転生したらスキマ妖怪だった件について   作:デスゴッド

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飢餓者(ウエルモノ)と『黒いヒトガタ』

第三者Side

 

ゴブタとガビルが決闘していた頃、シス湖南方にて、20万もの豚頭族(オーク)の軍勢が蜥蜴人族(リザードマン)の支配領域へと向かって侵攻している。

 

「……腹……ヘッタ……」

 

ドサッ!!

 

そんななか、一体のオークが力尽きて倒れる。

 

そんなオークに対し、周りのオークが一斉に飛びかかり、(むさぼ)り尽くす。

 

「……往クゾ……モウジキ蜥蜴共ノ肉二アリツケル……」

 

その後、オーク達は侵攻を再開した。

 

リムルSide

 

「……豚頭帝(オークロード)の討伐?」

 

「私達が?」

 

「はい。」

 

トレイニーさんからの突然の依頼に思わずそう聞き返す俺とユカリに対し、トレイニーさんは笑顔でそう言う。

 

いやいや。いきなり何言ってるの。この樹妖精(ヒト)

 

「いきなり現れて随分身勝手な物言いじゃないか。樹妖精(ドライアド)のトレイニーとやら。」

 

俺がそう思っているなか、ベニマルがそう言いながら前に出る。

 

「なぜ、この町に来た?ゴブリンよりも強力な種族は他にいるだろう?」

 

「そうですわね。貴方方、元大鬼族(オーガ)の里が未だに健在でしたら、そちらにお邪魔したかもしれませんわね。」

 

「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」

 

「まぁ、そうでなくとも、この方達の存在は無視できないのですけどね。」

 

ベニマル達が動揺の表情を浮かべるなか、トレイニーさんは俺とユカリの顔を見ながらそう言う。

 

樹人族(トレント)の集落が豚頭帝(オークロード)に目を付けられれば、樹妖精(ドライアド)だけでは対抗できませんの。ですからこうして強者に助力をお願いしにきたのです。」

 

豚頭帝(オークロード)の存在自体、俺達のなかではまだ可能性の段階だったんですけど……」

 

「『森の管理者』たる樹妖精(ドライアド)はこの森で起きたことは大抵把握しております。」

 

トレイニーさんはそう言いながら、テーブルの皿に盛られたポテトチップを一枚手に取る。

 

「いますよ?豚頭帝(オークロード)。」

 

「「「!?」」」

 

「(パリッ)まぁ、美味しい♪」

 

樹妖精(ドライアド)様がお認めに……っ!?」

 

「ならば、本当に誕生してしまったのか……っ!?」

 

「悪いけどトレイニー。返事は少しだけ待っててくれないかしら?」

 

トレイニーさんの言葉にリグルドやゴブリン・ロード達が騒然とするなか、ユカリがそう言って返事の保留を求める。

 

「こう見えても俺達二人はここの主なんでな。鬼人達の援護はするが、率先して(やぶ)をつつくつもりはないんだ。」

 

「もう少し情報をきちんと整理してから返答させて頂戴。」

 

「……承知致しました。」

 

そうしてトレイニーさんもその後の会議に参加することになった。

 

「じゃあ、改めて豚頭族(オーク)の目的について、何か意見がある奴はいるか?」

 

「……豚頭帝(オークロード)の存在が確定したなら一つ、心当たりが……ソウエイ。大鬼族(わたくしたち)の里の跡地は調査してきましたか?」

 

「はい。シュナ様。カセン達やユカリ様にも同行してもらいました。」

 

「「「ッ……」」」

 

シュナからの問いにソウエイがそう答えるなか、カセンとスイカ、ユウギの三人は険しい表情を浮かべる。

 

「その様子ですとやはり……なかった(・・・・)のですね?」

 

「はい。同胞達のものも……」

 

「オーク達のものも何処にもありませんでした。」

 

「?何がだ?」

 

「死体よ。」

 

「死体……っ!?」

 

首を傾げながらそう尋ねる俺にそう答えるユカリの言葉にそう言うカイジンさんを始めとする周囲のゴブリン達はざわめきだす。

 

「……なるほどな……20万もの大軍、どうやって食糧を(まかな)っているのかと思っていたが……」

 

豚頭族(ヤツラ)には兵站(へいたん)の概念などありませんからな……」

 

「おいおい……ちょっと待て。それってまさか…死体を……っ!?」

 

「ユニークスキル『飢餓者(ウエルモノ)』。」

 

そんななか、そう言うトレイニーさんに全員の注目が集まる。

 

「『食べた相手の性質を自分のものにする』豚頭帝(オークロード)の固有スキル………リムル様の『補食者』と似たスキルですわね。」

 

マジか……

 

「もっとも、リムル様と違って一度で確実な奪取とはなりませんが、食欲に任せ数多く食せばその確率は跳ね上がるというもの……」

 

