ただ人でありたくて   作:メめ

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二十二話 旅の始まりはいつだって道連れなんやで

 

 

 

 澄んだ空気。

 晴れ渡る空。

 

「キャンプ日和やー!!」

 

 やってまいりました。見晴らしのいい田舎! 何にもない。野原だけの辺境! 

 人の反応はボクとゼータちゃん以外いない。盗賊らしい気配もないから邪魔されることもない。

 

 あー、心が安らぐ〜。まだなんもやっとらんけど。

 

「こんな辺境で降りてどうするのさ」

「こんな辺境やないとキャンプ出来んやん」

 

 下手に人里が遠すぎても盗賊が湧く。人里が近いと邪魔が入る。

 適度に近くて、適度に遠い。

 

「と言うか、なんでそんなの知ってるのさ」

「これでも盗賊狩りとかしてんのやで? 狩の効率化は狩人の基本とか、なんとかでシドの考察に付き合わされとったから」

 

 こんなところでアイツとの考察知識が役立つなんてなぁ。生きてりゃ何があるかわからんね。

 

 スライムを応用してテント作って立てて、寝袋もスライムでええし。キャンプグッズは全てスライムで代用可能。汎用性の鬼。シドのやつが多用するんもよくわかるわ。

 

「〜〜♪」

「ご機嫌だね」

「そら、楽しいからなぁ」

 

 キャンプは楽しいぞ〜。ここまで田舎なら星も綺麗に見えるんやろうなぁ〜。

 暗いと焚き火も映えるし、なんか遠くに見える山もデカくて綺麗やなぁ。朝が楽しみやで。

 

「ゼータちゃんや」

「なに?」

「薪拾いに行かん?」

「薪?」

「おん。適当にからっからの枝とか、乾いた太めの木を使ってやるんやけど」

「いや、それはわかるけど。なんで薪?」

 

 なぜ薪を拾いに行きたいかってことか? 

 

「ゼータちゃん。薪が燃えてるのを見るのは楽しいんやで」

「焚き火はたまにやるけど、何が良いんだか」

「んー、見てて落ち着く。あと、楽しい!」

 

 さ〜ってと。集めに行くかぁ。

 

 足に魔力を集中させて超加速。最近、シドとの打ち合いにかなり打ち込んだからなぁ。最高速だけなら、亜音速ぐらいまで行けるようなったし、なんか足の速さだけ異常なんよなぁ。ボク。

 

 はい一瞬で森到着〜。魔力探知して〜、お。猪か? 美味いんよなぁ。牡丹鍋やるか? お、薬草も自生しとる。

 この葉っぱの形状は、──根菜やー! 

 

 再度足に魔力を集中して、遠距離から飛びかかる。

 

 やあ、晩飯くん()。良い感じの香草見つけたし、今日の晩飯はキミに決まり〜。スライム使って今日の晩飯は牡丹鍋〜。ひっさしぶりのジビエやー!! 

 

 猪を捌くんは久しぶりやけど出来るかな〜。

 身体が覚えてるぐらいにはやっとったけどなぁ。東雲の爺さん、元気にしてっかなぁ。

 まあ、かなりのお歳やったし。もうポックリ逝ってしもうたんやろか。

 

 素手にスライムを纏わせて、手刀を首に向かって当てる。

 すっぱりと動脈と静脈の両方を切断。暴れ回る猪の後ろの片脚をスライムで捕まえて逆さ吊りにする。はーい、血抜きしましょうね〜。痛いなぁ。ごめんな? 今夜は美味しくいただくから許してや。

 

 

 

 

 ジタバタ暴れて血抜きした猪を担いで走ってキャンプ地へ戻る。

 

「ゼータちゃーん。戻ったでぇ〜」

「おかえり。遅かったけど、どうした……の」

 

 お、猪に釘付けな。拠点近くじゃあんまり取れんかったからなぁ。

 

「何その猪」

「薪拾ってる時に居たから狩った」

「デルタみたいなこと言うじゃん」

「あそこまで野蛮なつもりはないんやがなぁ」

 

 まあ、あの子もあの子で悪い子ではないんだけどねぇ。でもなぁ。あの子はおバカだからねぇ。狩りが大好きなだけだから。……おバカだから周りへの被害を考えないで暴れて、木々を薙ぎ倒し。何体も捕まえてくるから生態系が壊れないかヒヤヒヤしたりしたけど。

 ……良い思い出、なのかもしれん。

 ガーデンの拠点付近でみんなで罠仕掛けて、飯作って。……楽しかったなぁ。猪はあんまり掛からんけど。

 

