転生したらスキマ妖怪だった件について   作:デスゴッド

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蜥蜴人族(リザードマン)との交渉

ユカリSide

 

「さて、20万ものオークを相手取るに当たって、蜥蜴人族(リザードマン)との同盟は前向きに検討したいところではあるが……」

 

「使者がガビル(アレ)なのよねぇ……」

 

「あはは……」

 

私の言葉にシズは苦笑いを浮かべるなか、昼間の面子は頭が痛いと言いたげな表情を浮かべる。

 

「……蜥蜴人族(リザードマン)の話が通じる奴と交渉したいところだな……」

 

「……リムル様、ユカリ様。自分に任せて頂けないでしょうか?蜥蜴人族(リザードマン)の首領と直接交渉をさせて下さい。」

 

……あら?

 

「できるのか?ソウエイ。」

 

「はい。」

 

「なら」

 

「ちょっと待って。」

 

「?ユカリ?」

 

「どうかしたの?」

 

話の途中で待ったを掛けた私にリムルとシズは首を傾げながらそう尋ね、他の皆も首を傾げる。

 

「ソウエイ。この駒なんだけど……」

 

「あぁ、ゴブリンを取り込んだガビルの隊ですね。

未だに気絶している奴を囲んで沈んでおりました。」

 

「……そう……」

 

「何か気になることでもあるのか?ユカリ。」

 

「……考え過ぎかもしれないけど、豚頭族(オーク)に対抗するに当たって、蜥蜴人族(リザードマン)の配置は多分、こんな感じになると思うんだけど……」

 

首を傾げながらそう尋ねるリムルにそう答えながら駒を動かしていく。

 

「……これ、ガビルの隊が急襲すれば、一気に落ちる布陣に見えないかしら?」

 

「「「!?」」」

 

私の指摘にシズやベニマル達は地図を食い入るように見る。

 

【ユカリ様。緊急のご報告がございます。】

 

そんななか、ガビルの隊を見張らせたオオカミ霊の一体から『思念伝達』で連絡が入ってくる。

 

【なにかしら?】

 

【先程、目を覚ましたガビルに『ラプラス』と名乗る仮面の道化が接触してきました。なんでもガビルに名付けをしたゲルミュッドの使者だとか。】

 

「……ゲルミュッド……」

 

「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」

 

「?ユカリ。ゲルミュッドがどうかしたのか?」

 

オオカミ霊からの報告に思わずそう呟く私の言葉にベニマルやカセン達が反応するなか、リムルがそう尋ねてくる。

 

「そいつの使者だと名乗るラプラスっていう仮面の道化が今、ガビルと接触しているという報告がオオカミ霊から来たわ。ガビルもまたゲルミュッドから名付けを受けてたみたいね。」

 

「!?仮面の道化……」

 

「リグル。おまえの兄に名付けをしたのはゲルミュッドだって以前(まえ)に言ってたよな?」

 

「はい。」

 

『仮面の道化』という単語にベニマルが更に反応するなか、そう尋ねるリムルに対し、リグルはそう答える。

 

「ユカリ様。私達もゲルミュッドの名には聞き覚えがあります。」

 

「確か元大鬼族(わたしら)の里に『名をやろう』とか言ってやって来た魔人がそんな名前だったよな?」

 

「うん。此処にいる九人含め全員がつっぱねたら、『こんな里、滅んじまえっ!!』って悪態吐いて帰ってったけど……」

 

そんなリグルに続いてカセンとユウギ、スイカからもそう報告が入ってくる。

 

「その魔人の特徴は?」

 

「鳥みたいな仮面を被っていました……所謂(いわゆる)ペスト仮面というやつです。」

 

「ペスト仮面……亡き兄に名付けをしたゲルミュッド様と同一人物かもしれません。」

 

カセンから大鬼族(オーガ)の里を訪れた魔人の特徴を聞いたリグルが真剣な表情でそう言う。

 

これはもうこの『異変』を起こした犯人の一人がゲルミュッドで間違いないわね。

 

「ユカリとリグル、カセン達の話から察するに色んな魔物に名付けしまくっていたゲルミュッドが豚頭帝(オークロード)に進化させて、今回の侵攻を起こさせたとみて間違いないなさそうだな。」

 

「ッ……彼奴が……っ!!」

 

「ユカリ様。もう一つお伝えしたいことが……」

 

リムルの推測にベニマルが憤りを露にするなか、カセンがそう言ってくる。

 

「何かしら?」

 

「……もしかしたら私、会っているかもしれません。先程、トレイニー様が仰有(おっしゃ)っていた豚頭帝(オークロード)の誕生に関わりがある妖怪(アヤカシ)に……」

 

