転生したらスキマ妖怪だった件について   作:デスゴッド

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『小物妖怪』の影と侵蝕する『異変』

豚頭族(オーク)大鬼族(オーガ)に仕掛けたって!?そんなバカな!!?」

 

九人のオーガを保護した日の夜、相変わらず宴会みたいな感じになっている町の雰囲気にウルミとサキ、オーガ達も早くも馴染んでいくなか、私が保護した三人から『若様』と呼ばれていた赤髪のオーガ青年から話を聞いたカイジンがそう困惑の声を上げる。

 

「事実だ。数千の武装した豚共の襲撃を受け、里は蹂躙し尽くされた……三百いた同胞も現在(いま)、たった九人しかいない……」

 

「彼の言ってることは本当よ。直接は見てないけど、数百近い全身鎧(フルプレートメイル)を着込んだオークの群れ…いや、(ぐん)の存在を『霊能者(サイキック)』で確認したわ。」

 

対するオーガ青年がそう言いながら酒を飲むなか、私も追加情報としてそう説明する。

 

「信じられん……あり得るのか?そんなこと……」

 

「わかりません……」

 

「そんなにおかしいことなんスか?」モグモグ

 

オーガ青年と私の言葉にカイジンとリグルドが困惑しながらそう言うなか、ゴブタが骨付き肉を頬張りながら話に割り込んでくる。

 

「当然だ。そもそも豚頭族(オーク)大鬼族(オーガ)じゃ強さのケタが違う。格下の豚頭族(オーク)から仕掛けること自体あり得んし、況してや全滅など」

 

「全滅ではない。まだ九人(おれたち)がいる。」

 

「……すまん。」

 

「……豚頭族(オーク)が仕掛けることもあり得ないことだけど、豚頭族(オーク)が全身鎧を装備していることもあり得ないのよね?」

 

説明を遮りながらそう言うオーガ青年にそう謝罪するカイジンに対し、私はそう尋ねる。

 

「あぁ、そんな高級品、豚頭族(オーク)が自力で用意できる筈がねぇ……」

 

「……そう……」

 

あの時のオーク達の動きは魔物特有の本能に従った動きというより組織的なもののように感じた。

 

全身鎧のことも含め、これらのことが第三者が意図的に引き起こした(・・・・・・・・・・・・・・)ものだとするなら……

 

「……まるで『異変』ね……」

 

本来起きる筈がない筈の武装した数千の豚頭族(オーク)による侵略行為……幻想郷風に言えば、『異変』ともいえる事案ね。

 

「ユカリ嬢。」

 

私がそんなことを思っているなか、オーガ青年が話し掛けてくる。

 

「……彼奴らから話は聞いた。オーク共に追い詰められていた所を助けてくれたこと、心から感謝する……本当にありがとう。」

 

「別に気にしないで良いわ……さっきの話から推測するに豚頭族(オーク)に全身鎧等を支援し、更には先導もした第三者がいると思うんだけど、何か思い当たることはないかしら?」

 

「そうだな……里を襲撃したオーク共を先導する『仮面の魔人』の姿をこの眼で見た。」

 

「仮面の魔人……」

 

「アレは上位魔人だ。間違いない。」

 

つまりその仮面の上位魔人がこの『異変』を引き起こした犯人若しくはその一味の一人ということね。

 

「その魔人が着けてた仮面と私がリムルさんに託した仮面と見間違えたのね。」

 

「なるほどな……そりゃ悔しい訳だ。」

 

そんななか、ゴブイチが焼いた串焼きを食べていたリムルがそう言いながら、シズと共に話に参加してくる。

 

そういえば、イフリートとの戦いの後、シズがリムルに託した『抗魔の仮面』を見た六人が勘違いを起こして襲撃したことが、二人が六人のオーガと知り合うきっかけになったって言ってたわね。

 

「……肉はもう良いのか?リムル殿。シズ殿。」

 

「ちょいと食休み。」

 

「私も。それにこの町の住人としても冒険者(にんげん)としても今の話は聞き流せないしね。」

 

「にしても、おまえの妹は凄いな。」

 

オーガ青年にそう言いながらリムルはゴブリナ達と楽しそうに笑う、私が保護した三人からは『巫女姫様』と呼ばれていた桃色髪のロングヘアーのオーガ娘を見る。

 

「薬草や香草に関する知識が豊富だったこともあって、あっという間にゴブリナ達と仲良くなったもんね。」

 

「……箱入りだったからな……頼られるのが嬉しいんだろ。」

 

「で、おまえらはこの後、どうするんだ?」

 

「?どう……とは?」

 

「これからの方針だよ。」

 

「再起を図るにせよ、別の地に移り住むにせよ九人の命運は貴方の采配に掛かってるんだから。」

 

