転生したらスキマ妖怪だった件について   作:デスゴッド

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狂いゆく歯車

ユカリSide

 

【リムル。今、大丈夫かしら?】

 

【おぉっ!ユカリ、ナイス!!】

 

蜥蜴人族(リザードマン)の首領から呈示された同盟締結の条件を聞いた後、『思念伝達』で連絡を取る私にリムルから『助かった』とでも言いたげな返答が届く。

 

ナイス?一体リムルの方で何が起きてるのかしら?

 

蜥蜴人族(リザードマン)の首領と会えたわ。

同盟の話、受けても良いって言ってくれてる。】

 

【おぉっ!!それはよかった。

首領はどんな奴だった?】

 

【慎重()つ冷静な判断力がある印象ね。私達に対する対応も丁寧で素敵なおじ様だったわ。】

 

【そうか。ガビルとは違うみたいだな。】

 

【ただ同盟締結の条件として、リムルに一度会わせてほしいって言われたけど、どうする?】

 

【いいよ。どっちみち湿地帯で決戦予定だし、会ってもいない人物をいきなり信じろっていうのも無理な話だ。】

 

【確かに……会談はいつ頃にする?】

 

【うーん、そうだなぁ……準備や移動に時間がかかるだろうから、一週間後で良いんじゃないか?】

 

【わかったわ。】

 

「リムルと連絡が取れましたわ。一週間後、私達は準備を整えこちらに合流します。私の相方であるリムルとはその時にお目通しして頂くということでよろしいですか?」

 

「わかった。それで良い……こちらの要望を聞いて頂き感謝する。」

 

「先もお伝えしたように、豚頭帝(オークロード)は既にここにいるソウエイの同胞であるオーガ達を始め数多の魔物を喰らい、その“力”を獲ています。それは豚頭帝(オークロード)のユニークスキル『飢餓者(ウエルモノ)』の影響下にある配下のオーク達も同様です。」

 

「故に蜥蜴人族(こちら)から(いくさ)を仕掛けぬように。」

 

改めて頭を下げる首領に対し、私とソウエイはそう念押しする。

 

湿地帯を自由に動き回って喰らいにくるオークの群れなんて軽いモンスターパニック映画だわ。

 

蜥蜴人族(リザードマン)首領Side

 

「……わかっている。」

 

「それでは、失礼致しますわ。」

 

クパァ

 

交渉が一先ず終わり、ユカリ嬢がそう言った直後、ユカリ嬢の近くに奥から”無数の目が覗き込む奇怪な裂け目”が出現する。

 

これがユカリ嬢のチカラ(スキル)か……

 

「一週間後、リムルも含めお互いに五体満足で会えることを祈りますわ。」

 

ユカリ嬢はそう言いながらソウエイ殿と共にその裂け目に入り、その場から消える。

 

ドッ!!

 

「ふぅ……」

 

「首領……」

 

直後、思わず脱力した儂はそのまま玉座に座る。

 

「どうにか光明が見えたようだ………大至急皆を集めよ……」

 

「ハッ!!」

 

儂から指示を受けた親衛隊長(わがむすめ)や側近達はすぐさま洞窟内にいる同胞達を集めてくれる。

 

「よいか、皆の者!!オーク軍は既にこの地下大洞窟のすぐ側まで迫ってきている!!」

 

儂の言葉に皆に緊張が走る。

 

「だが、恐れることはない。一週間後、樹妖精(ドライアド)の要請を受けた強力な援軍が見込める!それまで我らは籠城し、戦力を温存するのだ!!」

 

対する儂は冷静に言葉を紡ぐ。

 

「地の利は我らにある!!この天然の迷路を利用し、オーク一体に対し、必ず複数人で当たれ!!目的はあくまでも防衛だ!!間違っても攻勢に打って出ようなどと思うな。戦死すれば、死体はそのまま豚頭族(ヤツラ)の餌になると思え!それが豚頭帝(オークロード)を相手に戦うということだ!!」

 

豚頭族(やつら)に手足の一本や二本、尻尾ですら喰われればその地の利すら失う。それだけはなんとしても避けなければ。

 

「援軍と合流した(のち)、反撃に転ずる!それまで堪えるのだ………よいか!誰一人、死ぬことは許さん!!」

 

第三者Side

 

ギィンッ!ガキィィンッ!!

 

「今だっ!!」

 

「トドメをっ!!」

 

「おりゃあああっ!!」

 

ズシャァァァンッ!!ドサッ!!

