転生したらスキマ妖怪だった件について   作:デスゴッド

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全てを喰らう者

ユカリSide

 

「……見つけたわ。豚頭帝(オークロード)よ……」

 

ベニマルやシズ達によってオークの数が減っていくなか、私は戦場のど真ん中にいる、二体のオークを引き連れた他よりも体躯も妖気(オーラ)も圧倒的に大きいオークを見付ける。

 

「今、ベニマル達にも連絡した。」

 

リムルがそう言うなか、ベニマルとハクロウ、シオンとカセン、ユウギとスイカの六人が豚頭帝(オークロード)の前に集結する。

 

「……腹が減っタ……なんでもイイ。喰いたイィ……ッ!!」

 

豚頭帝(オークロード)はその身体から溢れんばかりの赤黒い妖気(オーラ)を発しながら、目を赤く輝かせながらそう言う。

 

視たところ、『飢餓者(ウエルモノ)』の影響だけではないわね。何か強い思念を感じる……例の『黒いヒトガタ』の影響かしら……?

 

「……豚頭帝(オークロード)……今、引導を渡してやる……っ!!」

 

私がそう思いながら観察しているなか、リムルはシズから託された『抗魔の仮面』を被りながらそう言う。

 

私はさっき結構暴れさせてもらったし、豚頭帝(オークロード)の相手は相棒(リムル)に任せるとしましょうか。

 

キィィィィ……ッ!!

 

「……ん?」

 

そんななか、こっちに向かって飛行してくる影の存在に気付く。

 

「ッ!?」

 

「!?なんだっ!?」

 

ドォォォンッ!!

 

次の瞬間、影は物凄い勢いで私とリムルの間を通り抜け、激しい水飛沫(みずしぶき)を上げながら豚頭帝(オークロード)とベニマル達の間に降ってくる。

 

「………」

 

水飛沫が落ちつくとそこにはペスト仮面を被った謎の人物が降り立っていた。

 

「!?あの方は……っ!!」

 

「これは一体どういうことだぁっ!?このゲルミュッド様の計画を台無しにしやがってぇっ!!!」

 

その人物を見てガビルがそう声を上げるなか、ペスト仮面の人物…ゲルミュッドがそう怒号を上げる。

 

なるほど……彼がゲルミュッド……つまり今回の『異変』の主犯の一人ということね。

 

「もう少しで俺の手足となって動く新たな魔王が誕生するというのに、それをよくも……っ!!」

 

「!?新たな魔王だと?」

 

「そうだっ!だから、名付けをしまくったっ!!()を蒔きまくったんだっ!!!それなのに……っ!!」

 

私がそう思いながら見ているなか、ゲルミュッドは自らの目的を暴露しながら怒りを露にする。

 

「そのために……」

 

「私達の里にも……」

 

「来たということか……っ!!」

 

「「ッ……」」

 

そんなゲルミュッドに対し、大鬼族(自分達)の里が襲われた真相を知った鬼人や元オーガの妖怪(アヤカシ)達は怒りに震える。

 

「ゲルミュッド様!!何故、此処に!?いや、それよりも親父殿やユカリ嬢の言うように我輩を唆したというのは本当で」

 

「このノロマがっ!!貴様もさっさと豚頭帝(オークロード)(かて)となるがいいっ!!」

 

「なっ!?」

 

そんななか、ガビルがゲルミュッドに対し、自分を唆したことの真偽を問い質そうとする。

 

が、ゲルミュッドからのまさかの言葉に思わず言葉を失う。

 

まぁ、ゲルミュッドはガビルの名付け親のようだし、そんな反応になるわよね。

 

「何の役にも立たない無能の分際で目障りな奴よ……精々豚頭帝(オークロード)に喰われ、“力”となれっ!!最期に俺の役に立って死ねるのなら本望だろう?」

 

「!?ゲッ、ゲル!?ゲル!?」

 

「殺れっ!!豚頭帝(オークロード)!!」

 

戸惑いを隠しきれないガビルを他所にゲルミュッドがそう豚頭帝(オークロード)に命じる。

 

「………」

 

「?どうした!?」

 

「……魔王に進化というのは、どういうことカ?」

 

が、豚頭帝(オークロード)は動かずにゲルミュッドにそう尋ねる。

 

豚頭帝(オークロード)は『計画』とやらを理解していないのかしら?