「知れたこと、“力”を蓄え再度挑むまで」

 

「「当てはあるのか(しら)?」」

 

「………」

 

これは……明らかにノープランね……

 

「提案なんだけどさ。おまえら全員、俺達の部下になる気はないか?」

 

気まずそうに目を反らしながら酒を飲むオーガ青年にそう思っているなか、リムルがそう提案する。

 

「は?部下に?」

 

「って言っても俺達が提供するのは衣食住のみだけどな。」

 

大鬼族(そっち)も拠点があった方が色々と都合が良いでしょ?」

 

「しかし、それだと大鬼族(おれたち)の復讐にこの町を巻き込むことに」

 

「別におまえらの為だけじゃねぇよ。」

 

「さっき話してた通り、数千の豚頭族(オーク)が全身鎧を着込んで武装蜂起して攻めいるなんて明らかな『異変』よ。大鬼族(オーガ)の里から離れているこの町だって安全とは言い切れない。」

 

「だから、こっちとしても戦力は多い方が都合が良いんだ。」

 

「勿論、貴方達が戦う時は私達も戦うし、決して見捨てたりはしないわ。」

 

第三者Side

 

「なるほど……悪いが、少し考えさせてくれ。」

 

「あぁ。よく考えてみてくれ。」

 

「大事なことだからね。」

 

リムルとユカリから話を持ち掛けられたオーガの若はそう断りを入れてから森の中へと入っていく。

 

「悪い話ではない。」

 

「そうね。あの方達の“お力”を借りれれば、豚頭族(オーク)だけじゃない……貴方が見たという仮面の上位魔人にも一矢報いることができるかもしれない……」

 

そんな若に対し、青髪のオーガ青年とユカリが保護した片腕のオーガ娘がそう声を掛ける。

 

「だが、決めるのはおまえだ。」

 

「私達は貴方と姫様に従うわ。」

 

「………」

 

若は何も言わずに森の奥へと入っていく。

 

「そういえば、おまえもオーク共が襲撃してきた時、妙な奴を見たと言っていたな。」

 

「えぇ。小さいけど私達みたいな角があったからてっきり大鬼族(どうぞく)だと思ったけど……彼奴、オーク共に蹂躙される同胞達を見て嗤っていた……何故、嗤うかを問いかければ、『『強者』が『弱者』に踏みにじられる様は愉悦だ』と言ってね……」

 

「………」

 

そんな若を見届けた後、そう尋ねるオーガ青年に対し、片腕のオーガ娘はそう答えながら、残っている左手を握りしめ怒りに震える。

 

「仮面の上位魔人は若が討ち取るだろう……だから、私は私が見た、自分を『小物妖怪』だと言っていたあの女を討ち取ってみせる……っ!!」

 

『赤と白のメッシュが入った黒髪に奇怪な格好をした少女』の顔を思い起こしながら、片腕のオーガ娘はそう誓うのだった。

 

リムルSide

 

「考えは纏まったか?」

 

「……契約は豚頭族(オーク)の首魁を討ち取るまでで良いか?」

 

「あぁ、その後は自由に決めてくれ。」

 

「町に残るなら歓迎するし、何処かに旅立つならそれなりの旅支度の支援はするわ。」

 

「そうか………」

 

翌日、俺とユカリの言葉にオーガの若はそう言いながら一息吐く。

 

大鬼族(オーガ)は元より戦闘種族だ。人に仕え、戦場を駆けることに抵抗はない……主が強者なら喜んで仕えよう。」

 

若はそう言いながら、その場で跪く。

 

「昨晩の申し出、(うけたまわ)りました。我らオーガ一同、貴方様方の配下に加わらせて頂きたく思います。」

 

【……こいつの気持ちにもう少し配慮すべきだったな……】

 

【そうね。これは自分の不甲斐なさを呑んだ、一族の頭としての決断よ。】

 

そんな若の姿を見ながら、ユカリと『念話』でそう話しながら人化する。

 

「生き残っているオーガ達をここに呼んでくれ。」

 

大鬼族(こいつら)に今、俺達がしてやれることはその決意を後悔のないものにしてあげることだけだ。

 

「全員に俺達の配下となった()をやろう。」

 

ユカリSide

 

「で、貴女達は私の下に就きたいのね?」

 

「はい。配下の話を聞いた時から貴女様に仕えたいと思っておりました……我ら三人の命を救って頂いたご恩、貴女様のお側で返させて頂きたく思います……」

 

「「よろしくお願いします!!」」

 

改めてそう尋ねる私に対し、そう言う片腕のオーガ娘を始めとした、私が保護した三人のオーガ娘達は跪きながらそう言う。

 

「そう……なら、丁度良いわ。」スッ

 