 

ユカリとソウエイとの会合から四日後、鍾乳洞内にて、三人のリザードマン兵士が一体のオーク兵士を討ち取る。

 

「はぁ……はぁ……なんて強さだ……こいつ、本当にオークか……?」

 

「まるでオーガと戦っている気分だ。」

 

「四日前に来た同盟相手の話では豚頭帝(オークロード)と配下のオーク共は喰らった相手の能力(チカラ)を獲るらしい。」

 

「じゃあ、豚頭族(こいつら)は南西のオーガ共を喰らってその能力(チカラ)を手に入れてきたってことか。」

 

「案外、おまえが今言った『オーガと戦っている』というのは間違いじゃないかもな。」

 

「これが豚頭帝(オークロード)能力(チカラ)か。こんなのが20万もいるとかゾッとする……」

 

「果たして後三日、護りきれるかどうか……」

 

ザッ!!

 

「護るだけでは疲弊するだけだ。」

 

「!?貴方様は……っ!?」

 

「「!?」」

 

 

 

 

 

玉座の間・・・

 

「……親父殿。」

 

「おぉ、戻ってきたか。ガビルよ。ゴブリン達からの協力は取り付けられたか?」

 

「ハッ。総勢7000匹のゴブリン達を待機させております。」

 

「そうか。よくやった。」

 

「……しかし、豚頭族(オーク)相手に籠城とはどういうつもりです?とても誇り高い蜥蜴人族(リザードマン)の戦い方とは思えませぬが……」

 

帰還したガビルは疑念を抱いた瞳で見ながら、首領(ちちおや)にそう問いかける。

 

「おまえがいない間に同盟の申し出があったのだ。後三日後に合流する。今はその時まで戦力を温存し、防衛に徹するのが最善だ。」

 

「………」

 

「それに同盟相手からの情報では豚頭帝(オークロード)と配下のオーク達は喰らった相手の能力(チカラ)を獲るという……豚頭族(やつら)蜥蜴人族(われら)の肉体の一部が喰われれば、それだけで蜥蜴人族(われら)の強みが奪われてしまう……それはなんとしても避けねばならん。」

 

「……老いたな。親父殿。」

 

「なに?」

 

「天然の洞窟を利用し、大軍と戦うのは良い策かもしれぬ。だが、それでは数多ある通路に戦士を分散させ過ぎて、戦力の集中による迎撃ができぬ。」

 

ガビルがそう言いながら合図を出した瞬間、彼の部下である若いリザードマン兵士達が玉座の間に押し入り、首領と親衛隊長、側近達を取り囲む。

 

「なっ……ガビル殿!?」

 

「やはりか……ガビル。愚かな息子よ。貴様が唆されているというのは既に同盟相手から聞いていた。嘘か真かはハッキリしなかったが、今の貴様と後ろから出てきたバカ共を見てよく理解したわ……ゲルミュッドやラプラスという怪しげな魔人共に踊らされおって……」

 

「!?我輩が唆されているとですとっ!!?」

 

「その通りではないか。確かに今の策では戦力の集中による迎撃はできぬ。が、戦力を集中させ、逃げられる確率を減らして尻尾一つ喰われれば意味が意味がない。そうなれば、豚頭族(やつら)蜥蜴人族(われら)能力(チカラ)を奪われ、蜥蜴人族(われら)は湿地帯を自由に動き回る20万の軍勢を相手することになるからな。」スッ

 

首領はそう言いながら手にしていた三ツ又の槍を差し出す。

 

「餞別だ。これを持って、後ろにいるバカ共と共に豚頭帝(オークロード)軍と戦ってみるといい……己の愚かさを思い知ることになるだろうがな……」

 

「!?これは親父殿の……っ!!」

 

ガビルがその槍…魔槍『水渦槍(ボルテクススピア)』を手にした瞬間、水渦槍から強大な“力”が流れ込んでいく。

 

「ほぅ……曲がりなりにも儂よりも強く、頭さえ良ければ間違いなく次期首領になれる戦士(おとこ)だな……水渦槍が認めよった……」

 

「水渦槍……我輩を新たな『主』と認めてくれるか……っ!!」

 

「ガビル様!!各部族長の掌握、完了したぜっ!!やっぱり若い連中の殆んどは今回の作戦に疑問を持ってたみたいだっ!!」

 

「うむっ!親父殿……水渦槍、有り難く頂戴する。我輩の決断が蛮勇かどうか、確りと見定めて下さいませ……行くぞっ!おまえ達!!我輩達が蜥蜴人族(リザードマン)の『真の戦い方』を見せつけてやろうぞっ!!」

 

「「「「「おおおおおおおおおおおっ!!ガビルッ!!ガビルッ!!」」」」」

 

ガビルはそう言いながら、仲間達と共に玉座の間を出ていく。

 

「……父上……」

 

「……ユカリ嬢……バカ息子達のこと、どうかよろしくお願いします……」

 