 

「ちっ!!何処までも愚鈍な奴よ……いいか!?貴様は『豚頭魔王(オークディザスター)』となり、『ジュラの大森林』を手中に収めるのだっ!!それが俺と“あの方”の望みなのだっ!!!」

 

【どうやら更なる黒幕がいるみたいだな。】

 

【それってこれまでの情報から察するに、こいつを擁する魔王ってところじゃないかしら。】

 

【その可能性が高そうだな。】

 

「何をボーッとしている!?ノロマな豚がっ!!」

 

「………」

 

「はぁ……仕方ない。本来なら手出し厳禁だが、俺が殺るしかないか……」

 

リムルと『思念伝達』でそう話しているなか、ゲルミュッドは左手を掲げ、頭上に大量の魔力弾を生成する。

 

「上位魔人の強さを教えてやる!死ねぃっ!!

死者之行進演舞(デスマーチダンス)』!!!」

 

「はぁっ!?」

 

ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!

 

次の瞬間、ゲルミュッドはそう言いながら、大量の魔力弾をガビルに向けて放つ。

 

「「「ガビル様ぁーっ!!」」」

 

ガビルの周りのリザードマン達は咄嗟にガビルを護ろうとする。

 

ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!

 

そんな彼らの命を刈り取ろうとゲルミュッドの魔力弾が迫ってくる。

 

が、咄嗟に彼らの前に降り立ったリムルがスライム化させた右手で全てを『補食』する。

 

「はぁっ!?」

 

「なぁ……これが全力か?こんなんでどうやって死ぬんだ?これならユカリの弾幕の方がよっぽど殺意マシマシだぞ。」

 

「(スタッ)そうね。正直イフリートの方がよっぽど良い弾幕だったわ。」

 

「き、貴様ら……っ!!」

 

「ユカリ。ガビル達のこと、頼むな。」

 

「えぇ。」

 

「げ、ゲルミュッド様……何故ですか?我輩に名を授けて下さったあの日、『おまえには見所がある。何れ右腕にしたい。』と……そう仰って下さったではありませんかっ!?」

 

「それは名付ける相手にその気にさせて、信頼を得るための営業トークだったってことでしょ……貴女達の里に来た時も似たようなこと言ってたんじゃない?カセン。」

 

「……ですね。ユカリ様。」

 

「よぉ。ゲレ、じゃなかったゲルミュッド……里の全員から突っぱねられた『名付け』は順調のようだな?」

 

「!?」

 

私とカセンがそう話しているなか、そう言うベニマルを始めとした鬼人と元オーガの妖怪(アヤカシ)達がゲルミュッドを取り囲む。

 

「き、鬼人(キジン)(オニ)……っ!?」

 

「……我らの里をオーク共に襲わせたのはおまえだな?」

 

「!?」

 

「違うのなら早く弁明下され。」

 

「そうそう。こちとらいい加減虫みたいに沸いてくるオーク共の相手は飽きてきたところなんだ。」ゴキッ!ゴキッ!

 

「明確な仇があんただってわかれば、酔いも醒めるってもんだよ……」

 

「ッ……あぁ、そうだよ。それがどぉしたぁっ!?『上位魔人』を嘗めるなぁっ!!」

 

ヴォォンッ!ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!

 

自棄(ヤケ)になったのか、開き直ったゲルミュッドはそう言いながら大量の魔力弾をベニマルやカセン達に向けて放ってくる。

 

ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガァァァンッ!!

 

「フッ……」

 

「おまえこそ、鬼人や鬼(おれたち)を嘗めすぎだ。」

 

「!?」

 

ズバァァァンッ!!

