転生したらスキマ妖怪だった件について   作:デスゴッド

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鎮魂と形見の唐傘

ユカリSide

 

「これはまた……酷いものね……」

 

九人のオーガ達が仲間になってから一週間程が経った頃、すっかり焼け野原になっている元大鬼族(オーガ)の里を見渡しながら、私はそう呟く。

 

「ッ……」

 

そんな私の言葉に桃色の短髪にシニヨンキャップ、ぐるぐる巻きの包帯で形作られた右腕、左手首には鎖の付いた鉄製の腕輪、胸元には薔薇(バラ)の飾りに服の前掛けには(イバラ)の模様がある美少女…妖怪『茨木童子(イバラキドウジ)』に進化したカセンは思わず下唇を噛み締める。

 

「ユカリ様。俺達の調査に同行して頂き感謝します。」

 

そんななか、リムルの名付けで『鬼人(キジン)』に進化した青髪に一本角のクールな忍者風なイケメン、『蒼影(ソウエイ)』がそう言いながら頭を下げてくる。

 

「里が健在だったならば、それ相応のもてなしも出来たのでしょうが……」

 

「気にしないで良いわ。ソウエイ。私が頼んで同行させてもらった訳だし……貴方達の死んだ同胞達の魂を安らかに眠らせるなら、『陰陽道』に精通した私がお経でも唱えてあげた方が良いでしょ?」

 

陰陽道と仏教は厳密には違うでしょうけど、この際気にしないことにしましょう。

 

「ユカリ様……」

 

「そのお心遣いだけでも元大鬼族(われら)としては救われる想いです……本当にありがとうございます。」

 

「ありがとうございます。ユカリ様。」

 

「しかし、これは少し予想外(・・・)ではあるわね……」

 

再度頭を下げる二人を横目に私はそう言いながら、改めて里を見渡す。

 

辺りには焼け落ちた家や砕け散った武具や防具、血に濡れた服の切れ端とかは目に入るが………ない(・・)………

 

「まさか、骨の一本も無いとはね……」

 

確実に過激な殺戮の形跡こそあれど、オーガ達の遺骸もオーク達の遺骸も何処にもなかった。

 

「………」

 

カセン達を助けた際、私が殺したオークの最期の言葉を思い起こす。

 

(『ソノ身ヲ……喰ワセロオオオォォォーーーッ!!』)

 

「まさか、骨の欠片も遺さず喰べてたとはね……」

 

「!?ソウエイ……もしかしたら……っ!!」

 

「あぁ……『朱菜(シュナ)』様の読みが正しかったのかもしれん……」

 

私がそう呟くなか、カセンとソウエイは神妙な面持ちでそう話をする。

 

「?二人とも、何か思い当たることでも」

 

「!?お言葉の最中、申し訳ございません。ユカリ様。至急お耳に入れたいことが……」

 

「?何かしら?」

 

「町の周辺の警備と偵察に当たらせていた分身体の一人がリザードマンの一行を目撃しました。」

 

「?リザードマン?オークではなくて?」

 

「はい。シス湖周辺にある湿地帯を縄張りとする蜥蜴人族(かれら)がここまで出向くのは異常ですのでご報告をと。」

 

「なるほど……リザードマンは何しにここへ?まさか、オークと同じく侵略目的じゃないわよね?」

 

「いえ。どうやら周辺のゴブリン村で交渉し、戦えるゴブリン達を集めているようでした。我らの町に来るのも時間の問題かと。」

 

「そう……」

 

「リザードマン達もオーク共の動きを察知して、迎撃の準備に入っているのかもしれませんね。」

 

「つきましては自分はこのことをリムル様にご報告に向かいたいのですが……」

 

「良いわ。行きなさい。今は多分、『白老(ハクロウ)』とシズにゴブタ達共々、しごかれてるでしょうし……ちょっとした息抜きにもなるでしょ。」

 

因みに『白老(ハクロウ)』というのはリムルが名付けた、オーガのお爺ちゃんの名前。

 

こちらも鬼人に進化し、元々が『(おぼろ)流』という剣技の達人で指南役をしていたということなので現在(いま)はシズ共々、ゴブタ達の戦闘訓練を任せてる。

 

「ありがとうございます。すぐに戻りますので。」

 

……フッ……

 

ソウエイはそう言いながら、『影移動』でその場から消える。

 

「それでカセン。話を戻すようだけど……」

 

「なんでしょう?ユカリ様。」

 

「さっき、私がオーク達が死んだオーガや仲間の死体を喰べてるかもしれないと言った時、ソウエイと二人で何か思い当たることがありそうなことを言ってたわね?」

 

「……はい……シュナ様と『紅丸(ベニマル)』様とで以前、『豚頭帝(オークロード)』の出現の可能性を話していたことがあるんです。」

 

ソウエイを見送った後、そう尋ねる私に対し、カセンは真剣な表情でそう説明してくれる。

 

因みに『紅丸(ベニマル)』と『朱菜(シュナ)』というのはリムルが名付けた、オーガの若と姫様の名前。

 

当然ながらこの兄妹二人もソウエイとハクロウと同様に鬼人に進化している。

 

なんなら、他の二人も鬼人に進化している。

 

「?オークロード?」

 

「数百年に一度産まれると言われる、伝説の特殊個体(ユニークモンスター)で『味方の感情すら喰べる』ので非常に高い統率力を持っているとのことです。」

 

首を傾げながらそう言う私に対し、カセンはそう説明してくれる。

 

