「お待たせしました。ユカリ様。彼らが今回、移住を希望した各村の村長達です。」
「「「「………」」」」
リグルドはそう言いながら、明らかに緊張している三人の雄ゴブリンと一人の雌ゴブリンを連れてくる。
皆、
「貴女、リグルドだけでなく他の三人よりも若いわね?」
「は、はい。私の村はつい最近、代替わりしたばかりでして……」
私が首を傾げながらそう尋ねると髪の長い雌ゴブリンは緊張しながらそう答える。
他の三人と比べると二十代くらいかしら。
「そうなのね……ところでそれは何かしら?」
「あ。これは私の村の名産で是非ユカリ様にも味わって頂きたく……」
「これは……大根か?」
「大根にしては色が黄色いですな。」
「「「?」」」
雌ゴブリンがそう言いながら献上してきた。木皿に綺麗に盛り付けられた、少しだけ厚めに切られた“黄色い大根”を見てランとリグルド、他の三人のゴブリン達は首を傾げる。
「ふむ。どれどれ……」
「ユカリ様!?」
「(パリッ)!美味しい!!」
ランの制止を無視して一枚摘まんで食べた瞬間、口の中に広がる程よい塩気を帯びた大根の旨味に思わずそう声を上げる。
やっぱりこれ、たくあんじゃない!!
「貴女達も食べてみなさい。凄く美味しいわ。」
「で、では……」
「失礼します……」
「「「………」」」
私がそう言って勧めるとランとリグルド、他三人も一枚ずつ摘まんで食べる。
「!?これは……っ!?」
「おぉっ!なんという旨さ!!」
「これ、大根が旨いというだけではないな。」
「あぁ、しょっぱい感じの何かの味が程よく沁みて……それが大根の旨味を更に引き出している……っ!!」
「くっ……もう一枚欲しくなる……っ!!」
「これ、貴女の村で作ったの?」
食べた五人が感動しながらそう言うなか、私はそう雌ゴブリンに尋ねる。
「は、はい。私の村では代々続けている畑で野菜を育て、そこから採れたものを家宝である“不思議な土”を入れた壺に一晩以上入れて作ってます。」
「ちょっとその壺、見せてくれる?」
「はい。ちょっとお待ち下さい。」
私がそう言うと、雌ゴブリンはそう言いながら取りに行く。
「お待たせしました。こちらが家宝の壺なんですが……」
数分くらいした後、雌ゴブリンはそう言いながら一つの壺を抱えて戻ってくる。
中身を見せてもらうと、それは見るからに“糠床”だった。
「私の父…前村長から聞いたんですが昔、森を彷徨ってた所を助けた異世界人からお礼として譲ってもらい、これで作った野菜があまりにも美味しいこと等から村の名産、我が家の家宝として畑共々、代々大事に受け継がれてきたものだそうです。」
異世界人……十中八九私やリムルと同じ日本人ね。
「もしかして、畑で野菜を作る手法もその異世界人から教わったのかしら?」
「はい!こちらも家宝として秘伝書に記し、代々受け継がれてます!!」
「なるほど……種とかはどうやって調達しているの?」
「実は私の村は
「なるほどね……」
「ツケモノというのか。この野菜は……」
「凄く美味しいです。ラン
「気に入って頂けて嬉しいです。けど、ヴェルドラ様がいなくなっちゃったことで活性化しだした他の魔物からの脅威から逃げるために村と畑を手放し、樹人族の集落からも離れてしまいましたから今後の野菜作りもツケモノ作りも難しくなってしまいましたが……」
「……種と畑があれば、野菜と漬け物を作れるのよね?」
「?それは勿論ですが……」
「だったら、私に任せなさい。貴女にまたこの村で美味しい野菜と漬け物を作れるようにしてあげる。」
「!?本当ですか!?ユカリ様!!」
「えぇ。丁度そのための土地もリグルドに命じて確保させてたし……っと漬け物の美味しさに感動して、貴女達を呼んだ本来の目的を忘れる所だったわ。」
「?本来の目的……ですか?」
「「「?」」」
私の言葉に雌ゴブリン含む四人の村長達は首を傾げる。
「正式決定はリムルが戻ってきてからだけど貴女達、ここにいるリグルドの補佐…新たなゴブリン・ロードになる気はないかしら?」
「!?ゴブリン・ロード……」
「私達がですか……っ!?」
「「!?」」
「えぇ。因みにリグルドにはその際、『ゴブリンキング』に格上げしてもらうわ。」
「!?ゴブリンキング……っ!!」
「どうかしら?引き受けてくれるかしら?」
「ッ!!はい!!」
「私達で良ければ是非!!」
「ありがたくその任、」
「引き受けさせて頂きたく存じます!!」
そう持ち掛ける私に対し、四人の村長達は跪きながらそう言う。
「なら、貴女達には特別に今、この場で私が名付けてあげるわ。」
「「「「本当ですか!?」」」」
「えぇ。他の子達はリムルが戻ってきてからだけど、貴女達はリムルが戻ってくるまでの間もリグルドの補佐として働いてもらわなきゃならないからね。」
因みに彼女達の中に妖怪になれそうな子はいないので『式神化』は使わない。
「先ず、美味しい漬け物を食べさせてくれた貴女は『リリナ』。その次からは『ルグルド』、『レグルド』、『ログルド』よ。」
私は目を輝かせる村長達に左から順に名前を付ける。
何気に普通の名付けは初めてね。
「ありがとうございます!ユカリ様!!」
「「「ありがとうございます!!」」」
「改めてこれからよろしくね。」
「「「「はい!!」」」」
「リグルド。
「わかりました!ユカリ様!!」
「ラン。私はちょっと出掛けてくるからその間の村のことをお願い。」
クパァ
リリナSide
「?どちらに行かれるのですか?ユカリ様。」
「ちょっと
首を傾げながらそう尋ねるラン様にそう答えながら、ユカリ様は不思議な“裂け目”の中へと消え閉じていく。
今のはユカリ様のスキルなのでしょうか。
「では、案内するから付いてきてくれ。特にリリナは今後の職場になるかもしれないからな。」
「「「はい!!」」」
「は、はい!!」
そう言いながら先頭を歩き始めるリグルド様の後を、私や他の村長…ゴブリン・ロード候補達は慌てて付いていく。
まさか、村の皆を受け入れてくれただけでなく、また野菜とツケモノを作れるようにして下さるなんて……絶対にユカリ様にもっと喜んでもらえるような美味しい野菜とツケモノを作らないと……
〈確認しました。ユニークスキル『
ユカリSide
「此処が樹人族の集落ね……」
スキマを使ってゴブリン村から移動した後、私はそう言いながら辺りを見渡す。
実は牙狼族との決戦前に手に入れた『
「一見するとただの森のようだけど、一本一本に魔物並みの魔素と明確な自我を感じるわね……ところで、そろそろ出てきて良いんじゃないかしら?
「バレてましたか。」
私がそう言った次の瞬間、私の背後の地面から緑の光と共に蔦が生え、そこから緑の長髪の女性がそう言いながら姿を現した。