「ってことは、それが今日の夕飯になるの?」

「せやで〜、今日は牡丹鍋や」

「はーい。その感じだと作ってくれるの?」

「当たり前やん。せやから、読書してくれててええでー」

 

 スライムを包丁のようにしてー、スルスルーっと皮を剥ぎまして〜。

 

 ふんふふ〜〜ん♪ 

 

「絵面が怖いよ」

 

 なんか言われたけど無視や、無視。

 腕によりをかけて作ったるでぇ〜。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────────────────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふー。腹一杯や。

 

「ぎょうさん食べたなぁ。美味かったんか?」

「おいしかったよ。でも、少し薄味だったかな」

「あー、わかるわぁ。味気なかったなぁ。こんなんなら、もうちょい調味料持っとくんやったわ」

 

 噛みごたえがある。下処理が甘かったんかなぁ。ちょっと硬かったけど、ほとんど何もない状態のジビエって考えれば全然美味いな。

 いい感じの香草とか、薬味になるやつが自生してて助かったで。

 

「それで? キャンプって後は何するの?」

「そうやなぁ。水辺が近いなら、夜釣りもええなぁ」

「水辺が近くないなら?」

「水辺が近くないなら、釣りはせんしなぁ。星を眺めたり、ぼーっと焚き火見るぐらいやろか」

 

 そないな目を向けんといてや。ボクはそれが楽しいんよ。

 

「老後も困らなさそうな趣味だ」

「老後があるかはわからんけどな。てか、前もこんな話したよな」

 

 確か、ボクの家族に容疑がかかった時ぐらいにした覚えのある話題やな。

 

「そうだっけ?」

「そうだったはずやで。よう覚えとらんけど」

 

 仕事以外の話なんて、あん時は緊張と警戒で自分の話の中身は全然覚えとらんなぁ。ゼータちゃんの話ならまだしも、ボクの話やったし。

 

「最近は楽器にも手を出してるみたいじゃないか」

「まあな。意外と楽しいで。もう少し上達したら、ゼータちゃんに聴かせたるよ」

 

 流石に、楽器はスライムで再現はムズイからなぁ。今は弾けんけど。次の機会やな。

 

「夜、焚き火の前でアコギやるんもええよなぁ」

「焚き火前で吟遊詩人捕まえて演奏してもらうみたいな感じ?」

「そうそう。そんな感じ、そんな感じ」

 

 焚き火の前で向かい合うように座って話し合う。

 基本、ボクらって向かい合うんじゃなくて隣に座ってるから新鮮やわぁ。

 それに燃える木の匂いだけっていうのも、なかなかないからなぁ。いつも燃えてるものを見る時に燃えとんのは仏さんやしなぁ。

 

「……ふっ」

「どうしたの?」

「いやぁ。楽しいなぁって」

「?」

 

 焚き火を一緒に囲んで話すっちゅうんも、楽しいなぁ。これは新しい発見やわぁ。シドとはこうもいかん。ただ黙って火を眺める陰の実力者がどうたら語り始めてうるさいんよね。

 好きなのは別にええんよ。ボクは雑談したいんであって、そんな陰の実力者談義がしたいわけやない。……たまに乗っかってたけどさぁ。設定練んのは嫌いやないし、夢のために一生懸命なんはええことやからな。

 

「やっぱり、アンダーはわからないや」

「わからんでもええ。ただ、ボクはこういうのが好きって覚えててくれればええよ」

 

 趣味に起源はある。好きになった理由はあるけど、趣味を続ける理由は楽しいからや。

 理解されなくても、自分が楽しければそれでええ。

 その辺、シドは理解が早くて助かる。なんとなく好きでも、アイツは笑ったりせんからな。

 

「ゼータちゃん」

「なに?」

「…………ありがとうなぁ。半ば無理矢理やけどついて来てくれて」

「いいよ。アンダーに誘われるのなんて、滅多にないから」

 

 パチパチと音を立てて木が小さく弾ける音を聞きながら、ボクはゼータちゃんと話をしていた。

 眠くなったら寝る。

 

 そうして、ボクらは眠った。

 

 朝が来る前には目を覚まして、まだ消えたばかりの火に薪を焚べながら芋を突っ込んで燃やした。

 

 今日の朝ごはんは、焼き芋やで〜。

 

 武器としては致命的に合わんけど、やっぱ便利よなぁ。葬棺。椅子にもなる高さ。まな板にもなる。低いが物も置ける。

 そして、荷物さえ入っていなければ寝袋代わりにもなる。頑丈やし、スライム棺桶でコーティングすればテント要らずの寝床になる。

 

 お前、キャンプ用品だったんか?

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