対する私はそう言いながら、三枚のヒトガタを取り出す。

 

「私にはこのヒトガタを使って、素質のある魔物を『妖怪(アヤカシ)』という新たな種に生まれ変わらせることができる。この町にいる妖怪達は全員、そうやって生まれ変わった魔物(もの)達よ。」

 

「!?もしや、私達も……っ!?」

 

「「!?」」

 

「えぇ。リムルとシズが保護した若達六人は素質がなかったんだけど、貴女達三人は私達と同じ妖怪…いや、『鬼』と成る素質があるわ。」

 

「ッ……」

 

「鬼に……」

 

「私達が……」

 

「どうする?」

 

自分達が真に『鬼』と成れる可能性に驚愕する三人に対し、私は最終確認をする。

 

「ッ……是非ともお願いします……っ!!」

 

「「お願いします……っ!!」」

 

「なら……」

 

跪きながらそう懇願する三人に対し、私はそう言いながら三枚のヒトガタを構える。

 

「誇り高き三人のオーガよ。私と式神の契約を結び、生まれ変わりなさい……『華扇(カセン)』!『勇儀(ユウギ)』!『萃香(スイカ)』!!」

 

パァァァ

 

私がそう名付けた瞬間、三人のオーガ娘達は各々でヒトガタと一つになっていく。

 

〈確認しました。個体名『カセン』は大鬼族(オーガ)から妖怪『茨木童子(イバラキドウジ)』へと進化……成功しました。〉

 

〈確認しました。個体名『ユウギ』は大鬼族(オーガ)から妖怪『星熊童子(ホシグマドウジ)』へと進化……成功しました。〉

 

〈確認しました。個体名『スイカ』は大鬼族(オーガ)から妖怪『酒呑童子(シュテンドウジ)』へと進化……成功しました。〉

 

この時の私はまだ知らなかった。

 

こうしている今も森に起きた『異変』は確実に侵蝕してきていることに……

 

第三者Side

 

「ど、どいてくれっ!!」

 

「報告がございますっ!!」

 

『ジュラの大森林』中央のシス湖周辺の湿地帯を支配領域としている二足歩行の蜥蜴(とかげ)の魔物、蜥蜴人(リザードマン)の拠点にて、複数の軽鎧を身に付けたリザードマンがそう言いながら、首領や側近達がいる玉座の間に駆け込んでくる。

 

「なんだ?騒々しい………」

 

「シス湖南方にてオークの軍勢を確認!!」

 

「我らリザードマンの支配領域への侵攻だと思われます!!」

 

「オークだと?」

 

「それで奴らの数は?」

 

リザードマン兵士達からの報告に首領がそう言って反応するなか、側近の一人である親衛隊長がそう尋ねる。

 

「「………」」

 

「?どうした?数はどれくらいだと聞いているのだが?」

 

「……オークの数はその……」

 

「……20万……」

 

「!?なにっ!?」

 

「バカな!?我らの二十倍ではないか!!間違いないのか!?」

 

「わ、私達もそう思って『魔力感知』と『熱源感知』で何度も確認したのですが……」

 

「結果はどちらも20万でした……」

 

困惑しながらそう尋ねる親衛隊長に対し、兵士達も困惑しながらもそう答える。

 

「あり得ん………そもそも豚頭族(ヤツラ)勝手気儘(かってきまま)で協調性のない連中だぞ。20万なんて途方のない数、統率などできよう筈がない……っ!!」

 

「噂ですがオークの軍勢がオーガの里を滅ぼしたとか……」

 

「なんだと……っ!?」

 

「与太話だと思っていたのですが、数にもの言わせたとするなら……或いは……」

 

兵士達からの報告に他の側近達にも困惑が拡がる。

 

「………『豚頭帝(オークロード)』……」

 

「「「!?」」」

 

「20万もの軍勢をまとめ上げているオークがいるのだとするなら、伝説の特殊個体(ユニークモンスター)の存在を疑わねばなるまい。」

 

「「「ッ……」」」

 

そんななか、そう言う首領の推測に周りのリザードマン達は息を飲みながら戦慄する。

 

「あくまで可能性の話だ……しかし、打てる手は全て打つべきだな……」

 

首領はそう言いながら玉座から腰を上げる。

 

「息子よ!我が息子はおるか!?」

 

「ここにおりますよ。親父殿……それと我輩にはゲルミュッド様から授かった『ガビル』という名があるのですが……」

 

腰を上げた後、そう呼び寄せる首領に対し、息子である戦士長、ガビルは軽く苦言を呈しながら部下を伴って現れる。

 

「呼び方などどうでもよい。それよりもそなたにやってもらいたいことがある……」

 

「……伺いましょう。」

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