ただ人でありたくて 作:メめ
どうも、作者です。
今話から新キャラ(オリキャラ)登場します。ヒロインではありません。
キャンプ生活という名の半年間武者修行の旅。
結局、ゼータちゃんは三日ぐらいは付き合ってくれた。四日目の朝にアルファちゃんから手紙が届いて呼び出しをされたので、四日目の朝で別れた。楽しかったで、ゼータちゃん。またやろうなー。
っちゅうことで、ゼータちゃんが離脱してボクのソロキャン生活五日目。
「……大丈夫か。キミ」
「………………あぁ、う。……ぁ」
キャンプ中のボクを襲ってきた盗賊らを蹴散らして魔力の痕跡を辿りアジトを特定。そこからはシドと盗賊狩りをする要領で盗賊らを討伐。
盗賊さんらの仏さんはみんなスライム棺桶に納棺した。
あとは、犠牲者が居れば納棺して火葬しよう。
そう考えていた矢先、ボクは見つけてしまった。
ワインレッドの髪色をした悪魔憑きの兆候がある少女。たぶん年齢は同じぐらい。
初期も初期の段階やし、治すんも楽でパパッと治した。
ただ、うなされているし。顔色もあまり良くない。
この盗賊さんらは教会関係者なのか。それとも、ただ攫われてたまたま発症したばかりなのか。
顔色と肌の状態的に、二、三日はここで過ごしとるか。症状も表面化する前の発症寸前に近い状態やったし……悪魔憑きとして教会に移送されとるわけではなさそうやな。
探知にも仏さんは引っかからんし、犠牲者もこの子だけ見たいやな。
「……とりあえず移動しますか」
こんな暗くてジメジメした場所は精神によろしくない。気が滅入る。
女の子を背負って。仏さんらを引きずりながらとりあえず外に出る。
女の子には……ほぼ半裸みたいな女の子にはとりあえず毛布かけといたろう。
……あーあ。あんまりやりたかぁなかったんやけどなぁ。でも、仏さんを放っておくんは気ぃ悪くてしゃあない。ちゃんと弔ってやらんとな。
右手の先からスライムを垂らして、雫のようにポタポタ垂れ始めるスライムの体に高出力で魔力を込める。するとあら不思議、一瞬で高エネルギー状態になったスライムが超高熱化してスライム棺桶に落ちる。
そうすると、超高熱が積み上がる棺桶全部に伝わり仏さんが発火し始めて焼かれ始める。その熱の中に魔力を込め始めると豪快に燃え上がる業火となり、本格的に火葬がはじまる。
あとは焼け具合を確認しながら、焚べる薪代わりの火力調整の要である魔力を供給していれば火葬は続行される。
目が覚めた時用になんか食料は……そういえば、昨日買ったパンがまだあったな。硬くて食べにくいやろうけど、水でふやかして食べてもらおうかね。
それがダメそうなら、水にあれこれ香辛料と薬草突っ込んでなんちゃってスープを作ってもええかもしれん。
流石に仏さん焼きながら料理はしたくないからなぁ。臭い移るし。
「うっ…………ぁあ……」
「うなされとんなぁ。一体、どないな夢を見とるんや。キミ」
顔色は良くない。頬が少しこけて、肋が薄らと浮いてきとる。暫くの間はちゃんと飯食ってないやろうしなぁ。栄養あるもん買っときゃよかったかね。
にしても、盗賊さんらの拠点で生存者見るのも久しぶりやなぁ。
滅多にないから、何の用意もしとらん。今度から余分に持っとくか。不謹慎やけど、盗賊さんらの溜め込んだ宝物類は持ってけんけど。金の一部は持ってけるからな。
特に使ってない軍資金が増えた。軍資金が増えるんは喜ばしいことやね。
「……」
呼吸の深さが変わったな。もう起きるな、この子。
皮膚と毛布が擦れる微かな音。ぼーっとしているのか、辺りを見回しているらしい。
「おはようございます。とは言っても、まだ夜ですがね」
「……あなたは」
静かな声。うまく声が出ないのか、それともボクを警戒してるのか。それとも寝起きやからまだ目ぇ覚めとらんのか。まあ、なんでもええ。
「私が誰であろうと、あなたにはあまり関係のない話ですよ。そんなことよりお腹空いてますか? 少し硬いかもしれませんが、パン食べますか?」
頭が働いてないのか、ぼーっとボクを見て固まる女の子。髪色がワインレッドやから、とりあえずワインレッドちゃん。
「っ、何者!」
ワインレッドちゃんは今正気に戻ったらしい。
立ち上がってボクから距離を取りボクを睨みつける。そんなに暴れると、ほぼ裸みたいな服から身体見えるで。
別にキミの裸に死ぬほど興味ないからボクはええけど、キミは良くないやろ?
