異世界転生したと思ったら、地球に転移した。なんでやねん。   作:卍錆色アモン卍

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14集う冒険者たち

 

 とある休養日、グレイは迷宮対策課本部にて自由を謳歌していた。そして、彼がなんとなしにお花摘みへ出かけた際に、一悶着はあったのだ。

 

「あーすっきりした」

 

 手を洗い終わったグレイは、レアより持たされたハンケチーフで手を拭いていた。その時、彼の隣に異人三課のランサがやってくる。

 

「おっ、奇遇だな。調子はどうだ?」

「ぼちぼちだよ」

 ランサは少し躊躇った様子を見せたが、続きを話した。 

「ただ、イオが最近距離を取ってくるんだ。前までそんなことなかったのに……」

「ふむ、何か隠し事をしてるんじゃないか?」

「俺もそう思って聞くんだけど、何も隠してないって答える。なら俺に問題があるのかと聞いても、何も問題はないって答える。俺にはイオの心が分からない……。とりあえず、師匠には相談しておいた」

「まあ、ゾネさんなら上手く取り持ってくれるだろ。あの人強そうだし」

 

 綺麗さっぱりと手を洗ったランサと共に、グレイは外へ出ようとした。だが、その時。勢い良く個室の扉が開いたのだ。それも二つ同時に。

 最初に洗面台へやってきたのは、長い緑髪が印象的なエルフであった。彼はグレイほどではないが長身であり、ルークと同程度だろう。しかし、ルークよりも細身な体つきをしており、まるでモデルのような体型をしていた。

 次に洗面台へやってきたのは、かなり小柄な老人だ。しかし、その言葉に騙されてはいけない。

 爆発するかのように広がる髭もじゃフェイス、身長並みに横に広い肩幅、そして、彫像かと見紛うほどにゴリゴリに鍛え上げられた、逆三角形をした肉体美。

 デミヒューマンと同じく露出度の高い衣装を身に着けた彼は、角の生えた鉄兜、使い古された赤マント、そして腰蓑のみと、潔い戦士スタイルであった。

 

「おや、こんなところにドワーフがいるじゃないか。小さくて見えなかったよ」

「なんじゃ、枯れ木かと思ったらエルフじゃったわい。相変わらず貧相な身体じゃのぉ〜」

「ふん、キミの目は節穴かい? 僕の方がはるかに美しいじゃないか」

「何を言う。我らドワーフこそが美しい肉体をしとるじゃろうて」

 

 二人は仲良くゴシゴシと手を洗い、仲良くハンケチーフで手を拭くと、同じタイミングで睨み合った。その様子を見ていたグレイは、おおっ!と目を輝かせ、ランサは面倒くさそうに顔を歪める。

 

「へいへいへーい! もしかして、異人一課と二課の冒険者か? 俺は異人四課、『黄金の剣』のグレイだ。見ての通りヒューマンだぜ」

「……俺は異人三課、『炎の槍』のランサだ。種族は見ての通りデミヒューマン」

 

 大きく胸を張ったグレイと、不機嫌そうな表情を隠しもしないランサは自己紹介をした。すると、彼らはこちらへ振り返り、先ほどとは打って変わって柔和な笑みを浮かべながら、自己紹介をし始めたのだ。

 

「ああ、奇遇だね。まさかこんなところで同郷と出会えるだなんて。僕は異人二課、『森の影』のエルウィンさ。僕は頭の固いドワーフと違って他種族には寛容だからね、そう警戒しなくたっていい」

「おう、よろしくな!」

「どうも」

 

 エルウィンと名乗った青年はキザな雰囲気を漂わせているが、思いの外気さくな人物であった。そして、次に口を開いたのがドワーフの老人だ。

 

「奇遇じゃのぉ! ワシは異人一課のぉ〜? ワシじゃよ‼」

「いや誰だよ⁉」

「ガハ☆ ナイスツッコミィ! ワシは『鋼の拳』のアレクじゃ。エルフと違って他種族を差別せん! 気安く話しかけてもらって構わんゾイ!」

 

 グレイにビシッと指を指したアレクは、大笑いをしていた。かなり豪快な人物であることが見て取れる。

 そんな彼らはお互いにディスっているのだが、グレイたちはあえてスルーを決め込んだ。藪蛇なことが目に見えていたからだ。

 

「せっかくだし、一緒に昼食でも取らないか? 同じアースガルド出身だ、親睦を深めたい」

「まあ、俺はいいけど」

「勿論構わないよ」

「構わんぜ、ワシのベリィキュートなハァニーを紹介したいところじゃからのぉ〜!」

 