「!?なんですって……っ!?」

 

「「「!?」」」

 

カセンのその言葉に私を初め周りのほぼ全員がカセンを注目する。

 

豚頭族(オーク)から襲撃を受けた際、私、見たんです。オークに蹂躙される同胞達を見て嗤う、私達と同じように“小さな角を持ち、妙な格好をした少女”を……」

 

「小さな角を持った、妙な格好の少女……?」

 

「そいつの具体的な特徴は?」

 

「赤と白のメッシュが入った黒髪に矢印が連なったような装飾があるワンピースを着ていました。後、自分のことは『お尋ね者な小物妖怪』だと……」

 

「……『お尋ね者な小物妖怪』……ね……」

 

真剣な表情でそう答えるカセンの言葉を、私も真剣な表情でそう反芻する。

 

もしかして、『彼女』がこの世界に……?

 

「そいつが豚頭帝(オークロード)に例の『黒いヒトガタ』を与えたとみて良さそうだな。」

 

「リムル。蜥蜴人族(リザードマン)の首領との交渉には私も行くわ。たった今、掴んだ情報を向こうにも報せたいし、主の片割れである私も直接交渉に行った方が話をスムーズに進めやすいと思う。」

 

「……わかった。ユカリ、ソウエイ。蜥蜴人族(リザードマン)への使者を頼む。豚頭族(オーク)との決戦は蜥蜴人族(リザードマン)の支配領域である湿地帯になるだろうから、勝つには蜥蜴人族(リザードマン)との共同戦線が絶対条件だ……頼んだぞっ!!」

 

「えぇ。任せて頂戴。」

 

「では、参りましょう。ユカリ様。」

 

「えぇ。」

 

クパァ

 

ソウエイにそう言いながら、私は蜥蜴人族(リザードマン)の棲み家である鍾乳洞の入り口へと続くスキマを開く。

 

実は昼間のうちにオオカミ霊を使っておおよその位置は把握しておいたのよね。

 

第三者Side

 

「首領……首領っ!!」

 

「なんだ?騒々しい……」

 

「侵入者ですっ!!鍾乳洞の入り口付近で出現した奇怪な空間の裂け目から現れた者共が首領に会わせろと……っ!!」

 

蜥蜴人族(リザードマン)の本拠地である鍾乳洞、玉座の間にて、一人のリザードマン兵士がそう報告しながら駆け込んでくる。

 

「……会おう。連れて参れ。」

 

「はっ!?」

 

「首領。危険では?」

 

「そなたも感じるか。この妖気(オーラ)、只者ではない……っ!!」

 

親衛隊長にそう言いながら、首領は玉座の間の出入口を見据える。

 

蜥蜴人族(われら)の精鋭100名を以てしても勝てぬやもしれん……っ!!)

 

首領がそう思っているなか、出入口から束ねた毛先にリボンを結んだ金髪のロングヘアーに同じくリボンの付いたZUN帽、フリルの付いた紫のドレスに日傘を持った少女と蒼い髪に白い一本角、褐色の肌に忍者のような装いをした青年の二人が入ってくる。

 

「失礼。今は立て込んでおりましてな。大したもてなしもできませぬ。」

 

「いえ。こちらこそ突然の訪問、失礼致します。蜥蜴人族(リザードマン)の首領である御方(おんかた)とこうして面会する機会を頂き感謝申し上げますわ。」

 

丁寧にそう挨拶する首領に対し、金髪の少女…ユカリもまた人間の貴族の令嬢のように振る舞いながらそう挨拶を返す。

 

(一見するとただの人間の小娘……だが、先程から感じる、背筋が凍るような異様な気配はなんだ……?)

 

「私達は貴方方蜥蜴人族(リザードマン)と同盟を結びたく、使者として馳せ参じました。」

 

まるで未知の存在と対峙したかのような感覚に首領が内心首を傾げているなか、ユカリは堂々とした態度でそう要件を切り出す。

 

「はて、そちらの戦力が如何様か、儂は知らぬのだが……?」

 

「ホブゴブリンと進化を果たした牙狼族を初め多種多様な種族が手を取り合い、町を作って生活しておりますわ。」

 

そのユカリの説明に周りのリザードマン達がざわめきだす。

 

「魔物の町……風の噂で聞いたことはあるが、本当に存在するのか……?」

 

「僭越ながら、私はその町の主の片割れをさせて頂いております。」

 

「こちらにおわすユカリ様とその相方にして俺の直属の主であるリムル様は樹妖精(ドライアド)から直に要請を受け、『豚頭帝(オークロード)の討伐』を確約されている。」

 

「!?森の管理者が直接……!?それに豚頭帝(オークロード)だと……っ!!?」

 

(やはり、そうであったか……っ!!)

