ただ人でありたくて   作:メめ

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七話 シャドウガーデン。お前やったな

 

 

 

 シドの隣を並走すること数分。向かう前に一つ頼み事をされた。

 

「全力で陰の実力者ロールプレイするから、それに合わせろ。ねぇ」

「出来るでしょ?」

「んまあ、出来んことはないけど。あんまり期待せんといてや。ボク、大根役者なんやから」

 

 演技はあまり得意じゃない。いや、出来ん事もないけど、ちゃんと台本ないとむずいで。

 

「だよねー。だから前世やってたみたいな感じで合わせてね」

「はいよー。あんま期待はせんといてや」

 

 

 

 ────

 

 

 

「ここで待ってもらってるんだ」

 

 家から少し走った場所にある洞窟。

 その中で金髪のエルフは待っているらしい……って。

 

「ボクのアジトやんけ」

「え、ダメだった?」

「ダメに決まっとるやろ。アホなんか?」

 

 盗賊さん達の被害者の似顔絵付きの骨壷を納めてあるんやぞ。プライバシーに配慮したれよ。

 

 ボクのアジト。納骨堂的な場所は、最近見つけて使うようになった場所。

 スライムスーツ使っていっぺんに似顔絵書いて骨壷に貼り付け、骨壷の管理、保管するのに使っとる。

 誘拐されて、襲われて死んでた人らは丁寧に、個別に火葬してメバチさんに情報を調べてもらって骨壷に収めた。

 

 身元が分かり次第、匿名で送りつける予定。……まあ、火葬が一般的やないこの世界であろうと。元の世界であろうと、朝起きたら玄関先に行くへ知らずやった人の遺灰やら亡骸が置かれてたらショックやろうけど。

 仏さんら的には、遺族の元に帰りたいやろうし……。行方不明の生きてるかもしれないって希望に縋りながら生きるよりも、一つのケジメになるやもしれん。

 

 生きてる人らは自分で意味を作ってくれや。ボクはそこまで手を回せん。

 

 これにシドの陰の実力者ロールプレイは関係ないし、ボク個人のモンやからな。

 そんな場所に、ボクの知らん人を置いとくのは感心せんなぁ。シド。

 

 せやけど、怒るんは後や。こうしちゃいられん。いらん事される前に早よ行かな。

 

 魔力を使って加速しながら洞窟に入って納骨堂まで駆ける。

 

 金髪のエルフが骨壷に手を伸ばして──それはアカン! 

 

 金髪エルフの手首を掴み、関節を決めながら骨壷に触れないように手を上にあげさせる。

 

「……人のモンを無許可に漁るたぁ、感心せんなぁ」

「っ! 貴方は」

「誰でもええやん。……それに触んなや」

 

 ボクが誰であろうと関係ない。この骨壷達はあまり人に触らせたくない。この世界の人たちは骨壷の意味を理解してへんから。

 

「……わかったわ。ごめんなさい」

 

 金髪エルフはそう言って、体ごと退いて骨壷から離れる。

 

「わかってくれたならええんよ。ごめんなぁ。急に手ェ掴んで。痛くなかったか?」

「気にしないで。気になって手を伸ばした私が悪いんだから」

 

 結構力入れちゃったし、怪我してへんかなぁ。……一応加減はしたけど、大丈夫やろうか。

 

「あまり怒ってやるな、アンダーテイカー。言っていなかった我も悪い」

「……お前」

 

 元はと言えば全部お前が悪いんやからな? ちゃんと説明してりゃ、ボクがわざわざ止めに入らんでも良かったんやぞ? 

 ……まあええわ。ロールプレイに入ったのはわかった。わかったんやけど……アンダーテイカーって誰や。

 

「! 貴方がシャドウの言っていたアンダーテイカー」

「……」

 

 誰やシャドウって。……まあ、シドのことやろうな。ネーミングセンス的に。アイツ万年厨二病やし。

 ってことは、必然的にアンダーテイカーはボクのことか。大体あってるかもしれんけど、なんかなぁ。

 

「ということは、これは全部あなたが送っていった人達」

「……まあ、せやな。この「この壷に納められた者達は皆、ディアボロス教団の被害者達だ」…………ボク、解説しようとしましたやん。まあ、ええけど」

 

 なんやねん、ディアボロス教団て……。この人らはみんな盗賊とか、猛獣とかに襲われた人達の遺灰やぞ。

 

「こんなに被害者が……」

「奴らはありとあらゆる場所にいる。ここに納められた者達の亡骸もほんの一部でしかない」

「そんな……」

 

 ……なんか、ボク置いてけぼりなんやけど。

 アレか? ディアボロス教団言うんは、悪の組織的なやつか? っちゅうことは、ボクらは正義の組織? でも、シドが考えそうなのは悪の組織に裏から対抗する日陰の組織やろうし……。

 

「……まあ、ここに居る人らはみんなボクが送ったったよ。死んだ時ぐらい、人の尊厳はあるべきやからな」

「流石、シャドウの協力者というわけね」

「……せやね」

 

 協力者っちゅうことは、ボクは別組織。あるいは、シドの組織とは違う外部の人間ってとこかいね? 

