ただ人でありたくて   作:メめ

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二十一話 リ・プロローグ。そうや、キャンプ行こ

 

 

 

 あれから一月半が流れた。

 あの日以降、ボクはシドの家。カゲノー家で世話になることになった。

 

 カソウ男爵家は火の不始末が原因で屋敷が燃え、その時に屋敷に居た全員が焼死した事になっとる。

 

 ボクは森で遊んでいて迷子になり、森の中で夜を過ごして出てきたら家族と家を丸ごと失った貴族の末裔ということにさせてもらった。

 ボクにとっては好都合ではあるから、何一つ訂正せず。婚約者だったということもあり、成人するまでカゲノー家預かりになることになった。

 

 カソウ男爵家当主、ヨアシュ・カソウらが死んだ事により、カソウ男爵家が途絶えるとかなんとかでクレアさんとの婚約は破棄された。でも、住んでいる場所が近くて、家同士が深く親交があったことから、カゲノー男爵は結構すんなり受け入れてくれた。

 

 後で謝ったら国や辺境伯から補助金も出るし。カソウ男爵家の後見人になることで、美味しい思いができて助かる。と言っていた。

 国やら辺境伯からの金が入って嬉しいのは確かやけど、単純によく知るボクを見捨てられんかったんやろう。ほんまに優しい人やで。シドからも、夫人からもあたりの強いこの声のええ、ハゲたおっさんをボクだけでもちょっと優しくしようと決意した。

 

 メバチ・キラービーこと、アサ・シネイトは移送し、拠点の廃村で尋問中に息を引き取ったらしい。

 死因はおそらく老衰。

 魔力回路は乱されており、ところどころ破損していたようで。そもそもこの歳まで生きていること自体が半分奇跡的だとイータちゃんが言っとった。

 

 ただ後々確定したのは、シャドウガーデンとボク、アンダーテイカーのことは何ひとつ口にしていない。ということ。

 本当に、飼い主(教団)からの〝もってこい〟すら出来ん老犬やったことが確定した。

 せやから、ボクら個人の情報は教団側に渡っていない。ボクもガーデンの子らも個人単位で襲撃されたりすることはないやろう。

 

 ゼータちゃんには恥ずかしいこと見せたけど、そのおかげか多少は楽になった。

 ガーデンの子達にお礼もして回ったし。後は、目の前にある問題をどうするかやな。

 

「……さぁて、どないしよか。これ」

 

 ボクの目の前にあるのは納骨堂に大量に収められた骨壷。納骨堂に入りきらなくなり、拡張も限界に達してしまったこの場所もう使えない。お引越しが必要なのわけなんやけど、……引越し先がない。

 

 一度に置いておかないと管理もできんし。洞窟に作るにせよ、地盤やら重さの計算をした上で拡張工事をせにゃならん。

 

 ……なんか、ええ場所ないかなぁ。

 

 そこそこ広くて、人目につかなくて、色々管理しやすい場所。

 

「……引越し先探さなあかんな」

 

 となると、遠征になるんかね。遠征するんなら、しばらく帰らない口実が必要よなぁ。

 

「しばらく帰らんでも良くて、遠征してもバレなさそうな口実……」

 

 ボクの趣味の範囲でもええし。……あまり好かんけど、剣の武者修行ってのもええかもなぁ。心底嫌やけど。

 

「遠征……。外出……。泊まり……」

 

 遠征となると、街で宿泊もする事になるやろし。野宿もするやろし……そういや、この世界来てからソロキャンしとらんなぁ。

 また外でキャンプ飯したいわぁ。

 

 ……ん? キャンプ? 

 

「それや! その手があったか!」

 

 ソロキャンや! ボクがソロキャンやりたいから外出したい言えば聞いてくれるかもしれん。

 

 思い立ったが吉日やな。さっそく帰って頼んでみるか。

 楽しみやなぁ、久しぶりのソロキャン。胸が躍るわぁ。

 

「楽しそうだけど、どうかした?」

「ん? ああ、ゼータちゃん。一月ぶりぐらいか? 元気しとった?」

 

 後ろから声をかけられて振り返るとゼータちゃんがおった。

 

 いやー、久しぶりやなぁ。キミら、ボクがお礼して回った後巣立ちしてったから、もうしばらくは会わんと思っとったで。

 

「元気にしていたよ。それで、アンダーは何かいいことでもあった?」

「んー、ソロキャンしようかなぁ思って」

「ソロキャン?」

「うん。ソロキャン」

 

 え? ソロキャン知らんの? 