 

「ふんっ!ユカリ?リムル?どちらも聞いたこともない名だ!!」

 

ユカリの隣にいる蒼い髪に白い一本角を持つ青年…ソウエイの言葉に首領が動揺しながらも冷静に理解を示すなか、一人のリザードマンがそう言って食ってかかる。

 

「どうせその小娘もそいつも蜥蜴人族(われら)に助けを求めて来たのだろう?素直に『助けてくれ』と言えばいいものを」

 

()めよ。」

 

「は……?」

 

「その口を閉じよと言っているのだ。」

 

「首領!そのような態度では嘗められっ!?」

 

その瞬間、リザードマンの首に非常に見えにくい『粘鋼糸(いと)』が巻きつかれ、僅かに血が流れる。

 

「なっ!?糸……っ!!?」

 

「ソウエイ。勝手な真似は慎みなさい。此処は対等な立場での交渉の場。殺し合いの場ではないわ。」

 

「………」

 

ユカリが鋭い目付きでそう言うと、リザードマンの首に巻きつかれていた『粘鋼糸(いと)』が外れ、ソウエイは深く一礼してから一歩下がる。

 

「………」ヒュッ

 

「!?」ピトッ

 

直後、ユカリは二枚のヒトガタを投げ、リザードマンの首の傷に絆創膏のように貼り付かせる。

 

「我、ユカリ=テンペストの名において、かの者を癒せ。」

 

パァァァ……

 

「!?傷が……っ!!?」

 

ユカリがそう詠唱した次の瞬間、二枚のヒトガタは光を放ちながら消失し、リザードマンの首の傷が跡形もなく消え去る。

 

「配下の無礼、大変申し訳ございません。」

 

「いや。今のはどちらかというとこちらに非がある。同胞が負った傷を癒してくれて感謝する。」

 

リザードマンの首の傷を治療した後、頭を下げながら謝罪するユカリに対し、首領もそう言いながら頭を下げる。

 

貴女(きじょ)が人間ではないことはその異様な気配からわかっている。が、ただの魔人でもないな。失礼ながら貴女(きじょ)が何者なのか、お教え願いたい。」

 

「最近、確認された新たなる魔物…妖怪(アヤカシ)の一種、『スキマ妖怪』ですわ。」

 

「スキマ妖怪……確かに聞かぬ名だが、『ジュラの大森林』に住まう魔物で森の管理者を騙る愚か者はいない。それと貴女(きじょ)の後ろに控えているその者……儂の知るそれとは内包する妖気(オーラ)が大きく異なるが、南西で暮らす大鬼族(オーガ)であろう?」

 

「……今は少し異なります。この者の名は『蒼影(ソウエイ)』。彼を含む六人のオーガは私の相方であるリムルから名付けを受け、鬼人(キジン)に進化しております。」

 

「更に六人(おれたち)とは別に三人のオーガはユカリ様から名付けと『式神化』という特殊なスキルを受けたことで妖怪(アヤカシ)としての『(オニ)』に進化している。」

 

「!?鬼人……それに新たな種としての『鬼』だと……っ!!?」

 

大鬼族(オーガ)から稀に生まれるという上位種族……それが六人も!?妖怪(アヤカシ)としての『鬼』の“力”は未知ではあるが、大鬼族(オーガ)から進化したならば、少なくとも鬼人と同等とみて良いだろう……)

 

ユカリとソウエイからの説明を聞いて、首領は動揺しながらも冷静に情報を整理する。

 

(ならば、大鬼族(このものたち)に名を与えた、目の前にいるユカリというスキマ妖怪と相方のリムルはそれ以上の存在……っ!!)

 

「あぁ、それと首領にご報告しておきたいことがございますわ。貴方の息子、ガビル殿について。」

 

「?息子がどうかしましたかな?」

 

「どうやら彼は周りの部下達に煽てられ、更には名付け親であるゲルミュッドからの使者であるラプラスと名乗る仮面の道化に唆されて、貴方から首領の座を世襲し自らが豚頭帝(オークロード)を討ち取ろうと動きだしたようです。」

 

「……それは(まこと)か?ユカリ嬢……」

 

「彼の隊に見張りとして着けさせて頂いた、私の配下からの確かな情報ですわ。」

 

「そうか……貴重な情報提供に感謝する。が、ここから先は蜥蜴人族(こちら)の、いや、儂とあやつ、親子の問題。口出しは無用だ。」

 

「……承知しておりますわ。」

 

「ユカリ嬢。一つだけ条件を出しても()いかな?」

 

「……伺いましょう。」

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