ただ人でありたくて 作:メめ
「どこに行った!」
「探せ! まだ近くにいるはずだ!」
……やっとどっか行ってくれたわ。暗い山中は危ないから気いつけて行きやー。
魔力を少量だけ放出してソナーの様に扱う。これで暗闇の中でもある程度動くものや生き物がわかる。便利な技やで。
……さて、メバチさんは。やばい、瀕死やんけ! そないに強いやつがおったんか!
急いで行かな──
でも、……ボク弱いしなぁ。治療はできるかもしらんけど。その後が無理だ。治療にも時間かかるし、その間生き残れる自信がない。
でも、メバチさんは見捨てたくない。
どうする。
メバチさんを置いて逃げるか。
ワンチャン死ぬ。多分死ぬ。おそらく死ぬかも知らんけど、メバチさんを見捨てずに助けに行くか。
「ええい! 腹括れやボク!」
もういい! やるならやるでやってやらぁ! 死んだら祟ったるわ!
魔力はまだある。身体強化もしばらくは使える。逃げ回りながら隙を探すのには十分だ。
メバチさんの反応がある場所に向かって木々を駆ける。間に合えよ、ボクの足!
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少し木々を飛び移りながら移動し、剣を振り下ろそうとする男に向かって加速する。
可能な限り魔力で身体を保護しつつ。
「ん──」
「せいやっ!」
反応しようとする男を飛び蹴りで蹴り飛ばした。
「ヒツギ様……、なぜお戻りに」
「置いといたら目覚めが悪いやんか」
「行けません。この様な老耄など置いて「置いとけるわけないやろ!」ですが!」
「聞き分けの悪い子で悪いなぁメバチさんや。死にかけの知り合い置いて逃げれるほど薄情になれんのや」
うっせやろ。かなり加速したつもりやったけど、奴さん全然元気やんけ。
メバチさんは血を流しすぎてるなぁ。流石に老体にはこれ以上持たんやろし……。剣を持つか? ボクが?
「よくも蹴りやがったな。クソガキ」
「うわぁ。ピンピンしてるやんけ」
「ヒツギ様。あの者は手練れです。早く、お逃げを。もうわたくしはどうせ保ちません」
「うっさい。保たん言うなら保つように気張り!」
剣を構えてボクを睨む手下人。堅い物を蹴ったと思ったけど、下に胸当てとか仕込んでんなあの感じ。
……二人はメバチさんが倒しとるし、あの感じは死んでる。せやから、せめて一人ぐらい自分でなんとかせないかんな。
足元に落ちてる剣を拾う。大人用だからボクには重たいし、扱い切れるわけがない。……でも、しっくりくる。
「一丁前に剣など持って。いいだろう。叩き殺してやる」
「怖いこと言わんといてや。ボク、怖くてちびっちゃうで」
不安だらけやけど、初陣や。
魔力で身体強化を使って剣を振る。
力任せで技量なんてない技が通じないのなんてわかってる。
「早い!」
「っらぁ!」
一気に距離を詰めて振り下ろす。おろして弾かれたら勢いのまま反転して下から切り上げる。
やれば意外と出来るやんけ、ボク。
しっかし、ダメージはなさそうやな。
ならもっと素早く。もっと強く。もっと重く!
剣に振り回されないように体勢を低くして、どうせ両手で持てないんだから、バランスを崩さないように片手は地面に着けて。
剣は持たない。肩に担ぐ、背負うように持つ。
どうせ自分の傷ならメバチさん治すよりも遥かに早く治せる。即死しない範囲で、受ける覚悟を持って。後ろに引いたら負ける。長引けば負ける。なら、攻めるだけ考えろ。
痛みを──恐れるな!
脚に力を入れて突撃する。タイミングを合わせるなんて出来ないから、途中で地面を掴んで身体を捻りながら勢い任せに剣で切る。
「チッ、自棄かぁ!」
弾かれた。なら、
身体をそのまま捻って蹴り上げる。
ピキッ! ィッ! 手首から嫌な音が鳴る。いたい。変な体勢で、片手で倒立する様に蹴ったせいで手首が保たんかったか。
でも今手を止めたら反撃される。
剣を握ったままの手で身体を一瞬支えて剣で横に薙ぐ。防がれた。と言うよりは、鎧。軽装に阻まれてダメージは低そうだ。
蹴り飛ばして少し離れ、また距離を積める。ヒットアンドアウェイなんてしない。ただ近くに張り付いて攻撃する。
手首は即座に治して、また三足歩行に戻して追撃する。
「面倒だなぁ!」
大きく振られた剣をしゃがんで避けて、剣で足を切る。ちゃんと振っていないせいで骨で止まってしまったが、歩行に影響は出るだろう。
しかし、その程度じゃ手練れは止まらないのを前世で痛いほど知ってる。伊達にチンピラとか暴走族らに因縁つけられてその対処をしてたわけやない。
剣を手放して軽く跳躍して、首を噛みちぎった。
思ったより脆いなぁ。跳躍の勢いのまま通り過ぎたら簡単に噛みちぎれたわぁ。
ブヨブヨしていて気色悪い。鉄臭い血の味がする。でも、なんやろか。気分が上がる気がする。
血で汚れて前が見えない。……あれ、そういや左手の感覚もあらへんなぁ。
噛みちぎった首の一部を吐き捨てて視線を向ける。が、左手はどこにもなかった。
ドサリ。崩れ落ちた音の方を見れば、首から血を流しながら手下人が倒れ。その近くにボクの左手らしきものは落ちていた。
「…………ああ、そこにあったんや」
…………っあ゙あ゙。いっダァー! 自覚したら身体のあっちこっち痛いんやけど! アレか! ハイになって痛み感じてへんかったんか!? ボクは猛獣か何かですかね!
あ゙ー痛い。めっちゃ痛い。泣きそう。いや、泣かんけど。泣きたい、あ。涙出てきてるやんけ。
「ヒツギ様、手が」
「やっちまったぁぁ。痛い」
ほんっと、やっちまった。痛い。マージで痛い。
魔力で身体の修復機能を活性化させて傷を治してくけど、……ボクの手くっつくかなぁ。やってみんとわからんけど。
落ちている手を拾い上げて傷口にグチュっと。っていったい。痛い。痛いよ。誰かボクを慰めてくれる優しい子おらん? 今おっても困るけども。あ゙ー、痛い。
軽く動かしてみると、綺麗にくっついた。特に問題なく動くが、なんか痕っぼいのが残っとる。
「ヒツギ様、貴方は」
「メバチさんや。内密に頼むで……いま、治したるさかい」
メバチさんの方に歩いて行き……あれ、意識が。
「ヒツギ様! お気を確かに」
「…………あかん。意識が……でも、治さな」
魔力を操作しつつ、気を抜かない様に探知も行い続ける。……あれ、なんか知らん魔力が……。
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「目が覚めたかい」
……ここは、どこや。てか、ええ声のハゲやな。
目の前には、体感半日前ぐらいに見た覚えのある、声の良いハゲたおっさんの顔があった。