ただ人でありたくて   作:メめ

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二話 ボクには許嫁がいるらしいで。どんなやつなんやろ

 

 

 

 馬車に揺られて二人旅。

 ボクの連れであり、専属ではないけどただ一人ついて来たの従者。メバチ・キラービーさん。どっかで暗殺者でもやってたんかなぁと思うような名前やけど、長くカソウ家に使える従者らしい。

 

 白髪頭の好々爺。懐中時計とか持ってそう。あと、気配消して後ろから刺して来そう。ってのは、ただの偏見なんやけど……。

 

「もう少しすると到着ですよ。ヒツギ様」

「ありがとうございます。メバチさん」

「いえいえ。これも、わたくしの仕事ですから」

 

 メバチさんはそう言って馬車の手綱を握る。

 

 ボクが来たのはカゲノー男爵の屋敷。

 カゲノー男爵家は、カソウ男爵家と長年友好を築いている貴族家系。カソウ男爵家は医療者を輩出している家系で、医者やら魔剣士やらを輩出して来た家。

 先代からカソウ家とカゲノー家は仲が良く、よく交流することもあるという。

 

「……ボクが言うのもアレですけど。お父さまが来ないのは中々失礼ではありませんか?」

「仕方がありません。何せ、当主様は多忙なお方。緊急で施術が入ってしまい、どうしても外せない用ができてしまいましたので。……一応、カゲノー家の方々には先んじて通達しておりますのでご安心を」

「そうでしたか」

 

 なら良い……のか? だとしても相手の家に失礼ではないのか。

 

「まだ八歳になられたばかりのヒツギ様には関係のないお話です。お気になさらずとも、当主様がカゲノー家とのお付き合い方を考えるでしょう。貴方様が憂うことではございません」

 

 メバチさんはそう言って馬車を走らせる。

 ボクはその馬車の中から、ぼーっと外を眺めていた。

 

 

 

 

 ────────―

 

 

 

 

 しばらくすると、立派な屋敷の前についた。

 

「いらっしゃいませ、メバチ殿。ようこそ、カゲノー家へ」

「これはこれは、お出迎えありがとうございます。カゲノー男爵様」

 

 到着して馬車から降りると、そんな社交辞令のような挨拶が聞こえて来た。……ダンディでめっちゃええ声やな。

 

「君がヒツギくんだね」

「はじめまして、ヒツギ・カソウです」

「はじめまして。カゲノーの当主をしている。オトン・カゲノーだ。立ち話もなんだ。まずは、客間へ。荷物はこちらで預かろう」

「ありがとうございます」

 

 ああ、とてもええ声してるなぁ。……ハゲとるけど。

 

 カゲノー男爵が従者の人に声をかけて、ボクから荷物を預かる。……一応、メバチさんに視線を送って確認してみるが、なんの反応もない。……預けても問題はなさそうやな。

 

 従者さんに荷物を手渡して、カゲノー男爵の後へ続く。目を光らせているマナーの鬼(メバチさん)にお叱りを受けないよう、気ぃ張っとかなあかんしなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 ────────────────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

「話に違わぬ聡明さ。年相応とは思えない大人びた振る舞い。カソウ男爵は、優秀な倅をお持ちのようだ」

「ボクは四男ですから。跡を継ぐのはボクよりも優秀な兄さまたちですよ」

「この歳で謙遜を知るとは。恐れ入った」

「謙遜だなんて。ボクは事実を言っているだけですよ」

 

 ……むず痒いわぁ。

 あー、むず痒い。体を掻きむしりたいぐらいくすぐったいわぁ。

 やめて。お願い、やめて。そんな微笑ましい子供を、見るような目ぇやめて。あー! 中身(十七歳)と外見(八歳)の歳が食い違っとるとこんな弊害があるんかぁ。初めて知ったわ。

 

 可愛いモノを見るような目でボクを見んでくれ。いや、その感情は嬉しいんやけどね? 変に疑われて根掘り葉掘りされるよりは嬉しいんやけどね? 

 

 やっぱ転生なんてするもんやないんや。なろうとかの転生者ってすごいんやな。擬態能力と言うか、演技力ってやつがボクよりも高いんや。みんな先天的に俳優なんやな、きっと。

 

 内心悶えながら「そうですねー」とか「そうなんですねー」と返していたら部屋の戸が開き、一人の少女と少年が入って来た。

 

 黒髪に赤い目少女と黒髪に黒い目の少年。……ふーん。やっぱり、カゲノー男爵さんと夫人の子なんやなーって思った。二人とも似ている。ウチの家族とは違って、やっぱり兄弟家族って似るもんよなぁ。

 ……マジでおかん。托卵を企んで消されてたりしたんかな。だとしたら、ボクも制裁受けてるはずやから、そんなことはないんやろうけど。

 

「紹介しよう。俺の娘のクレアと、息子のシドだ」

「クレア・カゲノーです」

「シド・カゲノーです」

「はじめまして、ヒツギ・カソウと申します」

 

 丁寧に挨拶をされたので、ボクからも挨拶を返す。ちょっと訛ったけどまあ、つっこまれへんやろ。

 

「あはは、変な訛りっ」

「コラ、シド!」

 

 突っ込まれたわぁ。しかも、殴られとるわぁ。一応客に対してそないなこと言うか、普通。こいつ、大物になるやろうなぁ。……それか、ただ空気の読めんバカか。

 

「失礼しました。弟が」

「いえいえ、お気になさらず」

 

 シドくんやったっけ? 確か、ボクと同じ歳やったよな。……でも八歳ってこんな感じよな。多分。やっぱ、ボクがおかしいよなぁ。でも今更年相応なんて出来んしなぁ。

 

「シド。失礼だよ。すまないね」

「いえ、お気になさらず。同じ歳だし、よろしくね。シドくん」

「うん。よろしくー」

 

 ……えらい適当なやっちゃなぁ。

 

「そして、さっきも言ったが。娘のクレアが、キミの許嫁と言うことになっているよ」

「そうですかー。彼女が…………許嫁ですかー」

 

 待て待て待て。聞いとらんぞパパン! ボク許嫁に会うために寄越されたんかワレェ! てか、許嫁の顔合わせなら来いや! ちゃんとボクのこと紹介せなあかんとちゃうんか。

 てか、普通に聞き流しとったわ。

 

「よろしくお願いしますね。ヒツギ様」

「…………よろしくお願いしますね」

 

 なんだろう。笑顔の奥からすごい圧を感じる。

 

「せっかくだ。一度お互いに剣を打ち合ってみるのはどうだ」

 

 カゲノー男爵。ボク、剣苦手なんですが……。

 

「私の許嫁の剣を知りたいし、打ち合いたいわ」

「……まあ、はい。……わかりました」

 

 わかったよ。やればええんでしょ。やれば。

 

 コラ、メバチさん。微笑ましく見てないで助け舟くださいよぉ。






原作主人公登場しましたね。仲良くできるのでしょうか。
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