 

が、ゲルミュッドの魔力弾を難なくかわしていたベニマルは背後からそう言いながら、ゲルミュッドの左耳を斬り落とす。

 

「ぎゃあああああああっ!?み、耳がぁっ!!?」

 

「そんなものじゃないぞ。」

 

「!?」

 

のたうち回るゲルミュッドにベニマルは言葉を紡ぐ。

 

「親父は俺と(シュナ)を逃がすために死んだ……親父だけじゃない。多くの同胞が女子どもも関係なくオーク共に生きたまま喰われた……その程度の痛み(・・・・・・・)じゃなかった筈だ……っ!!」

 

「ヒィィ……ッ!?」

 

「リムルさん!ユカリさん!!」

 

「ユカリ様!リムル様!!」

 

【我が主!ユカリ様!!】

 

抑えきれない怒りを露にするベニマルにゲルミュッドが後退るなか、ランガに乗ったシズとランが合流してくる。

 

「ぎゃあああああああっ!?」

 

「ランガ……アレに手を出すなよ。」

 

「ランも手を出しちゃダメよ。」

 

【「御意。」】

 

「?どういう状況?」

 

豚頭帝(オークロード)に名付けをした黒幕の一人であるゲルミュッドが乗り込んできたから今、ベニマルやカセン達が怒りをぶつけているところよ。」

 

「げ、ゲルミュッド様……」

 

「気持ちはわかるけど止めときなさい、ガビル。あいつは貴方を切り捨て殺そうとした……貴方を護ったのはリムルと、未だに纏わり付いている部下(その子)達よ。」

 

「「「………」」」

 

「!?おまえ達……」

 

「………」

 

「アレが豚頭帝(オークロード)ですか……話に聞いてた通り、凄まじい妖気(オーラ)を感じます……」

 

「でも、今までの話から察するにゲルミュッドの配下なんだよね?なんでゲルミュッドのピンチに無反応なんだろ……?」

 

「ユカリ。何かわかるか?」

 

豚頭帝(オークロード)を見ながらランとシズがそう言うなか、リムルがそう尋ねてくる。

 

「『霊能者(サイキック)』で視たところ、これまでに取り込んだ魔物の“力”に侵食されて意識が混濁しているみたいね。」

 

それでも尋常じゃない『飢餓(ウエ)』の感情ともう一つ、とてつもなく強い思念を感じるけど……

 

「なんだか可哀想……」

 

「もし、例の『黒いヒトガタ』に洗脳の類の術式も組み込まれているなら、その影響もあるかもしれませんね。」

 

「何れにせよトレイニーさんとの約束もあるし、これ以上森を喰い荒らさせる訳にはいかないな。」

 

「リムル……終わらせてあげて頂戴。」

 

「あぁ……」

 

豚頭帝(オークロード)Side

 

「進化……魔王……」

 

【そうさ……『豚頭魔王(オークディザスター)』……『全てを喰らう者』……ソレに進化するのがゲルミュッド様(・・・・・・・)の『願望(ネガイ)』だ……】

 

頭の中に何時しかの、『小物妖怪』と名乗っていた少女の『声』が聞こえる。

 

第三者Side

 

「うおぉぉっ!!『死者之行進演舞(デスマーチダンス)』ゥゥッ!!」

 

ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガァァァンッ!!

 

(ここは一旦退く!こんな化け物共、相手にしてられるか!!)