 

「ソロキャンはええぞ。外で伸び伸びとゆっくり時間を過ごすんや」

「へえ。それで?」

「外で本読んだり、料理して食ろうたり。釣りしたり。あとは、ただボーッと火を眺めてるんや」

「私たちのアジトでいつでもしてるじゃん」

 

 まあ、ガーデンの子らは廃村が基本活動場所やもんな。基本は近代的な建築物でキミら過ごしとるけど。

 ボクは定期的に拠点行ってご飯作ったりしとるもんなぁ。ボク、アジト以外なら基本的にガーデンの拠点におるし。……そういや、外で本も読んでるやん。

 

「火を眺めるのだって、よく火葬ってやつやってるんだから見てるじゃないか」

「違うんよぉ。そうじゃないんよぉ」

 

 火葬と焚き火は違うんよ。

 

「ちゃうねん。ボクは焚き火がしたいんであって、燃える仏さん見たいわけやないのよ。ボクは燃える屍が見たいんやなくて、焚き火が見たいんよ」

「うわー、ぶっちゃけたよ。いつも隠して言ってるのに、包み隠さず屍って言っちゃったよ」

「どれだけ綺麗に繕ったって、屍は屍やぞ。火葬した後は骨と灰やぞ。人だった。生命だった者への敬意はあれど、物体としての事実は変わらんのや」

 

 仏さんと屍は状態は物体としては同じなんよ。事実は変わらん。から向ける敬意も変える気はない。尊厳はあるべきや。

 

「まあ、そんな話は置いといてや。見てみぃ、この納骨堂。もう満杯や。納められん」

「拡張はもう出来ない?」

「おん。これ以上無理に広げると洞窟が崩れるで」

 

 洞窟が崩れたらボク、生き埋めになってまうで。

 ……癪やけどシドの技から着想を得た必殺技的なやつあるし。吹き飛ばせばええんやろけど……多分、骨壷も全部。と言うか、あたり一帯吹き飛ぶからなぁ。走って荒野で試したんはええけど、威力やばかったし。しばらくはお蔵入りやね。

 

「ふーん。……何かついでに良さそうな場所探しておこうか?」

「ええんか? ……でもなぁ。ちょっと内見してまわりたい気もするんよなぁ」

「内見する必要って。……まあ、アンダーならそうか」

「ボクのことだいぶわかっときとるやないの」

「まあ、二年ぐらいの付き合いはあるからね」

 

 そうは言うても、偵察とかに行ってることの方が多いんやから。帰ってきた時にボクとよく話すぐらいちゃいますのん。

 

「わかった。何かいい場所を見つけたら教えるよ」

「いや、それはええ」

 

 そういえば、ボク。前世からシドのせいでまともな友達おらんかったのよね。ずっとあのバカに振り回されてとったし。人とキャンプってやったことないやん。

 

「ゼータちゃん、暇?」

「暇……ではないけどどうしたの?」

「ゼータちゃんも行かん? キャンプ」

「え、なんで?」

「ええやん。シドと二人でも。っちゅうか、アイツ以外と行きたかったんよなぁ。平穏なキャンプ。楽しみやわぁ」

「アンダー? 話聞いてる?」

 

 聞いとる聞いとる。

 ちゃーんと聞いとるで。

 

「キャンプ行くんやろ?」

「いや、そんなこと言ってないけど」

「え? 行かんの?」

「行くなんて言ってないけど」

 

 えー、行かんのー。

 

「そっかー、行かないんか……」

 

 残念や。まあ、ソロキャンもしたいし。ええかなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 馬車に乗りながら揺られる。個室馬車もいいけど、こんな感じの相乗り馬車もええよね〜。蒸気機関車よりも安価な分、時間はかかるけど。旅してる気分になれる。

 

 オトン・カゲノー氏に許可をとりに行ったところ許可を得た。武者修行もついでにしてくる事になってしもうたし、定期的に手紙を送らないかん事になったけど。

 

 まあ、長期キャンプが出来るならええかなぁ〜。

 

 シドに居場所を伝える気もないから、シドのやつに巻き込まれて胃を痛める必要もない。

 

「晴々とした気分や」

「……」

「なんや、不貞腐れた顔して。ボクと二人旅は嫌やった?」

 

 まあ、キミは良くいろんな場所行ってるみたいやしなぁ。わりと強引に連れてきたんは良くなかったかね。

 

「ボクは、この世界をそのまま彷徨くんは初めてやし。色々教えてくれや。ゼータちゃん」

「……半分ぐらい強引に連れてこられたけど、まあいいや。まあ、よろしくされるよ」

 

 半年ぐらいのキャンプかぁ〜。楽しみやなぁ〜。

 

 ……待てよ? 半年ならもうキャンプやなくて、ただの旅では?






ここから先は、当二次創作の世界観の掘り下げや。オリ設定などを開示するためのオリジナル回が二十話ぐらい続きます。お許しくださいませ。

作者でした。
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