 

「ああ、アンダーテイカーは我らシャドウガーデンの盟友だ。仲良くして欲しい」

「ボクは葬儀とかバックアップは得意やけど。戦うのはシャドウはんよかは苦手や。あんま戦力としては期待せんといてや。よろしゅうな、エルフちゃん」

「ええ、……不思議な話し方をするのね」

 

 不思議な話方……まあ、そうなるよなぁ。

 ボクの関西弁っちゅうか。色々混ざった似非に近いけど、ここじゃまず聞かない訛り。方言やし。

 

「すまんなぁ。…………どうしても訛りが出てしまうんですよね。気を抜いて話すと」

 

 こっちの標準語も使えることには使える。ただ、敬語とかやないと使えん。

 

「大丈夫なの。あまり聞き慣れないから少しわからないだけだから」

「……そか。ほんなら、あまり気にせんで話してもええか?」

「大丈夫よ」

「これから長い付き合いになるだろう。アンダーテイカーもアルファも仲良くしていって欲しい」

「アルファちゃんね。よろしく頼んます」

「ええ、こちらこそ」

 

 金髪エルフ、アルファちゃんと友達になった。

 ……まあ、陰の実力者ごっこに付き合ってる新しい友達ってことで。仲良くしてくれや。

 

 ボクに、新しい。ある意味この世界で初めての友達ができた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────────────────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アレから数日後。

 アルファちゃんがボクのアジトに遊びにきてボクに告げた。

 

「シャドウの言っていた通りだった。……『ディアボロス教団』は実在していたわ」

「……へっ?」

「古文書の中に奴らのものと思われる記述があった。貴方達の使命を疑うような行動をして……ごめんなさい」

 

 眉毛を歪ませて謝ってくるアルファちゃん。せやけどボクはそんなこと気にしている場合やない。コイツ今なんて言った? 『ディアボロス教団』が実在している? 

 

 そんな訳ないやろ。あれはシドが適当な設定をでっち上げたやつのはず…………いや待てよ。

 こう言うことができる時点で、アルファちゃんはかなり頭はええのは確かや。広げられた古文書の中身はボクは読めん。読めんけど、なんか難しいことが書いてあんのはわかる。

 そして、情報を探して精査し。真偽を確かめることが出来るんやし。まず間違いなくボクとシドよりは確実にええはず。そんな彼女が古文書やら古い伝承を漁り、『ディアボロス教団』は実在すると確定した。ならばそれは事実なのではないか? 

 

 シドはどうしようもないぐらいのアホや。絶対にそんな深く考えるはずがない。

 

 あり得ない話やが、そんな深く考えてもいない嘘っぱちな設定が……それがホンマに正しかったとしたら? 

 

 世の中には、嘘から出た真っちゅう諺もある。そして、現実は小説よりも奇なりとか言うのもある。

 

 だけど、そうなんやけど! 

 …………そないな偶然ありかいな。

 

 どうやらボクはとんでもない面倒事に巻き込まれたらしい。この事実をシドに話すべきやろうか。いや、多分余程のことがないとシドは信じない。シドはどうしようもないバカやけど自分のやっとることがバカげていると理解はしとる。

 

 ボクがこないな事を言い出しても鼻で笑って終わるか、ごっこ遊びに全力で付き合ってくれる様になったと大喜びして大暴走し始めて収拾がつかんくなる。絶対なる。

 

「改めて、私は貴方達に命を預ける」

「……そか。まあ、バカみたいな話やしな。信じてくれたんならええんよ」

 

 ホンマに……ホンマに馬鹿げた話よなぁ。ボクはやっぱりシドと縁を切った方が良かったのかもしれん。

 アイツはいつも厄介ごとばっか持ってきよる。ホンマになんでアイツの友人やってんねんなろな。ボク。

 

 もう何を言っても怖い。取り敢えず……ボクは考えるのをやめた。小難しいことは未来のボクがなんとかしてくれるやろ。多分。

 

「アンダーテイカー。私は貴方の何を手伝えばいい?」

「キミはシャドウガーデンでディアボロス教団について調べて。ボクは仏さんらの葬儀をする。それが役目や。……キミは、キミがシャドウはんのとこでやりたいことやったらええよ」

 

 ボクは匙を投げた。

 

 アイツ、やってくれたな。ホンマに。

 

「聞きたいのだけどいいかしら」

「構わんよ」

「あなたの言う仏さんと言うのはなんの隠語なの?」

 

 え、それ気になる? ……でもまあ、ここと宗教観とか違うしわからんか。

 

「仏さん言うんは、死体とか死者の隠語や」

「それがなぜホトケと言う言葉に繋がるのかしら」

「んー、なんでやろなぁ」

 

 宗教の違いとは言えんからね。

 

「気がついたら使っとった言葉やし、ボクに聞かれても発祥元はわからんなぁ。調べてみる?」

 

 多分出てこないけど。

 

「そうしてみましょう。シャドウが選んだ貴方だもの。何か特別な理由があるのかもしれないわね」

 

 シドがボクを選んだ理由なんてあらへんと思うよ。あっても前世の知り合いやからぐらいやないかね。

 

「おもろいことがわかるとええな」

「そうね」

 

 ……なんや、その意味深な笑みは。

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