 瞬間、アレクとエルウィンに電流走る。という訳ではないだろうが、何故か二人は足早に去っていった。そのことにグレイたちは疑問を浮かべてトイレから出てみると、アレクたちが言い争いをする二人の女性を宥めていたのだ。

 

 肩ほどまでに伸びた緑髪を、ウォーターフォールと呼ばれる髪型にした細身のエルフ女性と、可愛らしい顔立ちをした少女ではあるが、随分と成熟した体付きをしている、ゆるふわパーマのドワーフ女性。

 二人の仲は明らかに険悪であり、アレクたちが協力をしながら、彼女たちのご機嫌を伺っていた。

 

「なにこのチビ、さっきから生意気なんですけどー?」

「別に〜? なんの魅力も持たないエルフ女が可哀想って、憐れんでただけですけどぉ〜?」

「はぁ? そんなに手足が短くて太ってるくせに、私を憐れんでたってわけ? 寝言は寝て言ったらー?」

「はぁ〜? おっぱいもお尻も小さいくせに背が高いとか、生きてて恥ずかしいのぉ〜?」

 

 舌戦を繰り広げる彼女たち。そんな彼女たちが口を噤んだ瞬間、アレクたちが間を取り持った。

 

「まあまあ、落ち着きなよシルヴィ。今のキミはあまり美しくないよ? 普段はもっと優雅で、何よりも優美じゃないか」

「シェリー、いつもの可愛らしいお主が見たいぞい。どうか気を落ち着かせてはくれんか?」

「……ふん! 私は高貴なエルフだもの。ここは引いてあげるわよ、オチビさん」

「……ふん、あなたが引かなくたって、あたしが引いてますけどね、ノッポさん」

 

 最終的には、互いが身を引いたことによって両者の争いは終結をした。なお、これら一連の様子を見ていたグレイは、「やはりエルフとドワーフは相容れない……!」と呟き、ランサは心底うんざりした様子でため息をついていた。

 

 

 

 迷宮対策課本部にある食堂にて、異人一課から四課に所属する冒険者パーティー一行が、一同に会していた。

 大きな長テーブルを計十一名ものアースガルド人が占拠をすることとなり、さながら異世界酒場の様相を醸している。

 

 若干周囲がざわつく中、グレイたち『黄金の剣』は、『鋼の拳』の面々であるアレクとシェリーと共に昼食を取っていた。

 ランサたち『炎の槍』は、エルウィンたち『森の影』と親睦を深めている最中だ。

 

「アレクが転生者なんだな。まあそんな気はしてたが」

「ガハハ! 当たり前じゃろう、ワシはこ〜んなにも男前なんじゃからのぉ〜!」

「この人、いっつもこんな感じなのよぉ。ゴメンね〜?」

「明るくていいじゃないか。冒険者のリーダーたるもの、仲間たちを鼓舞し、導かなければならない。弱みを見せるなんて以ての外だ」

「──ほぅ。お主、随分と分かっとるのぉ?」

 

 急に視線が鋭くなったアレクがグレイを見据えてくる。しかし、その鋭い気配はすぐに鳴りを潜めると、彼はガハ☆と快活に笑った。

 

「そんなことよりもじゃ、グレイ! ワシは禿げとると思うか?」

「どういう話題の変え方だよ?」

「まあまあ、とりあえず答えてはくれまいか!」

 

 いきなり禿げか、禿げじゃないかの質問をされたグレイは呆れるが、真面目にアレクの頭部を考察する。

 アレクは角の生えた鉄兜を被っているため、見かけだけでは分からない。しかし、ヒントはある。それは彼がドワーフであること、髭モジャであること、そして、鉄兜の後ろ側から、爆発するかのように後ろ髪が飛び出ていることだ。

 長い熟考の末に、グレイは答えを導き出した。

 

「アレクは……禿げだ!」

「ふぉっふぉっふぉ! ファイナルアンサー?」

「ファイナルアンサー!」

 

 重苦しい空気が場を支配する中、俯いていたアレクが顔を上げた。すると、そこには笑顔であるにも関わらず涙を流すという、情緒が不安定な表情をしたアレクがいたのだ。そして、彼は右手でもってして、鉄兜をパカリと開いた。

 

「──キッショ、なんで分かるんじゃよ」

「いや羂索ネタやりたかっただけかーい⁉」

「何じゃと⁉」

「ダニィ⁉」

 

 瞬間、グレイとアレクに電流走る。彼らの脳裏には存在しない記憶が駆け巡り、互いに質問を始めたのだ。

 

「どんな女が好み(タイプ)じゃ……⁉」

身長(タッパ)(ケツ)がでかい女がタイプです‼」

 

 食事の手を止めたレアが片眉を上げ、グレイを訝しげに睨みつけてくる。だが、グレイとアレクは無視をした。

 