「里を襲われた当初、オーク共は仲間の死にまるで動揺すらしてませんでしたので、もしかしたらと思いまして……」

 

「なるほど……」

 

もし、その話が本当でその豚頭帝(オークロード)が誕生したとなると色々と厄介ね……

 

「「ユカリ様ぁ~~!!」」

 

私がそう思っているなか、金髪の美女と薄茶色のロングヘアーの美少女の二人がそう言いながら駆けてくる。

 

「!『ユウギ』、『スイカ』……」

 

「何かめぼしいものでも見付かったかしら?」

 

「はい。って言ってもコレくらいしかありませんでしたが……」

 

首を傾げながらそう尋ねる私に対し、金髪のロングヘアーに黄色い星マーク入りの赤い一本角、両手足に枷を付けた体操服に下駄を履いたガタイの良い美女…妖怪『星熊童子(ホシグマドウジ)』に進化したユウギはそう言いながら一本の唐傘を見せる。

 

「!?この唐傘は……っ!!」

 

「うん。多分、『黒兵衛(クロベエ)』の妹のだと思う。」

 

「奇跡的と言ってはなんだが、コイツだけは殆んど無傷な状態で転がってたんだ。」

 

唐傘を見ながらそう言うカセンに対し、先っぽを一つに纏めた薄い茶色のロングヘアーに頭の左右からその身長に不釣り合いな長く(ねじ)れた二本角、白いノースリーブに紫のロングスカート、両手に枷を付けた小柄な美少女…妖怪『酒呑童子(シュテンドウジ)』に進化したスイカとユウギはそう説明する。

 

因みに『黒兵衛(クロベエ)』というのは例に漏れずリムルの名付けによって鬼人に進化した六人の内の一人で、現在はカイジンと共に刀鍛冶を担当している。

 

「なるほど……少なくとも、こうちゃんと形のある形見が見付かったのはクロベエにとっては救いにはなるだろうな。」

 

「!?この傘……」

 

ユウギの手にある唐傘を見ながらカセンがそう言うなか、『あること』に気付いた私はそう言いながら唐傘をジッと視る。

 

「?ユカリ様?」

 

「「?」」

 

「……視たところ、私達と同じ妖怪(アヤカシ)に成りかけているわよ。この傘……」

 

「「「………えぇーーっ!?」」」

 

次の瞬間、私がそう言うとカセン達三人はそう困惑の声を上げる。

 

その後、リムルへの報告を終えて戻ってきたソウエイとも協力して簡易ながらも亡くなったオーガ達の墓を作り、その後は墓を荒らされないよう元大鬼族(オーガ)の里を覆うように結界を張ってからその場を後にするのだった。




カセン

見た目:東方の茨木(イバラキ)華扇(カセン)

種族:妖怪『茨木童子(イバラキドウジ)

所持スキル

ユニークスキル『指導者(ミチビクモノ)』:茨木華扇の『動物を導く』程度の能力の発展型。(幻獣も含む)動植物と心を通わせ、使役できる。また、その身に幻獣も含めた動植物の“力”を宿すことも可能。

エクストラスキル『スペルカード』

スキル『弾幕』

技能(アーツ):『仙術』

詳細

ユカリが保護した三人のオーガ娘の一人。ユウギやスイカ、シオン達とは幼なじみであり、ベニマルとシュナの兄妹とは従姉妹でもある。幼い頃に事故でシュナを庇った際、右腕を失っていたが、ユカリの『式神化』を受けて妖怪『茨木童子(イバラキドウジ)』に進化してからは技能(アーツ)で実体を持たせた魔力を包帯でぐるぐる巻きにすることで事実上の『右腕』を取り戻した。所謂(いわゆる)生徒会長のような性格を持つ一方、ベニマルに幼い頃から恋心を抱いている。尚、元オーガの女性陣は全員知っている。

ユウギ

見た目:東方の星熊(ホシグマ)勇儀(ユウギ)

種族:妖怪『星熊童子(ホシグマドウジ)

所持スキル

ユニークスキル『振動者(ユラスモノ)』:星熊勇儀の『怪力乱神を持つ』程度の能力の派生型。分かりやすく言えばONE PIECEのグラグラの実。

エクストラスキル『スペルカード』

スキル『弾幕』

詳細

ユカリが保護した三人のオーガ娘の一人でカセンやベニマル達の幼なじみ。シオンやスイカに引けを取らない怪力の持ち主で武器戦闘ではなく肉弾戦を得意としているが、ハクロウに勝ったことは一度もない。シオンやスイカと同じく酒好き(しかもかなり強い)で豪快で男気ある性格だが、意外なことに料理が美味かったりする一面もある。

スイカ

見た目:東方の伊吹(イブキ)萃香(スイカ)

種族:妖怪『酒呑童子(シュテンドウジ)

所持スキル

ユニークスキル『密度者(ミツナモノ)』:伊吹萃香の『密度を操る』程度の能力。あらゆるものの密度を自在に操る。物質は密度を高めれば高熱を帯び、逆に密度を下げれば物質は霧状になる性質がある。この特性を使い彼女は霧になることが出来る。この時でも体当たりなど物理的な干渉は可能。

エクストラスキル『スペルカード』

スキル『弾幕』

詳細

ユカリが保護した三人のオーガ娘の一人。シオンやユウギに引けを取らない怪力の持ち主だが二人と違い、スキルを活かした搦め手も使える。二人と同じく酒好き(ユウギと同じくかなり強い)である。尚、見た目に依らず歳はベニマル処かベニマルの兄貴分であるヒイロと同い年である。
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