 

ベニマルやカセン達に向けて『死者之行進演舞(デスマーチダンス)』を放った後、ゲルミュッドはそう思いながら逃亡しようとする。

 

「(ガクッ!!)か、身体が……っ!?」

 

「逃がす訳がなかろう……」

 

「!?」

 

「貴様には我らが失った同胞達と同じ報いを受けてもらう……楽に死ねると思うな……」

 

が、蜥蜴人族(リザードマン)の首領や側近達の救出を終え、駆けつけてきたソウエイがそう言いながら糸で縛り拘束する。

 

「ところで、湿地帯(ここ)に来たのは貴様だけか?元大鬼族(われら)の里を襲撃するオーク共を率いていた仮面の魔人やガビルを唆したラプラスと名乗る魔人……そして、豚頭帝(オークロード)に『黒いヒトガタ』を与えて強化した『小物妖怪』はどうした?そいつらは何処にいる?」

 

「ッ……」

 

「………」

 

ソウエイからの問いにゲルミュッドは答えず、背後にいる豚頭帝(オークロード)に目をやる。

 

豚頭帝(オークロード)Side

 

「おい豚頭帝(オークロード)!!俺を助けろ!!」

 

「……腹ガ減っタ……」

 

【そうだよなぁ……腹が減って仕方ないよなぁ……】

 

「クソッ!俺を助けろ!!豚頭帝(オークロード)……いや、ゲルドよ!!」

 

「ッ……」

 

【そうだぜ。ゲルド……ゲルミュッド様は今、鬼人や妖怪(アヤカシ)の『鬼』共にやられて苦しんでいる……早くゲルミュッド様をその苦しみから『解放してやるんだ』……目の前にある『上質な餌(・・・・)』を喰って……な……】

 

「………」

 

ユカリSide

 

ズシン……ズシン……

 

「!?動きだした……」

 

突如、(おもむろ)に動き出した豚頭帝(オークロード)に私がそう言うなか、リムルやシズ達は警戒し、ベニマルやカセン達もゲルミュッドへの攻撃や尋問を一旦止めて警戒し始める。

 

「漸く動いたか……ハハハハハッ!!豚頭帝(コイツ)の強さを思い知るがいい!殺れ!!ゲルド!!この俺に歯向かったことを後悔さs」

 

ザシュッ!!

 

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

 

ゲルミュッドの言葉の最中、豚頭帝(オークロード)はあろうことか背後から手にしていた巨大中華包丁を振り抜き、その首を()ねる。

 

バリッ!ボリッ!グチャグチャ……ッ!!

 

「うわっ、喰ってる……」

 

「まさか、『上位魔人(ゲルミュッド)』を糧に……っ!?」

 

〈確認しました。個体名『ゲルド』の魔王種への進化を開始します。〉

 

ズズズ……ッ!!

 

そう言う『世界の言葉』と共に黒い妖気(オーラ)豚頭帝(オークロード)を包み込んでいき、『(まゆ)』のようになる。

 

シュウウウ……ッ!!

 

直後、その『繭』から妖気(オーラ)が溢れ出てくる。

 

「!?皆!!急いでその妖気(オーラ)から離れて!!」

 

「ッ!!」

 

飛びながらそう言う私からの警告にリムル達はすぐさま『繭』から離れ、生き残っているオーク達も同じように離れる。

 

ドロォ……ッ!!

 

直後、ゴブタやカセン達の攻撃で死亡していたオークの死体が妖気(オーラ)に触れただけでまるで硫酸にでもかかったかのように融けていく。

 

「触れたものを『腐蝕』させる妖気(オーラ)……」

 

それが進化した豚頭帝(オークロード)…いや、ゲルドの能力……

 

「幻想郷風に言うなら『触れたものを腐らせる』程度の能力……ってところかしら……」

 

バァァァァァンッ!!

 

〈成功しました。個体名『ゲルド』は『豚頭魔王(オークディザスター)』へと進化完了しました。〉

 

「ウオオオオオオオオオッ!!!」

 

私がそう言いながら観察しているなか、『繭』の中から豚頭帝(オークロード)の時はでっぶりとした体型から引き締まった腹筋と強靭な腕を持つ肉体に変わり、黒いマントのようなものを身に纏ったゲルドが雄叫びを上げながら現れる。

 

「俺は『豚頭魔王(オークディザスター)』!!この世の全てを喰らう者なり!!名は『ゲルド』……魔王ゲルドである!!」

 

次の瞬間、『豚頭魔王(オークディザスター)』ゲルドはそう名乗りを上げた。

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