! っとやばそうな音を立てて扉が吹き飛び、砕けた。

 

「な、なにや」

「はい、いーち」

 

 目の前にいた男の使用人。リスターの頭を掴んで床に叩きつける。頭が陥没して動かなくなった。

 

「なんの騒ぎだ!」

「貴様、何者だ!」

 

 派手な音を立てれば人は寄ってくる。しかも、護衛として配置された使用人。教団員なら尚の事、外敵は排除しなきゃならん。

 

「どうもぉ。ボカァ、アンダーテイカーっちゅう者です。キミらディアボロス教団の根城になっとる。根城にさせとるカソウ男爵をぶっ殺しに来ましたァ」

 

 パパァン!! 

 

 鉛玉で返事たぁ酷いやっちゃなぁ。挨拶されたんなら、挨拶で返しや。

 戦いの前の挨拶、決闘の前の挨拶は剣士の誇りちゃうんか? まあ、外道やから違うか。倫理観とか、人の心ないもんなぁ? 

 

 鉛玉を避けながら。避けられないモンは葬棺を盾にしながら掻い潜り、教団員の体を葬棺で殴打しながら蹴散らしていく。

 

 全員一撃必殺。

 おっと撃ち漏らし。剣構えたはええけど隙だらけやで。首からもらいますね。──ゴキャッ! 

 

 葬棺で殴れば皆倒れて生き絶えて行く。頭が潰れたエドマンド。全身複雑骨折のソーン。上半身が潰れたリト。強く殴りすぎて壁にめりこんで動かなくなったエレノア。ボクの酒盗で首が折れて死んだルパート。

 

「これで六。……ん?」

 

 生体反応が一箇所に固まっとるなぁ。っちゅうことは、迎え撃とうとしてるんかね? たまたま近くに集まっとったんかね。まあ、なんでもええわ。

 

 死体に携行状態のスライム棺桶を投げつけて全員納棺。引きずって移動するほどの幅はないし、時間もない。そもそも連戦やろうから、そんな荷物は持って行けん。

 

 にしてもバカよなぁ。

 ボクは限られた範囲で戦う方が得意やのに。

 

 まあ、それを相手さんが知る由もない。あーあ。……可哀想に。

 

 血溜まりが足元にある。

 踏めばぴちゃり、と水音が鳴る。屋敷ロビーに充満する血の匂い。……おかしいなぁ。少し、ほんの少し。体が熱い。

 熱に浮かされた様な気持ち悪さや。

 

 顔についた血を拭えば、鉄の匂いがして興奮の様な高揚感もある。……ハハッ。ストレスでおかしくなってもうたんかね。

 

 歩くたびに水音のなる床の上を歩き。反応のある二階へ行くために、階段を足音をコツコツと鳴らしながら歩く。……反応が多いのは、この部屋か。エレク・カソウの部屋やな。

 

 スライムで壁を切り刻んで破壊。おっと、壁を切る勢い余って、三人ぐらい斬ってもうたな。ごめんなぁ、ずんばらりして。悪気はないんよ。死んでもらうつもりやったし。

 

「き、貴様ぁ! かか──」

「号令がおそーい。あくびが出てまうわ」

 

 号令を出そうとしたエレク・カソウの首をスライムソードで切り飛ばす。その勢いで三人いた従者をバラバラに斬った。

 少し遠くから切ったおかげ、血はボクにはつかんかった。せやけど、強い血の匂いがする。

 

「……あぁ、嫌やなぁ」

 

 無惨に転がる仏さんらにスライム棺桶を投げつけて全員納棺する。エレク・カソウをはじめとする従者六名。

 

 エレク・カソウ。

 自信家で、その自信に見合うほどの実力を持つボクの兄。

 ボクをいびったりすることもあったけど、ヨアシュ・カソウやテリーナ姉さまと同じぐらい、ボクに真剣に剣を教えようとした強い兄。

 

「……なんで、権力欲しさに入ってもうたんやろうな」

 

 権力なんて大して興味なかったやんか、アンタ。女遊びどころか、女の人に対してはかなり紳士的やったやんか。……なんで、こうも堕ちてしもうたんや。

 

「……あかん。あかんなぁ。…………ホンマに、あかんわ」

 

 スライム棺桶から見える鬼気迫るその顔が、とても胸にくる。

 

 ……さて、次の獲物を狩りに行くか。

 

 ん? 地下ルートに入ろうとしとる奴が十人おるなぁ。

 

 脚部を重点的に強化し、床を踏み砕く。大きな音を立てて床が落ち、一階へ着地。入り込んだ部屋の扉を蹴り破って……おっ、いたいた。

 

 八名の装備を着た従者を連れた二人の男。クレール・カソウと……サンジ・カソウ。

 

