ウマ娘 〜childhood friend〜   作:山本ショートピース

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短いです、申し訳ございません。


6話 幼馴染と模擬レース

 

 今回のエキシビションの模擬レースは9人。フルゲートでの戦いだ。

 ブエナビスタは何人かとの併走は経験しているが、今回のようなフルゲートでの戦いは初めてになる。

 しかも出走するウマ娘の中にはデビュー戦に勝利した子も参加する。

 

 デビュー戦よりはプレッシャーを感じないだろうとは思うが、試合展開に関してはトゥインクルシリーズさながらのものになるだろう。

 

 どこかグラウンド内の空気がピリついているのを肌で感じながら、事前に抽選により決められた枠番と番号が記載された表を取り出し、ブエナビスタの枠番を確認する。

 

 今回出走するレースには同期のジュエルトパーズのような知っている名前のウマ娘は出走しないようだが、9人の内3人が既にデビュー戦に勝利しているウマ娘だ。

 

 同期というツテを借りつつ、出走する子達の情報を調べたが、ラップタイムとかはブエナビスタと大きく変わらない。全然良い勝負ができると思う。

 

 ブエナビスタの枠番は……9番。完全な外枠だ。

 

 一般的に、レースでは内枠……枠番が1番の方が有利と言われている。

 単純に内枠の方が距離のロスが少なく、外枠だとコーナーを回る時に膨らんでしまって距離ロスが出る。というものだが、勿論それは距離やそもそもの走る場所が芝かダートか。だったりで変わってくるところではある。

 

 ちなみに今回のエキシビションは芝1600のマイルで出走申請を出しているが、正直この距離だとあまり枠番の有利不利は考えなくてもいいんじゃないかと思っている。

 それにブエナビスタは追込になる訳だし、逆に内からごぼう抜きは厳しいだろう。そういう意味では9番は割と当たりになる。

 

「トレーナーさん」

「ん? おぉ、お疲れブエナ、調子はどう?」

 

 紙をポケットにしまいながら、僕はブエナビスタを見る。

 今日はいつもの練習時に着ているジャージではなく、体操着を着ており、体操着には枠番と名前が書かれたゼッケンが縫い付けられている。

 

 メイクデビュー戦やGⅡのようなレースでも、この体操服は着用してレースに挑む、いわば戦闘服のようなものだ。

 ちなみにGⅠの場合は勝負服というそのウマ娘だけの戦闘服を着用して走る訳だが……。

 

 いずれブエナビスタも勝負服を着て走る。その時はきっと、僕のまだ見ぬ絶景とやらになるのだろう。

 

「うん、絶好調! 昨日はよく眠れたからかな?」

「そっか。遠足前は楽しみ過ぎて夜更かししてたブエナがねぇ……成長を感じるよ」

 

 両腕を組んでうんうん頷いていると、ブエナの尻尾が僕の太ももをペチンと叩いてくる。

 あんまし言うと、お弁当の時みたいに機嫌を悪くしそうだからやめておく。あの時は機嫌を直すのに苦労したなぁ……。その光景を見たトーセンジョーダンと、その友達のポニーテールのギャルウマ娘も、エモすぎるとかなんとか言って、また機嫌悪くなるし。

 

「それはさておき。今日の出走メンバーを見た感じ、充分にブエナは勝ちを拾えると僕は思ってる」

「……うん」

 

 さっきまでの尻尾でぺちぺち僕の太もも叩いたりとかしていたのはどこへやら。レースの話をすると、どことなく緊張してる雰囲気がある。

 

 ーーーーいや、違うか。

 ブエナビスタは感受性が強い。小さい頃からそうだった。

 誰かの幸せはまるで自分の幸せ。誰かの悲しみは自分の悲しみ。

 

 誰かの緊張は、自分の緊張。

 

 僕が……緊張しているのかもしれない。いや多分緊張しているのだ。

 

 あり得ないことだとは思うが、ブエナビスタが1着を取れなかったら?

 自分から課したとはいえ、仮契約のまま終わってしまったら?

 

 きっと、僕の恐怖と緊張をブエナビスタは無意識のうちに感じ取ってしまっているんだ。

 

 今日まで僕は、僕が出来る限りの事をやってブエナビスタを鍛えた。

 そして再確認した。やっぱりブエナビスタには才能がある。トレーニングに関しては文句一つ言わずに励み、信じてついてきてくれた。

 

 ……僕が信じなければ。

 とりあえず気分を変えよう。

 

 僕は一度大きく深呼吸し、頭を振り気持ちを切り替える。

 一旦勝ち負けをおいて、僕もこの模擬レースを楽しんでいこう。

 

 

 

「まぁ……えーっと、勝つのも大事だけどさ。まずはブエナ、君も楽しんでいこう。ほら、レースって楽しむものでしょ?」

「ーーーうん、うん! そうだよね、なんか緊張しちゃって……」

「ブエナなら大丈夫だよ。何も心配してないから」

 

 ブエナビスタの肩を叩く。

 

「楽しんでおいで、ブエナ」

「……うん! 行ってくるね、お兄ちゃん!」

「おう!」

 

 ブエナビスタはさっきまでの緊張が嘘のように元気になり、模擬レースに向かう。僕はその後ろ姿を見届けつつ呟いた。

 

「頑張れよ、ブエナ」

 

 

 そしてレースが始まる。

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