「逆に問おう。釘﨑ノバラの煽り文句と言えば……⁉」

「寝不足か? 毛穴開いてんぞ、じゃ‼」

 

 今度はフォークを握りしめたシェリーが片眉を上げ、アレクにメンチを切り始める。しかし、グレイとアレクは無視をした。

 

「なるほどのぉ。どうやらワシらは──」

「〝親友〟のようだな……!」

 

 グレイとアレクは強く拳を打ち付け合うと、友情を分かち合った。彼らはもう、他人ではない──兄弟だ。

 

 

 

 ⚔

 

 

 

 アースガルドの面々と顔を合わせた翌日、アレクはベリィキュートなシェリーを伴って、崩壊都市に存在する〝第四都市〟へとやってきていた。彼らの目的は、第四都市にて巣食い、周辺の生態系へ甚大な被害を及ぼすオルトロスと呼ばれる魔物を駆除することだ。

 

 自然に飲まれた都市の交差点で、ランクルから飛び降りたアレクは周囲を見渡した。

 大きなスクランブル交差点を囲うようにして立派な建物が立ち並んでおり、アレクたちを見下ろしてくる。しかし、それらは一様にして廃れていた。

 

「さあて、ワシらの目的地はどこかのぉ」

〔あちらのビルですよ、アレクさん〕

「おお、そうじゃったか」

 

 アレクの疑問に対して答えたのは、大柄な男性だ。

 彼──冬川トウジは、スーツの上からサイボーグ兵のヘルメットやサイバネティクスギアを身に着けている。また、手には短機関銃、銀星を抱えており、装弾数五十発を誇る弾倉をマガジンポーチに差していた。

 

 見るからに破壊力のありそうなウォーハンマーを持ったシェリーがアレクへ振り向き、「早く行こうよぉ」と声を上げた。

 アレクはにこやかな笑みを浮かべると、シェリーに返答をする。

 

「そうじゃのぉシェリーちゃん! 早速オルトロスをぶっ飛ばしに行くとするぞい!」

「やった〜!」

 

 シェリーの可愛らしい笑みを視界に収めたアレクは破顔し、ガハ☆と大きく笑った。

 楽しげな様子でアレクの腕に抱き着いてくるシェリーは、女性らしさに満ち溢れている。可愛らしい仕草は勿論のこと、防具に包まれているとはいえ、柔らかな感触がアレクに伝わってくるのだ。それは男には持ち得ない、女性だけの魅力の象徴と言えた。

 アレクはデレデレとした表情を隠しもせずに、シェリーと仲良く廃ビルへと向かっていった。

 

 いざ廃ビルへ入ろうとしたアレクたちであったが、彼らの眼前には群れをなしたオルトロスたちがぞろぞろとやってきた。

 体高二メートルはあるだろうか。黒い体毛は棘のように外へ向き、二尾の尻尾がちらりと映る。だが、最も特徴的なのは一対の頭部であろう。歯茎を見せるほどに低く唸る二つの首は、これでもかと怒りの表情を浮かべており、見た者に恐怖を植え付ける。

 二首(ふたくび)の巨狼、双頭の狼。呼び方は数多くあれど、共通しているのは巨大な体躯と二つの首だ。それらを併せ持ち、少数ながらも群れをなす存在こそが、オルトロスと呼ばれ、恐れられている魔物であった。

 表情を引き締めたアレクは愛用のメリケンサックを指に嵌め、構えを取った。そして、相方のシェリーと銀星を構える冬川トウジへ発破を掛ける。

 

「敵はオルトロス! 数は六! 全殺しじゃあ‼」

「あっはは! ようやく暴れられるねぇ〜!」

〔頑張ります!〕

 

 獰猛な笑みを浮かべたアレクは、回戦の合図として遠吠えを上げる一際大きいオルトロスを見据えると、強く拳を打ち合わし、派手に火花を散らした。

 

 

 

 アレクたちを囲うように、円を描くオルトロスたち。彼らは高い知能を持っており、いかに効率よく獲物を捕らえるかを常に思考している。それは二つの脳みそを活用しているおかげであり、かつては狼であった祖先より受け継いだ本能のおかげである。

 

 背中を預け合うアレクたちは、僅かな隙であろうと晒さないように最大限の注意を払っていた。

 極度の緊張感から鼓動が早まり、呼吸が浅くなる。

 それもそのはずで、オルトロスは尻尾も含めると全長六メートル近い巨躯を誇り、鋭い歯が並んだ大きな(あぎと)が二つも存在するのだ。加えて、彼らの咬合力は半端ではなく、いとも容易く防具を貫き、左右に引き千切る。