「クレール様! サンジ様! お下がりください!」

「ここは我々が!」

「酷いわぁ。そないな化け物を見る目で見んといてや。心はガラスなんよ?」

 

 サンジ兄さまは巻き込まれてるだけか? それとも、裏が取れんかっただけで、教団側なんか? 裏取れてんから襲う気ないんやけど。……気ぃつけてやるか。

 

 腰を屈めて姿勢を低くし、左手を床につけた三足歩行。ゼータちゃんやデルタちゃん曰く、獣歩と呼ばれる体勢に近いとのことなので半獣歩と命名された姿勢を取り。体を撓ませて足の踏み込みのタイミングだけ魔力で足を強化して一気に加速。

 

「来るぞ! 合わせて迎え撃て!」

 

 肉壁にでもなるつもりなのか、全身に魔力を纏って耐えようとしとる。

 

 しかし、この世界の住民らは知らない。

 重さと威力は直結する。それを理解していても、理解していないことが一つ。

 

 速度は重さに変換、加算されると言うことを。

 

 葬棺を盾の様に構えながら突撃し、肉壁になっとった従者らと一緒に、クレール・カソウとサンジ・カソウが吹き飛ばされる。……よし、サンジ兄さまは離れたところにおるな。

 

「すまんなぁ。逃す気なんて有らへんねん。全身痛いやろうから、今楽にしたるな」

 

 スライムを操って、丁寧に頭をうがって殺した。……従者はこれでみんなかね。

 

「お、お前!」

「……サンジ・カソウやな? 悪いことは言わんから、出てってくれんか。リストにない奴殺したぁないねん」

 

 体を起こして後ろにキッとボクを睨むサンジ兄さま。

 そんな兄さまを無視して、仏さんにスライム棺桶を

 

 ──バチッ! 

 

 っ! 

 

「おのれぇ。おのれぇオノレェ!」

「……アンタもか」

「舐めルな。僕を舐めルナ!」

 

 急激に魔力が膨張し、サンジ・カソウの体が膨張する。筋肉の異常活性か。それとも……いや、この独特の魔力波長は魔力暴走によるもの。しかし、魔力暴走は悪魔憑きを引き起こす原因にはなっても。悪魔憑き自体、女性特有の現象の筈──

 

「……ああ、アンタもか」

 

 アンタも、教団関係者か。

 

「僕ダって戦えル! チカラが、あるんダ」

「……」

「守れる! 守れるんダ! グゥ、オルアァァ!」

 

 肥大化した右半身、右腕を持つ異形。ゴポゴポと肥大化する右半身を持った怪物。

 

 動きは緩慢で、脅威とはとても呼べん程の相手。

 振るわれた肥大化した腕をいなしてスライムソードで切断。呻めきも上げない、怯む様子もないサンジ・カソウの首を刎ね飛ばす。

 

 頭がなくなり吹き出した血は、腐臭の様な酸っぱい匂いを纏い。身体はそのまま倒れ伏した。

 

「……アンタもか。アンタもやったんか」

 

 ああ。胸糞悪い。まーじで胸糞悪い。

 

 何かが手をつたって流れ落ちる。手を見れば、無意識に手を握り込んでいたらしい。若干伸びている爪が掌を傷つけて血を出していた。

 

 ……ああ、痛ぇなぁ。現実なんか。……これが、現実なんかよ。クソッタレ。

 この感じやと、テリーナ姉さまも教団側の可能性があるなぁ。…………ああ、ホンマにクソみたいな現実やなぁ。夢ならどんだけ嬉いか。

 

 スライム棺桶に全員納棺する。

 

 クレール・カソウ。

 官僚を目指していただけあって優秀で、剣の腕もそこそこある。医療育成機関でも優秀な成績を収めた兄。

 ボクの剣の腕に呆れながら、薬草の調合のやり方なんかを時々教えてくれた。アサ・シネイトと共に、時間があれば勉強を教えてくれたりもした厳しい兄。

 

 サンジ・カソウ

 ヨアシュ・カソウの医療家業を継ぐために医療者を目指していた兄。

 薬学に明るくて、怪我があれば率先して手当してくれたり。医療系でも、薬草図鑑などの本をよく貸してくれた。日向でニコニコと笑っているタイプの穏やかな兄。

 

 ……なんでやろなぁ。涙は出ん。でも、センチな気分や。

 こんな時に限って、もう殺した後に思い出が過って来よる。

 もう、殺したのに。

 

 ……あとは、あの人を処理すりゃ終わるかな。……テリーナ姉さまだけでも、普通の人であってくれよ。……頼むから。

 

 ただ動かず、ヨアシュ・カソウの執務室から動かない一つの生体反応。

 ……はよ、終わらせな。

 

 夜までもう時間ないねん。

 

「……あぁ。頭痛が酷くなってきたわぁ」

 

 後で、…………後で、薬飲まなあかんなぁ。

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