「一旦座って話を聞いてくれるなら教えますから、一旦座ってください。あと、身体は毛布で隠してください」
「? ……! み、見ました?」
自分の格好に気がついたみたいやな。体温上昇か。まあ、恥ずかしいよなぁ。
「見てませんから。ほら、毛布で体隠してください。体冷やして風邪ひきますよ」
風邪引かれても必要な薬草とかはわかるけど、自生してるとは限らんのやぞ。今手持ちに薬草はないし、はよ体温めな。
「もうお嫁に行けません」
「そのようなことはありませんよ。きっと大丈夫です」
基本的に平民でも貴族でも、女性は親に相手を決められることが多いわけやし。お嫁には出されるやろうから、お嫁に行けんなんてことはないやろ。
「はい。硬いですがどうぞ」
「あ、ありがとうございます」
パンを手渡せばおずおずと受け取って食べ始める。
「水もどうぞ。食べ物単体では消化に良くないですから」
「ありがとうございます」
水を飲み、パンを食べる。……動き的に特別何か体に不調がある感じはないな。
……火葬ももう少しで終わりやな。
「そう言えば、先ほどから積み上がる何かを焼いてますけど、何を焼いてるんです??」
「殺害した盗賊さんたちですよ」
「え?」
……まあ、その反応になるよなぁ。その反応されんの久しぶりやわぁ。
「えっと……火炙り?」
「違いますよ。火葬という弔い方ですよ」
「へ、へぇー」
なんやねん。そんな微妙な反応は。絶対火炙りよりも火葬の方が人に優しいで。痛みはないもん。屍やから。
「えーっと…………臭いですね」
「そうですね。人を構成するタンパク質が焼ける臭いは強烈ですからね。離れていた方がいいですよ。臭いがうつってしまいますので」
「アッ、ハイ」
「……」
もしかしてこの子。
「コミュニケーションを取るのが苦手であれば無理に話す必要はないんですよ」
「エッ、アッ。…………ハイ。パン、美味しいです」
「それは良かった」
コミュ症やぁ。えらい陰キャちゃんやなぁ。あまり近づいてると臭いうつる言えば、そさくさくと離れてった。素直やけど、ちょっと傷つくで。まあ、ええや。
焼けたのを確認して、骨と灰になった盗賊さんらをスライム棺桶を収束させるように玉状にする。
近いうちにアジト付近まで戻る用事あるし、そん時までは葬棺の中にしまっときましょか。……でも、葬棺の中にしまったら中で寝れんくなるなぁ。……ええか。
「質問よろしいですか?」
「ハイ」
「自分がどこの出身とかわかりますか? 家族や家が何処にあるかとか、わかりますか?」
たまに家族も家ももうないって子もおるけどな。ボクのことですね、ハイ。
「エッ、自己紹介まだでしたっけ?」
「……そうですね。かく言う私も自己紹介はしていませんが」
陰キャちゃんが立ち上がる。自己紹介でもするんかね。とりあえず、向き合って聴くんが礼儀やし。身体ごと後ろを振り返るようにして座り直す。
星空の下に居る。暗いせいで暗く見えるそのワインレッドの髪と金色の目。顔は……まあ、よく見えんけど整った方なんやないやろうか。
「私はテレジア。ミドガル王国のミドガル三公爵が一家、ミネルヴァの一人娘。テレジア・ミネルヴァです」
は? えらい大物やんけ。なんでこんなところに一人でおるん?
「これはご丁寧に。私はヒツギと言います」
「ヒツギさんですね。よろしくお願いします」
「はい。よろしくお願いします」
「……」
……あー、この子テンプレのなんかがあったら話せるけど。それ以外は無理なタイプのコミュ症やな、多分。あと、引き出せばある程度喋れる感じか?
「ふむ、公爵家となると。家はミドガル王国王都の方でしょうか」
「はい」
「家で攫われたんですか?」
「いいえ。……隠居するお祖父様から聞いた御伽話がありまして……その聖地巡りを。…………護衛を振り切って一人で」
「ああなるほど。伝承調べをしていたら、攫われたと」
「まあ、ハイ」
研究熱心っちゅうか。なんと言うか。アホな子なんやな。
「……家まで送った方がいいですか?」
「えっと…………。ハイ。お手数おかけシマス」
……この子、アホな子なのかもしれん。
こっからミドガルの王都は歩いてしばらくかかるし、蒸気機関車の路線も走らんほどの田舎やしなぁ。
とりあえず、朝になったら近くの集落寄って。そこではこの子の服とか装備整えんとな。
スライムソードとか貸せたらええんやけど、シャドウガーデンの技術を無関係者に貸し出したりすんのって技術漏洩になりそうで怖いんよなぁ。
……とりあえず、ボクのクレイモア貸してみるか。
「……とりあえず寝ましょう。夜番は私がやるので」
「いえ、私寝てましたし……」
「女の子が夜遅くまで起きてるんじゃありません。明日から疲れますからね。大人しく寝ていてください」
公爵家のテレジアちゃんに寝るように言って火と向き合う。
もうそこに仏さんはない。でも、……焚き火にしては大きな火。拾って蓄えてある薪を放り投げて火力を調整する。
……そろそろ自分が焚き火臭くなってきたなぁ。どっかに温泉湧いてないやろうか。久しぶりに温泉入りたいわぁ。
新キャラ(オリキャラ)登場しましたね。
多分、今日中にあと一話更新されます。