「確かに……スキルの影響下に置いた20万もの同胞達に一斉に多くの魔物を喰わせれば、ほぼ確実に“力”が手に入るわね。」

 

ユカリSide

 

「それに今回の豚頭帝(オークロード)には更なる“力”が与えられたようです……」

 

トレイニーはそう言いながら、掌の上に木の葉であるものを作り出す。

 

「!?これはユカリ様の……っ!?」

 

豚頭帝(オークロード)が取り込んでいたものを木の葉で模したものです。」

 

「ヒトガタ……ね……」

 

「もっとも、ユカリ様のものとは違い元は『黒いヒトガタ』ですが、豚頭帝(オークロード)はこのヒトガタを取り込むことでその妖気(オーラ)が更に強大になり、狂暴性が増しました。」

 

「……なるほど……」

 

「ユカリ。何かわかるか?」

 

「現物を見ないと何とも言えないけど、十中八九“力”を増幅させる何らかの術式がそのヒトガタに組み込まれてたんでしょうね。」

 

そして、そんなヒトガタを豚頭帝(オークロード)に与え、更には今回の『異変』を引き起こすよう誘導した真犯人がいるとみて良さそうね。

 

「ということは豚頭族(オーク)の目的は大鬼族(オーガ)蜥蜴人族(リザードマン)といった森の上位種を滅ぼすことじゃなく、その“力”を奪うことか……」

 

「だとしたら、どっちみちここも安全とは言えないわね。」

 

「だな。嵐牙狼族(テンペストウルフ)に鬼人に妖怪(アヤカシ)……後はホブゴブリンもか?豚頭族(オーク)が欲しがりそうな餌だらけだ……」

 

「リムル……一番食いつきそうな()の存在を忘れてないかしら?」

 

「んー?」

 

「いるでしょ。ここに。色んなスキルと耐性を持った最強スライムが……」

 

「確かに……」

 

「いやいや。それを言ったらユカリだってそうだろ。」

 

「まぁ、否定はしないわね。」

 

「……リムル様もユカリ様も他人事ではなくなったのでは?」

 

そんななか、トレイニーがそう話しかけてくる。

 

「それに今回の豚頭帝(オークロード)誕生のきっかけにはある魔人と妖怪(アヤカシ)の存在も確認しております。」

 

「「「!!?」」」

 

「!?妖怪ですって……っ!!?」

 

私達以外にもこの世界にいたというの……っ!?

 

「貴方様方は放置できない相手でしょうけど……なにせその者達はいずれかの魔王の手の者ですから。」

 

「「ッ!!」」

 

続けて口にしたトレイニーの言葉にリムルとシズも反応する。

 

「……シズさん。レオンはこんなことをする奴だったか?」

 

「ううん……違う……とは思うけど……」

 

『シズがレオン様から離れてからもう数百年は経ってるから……』

 

真剣な表情でそう尋ねるリムルに対し、シズと彼女の中にいるツカサはそう答える。

 

リムルSide

 

「それに“貸し1”もありますしね……ねぇ。ユカリ様?」

 

「?貸し1?」

 

「………」

 

「フフ……この間のツケモノも美味しかったですよ。」

 

「ハッ!?」

 

良い笑顔でそう言うトレイニーさんの言葉に俺はハッとなりながらユカリの方を見る。

 

「………」

 

対するユカリは明らかに目を反らしている。

 

こいつ……野菜の種を何処で調達してきているのかと思えば……トレイニーさんから貸し1にする条件で手に入れてやがったな!?

 

【だってリリナの漬け物、食べたかったんだもん。】

 

【そういう問題じゃねぇっ!!】

 

俺に内緒でなに勝手なことしてんだ!?

 

「フフ……改めて、リムル=テンペスト様、ユカリ=テンペスト様。貴方様方に豚頭帝(オークロード)の討伐を依頼したいのです。」

 

俺がそう思っているなか、トレイニーさんはそう俺達二人に言ってくる。

 

「暴風竜の加護を受け、牙狼族を下し、鬼人を庇護する貴方様方なら、豚頭帝(オークロード)に遅れを取ることはないでしょう。」

 

【……腹括りましょうか?リムル。】

 

【おまえな……】

 

「当然ですっ!!リムル様とユカリ様なら、豚頭帝(オークロード)なんか目じゃないですっ!!」

 

「まぁっ!やはりそうですよねっ!!」

 

トレイニーさんに返答する前にシオンが勝手に了承してしまう。

 

「あはは……」

 

そんなシオンにシズさんは苦笑いを浮かべる。

 

まったく、この()は……

 

「……わかったよ……」

 

俺はそう言いながら元のスライムの姿に戻る。

 

豚頭帝(オークロード)の件は俺とユカリが引き受ける。」

 

「皆もそのつもりでいて頂戴。」

 

「「「はいっ!!」」」

 

そうして俺とユカリはトレイニーさんからの依頼を受けることになった。

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