ガビル達が去っていった後、首領の娘でガビルの妹である親衛隊長が不安げにそう言うなか、首領はそう祈りを捧げるのだった。

 

ユカリSide

 

「えっと……どうかな?ユカリ、シズさん。」

 

「あら、良いんじゃないかしら。リムル。」

 

「うん。似合ってるよ。リムルさん。」

 

蜥蜴人族(リザードマン)の首領との直接交渉から四日後、シュナとヤマメが作った蒼い衣服に身を包んでからそう尋ねるリムルに対し、私とシズはそう言う。

 

「そ、そうかな?……へへ……」

 

「フフ……ユカリ様もシズさんもよく似合っておりますよ。」

 

対するリムルが若干照れくさそうにしながらそう言うなか、シュナは私達二人の格好を見ながら笑顔でそう言う。

 

因みに私は今、ZUN帽はそのままだが白いフリルドレスに紫の道士風前掛けのある姿でシズも初めて町に来た時の冒険者服と変わらないデザインではあるが、リムルと私と同じく地獄蛾(ヘルモス)の糸とヤマメの糸を組み合わせて編み込まれたものなので防御力はこちらの方が断然高い。

 

「ユカリのその格好は俺もよく知る格好だよな。」

 

「紫のドレスも良いけど、八雲紫の戦闘服と言えば、やっぱりこれだからね。」

 

因みに湿地帯の決戦への出陣メンバーは私とリムル、シズに加え、ベニマルとハクロウ、シオンとソウエイ、カセンとスイカ、ユウギとラン、ランガ、そして、ゴブタ率いる狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)100組。

 

元オーガ組とラン以外の妖怪(アヤカシ)達には防衛のため、街に残ってもらうことにした。

 

高い実力もそうだけど、指揮能力もあるミズチがいれば大丈夫でしょうし、いざとなればリグルドと上手く協力して樹人族(トレント)の集落に住民達を避難させられるでしょう。

 

私の『八雲結界』も健在だしね。

 

【ユカリ様。緊急事態です。】

 

そんななか、ガビル達の見張りに就かせたオオカミ霊から連絡が入ってくる。

 

【なにかしら?】

 

【ユカリ様が危惧なされた通りに謀反を起こしたガビル隊が首領や親衛隊長を始めとした古参のリザードマン達を幽閉し、若い兵士達を取り込んだ上で豚頭帝(オークロード)軍と戦闘を開始しました。】

 

「ッ……あのバカが……っ!!」

 

「ユカリ?」

 

「どうかしたの?」

 

オオカミ霊からの報告に思わず舌打ちする私に対し、リムルとシズは首を傾げながらそう尋ねてくる。

 

「ガビル達を見張らせていたオオカミ霊から連絡がきたわ。あのバカ……やっぱり謀反(バカ)起こしたみたい……」

 

「やっぱりか……」

 

「あはは……」

 

「もう後三日かけて移動なんて悠長なこと言ってられないわ。裏ワザ(・・・)を使うわよ。」

 

クパァ

 

リムルが肩を落とし、シズが苦笑いを浮かべているなか、私はそう言いながら巨大なスキマを生み出した。

 

第三者Side

 

「豚共を恐れることはない!湿地帯は我らが領域!素早い動きで撹乱するのだ!!ぬかるみに足を取られるノロマに遅れを取ることはない!!!」

 

その頃、シス湖湿地帯では謀反を起こしたガビルの指揮で攻勢に打って出たリザードマン達が素早い動きと連携でオーク達を確実に仕留めていく。

 

「俺達の攻撃が効いてるぞっ!!」

 

「やっぱりガビル様が正しかった!!」

 

「然り!!」

 

「よしっ!一旦退避!!」

 

如何に湿地帯ではぬかるみを気にすることなく素早く動ける蜥蜴人族(じぶんたち)が有利とはいえ、頭数は豚頭族(オーク)の方が圧倒的に上。

 

それがわかっているガビルは兵達に無理はさせず、一旦退かせる。

 

(我らが翻弄し、ゴブリン達に仕留めさせるつもりだったが……その必要はなさそうだ……)

 

「う、うわあああああっ!?」

 

「!?」

 

ガビルがそう思っているなか、戦場の一角でどよめきが起きる。

 

なんと先程、蜥蜴人族(じぶんたち)が仕留めた仲間の遺体に他のオーク達が群がり(むさぼ)っていたのだ。

 

「なっ……」

 

ガビル(かれ)は知らなかった。豚頭帝(オークロード)危険性(恐ろしさ)を。

 

首領(ちち)は知っていた。豚頭帝(オークロード)危険性(恐ろしさ)を。

 

その差が今、蜥蜴人族(かれら)に牙を剥く―――

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