 もしもオルトロスに噛みつかれようものなら、一瞬で茂みに連れ去られ、生きたまま身体をバラバラにされるぞ。冒険者の間ではそう語り継がれており、実際にオルトロスによる魔物被害は後を絶たないのが現状であった。

 

 たったの数秒。されど、アレクたちからすれば途方もない時間が過ぎた時、オルトロスたちが一斉に動き出した。

 アレクに二体、シェリーに二体、そして、冬川トウジに二体。

 瞬時に状況を判断したアレクは、声を張り上げた。

 

「眼前の敵を打ちのめせッ‼」

 

 叫び終わったアレクはアスファルトの大地を蹴り砕き、虚を突かれた様子のオルトロスの腹下へと潜り込む。そして、渾身の右拳をオルトロスの胸目掛けて突き上げた。

 バキリ、と肋骨が折れる音に続いて、アレクは臓器を殴り潰す感覚を覚える。それは心臓、肺と続き、最後は胸椎へと至った。

 大量の血飛沫を浴びながらも、めり込んだ拳を引き抜いたアレクは絶命したオルトロスを投げ捨て、双頭でもってしてこちらへ噛み付こうとしてきたもう一体のオルトロスと向き合った。

 

「怒りに飲まれちゃお終ぇよ、ひよっこ」

 

 そう小さく呟いたアレクは二つもの顎が自身へ迫った瞬間、両手に握り込んでいた手榴弾のピンを引き抜き、それぞれの顎へ投げ込んだ。そして、アレク自身は一寸先で閉じられたオルトロスの顔面を蹴り付け、後方へと跳躍をしたのだ。

 巨大な水風船が破裂したかのような爆音と共に、オルトロスの双頭は木っ端微塵に吹き飛んだ。アレクは血の雨が降り注ぐ中、ガハ☆と快活に笑うと、仲間たちの援護へと意識を切り替えたのだ。

 

 ウォーハンマーに組み込まれた撃鉄を起こしたシェリーが、片方の頭部が拉げているオルトロスの顔面をぶん殴った。その瞬間、派手な爆発が発生し、周囲に爆炎が撒き散らされては、途轍もない衝撃波が大気を震わす。

 

「あっははは〜! 畜生風情が、ドワーフに勝てる訳ないじゃんねぇ〜!」

 

 心底面白いといった様子のシェリーは随分と楽しげであり、ウォーハンマーの仕掛けによって千切れ飛んだ頭部を見つけると、ことさら大笑いをしていた。

 アレクは相も変わらず可愛いぞい!とシェリーへ感想を抱くと、次に冬川トウジの元へと向かった。

 

 倒れ付した二体のオルトロスの前で、冬川トウジは銀星の再装填をしていた。

 銃身の下部に、一体となるように装着をされた細長い弾倉を脱着し、新たな弾倉を前側に引っ掛けながら再装填をする。

 その様は熟れており、彼が並々ならぬ努力をしてきたことが見て取れた。

 

「銃は強いのぉ〜。羨ましい限りじゃ」

 

 そうアレクが彼に声を掛けると、冬川トウジは次のように答えた。

 

〔正直、銀星じゃ威力不足ですよ。いくら貫通力があるとは言っても、オルトロスの頭蓋骨には防がれました。目や口を狙わなければいけないのは、あまり推奨できる戦術ではありませんね〕

 

 困ったように、冬川トウジは肩をすくめる。

 アレクはそうだったんかと彼に言葉を返すと、手榴弾を二つ使用したことを伝えて、「また補充頼むわい」と言葉を紡いだ。

 冬川トウジは、理解を示したように頷いた。

 

 その後、アレクたちはオルトロスたちの死体を処理し終えると、ランクルに乗り込み、第四都市を後にした。彼らの調査はまだ、始まったばかりである。

 




 ゾネとアレクのモデルは、ドラゴンズクラウンのアマゾンとドワーフです。
 銀星のモデルは、KelTec MP50です。
 文章の雰囲気をちょっと変えてみてます。

アースガルドに住む四種族
・ヒューマン
 真面目な性格。男性平均身長一九〇センチ、女性平均身長一七〇センチ。手足が長い特徴を持っている。
・デミヒューマン
 陽気な性格。男性平均身長一七〇センチ、女性平均身長一六〇センチ。優れた身体能力を持っている。
・エルフ
 高慢な性格。男性平均身長一八〇センチ、女性平均身長一七〇センチ。種族柄線の細い者が多く、彼らはそれを美徳としている。
・ドワーフ
 頑固な性格。男性平均身長一四〇センチ、女性平均身長一二〇センチ。種族柄ガッシリとした体躯の者が多く、彼らはそれを美徳としている。
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